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盲学校,聾学校及び養譲学校の高等部における職業教育等の在り方について(報告)

平成8年3月18日
盲学校,聾学校及び養護学校の高等部における職業教育等の在リ方に関する調査研究協力者会議

1 現状と課題
(1)現状
(2)課題
2 具体的な施策
(1)学科等の再編成
(2)学校間等の協力休制
(3)専攻科の整備
(4)現場実習の拡充
(5)教育内容・方法等の改善
(6)進路指導の充実
(7)卒業者への追指導の実施
(8)担当教員の資質向上
(9)社会への理解啓発

 近年,我が国においては,情報化,国際化,科学技術の進歩等,社会経済の進展に伴い,障害者を取リ巻く環境は大きく変化している。また,盲学校,聾学校及び養護学校(以下,「盲・聾・養護学校」という。)の高等部在学者についても,障害等の重度・重複化,多様化が進んでいる。
 このような状況の中で,盲・聾・養護学校高等部の生徒の卒業後の社会的な自立を進めていくためには,社会経済の進展や生徒の実態の変化等に対応した適切な教育を一層充実していくことが求められている。
 本調査研究協力者会議においては,調査研究協力校の協力も得ながら2年間にわたる調査研究を行い,高等部における職業教育や進路指導等の在リ方について,次のとおリ取リまとめたので,ここに報告する。

 

