障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に貢献します。

特別支援教育法令等データベース 総則 / 報告・答申等 - 小・中学校におけるLD(学習障害),ADHD(注意欠陥/多動性障害),高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案) -



小・中学校におけるLD(学習障害),ADHD(注意欠陥/多動性障害),高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)





平成16年1月
文部科学省





はじめに

第1部 概論 (導入)


第2部 教育行政担当者用(都道府県・市町村教育委員会等)


第3部 学校用(小・中学校)

  ○校長用
  ○特別支援教育コーディネーター用
  ○教員用

第4部 専門家用

  ○巡回相談員用
  ○専門家チーム用

第5部 保護者・本人用

  ○保護者用
  ○本人用

参考資料

資料1: LD,ADHD,高機能自閉症の判断基準(試案)、実態把握のための観点(試案)、指導方法
資料2: 「特別支援教育推進体制モデル事業」の概要
資料3: 特別支援教育コーディネーター養成研修について
    ~ その役割、資質・技能、及び養成研修の内容例~
資料4: 教育センターにおける研修プログラムの例
資料5: 個別の指導計画の様式例
資料6: 専門家チーム報告書の作成例
策定協力者及び資料提供者名簿



はじめに


  平成15年3月の「特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議」の「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」においては,小・中学校においてLD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒への教育的支援を行うための総合的な体制を早急に確立することが必要と提言されました。
  また,平成14年12月24日に閣議決定された「障害者基本計画」の基本方針においては,「学習障害,注意欠陥/多動性障害,自閉症などについて教育的支援を行うなど教育・療育に特別のニーズのある子どもについて適切に対応する」ことが盛り込まれるとともに,それに基づき決定された「重点施策実施5か年計画」においては,「小・中学校における学習障害(LD),注意欠陥/多動性障害(ADHD)等の児童生徒への教育支援を行う体制を整備するためのガイドラインを平成16年度までに策定する」ことが示されました。
  文部科学省では,これらを受けて,平成15年度から総合的な支援体制の整備を図るためのモデル事業を実施するとともに,平成15年8月から小・中学校におけるLD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドラインの作成に着手し検討を重ね,このたび,ガイドライン(試案)としてとりまとめるに至りました。
  各都道府県や各市町村の教育委員会や特殊教育センター等の担当者,各小・中学校の校長・特別支援教育コーディネーター・教員,専門家チームの構成員や巡回相談員,保護者や本人におかれては,これを参考として活用し,総合的な支援体制の整備に努めていただくことを期待します。
  特に,関係各位におかれましては,特別支援教育への意識の転換,学校や地域における連携協力体制の構築,Plan-Do-See のプロセスを通じた支援の改善に,できるところから漸進的に取り組んでいただくことをお願いします。
  本ガイドライン(試案)は,今後,全国各地での実践を通して,その有効性や課題等を検証しつつ,更に活用しやすいものとなるよう必要な改善を加えていきたいと考えています。
  作成に当たっては,策定協力者の方々,本人用の資料提供者の方々,厚生労働省障害保健福祉部の関係官及び独立行政法人国立特殊教育総合研究所の研究メンバーの方々から多大な御協力を得ました。御協力くださった各位に対し,心から感謝の意を表します。


  平成16年1月

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課長
上  月  正  博






第1部 概 論 (導入)




