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特別支援教育法令等データベース 総則 / 報告・答申等 - 通級による指導に関する充実方策について(審議のまとめ) -


○通級による指導に関する充実方策について(審議のまとめ)

I 通級の現状
II 通級の概念規定
III 通級による指導が適切な児童生徒の心身の障害の種類・程度及び指導の内容・方法
IV 通級による指導の教育課程上の位置付け等
V 通級による指導の充実のための条件整備

平成4年3月30日


文部省初等中等教育局長 坂元 弘直 殿


                通級学級に関する調査 研究協力者会議座長 山口 薫


 我が国の特殊学級は,昭和22年の学校教育法の制定によけて学校制度上明確に位置付けら
れたが,昭和30年代から40年代を中心に急速に整備が進められ,軽度の心身障害児の教育の
場として,重要な役割を果たしている。

 当初,特殊学級は,児童生徒が籍を置き,大半の指導を受ける場として想定され整備され
 てきた。いわゆる「固定式」の特殊学級である。しかし,近年,各教科等の指導の大半を
 通常の学級で受けつつ,心身の障害の状態等に応じた特別の指導を特殊学級等で受けると
 いう形態での教育が行われる例が見られ,障害の種類・程度によっては,一般的な教育の
 形態となりつつある。これが「通級」である。

 このような「通級」による指導は,心身障害児のうち,各教科等については通常の学級に
おいて指導するのが適当であるようなものに対しては,有効な教育の形態であると考えられ
ている。既に,昭和53年に,文部省の特殊教育に関する研究調査会の報告「軽度心身障害児
に関する学校教育の在り方」も,軽度心身障害児に対する具体的方策の1つとして,「通級
による指導」を考慮すべきことを提言している。また,昭和62年の臨時教育審議会の第3次
答申や,昭和63年の教育課程審議会の答申においても,「通級学級」における指導体制の充
実や,教育条件の改善を図るべきことが述べられている。

 このような「通級」による指導については,これまで教育課程上の位置付けや,対象とな
る児童生徒の障害の種類・程度,指導内容・方法が明確にされておらず,また,学級編制上
も従来の基準には当てはめがたいなどの問題があり,これらの問題を検討し,解決すること
が必要となっていた。

 また,最近,いわゆる「学習障害児」の問題が重要な課題となっており,「通級」による
指導が効果的であるとの指摘も行われている。

 本協力者会議においては,調査研究校の協力を得ながら,「通級」による指導の充実のた
め,これらの問題点について検討を重ね,その充実方策について,別紙のように取りまとめ
たので,ここに報告する。


別紙I
I 通級の現状 
 学校基本調査によると,平成3年5月1日現在,全国の小・中学校に21,280の特殊学級が
設置され,74,267人の児童生徒が在籍しているが,通級の現状については,文部省が昭和63
年度に実施した「特殊学級教育課程実施状況等調査」によると次のようになっている。 
 
 昭和63年10月1日現在,全国の公立小・中学校に,21,358の特殊学級が設置され,85,376
人の児童生徒が在籍している。また,このような在籍児童生徒以外にも,12,793人の児童生
徒が特殊学級で指導を受けており,その中には,当該特殊学級を設置している学校とは別の
学校に在籍している児童生徒も7,536人含まれている(別表参照)。 このような非在籍の傾
向は,小・中学校別では小学校に強くみられ障害種別では言語障害,難聴,弱視,情緒障害
に強くみられる。 
 
 一方,指導の実態をみると,特殊学級では数単位時間しか授業を受けていないという場合
もかなり多く,この傾向は,小・中学校別では,小学校に強くみられ,障害種別では,言語
障害,難聴,弱視に強くみられる。情緒障害についても,指導時間等からみて,一部通級に
よる指導が行われている。 

 このような通級による指導を受けている児童生徒は,各教科等については通常の学級にお
いて学習することが適当であるが,一部障害の状態等に応じた特別な指導を必要としている
者と考えられる。換言すれば,いわゆる固定式の特殊学級において指導を行うことは適切で
はないが,通常の学級における指導だけでは不十分な者である。通級による指導は,このよ
うな心身障害児の教育の形態の1つとして,重要な役割を果たしており,今後,その一層の
充実が必要であると考えられる。 


II 通級の概念規定 
1 通級の概念 
 本協力者会議が検討を開始した当時,「通級」の概念は必ずしも一定しておらず,検討を
行うためにも,その概念規定を確定しておく必要があった。 

 「通級」の概念を規定する際,2つの観点からこれを見ることが可能である。1つは児童
生徒の籍の所在という「形式」であり,もう1つは,主として通常の学級でどれだけの時間,
指導を受けているかという指導の「実質」である。本協力者会議では,心身障害児に対する
有効な教育の形態の1つとして,「通級」による指導を充実していくという立場から,指事
の在り方ないし指導の「実質」に着目して,その概念を規定することが適当であると考えた。

 こうした観点から,本協力者会議においては,「通級」とは,「各教科等の授業は主とし
て通常の学級で受けながら,心身の障害の状態等に応じた特別の指導を特殊学級又は特別の
指導の場(以下「特殊学級等」という。)で受けること」として検討することとした。 