1 現状と課題

(1)現状
盲・聾・養護学校においては,児童生徒の能力や可能性等を最大限に伸ばし,可能な限リ積極的に社会参加・自立していく人間の育成を図ることを目的として,児童生徒一人一人の障害等の状態や発達段階などに応じて,特別な配慮の下に,手厚く,きめ細かな教育を行っている。
一般に障害等のある揚合は就職その他職業的な自立に困難を伴うことが多く,特に障害等が重度・重複しているときはその困難性が一層高いことが指摘されていることから,職業的な自立の基盤となる知識・技能・態度を育成するための特段の配慮が必要である。
このため,盲・聾・養護学校高等部においては,職業的な自立を図るために必要な職業に関する学科を設置したリ,普通科の中に職業に関するコースや教科・科目を設けたリするなど,障害等の特性などに応じた様々な職業教育が行われている。平成7年5月1日現在,全国の盲・聾・養護学校967校のうちその約7割に当たる679校に高等部が設置されておリ,さらに,これらの学校のうち103校には高等部専攻科(以下「専攻科」という。)が設置され,よリ専門的な教育が行われている。
また,盲・聾・養護学校高等部の生徒の卒業後の進路は,その障害等の状態や本人の希望,適性などに応じ,進学者,教育訓練機関等への入学者,企業等への就職者,社会福祉施設等への入所・通所者などと様々である。
高等部の職業学科等の設置状況(平成7年度)及び卒業者の進路状況(平成7年3月卒業者)は,学校種別に具体的にみると次のとおリである。
(1)盲学校
盲学校では,70校中60校に高等部が設置されている。本科に保健理療科(56校),専攻科に保促理療科(23校)及び理療科(60校)が設置され,視覚障害者の職業的な自立を図る上で重要な職業である伝統的な「あん摩マッサージ指圧師,はリ師,きゆう師」の養成を中心とした職業教育が行われている。このほか,一部の学校では,本科に家政科(1校),音楽科(3校),生活技能科(1校)が,専攻科に理学療法科(3校),音楽科(2校),情報処理科(1校)等が設置されている
盲学校高等部における本科の卒業者は,盲学1校の専攻科への進学者が45%,大学等への進学者が5%教育訓練機関等への入学者が5%「あん摩マッサージ指圧師」の資格を取得し開業している者を含めた就職者が18%,杜会福祉施設への入所・通所者等が13%,その他の者が15%となつている。また,専攻科の理療科,保健理療科,理学療法科修了者については,ほとんどの者が,「あん摩マッサージ指圧師,はリ師,きゆう師」又は「理学療法士」の資格を取得し,開業若しくは就職している。
(2)聾学校
聾学校では,107校中70校に高等部が設置されておリ,本科には聴覚障害者の職業的な自立を図る上で歴史的に重要な役割を果たしてきた産業工芸科(44校),被服科(39校),理容・美容科(24校)を中心に,機械科(7校),家政科(7校),印刷科(6校)等の学科が設置されている。また,専攻科においては,理容,美容科(22校),産業工芸科(17校),歯科技工科(3校)等の学科が設置され,さらに専門的な職業教育が行われている。
聾学校高等部における本科の卒業者は,聾学校の専攻科への進学者が35%,大学等への進学者が6%,教育訓練機関等への入学者が15%,企業等への就職者が37%,社会福祉施設への入所・通所者等が4%,その他の者が3%となっている.また,専攻科修了者のほとんどは企業等に就職している。
(3)精神薄弱養護学校
精神薄弱養護学校では,501校中373校に高等部が設置されている。設置学科はほとんどが普通科であり,「作業学習」(作業活動を遍し職業生活や家庭生活に必更な知識・技能及び態度を身に付けさせることをねらいとした領域・教科を合わせた指導の形態)の指導を中心とした教育課程が編成され,家政,農業,工業などの職業教育が行われている。さらに,高等部のみを置く養護学校を中心とした一部の学校においては,農業に関する学科(9校),工業に関する学科(23校),家庭に関する学科(11校),産業科(18校)などの職業学科等が設置されている。
精神薄弱養護学校高等部における本科の卒業者は,奏護学校の専攻科への進学者が1%,教育訓練機関等への入学者が2%,企業等への就職者が33%,精神薄弱者授産施設,糟神薄弱者更生施設,小規模作業所等の社会福祉施設への入所・通所者等が53%,その他の者が11%となっている。
(4)肢体不自由養護学校
肢体不自由養護学校では,192校中136校に高等部が設置されている。設置学科はほとんどが普通科であリ,家庭,工業,商業等の職業に関する教科・科目を設け,選択履修できるような教育課程の編成がなされている。一部の学校においては,職業コースや職業学科を設けている。
肢体不自由養護学校高等部における本科の卒業者は,大学等への進学者が2%,教育訓練機関等への入学者が8%,企業等への就職者が13%,身体障害者授産施設,肢体不自由者更生施設等の社会福祉施設への入所・通所者等が58%,その他の者が20%となっている。
(5)病弱養護学校
病弱養護学校では,97校中40校に高等部が設置されている。その特注から設置学科はすべて普通科であり,その中で商業や情報処理等に目違した職業教育が行われている。
病弱養護学校高等部における本科の卒業者は,大学等への進学者が8%,教育訓練機関等への入学者が19%,企業等への就職者が18%,引き続き医療機関等における療養が必要なため入院等を継続する者が37%,その他在宅等によリ療養に専念する者が18%となっている。