1.ガイドライン策定の趣旨

(1)ガイドライン策定の背景
  学習障害(LD)については,平成11年7月の文部省の「学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議」の報告「学習障害児に対する指導について」により,その定義,判断基準(試案),指導方法等が示されました。注意欠陥/多動性障害(ADHD),高機能自閉症については,平成15年3月の文部科学省の「特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議」の最終報告「今後の特別支援教育の在り方について」により,これらの障害の定義,判断基準(試案),指導方法等が示されました。また,平成15年3月には,平成14年に文部科学省が調査研究会に委嘱して実施された「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒の全国実態調査」の結果も出され,LD,ADHD,高機能自閉症を含む特別な教育的支援を必要とする児童生徒は,約6%の割合で通常の学級に在籍している可能性があることが示されました。
  この間,平成12~14年度までの間,LDの児童生徒に対する指導体制の充実を図るため「学習障害児(LD)に対する指導体制の充実事業」が全都道府県で実施され,平成15年度からは,ADHDや高機能自閉症をも含めた総合的な支援体制の構築に向けた「特別支援教育推進体制モデル事業」が全都道府県で開始されました。この事業は,一定規模の地域を指定して,地域内の小・中学校において支援体制の構築を目指しています。これにより,平成19年度までに,すべての小・中学校において,LD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒に対する支援体制の構築を目指します。
  このような中,平成14年12月に,平成15年度からの10年間に講ずべき障害者施策の基本的方向性を定めた新しい「障害者基本計画」が閣議決定され,さらに,前半の5年間において重点的に実施する施策として「重点施策実施5か年計画」(以下「新障害者プラン」という。)が示されました。その新障害者プランの中で,「小・中学校における学習障害(LD),注意欠陥/多動性障害(ADHD)等の児童生徒への教育支援を行う体制を整備するためのガイドラインを平成16年度までに策定する。」が盛り込まれました。
  これらを受け,平成15年8月にガイドラインの策定に着手し,平成16年1月にガイドライン(試案)としてとりまとめました。

(2)ガイドラインの役割
  本ガイドラインは,全国の小・中学校においてLD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒への支援体制の構築に役立ててもらうために作成したものです。本ガイドラインには,今後,全国の小・中学校において支援体制を構築していく際の具体的な方法,手続き,配慮事項などを盛り込んでいます。
  教育行政担当者,学校関係者,専門家,保護者においては,本ガイドラインを参考としながら,具体的な方法や手続きなどについては,地域や小・中学校の実情等を踏まえて適宜工夫を加えて活用していくことが大切です。

(3)ガイドラインの検証・改善
  今後,全国各地で活用していただき,その有効性や課題等を検証して,必要に応じてその内容等について改善を加えていくこととしています。各地域や各小・中学校における実践を通しての意見や要望等を踏まえ,随時,よりよいものにしていくことを目指しています。(本ガイドラインに関する意見や要望等の提出については巻末をご覧ください。)


2.ガイドラインの構成と使い方

(1)ガイドラインの構成

  本ガイドラインは,「第1部  概論(導入)」「第2部  教育行政担当者用(都道府県・市町村教育委員会等)」「第3部  学校用(小・中学校)」「第4部  専門家用」「第5部  保護者・本人用」の5部構成になっています。各部ごとの主な内容は以下のとおりです。

「第1部  概論(導入)」
  ガイドライン策定の趣旨や使い方,特別支援教育の考え方及びそれを支える仕組み,LD,ADHD,高機能自閉症の定義や判断基準(試案),特別支援教育体制の整備の概略等。

「第2部  教育行政担当者用」
  特別支援連携協議会の設置,巡回相談の実施や専門家チームの設置,教員の指導力の向上及び理解推進のための研修の企画・実施,特別支援教育体制の整備状況の把握等。

「第3部  学校用」
  校長用,特別支援教育コーディネーター用,教員用の3つから構成されています。
  校長用では,特別支援教育を視野に入れた学校経営,校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名,校内の教職員の理解推進等。
  特別支援教育コーディネーター用では,校内の関係者や関係機関との連絡調整,保護者に対する相談窓口,担任への支援,校内委員会での推進役等。
  教員用では,気付きと理解,個別の指導計画の活用等。

「第4部  専門家用」
  巡回相談員用と専門家チーム用から構成されています。
  巡回相談員用では,巡回相談の目的と役割,学校への支援,専門家チームとの連携。
  専門家チーム用では,専門家チームの目的と役割,LD,ADHD,高機能自閉症の判断,指導と助言のまとめ方。