2 通級と交流 
 小・中学校における特殊教育の形態に関し,「交流」という語が使用されることがある。
これは,一般的には,主として特殊学級で指導を受けながら,一部について通常の学級の児
童生徒と共に指導を受けることを意味する。このような交流教育は,児童生徒が通常の学級
と特殊学級の双方で指導を受けるという点では,通級に類似しているが,交流の場合は,主
として特殊学級で指導を受げていること,また,これは特殊学級の児童生徒の経験を広め,
社会性を養い,好ましい人間関係を育てるとともに,障害のない児童生徒の心身障害児に対
する理解認識を深めることをねらいとして行われているものであることなど,通級とはその
教育の形態,目的を異にするものであり,「固定式」の特殊学級における指導の一形態ない
し指導方法の1つと考えることが適切である。 


3 他校通級及び巡回による指導等 
 通級による指導を受けている児童生徒の中には,他の学校から週に何時間か定期的に通級
し,障害の状態に応じた特別な指導を受けている者が少なくない。このような形態は,一般
に「他校通級」と呼ばれている。 
 
 「他校通級」は,通常の授業を地元の小・中学校で受けられるというような利点がある一
方,児童生徒の指導要録の作成など事務処理上の問題や,他校通級の児童生徒の通学の都合
上,通級による指導の時間が午後ないし放課後に集中せざるを得ない場合が少なくないなど
の問題があり,後述するように,今後その充実を図るためには,種々の対応策を講ずる必要
がある。

 こうした「他校通級」とは逆に,通級の担当教員が該当児童生徒がいる学校に行けて,場
合によっては,複数の学校を巡回して指導を行うことも考えられる。こうした形態は,児童
生徒にとっては,心身の障害の状態に応じた特別な指導を一部別の指導の場で受けるもので
あけて,実質的には「通級」と同一であると考えられるので,「通級」の一形態として考え
ることが適当である。
 また,近隣の小・中学校には適当な特殊学級等が設置されていない場合には,盲学校,聾
学校等において,巡回指導を含め,一部特別な指導を受けることも考えられる。さらに,知
的障害特殊学級の児童生徒が,言語障害特殊学級において言語指導を受ける場合のように,
特殊学級に在籍する児童生徒が他の特殊学級等に通って一部特別な指導を受けるケースもわ
ずかながらみられる。このようなケースは,前述した概念規定には必ずしも該当しないが,
特に必要と認められる場合については,例外的に「通級」,に含めて考えることが適当であ
る。


III 通級による指導が適切な児童生徒の心身の障害の種類・程度及び指導の内容・方法
1 基本的な考え方
(1)障害の種類・程度
 通級とは,各教科等の授業を主として通常の学級で受けながら,心身の障害の状態等に応
じた特別な指導を特殊学級等で受ける教育の形態である。したがって,その対象となる児童
生徒は,通常の学級において学習するのが適切であるが,一部特別な指導を行うことが必要
な者と考えることが適当である。障害の種類としては,言語障害,難聴,弱視,情緒障害,
肢体不自由,病弱・身体虚弱等が考えられる。 

 知的障害については,精神発達の遅れやその特性から,小集団における発達段階に応じた
特別な教育課程・指導法が効果的であり,このため原則として,主として特殊学級において,
いわゆる固定式により指導することが適切である。 

 なお,知的障害以外の障害を2つ以上有する場合には,例えば,比較的重い方の障害の特
殊学級において,固定式又は通級により指導するなど,個に応じて適切な措置を講ずる必要
がある。 


(2)指導の内容・方法 
 通級による指導は,心身の障害の状態を改善・克服することが主たる目的であり,基本的
には,これを目的とする障害に応じた特別の指導が中心となるが,児童生徒の心身の障害の
状態に応じ,教科の指導を補充的に行うことも考えられる。このため,個別指導を中心とし,
必要に応じ,グループ指導を組み合わせることが適当である。また,指導をより有効なもの
とするため,在籍する通常の学級との緊密な連携を図ることが必要である。 

 通級による指導時間については,個々の児童生徒の障害の状態や指導内容・方法等に応じ
て適切に定める必要がある。一律に基準を示すことは困難であるが,その指導が上記のよう
な内容であること,盲・聾・養護学校における養護・訓練の指導時間,通級による指導の実
態などを勘案し,適切に指導していくことが必要である。 


2 言語障害 
(1)障害の状態 
 言語障害は,言語の情報の伝達及び処理過程における様々な障害を包括する広い概念であ
る。一般的には,言語の受容から表出に至るまでのいずれかのレベルにおいて障害がある状
態であり,その実態は複雑多岐にわたっている。具体的には,その社会の普通一般の聞き手
にとって,言葉そのものに注意が引かれるような話し方をする状態及びそのために本人が社
会生活に不都合を来すような状態を指し,言語の意味理解や言語概念の形成などの面に障害
を伴う場合も考えられる。 

 言語に障害のある状態は様々であるが,通級による指導が適切と考えられる児童生徒につ
いては,口蓋裂,構音器官のまひ等器質的及び機能的な構音障害のある者,吃音等話し言葉
におけるリズムの障害のある者,話す,聞く等言語機能の基礎的事項に発達の遅れがある者
などが考えられる。 

 なお,聾,難聴,脳性まひによる肢体不自由,知的障害などに伴って生ずる言語障害を有
する者は,その障害の性質及び程度に応じて,聾学校若しくは養護学校又は難聴特殊学級,
肢体不自由特殊学級若しくは知的障害特殊学級などにおいて指導することが適切である。 