(2)課題
盲・聾・養護学校高等部においては,高等部進学率の上昇に伴い,生徒の障害等の状態がよリ重度・重複化するとともに,多様化の傾向にある。このため,卒業後の社会的な自立を図る上で重要な役割を担っている企業等への就職についても,「障害者の圧用の促進等に関する法律」等によリ,障害の重い者も含めて多様な職域への進出が図られてきているが,その割合が必ずしも高まっていない状況にある.また,近年の国民の理療(あん摩・マッサージ・指圧,はり,きゆう)に対する関心の高まりなどから,これらの資格には,よリ高度の専門的知識・技術が求められてきていることもあり,その取得が園雑な者もみられる。
さらに,卒業時の障害等の状態などにより卒業後直ちに就職することが困難な生徒であっても,その後,障害等の状態の改善や社会的な状況の変化があり,就職が可能となる者も見受けられる。
このような盲・聾・養護学校高等部の生徒の実悪の推移,社会経済の進展や雇用環境の変化などによる極々の問題に取り組み,その職業的な自立を推進していくためには,職業教育及び進路指導のよリ一層の改善充実に向け,次のような課題に対応していく必要がある。
(1)新たな職域・職種の開拓
盲・聾・養護学校高等部において,生徒の障害等の特性などに応じた特定の職域・職種のための職業教育や進路指導は,卒業後の職業的な自立を図る上で大きな役割を果たしてきている。今後,社会経済の変化に対応しつつ,よリ一層の職業的な自立を推進していくためには,科学技術の発達の成果等の活用や様々な職域・職種の具体的な職業についての職務分析の実施によリ,生徒の能力や可能性等を最大限に生かせる新たな職域・職種の開拓に努める。
(2)専門的な職業能力の育成
盲・聾・養護学校高等部の卒業者にとって,公的な資格の取得や高度の専門門的な職業能力の取得は,その障害等による困難を克服し,企業等の一員として,あるいは独立した職業人として,社会において自立していく上で,きわめて有用な方策であることから,今後,そのための職業教育を改善・充実していくとともに,社会経済の進展等に対応してその拡大を図る。
(3)職業教育等の多様化
労働行政における重度障害者についての雇用率制度・納付金制度上のダブルカウント,重度短時間労働者のカウントなどの特例,第3セクター方式による重度障害者雇用企業の育成などの施策により,盲・聾・養護学校高等部における重度の障害のある生徒についても卒業後の多様な雇用の機会が増加してきていることから,このような雇用の機会を積極的に活用していくための職業教育や進路指導等の多様化を図る。
(4)企集等との連携の強化
産業構造や就業形態の変化によリ,企業等への就職が今後ますます重要となっていくものと考えられることから,職業的な自立が可能となる人材を育成し,卒業後の就業を最大限に実現するため,盲・聾・養護学校高等部における職業教育及び進路指導の改善・充実などを進めるに当たり,企業等のよリ一層の理解と協力を求め,連携の強化を図る。
(5)総合的・体系的な取組の推進
盲・聾・養護学校高等部における職業教育や進路指導を効果的に実施し,生徒の卒業後の職業的な自立を最大限に実現するため,学校,都道府県及び国の段階における障害者雇用その他の関係部局との十分な連絡調整,学校間の密接な連携,各学校内における協力体制の確立,生涯を展望した職業教育と進路指導の実現,職業教育と進路指導の一体的な実施など,総合的かつ体系的な取組の推進を図る。