「第5部  保護者・本人用」
  保護者用と本人用から構成されています。
  保護者用では,家庭でできること,学校との連携,学校外の支援。
  本人用では,自分のことを知ること,学習面や行動・生活面で気をつけること,学校の先生や専門機関などに支援を受けること。

  なお,巻末に,参考資料を添付してあります。

(2)ガイドラインの使い方
  まず,「第1部  概論(導入)」において記述されているガイドライン全体の概略や特別支援教育の基本的な考え方を理解することが大切です。
  続いて,それぞれの立場に応じた部に進むことになりますが,他の立場の部についても随時参照することが大切です。例えば,校長にとっては,特別支援教育コーディネーターや教員に求められることを知っておくことは学校経営上当然必要なことですし,さらには,教育行政担当者,専門家,保護者や本人に求められることについても知っておくことは大切でしょう。また,専門家にとっては,学校内のそれぞれの立場の者がどのような役割を期待されているのかを知っておくことは重要でしょう。
  このように,立場に応じた部のみならず,すべての部について一通り目を通しておくことが大切です。
  なお,本ガイドラインに記述されているそれぞれの立場の役割については,必ずしも固定的なものとしてとらえる必要はありません。例えば,特別支援教育コーディネーターと教員との役割について本ガイドラインの示すものと変わることも考えられます。各学校や各地域においては,本ガイドラインを参考にしつつ,その実情等を踏まえ,それぞれの立場の役割分担を検討することが大切です。


3.特別支援教育とは

(1)特殊教育から特別支援教育への転換

  平成15年3月の「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」(以下「最終報告」という。)には,「障害の程度等に応じ特別の場で指導を行う『特殊教育』から障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う『特別支援教育』への転換を図る。」ということが示されています。
  これは,障害のある児童生徒への教育の考え方についての大きな転換を求めるものです。
  最終報告では,「特別支援教育」について次のように定義されています。
特別支援教育とは,これまでの特殊教育の対象の障害だけでなく,その対象でなかったLD,ADHD,高機能自閉症も含めて障害のある児童生徒に対してその一人一人の教育的ニーズを把握し,当該児童生徒の持てる力を高め,生活や学習上の困難を改善又は克服するために,適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うものである。
  このように「特別支援教育」は,児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握して適切な教育的支援を行うものです。
  ここで,単に教育とはせず,教育的支援としているのは,障害のある児童生徒については,教育機関が教育を行う際に,教育機関のみならず,福祉,医療,労働等の様々な関係機関との連携・協力が必要であるからです。

(2)特別支援教育を支える仕組み
  最終報告では,特別支援教育を支える上での具体的な仕組みとして,①多様なニーズに適切に対応するための「個別の教育支援計画」の策定,②校内や関係機関を連絡調整するキーパーソンである「特別支援教育コーディネーター」の指名,③質の高い教育的支援を支えるネットワークである「広域特別支援連携協議会」等の設置の3つをあげています。

①個別の教育支援計画
  「個別の教育支援計画」は,障害のある子どもにかかわる様々な関係者(教育,医療,福祉等の関係機関の関係者,保護者など)が子どもの障害の状態等にかかわる情報を共有化し,教育的支援の目標や内容,関係者の役割分担などについて計画を策定するものです。
  障害のある子どもを生涯にわたって支援する視点から,一人一人のニーズを把握して,関係者・機関の連携による適切な教育的支援を効果的に行うことが大切であり,このため,教育上の指導や支援を内容とする「個別の教育支援計画」を策定することが重要です。この計画の策定,実施,評価(「Plan-Do-See」のプロセス)を通して,教育的支援をよりよいものに改善していくことが大切です。
  一方,「個別の指導計画」は,児童生徒一人一人の障害の状態等に応じたきめ細かな指導が行えるよう,学校における教育課程や指導計画,当該児童生徒の個別の教育支援計画等を踏まえて,より具体的に児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応して,指導目標や指導内容・方法等を盛り込んだものです。平成11年3月告示の盲学校,聾学校及び養護学校学習指導要領において,重複障害者の指導,自立活動の指導に当たり作成することとされました。小・中学校におけるLD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒についても,必要に応じて作成することが望まれます。