(2)指導の内容・方法 
 言語に障害のある児童生徒に対する通級による指導は,個々の言語機能の障害の状態を改
善することを目的として行われるが,対象となる児童生徒のもつ問題が複雑多岐にわたって
いるため,個々の児童生徒の障害の実態に即して特別な指導が必要である。したがって,児
童生徒の言語及びコミュニケーション能力等についての実態を十分把握した上で,指導の方
針を決めることが必要である。 

 指導の内容としては,正しい音の認知や模倣,構音器官の連動の調整,発音・発語の指導
など構音の改善にかかわる指導,遊びの指導,劇指導,斉読法などによる話し言葉の流ちょ
う性を改善する指導,遊びや日常生活の体験と結び付けた言語機能の基礎的事項に関する指
導等が考えられる。

 また,言語の障害は,児童生徒の対人関係等生活全般に与える影響が大きいことから,話
すことの意欲を高める指導,カウンセリング等の指導も必要となる。
 通級による指導は,個別指導が中心となる。なお,指導に当たっては,視聴覚機器等の教
材・教具を有効に活用し,指導の効果を高めることが大切である。 

 また,言語障害の改善・克服のためには,学校における特別な指導のもとに,生活場面で
継続的に発音・発語の練習を行う必要があり,家庭との連携を密接に図ることが大切である。
さらに,器質的な障害のある児童生徒については,医療機関等との連携を図ることが大切で
ある。 


3 難聴 
(1)障害の状態 
 難聴児のうち,両耳の聴力レベルが100デシベル未満60デシベル以上で,補聴器を使用すれ
ば通常の話声を解するに著しい困難を感じない程度の者及び両耳の聴力レベルが60デシペル
未満で補聴器を使用しても通常の話声を解することが困難な程度の者については,特殊学級
において教育するか又は通常の学級において留意して指導することとされている。このうち,
他の障害を併せ有しない児童生徒については,通級による指導が適切である。 

 これらの障害の程度の判断に当たっては,専門医による聴覚障害に関する精密な診断結果
に基づき,失聴の時期を含む生育歴,知能,言語発達の状況等を考慮して,総合的に行うよ
う留意することが必要である。 


(2)指導の内容・方法 
 通級による指導の対象となる児童生徒は,穂覚障害の程度が比較的軽度であるため,その
指導においては保有する聴力の活用が優先される。保有する聴力の活用に当たっては,まず
補聴器を適切に装用する指導があげられ,次いで,聴能訓練として聴く態度の育成,聞き取
りの練習,音声の聴取及び弁別の指導等が必要となる。また,言語指導に当たっては,日常
の話し言葉の指導,語い拡充のための指導,言語概念の形成を図る指導,日記等の書き言葉
の指導などがあげられる。さらに,通常の学級における学習や生活を円滑に行うことができ
るようにするための援助や助言等も大切である。 

 なお,国語における読解指導,算数・数学における文章題の指導,英語の指導など,言語
にかかわる教科,教科内容については,補充的な指導を行うことも必要となる。

 通級による指導は,個別指導を原則とし,必要に応じてグループ指導を組み合わせること
が適切である。例えば,言語指導における発音・発語の指導や音声等の聴取及び弁別の指導
などは,その指導内容が個人に即することが必要であるため,個別指導が中心となる。グル
ープ指導は,主として遊びや教科の補充的指導等において行われる場合が多い。いずれの場
合においても,視聴覚機器等の教材・教具を有効に活用し,指導の効果を高めることが大切
である。 

 また,補聴器の適切な管理を行うとともに,生活場面で補聴器をより一層活用するため,
家庭や医療機関等との連携を密接に図ることが大切である。 


4 弱視 
(1)障害の状態 
 弱視児のうち,両眼の視力が矯正しても0.1以上0.3未満の者又は視力以外の視機能障害が
高度の者のうち,点字による教育を必要としないものについては,特殊学級において教育す
るか又は通常の学級において留意して指導することとされている。このうち,他の障害を併
せ有しない児童生徒については,通級による指導が適切である。 


(2)指導の内容・方法 
 通級による指導の内容は,主として視覚認知,目と手の協応,視覚補助具の活用等の指導
が中心となるが,算数・数学の図形に関する指導や社会科の地図指導など,視覚的な情報収
集や処理の方法を指導しなければ効果的に学習活動を行うことができない教科内容について
は,補充的な指導を行うことも必要となる。また,通常の学級における学習や生活を円滑に
行うことができるようにするための援助や助言等も大切である。 

 通級による指導は,個別指導を原則とし,必要に応じてグループ指導を組み合わせること
が適切である。例えば,視覚認知等の指導は,個別指導が中心となり,教科の補充的指導は,
グループ指導が適切な場合が多い。いずれの場合においても,視聴覚機器等の教材・教具を
有効に活用し,指導の効果を高めることが大切である。 

 また,基本的生活習慣の確立や通級に伴う交通安全,視覚管理などについて,家庭や医療
機関等との連携を密接に図ることが大切である。 


5 情緒障害 
(1)障害の状態 
 情緒障害は,大きくは,2つのタイプに分けられる。1つは,自閉症等を中心とする各種
の発達障害である。これらは,コミュニケーションと社会的行動の障害を中心として,それ
にしばしば行動上の問題と学習能力のアンバランスを伴い,通常の学級での指導に困難を来
しているものである。他の1つは,かん黙,登校拒否など,心理的要因の関与の大きいとさ
れるもので,学習上の問題よりも,集団生活への参加に問題のある状態にあるものである。