2 具体的な施策

 盲・聾・養護学校高等部の職業教育及び進路指導の改善・充実に向けた上記のような課題に対応していくためには,次のような具体的な施策を推進する必要がある。

(1)学科等の再編成
盲・聾・養護学校高等部において,生徒の障害等の状態などに応じ,その能力を可能な阪リ伸ばし,職業的な自立を最大限に達成するためには,科学技術の進歩や障害者雇用施策の進展の成果などを極力活用し,経済社会の変化,地域の状況,生碇の特性などを十分に考慮しつつ,新たな学科・コース等の設置や既存の学科の改編を進める必要がある。
また,このような学科等の再編成を進めるに当たっては,盲・聾・養護学校高等部における職業教育は,特定の職業に直ちに役立つ専門的な教育,幅広い就業を目指した農業,工業,家政,情報等の名分野又はこれらの総合的な教育,自立の基礎を培うための基礎的・基本的な職業能力の育成を図る教育が考えられることからも,これらの教育を適宜組み合わせて指導し,また,それぞれの内容を充実するなど,多様な職業教育を推進する観点も重要である。
なお,各学校看別ごとの学科の設置例として,次のようなものが考えられる。
(1)盲学校
ア 「あん摩マッサージ指圧師」の資格取得には,よリ高度の専門的な知識・技術が求められてきていることから,専攻科との連携の下に一貫した保健理療の教育を行う学科を設置する。なお,普通科における専攻科への進学を踏まえた基礎的な保健理療の教育を行うなどの改善についても検討する。
イ 情報化の進展等に対応し,情報処理に関する公的資格の取得や情報機器等の操作能力の育成などを目指した「情報技術科」等を設量する。
ウ 多様な生徒の進路希望や適性等に対応した職業教育を行うための学科として「職業技能科」等を設置する
(2)聾学校
ア従来の「産業工芸科」,「被服科」,「印刷科等の学科において情報処理に関連した内容を充実し,「産業技術科」,「産業情報科」,「情報デザイン科」等へ改編する。
イ 高齢者や障害者の介護のための資格など,福祉関係の公的な資格の取得などを目指す「福祉科」等を設置する。
ウ 美術,演劇などに興味・関心のある生徒の才能を伸ばし,社会で生かしていくための「芸術科」等を設置する。
エ 生後の多様な実態に即し,基礎的な作業工程の指導を行うための学科として「生活技能科」等を設置する。
(3)精神薄弱養護学校
ア 農業,工業,家政等の名分野に閉する基礎的・基本的な職業能力を育成するための学科等を設置する。この場合において,生徒の適性等に応じ,クリーニングなど可槌な資格の取得に向けた配慮が必要である。
イ 生後の進路希望や適性等に対応した職業教育を行うため,可能な資格の取得についても配慮しつつ,多様な作業種目を設けた総合的な学科として「産業科」等を設置する。
(4)肢体不自由養護学校
様々な介助機器等の開発・普及の成果を活用し,また,生徒の現在及び将来の運動・動作の状態なども考慮しつつ,情報処理,工業,商業,家政などに関する学科・コース等を設置する。
(5)病弱養護学校
生徒の病気の種類や病状,卒業後の健康回復の可能性なども考慮しつつ,生徒の希望や適性などに最大限対応することのできる情報処理,商業,サービス業などに関する学科・コース等を設置する。

(2)学校間等の協力休制
盲・聾・養護学校高等部において,社会経済の進展に対応し,企業や社会の求める人材を育成していくためには,次のような学校同等の協力を検討し,高度かつ多様な職業教育を進めていく必要がある。
(1)盲・聾・養護学校相互の協力
重複障害等のある生徒に対する適切かつ効果的な指導を行うため,それぞれの学校の専門性を生かした指導,多様な夜業学科を設置している他の高等部の施設・段備等を活用した指導,職業的技能の高い教員による他の学校への巡回指導など,盲・聾・養護学校の専門的な教育機能を,相互に十分生かした指導の充実を図る。
(2)各都道府県相互の協カ
盲・聾・養護学校高等部における専門的な職業教育の場を多様に整備し,生徒の興味・関心や適性等に応じてきめ細かに対応していくため,近隣の複数の都道府県からの生徒の入学を前提に,特定の学校における特色のある職業学科の設置にづいて,都道府県が相互に協力し,専門性の充実を図る。
(3)専門高校との交流
生徒の障害等の状態などに十分配慮しながら,相手校の理解と協カを得て,専門高校との交流を進め,専門高校が有している高度の施設・設備や専門性の高い教員などの活用によリ,指導の専門性の向上を図る。

(3)専攻科の整備
盲学校における専攻科の「理療科」,「保健理療科」,「理学療法科」や聾学校における専攻科の「理容・美容科」,「歯科技工科」等の生徒は,公的な資格の取得や高度の専門的な職業能力の習得によリ,卒業後,独立して開業する者も含め就織する者の割合が極めて高く,専攻科は,障害等による困難を克服し,職業的な自立を達成していく上で,極めて有効な教育の場となっている。
さらに,専攻科は,本科との一貫した職業教育によリ,また,本科の普通教育による基礎学力の向上や社会生活上の知識・態度等の着実な習得を基礎とする高度な職業教育によリ,高い専門的な職業能力の育成が期待されている。
また,近年の医原の進歩や国民の理療への関心の高まりなどから,「あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゆう師」には,よリ高度の専門性が求められてきていることに代表されるように,社会経済の進展等によリ,公的な資格の取得や自立のための専門的な職業能力の習得等のために,さらに高度な職業教育が要請されつつある場合も多い。
このため,盲学校及び聾学校においては,このよりな公的な資格の取得を確実なものとし,さらに新たな公的な資格の取得や高度の専門的な職業能力を育成するため,専攻科の修業年限や教育内容・方法等について検討し,既存の専攻科の充実を図るとともに,新たな専攻科の整備を進めることが必要である。
また,養護学校においても,生徒の適性等に応じ,職業的な自立の可能性を高めるような資格の取得や職業能力の育成を図るため,高等部の本科の拡充整備を踏まえた専攻科の設置について検討する必要がある。