②特別支援教育コーディネーター
  校内や福祉,医療等の関係機関との間の連絡調整役として,あるいは,保護者に対する学校の窓口としてコーディネーター的な役割を担う者を学校の校務に位置付けることにより,校内の関係者や関係機関との連携協力の強化を図ることが重要です。

③広域特別支援連携協議会等
  学校が地域の関係機関と連携をとりながら適切な教育的支援を行うためには,教育,福祉,医療等の関係機関が連携協力する支援のためのネットワークづくりが大切です。このため都道府県行政レベルで部局横断型の組織を設け,各地域の連携協力体制を支援することが大切です。

  なお,最終報告には,次のような制度改正についての具体的な検討の必要性が提言されています。

  このような基本的な仕組みのもとに,小・中学校においては,学校としての全体的・総合的な対応の必要性が指摘されました。具体的には,LD,ADHD,高機能自閉症を含めすべての障害のある児童生徒について「個別の教育支援計画」を策定すること,すべての学校に「特別支援教育コーディネーター」を位置付けることが必要と指摘されました。さらに特殊学級や通級による指導の制度を,通常の学級に在籍した上での必要な時間のみ「特別支援教室(仮称)」の場で特別の指導を受けることを可能とする制度に一本化するための具体的な検討が必要であると示されました。
  一方,盲・聾・養護学校については,障害の重複化や多様化を踏まえ,障害種にとらわれない学校設置を制度上可能にするとともに,地域において小・中学校等に対する教育上の支援(教員,保護者に対する相談支援等)をこれまで以上に重視し,地域の特別支援教育のセンター的機能を担う学校として「特別支援学校(仮称)」の制度に改めることについて,法律改正を含めた具体的な検討が必要であると示されました。
  さらに,特別支援教育体制を支える専門性の強化について,いくつかの提言がありました。

  このように特別支援教育は,特定の教育の場,機会のみによって完結するのではなく,教育の場,機会について校内全体,地域全体の中で総合的に考えていこうとするもので,教育の方法をより柔軟にとらえ直すことを求めています。
  上述の制度改正については,特別支援教育を行いやすくするための新たなシステムとして提言されているものですが,現行の制度の中で,特別支援教育の考え方への意識の転換,連携協力体制の構築,Plan-Do-Seeのプロセスを通した支援の改善に漸進的に取り組んでいくことが大切です。

(3)全国実態調査の結果
  平成14年2月から3月にかけて文部科学省が調査研究会に委嘱して実施された「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」の結果によると,知的発達に遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示す児童生徒の割合は6.3%であることが明らかになりました。
  このうち,次の図のように学習面で著しい困難を示す児童生徒の割合が4.5%,行動面で著しい困難を示す児童生徒の割合が2.9%,学習面と行動面ともに著しい困難を示す児童生徒の割合が1.2%でした。
  この6.3%という数値から,学習面や行動面で著しい困難を示す児童生徒が40人学級では2~3人,30人学級では1~2人在籍している可能性があり,特別な教育的支援を必要とする児童生徒が「どの学級にも在籍している可能性がある」という意識をもつことが大切です。


図:知的発達に遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示すと担任教師が回答した児童生徒の割合

図 知的発達に遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示すと担任教師が回答した児童生徒の割合


  なお,この調査は,担任教師による回答に基づくもので,LDの専門家チームによる判断や医師による診断によるものではないので,その結果が,LD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒の割合を示すものではないことに注意する必要があります。
  また,この調査では,A(「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」に著しい困難を示す),B(「不注意」または「「多動性-衝動性」の問題を著しく示す),C(「対人関係やこだわり等」の問題を著しく示す)の割合を算出しています。それによると,下図のようにAが4.5%,Bが2.5%,Cが0.8%でした。それぞれの数値には,該当領域のみで困難を示しているケースと,該当領域に加え,他領域にも困難さのあるケースが含まれています。この結果から,各々の領域のみで困難を示しているケースがある一方で,2つの領域,さらには3つの領域での困難さのあるケースがあることがわかります。