 このうち,前者で,全般的な学習能力の遅れが軽度のものについては,通級による指導が
適切である。具体的には,通常の学級での学習におおむね参加できるが,その上で,特別な
補充的指導を必要としている者である。 

 また,後者についても,通常の学級での学習におおむね参加できるものについては,通級
による指導が適切である。なお,登校拒否については,情緒障害特殊学級において大半の時
間指導を受けている者も見られるが,通常の学級への復帰を前提として指導を行う場合は,
「通級」と同様に取り扱うことも考えられる。 


(2)指導の内容・方法 
 通級による指導は,大きく個別指導と集団指導とに分けて考える必要がある。個別指導で
は,自閉症等については,認知学習(教科学習,言語,コミュニケーション等にかかわる基
礎的知識・技能)が主な指導内容となり,かん黙等については,カウンセリング,心理療法
等による指導が中心となる。集団指導では,音楽・連動・製作等の活動を通して・基本的生
活習慣の育成,遊びや対人関係,コミュニケーションなど社会的適応力の育成が主な指導の
ねらいとなる。なお,指導に当たっては,視聴覚機器等の教材・教具を有効に活用し,指導
の効果を高めることが大切である。 

 また,家庭生活の状況や問題行動等について把握するなどのため,家庭との密接な連携を
図ることが大切である。さらに,特にてんかんを併せ有する場合などについては,医療機関
等との連携を図ることが必要である。 


6 肢体不自由,病弱・身体虚弱 
 肢体不自由及び病弱・身体虚弱については,通級の実態はほとんど見られない。しかし,
昭和53年の「軽度心身障害児に対する学校教育の在り方」の報告においては,肢体不自由及
び病弱・身体虚弱についても,通級について考慮すべきことが指摘されており,他の障害を
伴わない者については,一部通級による指導の対象となるものと考えられる。この場合,肢
体不自由については,連動・動作の改善・向上を図るための指導,病弱・身体虚弱について
は,健康状態の回復・改善や体力の向上を図るための指導が,主な指導内容となる。 



IV 通級による指導の教育課程上の位置付け等 
1 教育課程上の位置付け 
 通級による指導を受けている児童生徒は,通常の学級の授業の一部に替えて通級するか,
あるいは放課後通級している。このいずれの方式が望ましいかは,学校や地域,児童生徒の
実態等に応じて判断されるべきものであると考えられる。 

 通常の学級の授業の一部に替えて通級する場合には,教育課程の上で一部特別の教育課程
によることとなる。特殊学級については,教育課程の特例が認められているが,通常の学級
に在籍している児童生徒については,このような教育課程の連用に関する現行制度上の定め
はない。今後通級による指導を充実させていくためには,その教育課程上の位置付けを明確
にする必要があると考えられる。 

 また,放課後等に通級する場合についても,教育課程の一部として取り扱うことが適当で
ある。 


2 指導要録の取扱い 
 指導要録については,通級に関する記載欄が必ずしも明確にされておらず,指導の記録が
不十分であるという指摘がある。 

 今後通級による指導の教育課程上の位置付けを明確にする場合,指導要録の中で,通級に
よる指導の記録が適切に記載されるようにする必要がある。 

 なお,指導要録とは別に,通級の担当教員も通級による指導の記録を作成・保管すること
が必要であると考えられる。 



V 通級による指導の充実のための条件整備 
1 指導体制の整備 
 通級による指導を受けている児童生徒は,各教科等の授業の大半は通常の学級で受けてい
るので,在籍は通常の学級ということになる。しかし,現行制度上,通級先となる特殊学級
に,在籍する児童生徒がいない場合には,学級が設置できないことから,通級による指導を
必要としている児童生徒がいるにもかかわらず,指導ができないなどの事態も生じている。 

 このような問題を解消するため,通常の学級に在籍する児童生徒について,実態に即して,
通級による指導が円滑に行われるような教員定数上の措置を講ずることが必要である。

 この際,通級による指導は,個別指導が中心となることから,原則として,固定式の特殊
学級における指導とは別に行うことが適当である。 

 また,通級による指導は,特殊学級の区分に従って,原則として障害種別に行うことが適
当であるが,学校や地域の実態等に応じ,特に必要と認められる場合には,複数の障害を対象
として行うことも考えられる。 


2 就学指導体制の整備 
 通級による指導が適切に行われるためには,その対象となる児童生徒を早期に発見し,保
護者に対して就学相談を行い,その理解を得ながら,就学指導を行うことが不可欠である。
その際,固定式の特殊学級における指導が適切と認められる児童生徒が,安易に通級による
指導の対象となることがないよう十分留意する必要がある。また,児童生徒の心身の障害の
状態の変化等に応じて,教育措置の変更が適切かつ柔軟に行われることも大切である。この
ような観点から,市町村の就学指導委員会や校内就学指導委員会の充実が必要であることは
言うまでもない。 

 さらに,通級については,新しい教育措置の形態を制度上設けるものであることから,そ
の趣旨について,教育委員会や学校関係者だけでなく,保護者に対しても,あらかじめ十分
周知徹底することが必要である。 


