(1) 組織,制度面の整備
我が国における病気療養児の教育は,明治後期より,結核,ハンセン病患者のための療養所その他の施設の一部において,師範学校出身者その他有識者により入所中の患者等に対する個人教育などの形で始め
られ,その後,特別の学級の設置等が進められた。
戦後は,小児結核対策として設置された少年保養所や国立療養所の小児病棟に特殊学級が設置され,更に養護学校も設置されるようになった。
昭和三二年五月には,当時の障害児の教育措置基準であった教育上特別な取扱いを要する児童生徒の判養護学別基準の改訂が行われ,病気療養児の教育を含む病弱者の教育について,制度上の位置づけがなされた。校も設置されるようになった。
昭和三二年一一月には,厚生省医務局長から文部省初等中等教育局長あてに「児童に対する結核対策の一環として小児病棟を設置し治療しているが,これらの施設に学校を併設して,医療に併せ教育を行うことは極
めて重要な意義を有するものと思われる。しかし未だ教育機関の併設をみていない療養所も数箇所あり,地元においても願望があるので,文部省においても円滑に推進されるよう配慮を願いたい。」との依頼(「国立療養所における入所児童の教育について」)がなされた。これを受けて,文部省は,翌昭和三三年一月,各都道府県教育委員会あて文部省初等中等教育局長通達「国立療養所における入所児童の教育について」により,「地域によっては,学校教育が行われず,就学義務の猶予又は長期欠席を余儀なくされていることは極めて不
幸なことであり,教育の機会均等の精神にもとるものであるから,適切な措置をとるように,」と指導している。
また,昭和三六年一〇月には,学校教育法の改正により,養護学校における教育の対象として「病弱者(身体虚弱者を含む。)」が明定された。
さらに,昭和五四年度からの養護学校教育の義務制の実施に伴い,各都道府県には,当該都道府県の区域内の病弱養護学校に就学させる義務を負うこととなる保護者の子女の就学に必要な病弱養護学校の小・中学部を設置する義務が課せられることになった。
こうした経緯を経て,病気療養児の教育は,組織的に整備が進められることとなったが,さまざまな課題が
残っていることも否定できない。