(4)現場実習の拡充
企業等における現場実習は,盲・聾・養護学校高等部の生徒にとって社会人として必要とされる知識を身に付け,職業意識を高めて学校生活から社会生活への移行を円滑に進める上で極めて重要であるとともに,う,盲・聾・養護学校高等部の生徒の職業的な自立に対する企業等の理解を深めていく上でも大きな役割を果たしている。このような企業等における現場実習の拡充を図るため,次のような取組が必要である。
(1)企業等との協力体制の確立
重度・重複障害のある生徒も含め,現場実習のための事業所を確保していくため,労働行政関係機関その他の関係機関等との連携の下に,実習協力事業所や実習指導員の委嘱などを行うことによリ,企業等との継続的な協力体制の確立を図る。
(2)実施形態・内容等の工夫
生徒の障害等の状態,能カ・適性,発達段階,卒業後の進路等を考慮し,グルーブによる体験的な実習,一人一人の能力・適性等を考慮した実習,卒業後の進路に関連した実習など,その実施形態等について工夫する。また,実習協力事業所との連携の下に,生徒の障害等の状態などに即した実習を行うためのマニュアルを作成するなど,よりきめ細かな指導に努める。

(5)教育内容・方法等の改善
社会の変化や生徒の障害等の状態などに対応し,職業能力や適性等を最大限に高めるため,次のような教育内容・方法等の工夫・改善に努める必要がある。
(1)自己教育カの育成
各種資格の取得などの具体的な目標を投定することによリ,生徒の学習意欲を高め,目的意識をもった主体的な学習態度を育成する。
(2)情報化の進最等への対応
情報化の進展等に対応し,コンピュータその他の各種の情報機器や,パソコン通信,地域ネットワーク等の活用によリ,効果的な職業教育や進路指導を実施する。
(3)系統的な指導
盲・聾・養護学校中学部又は中学校特殊学級との連携の下に,基礎的・基本的な事項について,早期からの系統的な指導を行い,職業教育を充実していく。
(4)教育条件の整備
産業社会の基礎的・基本的な知識や技術を若実に習得させるとともに,高度の専門性を身に付けさせるため,時代の進展に対応した施設・設備の整備や教材・教具の工夫によリ,効果的な校内実習を進めていく。
(5)普通科における職業教育
普通科においても,職業的な自立のための職業観,勤労観を育成する観点から,職業に関する教科・科目の開設やコース制の導入などについて検討し,また,精神薄弱養護学校においては,作業学習の種目や集団の編成など指導内容・方法について工夫していく。
(6)将来の社会的な自立への配慮
卒業後面ちに就職することが困難な重度・重複障害のある生徒や病気療養中の生徒に対しても,将来の社会的な自立を可能な限り実現していくため,基礎的・基本的な職業能力や自立するカを育成していくことについて特に考慮する。

(6)進路指導の充実
産業構造や就業形態の変化,生徒の進路希望の多様化等に対応し,適切かつ効果的な進路指導を進めていくためには,次のような取組が必要である。
(1)望ましい職業観,勤労値の育成
生徒が自己の将来や社会の一員としての自分の果たす役割などについて考え,主体的に進路を選択・決定していくことのできるようにするため,体験的な学習を一層充実するなど,学校の教育活動全体を通して,望ましい職業観,勤労観,職業人としての素養の育成に努める。
(2)校内進路指導体罰の確立
進路指導の充実のためには,進路指導主事やホームルーム担任をはじめとした学校の全教職員が一体となった進路指導の校内体制を確立する。
(3)企業等との連携・協力体制の整備
企業や経済団体,労働行政関係機関等との定期的な連絡や協議の場を設け,生徒の進路に関するよリ多くの情報を収集・分析し,効果的に活用していくなど,連携と協力を強化する。
(4)情報提供体制の整備
種々の進路について生後に分かりやすく解説したリ,関連した諸制度に係る情報も含め保護者に生徒の将来の進路に関する情報を提供する体制を整備する。