3 教員の資質の向上 
 通級による指導が教育効果を上げるためには,何よりも担当教員の資質が重要である。通
級による指導は,IIIで述べたように,限られた時間の中での1対1の個別指導が中心である
ため,担当教員は専門的な指導そのものの成果を問われることとなる。しかも,多くの場合,
児童生徒は通常の学級の授業の一部に替えて,場合によっては遠くから保護者が付き添って
来て,指導を受けており,それだけの教育効果を上げなければ,通級の意義そのものが問わ
れることとなる。このため,専門的な知識,技能を有するとともに,個々の児童生徒の障害
の状態や特性等を適切に把握し,それに応じた指導を行える力量を有する教員が担当するこ
とが望ましい。 
 
 しかしながら,通級の担当教員,特殊学級担当教員については,経験年数が少なく,専門
性が十分ではない者がみられるということも指摘されている。今後,国,都道府県,市町村
の各レベルで,専門性と個別指導の力量を養うための研修の充実を図ることが必要である。
また,長期的には,教員養成においても適切な配慮が行われることが望ましい。 


VI 在籍学級・学校等との連携の在り方 
 通級による指導は,固定式の特殊学級における指導とは異なり,指導時間が限られている。
このため,限られた指導時間の中で,いかに適切で効果的な指導を行うかが,通級による指
導を行う上での重要な課題である。 

 このためには,まず,通級の担当教員は,在籍学級の担任や保護者等との間で定期的な情
報交換を行い,児童生徒の様子や変化について常に把握しているよう日ごろから努める必要
がある。 

 また,大半の時間,指導を受けている通常の学級においても,障害の状態等について正し
い理解と認識をもちながら,指導上配慮していく必要があり,通級の担当教員が,通常の学
級の担任等に対してそのための助言を行うことも必要である。特に,他校通級の場合には,
通級の担当教員が定期的に在籍校を訪閲することも必要である。さらに,盲・聾・養護学校
及び特殊教育センター等との協力体制の維持も必要である。 

 このような情報交換,助言,学校訪問などの活動は,通級による指導を効果的に行うため
に必要不可欠なものであり,通級の担当教員の重要な職務の一環として位置付けられる必要
がある。 

 なお,これに関連して,通級の担当教員は,就学前の幼児についての教育相談や,学齢児
に対する不定期の相談・指導などを行っている場合があるが,このような相談活動について
も,併せて充実することが望ましい。また,個々の児童生徒の実態に応じて指導を行うため,
通級の担当教員が中心となり,関係者の協力を得てケース会議をもつ必要がある。この場合,
児童生徒や家族等のプライバシーの保護について留意する必要がある。 

 さらに,通級は,通常の学級における授業の一部に替えて行われていること,他校の児童
生徒に対して放課後を中心として指導している場合があることなど,教育形態や担当教員の
職務の形態が特殊であるため,学校内においても,これに対する理解が必ずしも十分に得ら
れない場合があることが指摘されている。通級による指導を効果的に行うためには,各学校
において,校長が中心となって,一般教員の理解を深めるとともに,校内就学指導委員会の
機能の充実や協力体制の整備を図る必要がある。また,担当教員の職務の形態の特殊性にか
んがみ,担当教員について校務分掌などの面において適切な配慮がなされることが望ましい。 

VII 学習障害児等に対する対応 
1 いわゆる学習障害について 
 最近,いわゆる学習障害の問題が教育上重要な課題となっており,学習障害に関しては,
通級による指導が効果的であるという指摘も行われている。本協力者会議においては,従来
の障害の概念にとらわれず,通級による指導が適切な児童生徒の障害の種類と程度について
検討を行ってきたが,特にこの学習障害については,重要な課題として検討を進めてきた。


(1)学習障害の定義 
 学習障害は,英語のlearning disab-ilities(LD)の訳語である。学習障害については,
歴史的に様々な定義が行われてきているが,その概念は,専門領域や研究者によりかなり異
なっているのが現状である。 
 
 学習障害に関する系統的研究の先駆は,1940年前後の心理学,精神病理学的研究に求めら
れる。その後,60年代に微細脳機能不全(MBD)の概念が提唱され,80年代に入ると,学
習障害は,医学的には,発達障害の一つとして考えられるに至っている。 

 例えば,世界保健機構(WHO)が病名の診断の際の国際的標準として定めているICD-10
(1990年5月版),アメリカ精神医学会がアメリカ国内での診断に際しての病名・障害名の
標準として定めているDSM-III-R(1987年)においては,学習障害は,「特異性発達
障害(specificdevelopmental disorders)」の一形態として位置付けられている。「特
異性発達障害」は,言語,学習又は運動にかかわる能力の一部が全体的な認知能力に比して
著しく低下しているという形態の障害である。(注) 

 教育関係では,様々な定義の中で,アメリカ合衆国の障害者教育法修正(1975年)におけ
る「特異性学習障害児(children with specific learning disabilities)」の定義が代
表的なものと考えられている。これは,「話し言葉や書き言葉の理解や使用に関与する基礎
的心理的過程において1つないしそれ以上の障害(disorder)のある子どもを意味し,これ
ら障害は,聴く,考える,話す,読む,書く,綴る,又は計算する能力の不完全として現れ
る。知覚の障害(handicap),脳損傷,微細脳機能不全,読字障害,発達性失語症などの状
態を含む。一次的に,視覚,聴覚,運動の障害(handicap)の結果,精神遅滞,情緒障害の
結果,又は環境的,文化的若しくは経済的に恵まれない結果として,学習上の問題をもつ子
どもは含まない。」というものであり,いろいろなタイプの障害を総称するものとして定義
している。 

 アメリカ合衆国においては,この外,同国の学習障害に関係ある8つの団体から成る合同
委員会(NJCLD)が従来より検討を行っており,1988年に修正を加えた新しい定義案が
近く同合同委員会において合意されようとしているという。 

 これらの定義は,その中核になる障害についてはほぼ同じものを指している,周辺部分は
必ずしも一致せず,言葉に関する障害等一部の障害の含め方は異なったものとなっている。
また,同じ定義を用いる場合でも,後に述べるように,その解釈ないし診断基準は異なるこ
とがあるのが現状である。 

(注)
  正確には,DSM-III-R,ICD-10のいずれにおいても,「学習障害(leaming disabilities)」
 という分類名は用いられていない。「特異性発達障害」のうち,学習に 直接関係するものは,
 ICDでは「specific developmental disorders of scholastic skills」,DSMでは
 「academic skills disorders」という分類名が用いられており,全体的な認知能力に比べて,
 計算能力,書く技能又は読む技能が著しく低下している障害を総称するものとされる。これら
 の学習に直接関係する障害は,しばしば注意散漫,衝動性,多動を伴うとされている。 


 アメリカ合衆国の障害者教育法の定義では,言葉に関する障害の一部は「学習障害」の中
に含まれ,運動機能の障害はしばしば「学習障害」に伴うとされるが,DSM,ICDのど
ちらにおいても,これらの障害は「特異性発達障害」に属する別の障害として分類されてお
り,用語だけでなく,この点においても,同法の定義とは異なけたものとなっている。 


(2)アメリカ合衆国における障害者教育法適用の現状等 
 学習障害は,アメリカ合衆国においては,早くから特殊教育の対象として取り上げられて
いる。特殊教育については,前述の障害者教育法により,連邦政府が予算措置を行っている
が,その対象となっている障害児の半数近くが学習障害児と分類されている。その割合は全
児童生徒数の4~5%に達しており,年々増加傾向にある。 

 障害者教育法上の定義によれば,知的障害等の他の障害に起因する学習上の問題や,環境
が主たる原因と考えられる学習遅滞は,学習障害とは言えないことになるが,州により,用
語,定義,診断基準が異なり,実際には,このような原因による学習遅滞児や知的障害児等
が学習障害児として分類される傾向があり,法律上の定義ないし連邦政府の基準と,実際の
分類が必ずしも一致していないことなどが指摘されている。なお,軽度の知的障害児につい
ても,特定の能力が全体的な認知能力に比べて著しく低い場合には学習障害児に含める考え
方もある。 

 このように,長年学習障害児を特殊教育の対象としてきたアメリカ合衆国においても,そ
の定義,診断基準などにまだ不明確な点があり,学校現場での対象児の特定にはかなりの混
乱が見られるのが現状である。 

 これらアメリカ合衆国の学習障害児の多くは,リソース・ルームと呼ばれる教室に一定時
間通って,リソース・ルームの担当教員,学校心理士等から特別な指導を受けている。また,
学習障害児の大半は文字の読みに障害があり,リソース・ルームにおける指導は,読字指導
が中心であると言われているが,読字障害については,現在のところ日米の間で実態がかな
り異なり,このため我が国での対応は,アメリカ合衆国とは若干様相を異にすることとなる
ものと思われる。 

 学習障害を一つの障害として特殊教育の対象とするというこうしたアメリカ合衆国の行き
方は,西欧諸国においては,必ずしも二股的なものとはなっていない。例えば,イギリス,
ドイツにおいては,学習障害を一つの障害として取り上げるのではなく,むしろ学習の大き
な遅滞そのものを,知的障害等と並んで,特殊教育の対象として取り扱っている。 


(3) 我が国における研究等の現状 
 我が国においても,学習障害については,全体的な認知能力に比して特定の能力の発達が
著しく遅れていることを特徴とし,広汎性発達障害とは一応区別されるという点,及びこれ
に該当すると考えられる児童生徒が我が国にも存在するという点では,関係者の間で見解が
一致している。また,一般的には,その基礎には,中枢神経系の機能障害が想定されている。

 学習面に即して言えば,一般的には,特に目立った知的な遅れは見られないが,読み,書
き,計算など特定の分野の学習に著しい困難が見られるとともに,しばしば行動や情緒面で
不適応症状を示し,何らかの形での特別な指導を必要としていると考えられるという点では,
関係者の間でほぼ理解の一致が見られる。 

 実際に学習障害であるとされる児童生徒について行われた研究によると,これら児童生徒
の示す問題は多岐にわたっており,その状態は一人一人異なっている。
 
 こうした多岐にわたる問題として,研究者により報告されているものの一部を,参考のた
め例示すると,一般的な知能発達の遅れはないのに,漢字が覚えられない,文字は読めても
文章としての理解ができない,逆に本はよく読むのに文字が書けない,図形や地図の理解が
困難で簡単な地図が書けないといった学習上の問題が報告されているほか,協応動作の発達
に遅れが目立つといった連動機能に関する問題,集中力が乏しい,特定のものに固執する,
じっと席に座っていることができないといった行動・情緒面の問題をしばしば伴うことが報
告されている。 