(7)卒業者への追指導の実施
盲・聾・養護学校高等部の生徒は,卒業後直ちに就賦することが困難であっても,障害等の状態や社会情勢等の変化によリ就職が可能となったり,企業等に就職した後に種々の要因によリ離職に至る者もみられることから,卒業者の社会的な自立を支援するための次のような取組も大切である。
(1)手技における追指導の充実
盲・聾・養護学校は,個々の生徒の障害の状態や能力・適性等を十分に把握しているとともに,卒業者が職業生活上の悩みや問題点等について相談しやすいことなどから,卒業後の安定した職業的な自立を図るため,関係機関との連携の下に,職場でのコミュニケーションや生活上の悩みなどの相談,新技術に対応した職業的技能を向上するための支援,新規の就職に向けての相談などの追指導を充実する。
(2)卒業者に対する総合的な支援
盲・聾・養護学校高等部の生徒は,都道府県内の広い地域から進学してきており,卒業後は遠方の企業等に就職する者も多いことから,それぞれの学校において,卒業者の就職先の企業その他の進路先と定期的な連絡を行うなど。十分な連携を確保するとともに,近隣の地域に在住する他校の卒業者に対しても,その出身校との十分な連携の下に,様々な相談や情報交換等の場を提供していく。

(8)担当教員の資質向上
盲・聾・養護学校高等部における職業教育や進路指導の充実を図るためには,担当する教員の専門性と指導力の向上が不可欠であり,このため,次のような施策を積極的に推進する必要がある。
(1)専門的研修の充実
職業教育や進路指導の担当教員を,教育センター等における職業教育等に関する種々の研修や,企業。大学等における研修に派遣するなど,専門的な研修を充実する。
(2)人事交流の推進
盲・聾・養護学校高等部における職業教育の専門性を向上させるため,例えば種々の職業分野に係る専門性の高い教員が配置されている専門高校との人事交流など,積極的な人事交流を推進する。
(3)社会人講師の覆蓬的な活用
科学技術の急速な進歩に対応し,企業等の必要とする最新の職業能力を生徒に習得させるため,産業界の各分身において活躍している社会人を講師として迎え,積極的に活用する。

(9)社会への理解啓発
盲・聾・養護学校高等部の生徒の卒業後の職業的な自立を推進していくためには,企業等をはじめとした社会一般の人々の理解や認識を深めることが不可欠である。このような理解は年々深まりつつあるものの十分とはいえない状況であり,労働行政機関その他の関係行政機関,この分野における先進的な企業,経済団体等の協力も得ながら,次のような方法によリ,広く社会における理解啓発を図ることが重要である。
(1)理解啓発資料の作成・配布
生徒の持つ職業上の能力や可能性について,公的な資格取得の状況,就職の状況などを示し,また,現場実習や就職後の職業生活上の配慮などについて,具体的に分かりやすく説明した理解啓発のための資料を,各教育委員会・学校において作成し,広く企業等に配布する。
(2)学狡児学会等の開催
企業等の関係者やさらに広く一般の住民を対象に,文化祭,運動会等の学校行事などの機会も利用しつつ,定期的に学校見学会,作品展示会等を開催するなど,積極的な働きかけを進める。
(3)地域に崩かれた学校づくり
盲・聾・養護学校の施設・設備や教職員の専門性を生かし,地域の人たちを対合として,あん摩マッサージ指圧,はり,きゆうの臨床実習や理容・美容の実習を行い,また,木工教室,陶芸教室等を開催するなど,広く地域に開かれた学校づくりに努める。


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