 しかしながら,ここで留意すべきことがいくつかある。第1は,上に挙げられた問題があ
るからと言って,直ちにその児童生徒が学習障害であるとは限らないことである。

 学習障害の特徴は,全体的な認知能力に比べて,特定の学習能力の発達が遅れていること
であり,まずこの特徴が見られることを確認する必要がある。 

 さらに,こうした部分的な発達の遅れや上に挙げられたような問題は,個々の児童生徒の
発達の過程で経過的に生じることがあるほか,視覚・聴覚の障害,知的障害,情緒障害や環
境的な要因などが原因となっている場合がある。このような場合には,当該児童生徒は学習
障害児とは考えられず,問題の解決のためには,その第一義的な原因となる他の障害の種類,
程度等に応じた指導が必要である。 

 第2に,ここに挙げたような行動,情緒面の問題については,学習障害に必ずしも伴うも
のではないとする見解が一般的であるが,これも学習障害の特徴であるとする見解もない訳
ではない。 

 学習障害の判定の基準や診断方法に関しては,どういう障害までを含めて考えるか,どの
程度以上を障害と考えるか,どこで通常の言語障害,情緒障害,知的障害等と一線を画する
か,何に基づいて中枢神経系の機能障害の存在を判定し,どこまでその結果を重んじるかな
どの諸点において,研究者の間で見解が分れれているのが我が国の現状である。 

 このように,学習障害の判定については,確定されていない点が多いが,いずれにしても,
その判定は,学業成績や,上に挙げたような問題があるかどうかといった表面上の諸現象の
みによって行われるべきではなく,視覚・聴覚の検査,知能検査等の各種の能力検査や,日
常の行動観察等,種々の検査,観察を行った上で,専門家により,総合的かつ慎重に行われ
なければならない。 

 他方,学習障害児の指導については,一人一人の示す障害の種類や程度,あるいは問題に
即した指導が大切であるとともに,それぞれの発達水準や学習のレディネスに応じて指導す
ることが必要であると考えられている。 

 しかしながら,我が国においては,学習障害児を対象として,一部の研究者等によって種
々の取組が試みられているものの,指導法に関する研究成果の蓄積はまだ少ない。学習障害
児の指導には,発達のアンバランスを補うための指導と教育カリキュラムに則った指導の双
方が必要であると言われるが,具体的にどういう事例の場合にどういう指導を行うのが適切
かについても,今後の研究に待つところが大きい。 


2 学習障害に対する対応 
(1)基礎的研究の必要性 
 上で見たように,学習障害に該当すると考えられる児童生徒は,我が国にも存在する。し
かしながら長年学習障害児を特殊教育の対象としてきた米国においても,学習障害の定義,
診断基準などにまだ不明確な点があり,教育現場にはかなりの混乱が見られるのが現状であ
る。 

 また,我が国においては上記のように,学習障害に関しては,限られた範囲内では関係者
の見解はほぼ一致しているものの,その定義そのもの,あるいはその判定基準や診断方法に
ついては,関係者の意見が一致しているとは言えない状況である。その実際の指導の在り方
についても,今後の研究に待つところが大きい。学習障害については,将来の施策の検討に
資するためにも,当面,医学も含め,心理学,教育学の各分野から,その指導内容・方法,
判定基準,類型化などに関する基礎的な研究を積極的に進める必要がある。 


(2)既存の特殊学級等における対応 
 いわゆる学習障害児と考えられる児童生徒は,現在のところ固定式の特殊学級において指
導を受けていることはまれであり,大半は,通常の学級において指導を受けていると言われ
ている。ただし,言語面や情緒面に問題のあるものについては,一部言語障害特殊学級や情
緒障害特殊学級などに通級している者がいるという実績が見られる。 

 こうした児童生徒の指導に関しては,通常の学級においても,個に応じた指導方法の改善
により,対応可能な場合も考えられる一方,児童生徒の障害の種類や程度,有している問題
によっては,このような既存の特殊学級等への通級による指導が効果的であると考えられる
場合がある。学習障害に対する当面の対応の一つとして,こうした既存の特殊学級等への通
級による指導が効果的であると考えられる児童生徒については,このような指導の一層の充
実を図っていくことが望まれる。 


3 学習上困難を示す児童生徒に対する対応 
 前述したように,学習障害児については,その対象を特定することは現状では困難である
が,学習障害児や境界線児(知的にやや遅れはあるが知的障害児ではない児童生徒)を含め,
通常の学級において学習している児童生徒の中には,指導上特別な援助を必要としている者
が数多くおり,通常の学級での指導上の大きな問題となっている。昭和53年の「軽度心身障
害児に対する学校教育の在り方」の報告においても,境界線児について特別の指導の場を設
けることの必要性が指摘されている。 

 このような児童生徒に対しては,まず,通常の学級において,個に応じた指導を適切に行
うことが望まれる。我が国においては,学習上の困難は当該児童生徒の努力不足によるもの
と解される場合もあるが,学習障害に該当する児童生徒が存在することに関して関係者の見
解は一致していることなどにもかんがみ,個に応じた指導に一層努めることが望まれる。教
員の配慮によって,相当な改善が期待できる場合も少なくないと考えられるからである。
 
 しかし,その中には,通常の学級における指導上の配慮・工夫の中だけでは対応するのに
限界がある児童生徒も相当数いることは明らかである。このため,必要に応じ,個別指導や
少人数によるグループ指導を行うことが望ましく,そのための指導体制を整備していくこと
が必要である。通級による指導は,そのための有力な方策の1つになり得るものである。 

 なお,一部には,固定式の特殊学級において,実効のある教育が可能である児童生徒も含
まれていると考えられる。今後の研究に当たっては,このような点にも十分留意する必要が
ある。 

 いずれにしても,学習障害については,今後基礎的な研究を行うことが必要であるが,将
来学習障害の判定基準等がある程度明確になった場合においても,その周辺に,指導上特別
な援助を必要としている児童生徒が相当数取り残されることも予想される。このため,今後
の課題として,学習障害児に併せて,広く指導上特別な援助を必要としている児童生徒に対
する対応を検討する必要がある。当面,通常の学級における指導上の配慮・工夫だけでは十
分な教育効果を期待することが難しい児童生徒を対象として,試行的に特別の指導の場を設
けるなど,実践的な研究を行うことが必要であると考えられる。このような実践研究におい
ては,児童生徒の実態把握の方法,特別な教育的ニーズに対応するよう計画されたモデルプ
ログラムの開発と指導の実践,障害タイプ別の指導内容・方法の立案と実践,保護者に対す
る指導の在り方の研究等が行われることが望ましい。


(別表)

特殊学級で指導を受ける児童数等(昭和63年10月1日現在 文部省特殊教育課調べ)

(1) 小・中学校計


特殊学級
区分
学級数
(学級)
児  童  生  徒  数  (人)
在        籍 非   在   籍 合 計
児童I 児童II 小  計 児童III 児童IV 小  計
知的障害 15,144 45,443 16,719 62,162(96.2%) 2,398 54 2,452(3.8%) 64,614
肢体不自由 353 662 374 1,036(99.0%) 9 2 11(1.1%) 1,047
病弱身体虚弱 541 1,266 1,103 2,369(92.7%) 21 166 187(7.3%) 2,556
弱   視 89 231 5 236(72.0%) 34 58 92(28.0%) 328
難   聴 497 1,664 20 1,684(56.1%) 294 1,023 1,317(43.9%) 3,001
言語障害 1,417 5,950 405 6,355(47.6%) 2,015 4,972 6,987(52.4%) 13,342
情緒障害 3,317 7,398 4,136 11,534(86.9%) 486 1,261 1,747(13.2%) 13,281
21,358 62,614 22,762 85,376(87.0%) 5,257 7,536 12,793(13.0%) 98,169


(2) 小学校


特殊学級
区分
学級数
(学級)
児           童  (人)
在       籍 非  在  籍 合 計
児童I 児童II 小  計 児童III 児童IV 小  計
知的障害 9,732 30,017 7,359 37,376(95.0%) 1,931 49 1,980(5.0%) 39,356
肢体不自由 245 482 291 773(98.6%) 9 2 11(1.4%) 784
病弱身体虚弱 436 1,098 866 1,964(92.4%) 17 144 161(7.6%) 2,125
弱   視 63 172 4 176(70.0%) 29 48 77(30.0%) 253
難   聴 381 1,209 16 1,225(50.0%) 241 990 1,231(50,1%) 2,456
言語障害 1,332 5,755 365 6,120(46.9%) 1,990 4,940 6.930(53.1%) 13,050
情緒障害 2,286 5,457 2,177 7,634(84.5%) 412 985 1,397(15.5%) 9,031
14,475 44,190 11,078 55,268(82.4%) 4,629 7,158 11,787(17.6%) 67,055


(3) 中学校


特殊学級
区分
学級数
(学級)
生     徒     数  (人)
在      籍 非  在  籍 合  計
児童I 児童II 小  計 児童III 児童IV 小  計
知的障害 5,412 15,426 9,360 24,786(98.1%) 467 5 472(1.9%) 25,258
肢体不自由 108 180 83 263(100%) -( 0%) 263
病弱身体虚弱 105 168 237 405(94.0%) 4 22 26(6.0%) 431
弱   視 26 59 1 60(80.0%) 5 10 15(20.0%) 75
難   聴 116 455 4 459(84,2%) 53 33 86(15.8%) 545
言語障害 85 195 40 235(80.5%) 25 32 57(19.5%) 292
情緒障害 1,031 1,941 1,959 3,900(91,8%) 74 276 350(8.2%) 4,250
6,883 18,424 11,684 30,108(96.8%) 628 378 1,006(3.2%) 31,114


児童(生徒)I 当該特殊学級に籍を有する児童(生徒)で,通常の学級において1週間に1時間以上定期的に各教科の授業を受けている者。

児童(生徒)II 当該特殊学級に籍を有する児童(生徒)のうち,「児童(生徒)1」以外の者。

児童(生徒)III 当該特殊学級に籍を有さない自校の児童(生徒)で,当該特殊学級において1週間に1時間以上定期的に授業を受けている者。

児童(生徒)IV 当該特殊学級に籍を有さない他校の児童(生徒)で,当該特殊学級において1週間に1時間以上定期的に授業を受けている者。



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