図:知的発達に遅れはないものの学習面や行動面の各領域で著しい困難を示すと担当教師が回答した児童生徒の割合

図 知的発達に遅れはないものの学習面や行動面の各領域で著しい困難を示すと担当教師が回答した児童生徒の割合



4.LD,ADHD,高機能自閉症の定義と判断基準(試案)等

(1)定義や判断基準(試案)等を示した目的
  平成11年7月の「学習障害児に対する指導について(報告)」及び最終報告において,LD,ADHD,高機能自閉症の定義と判断基準(試案),実態把握のための観点(試案),指導方法が示されました。これらは,各学校において児童生徒の実態の把握や一人一人の教育的ニーズに応じた適切な教育的支援を行う際の参考として活用されることを意図したものです。
  文部科学省の協力者会議においてこれまで示されたLD,ADHD,高機能自閉症の定義は以下のとおりです。また,これらの判断基準(試案),実態把握のための観点(試案),指導方法については,資料1(p74~82)に掲載しているので参照してください。

(2)LD,ADHD,高機能自閉症の定義
LD:「学習障害とは,基本的には全般的な知的発達に遅れはないが,聞く,話す,読む,書く,計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を示すものである。学習障害は,その原因として,中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが,視覚障害,聴覚障害,知的障害,情緒障害などの障害や,環境的な要因が直接的な原因となるものではない。」

ADHD:「ADHDとは,年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力,及び/又は衝動性,多動性を特徴とする行動の障害で,社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また,7歳以前に現れ,その状態が継続し,中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。」

高機能自閉症: 「高機能自閉症とは,3歳位までに現れ,他人との社会的関係の形成の困難さ,言葉の発達の遅れ,興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち,知的発達の遅れを伴わないものをいう。また,中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。」

  なお,近年,アスペルガー症候群や,広汎性発達障害ということばを聞くことがあります。これらについて最終報告においては「アスペルガー症候群とは,知的発達の遅れを伴わず,かつ,自閉症の特徴のうち言葉の遅れを伴わないもの」「なお,高機能自閉症やアスペルガー症候群は,広汎性発達障害に分類されるもの」と示されています。


5.特別支援教育の体制の整備

(1)支援体制の整備のための取組
  これまで,LDの児童生徒への支援体制を構築するため,平成12~14年度に「学習障害児(LD)に対する指導体制の充実事業」を実施し,平成15年度からは,LDの児童生徒だけでなくADHD,高機能自閉症の児童生徒を含めた支援体制を構築するため「特別支援教育推進体制モデル事業」を実施しています。

学習障害(LD)に対する指導体制の充実事業
  「学習障害児(LD)に対する指導体制の充実事業」(以下「LDモデル事業」という。)は,平成12~14年度に全都道府県で実施しました。この事業の基本概念は,いうなれば,「教師一人による支援からチーム(システム)による支援へ」ということであり,県内の数校程度のモデル校を対象として,学校としてLDの児童生徒への支援体制の構築を目指そうとするものです。具体的には,校内委員会の設置,教育委員会における専門家チームの設置,巡回相談の実施の3つの内容から構成されています。校内委員会は各学校に置かれるもので,校長,教頭,担当教員,特殊教育担当者,教育相談担当者等で構成され,LDの気付きから,実態把握を行います。専門家チームは,指導主事や心理学の専門家,医師等から構成され,LDかどうかの判断や,専門的意見を学校(校内委員会)に示します。巡回相談は,専門家による学校への実際の支援で,校内での実態把握や個別の指導計画の作成に関する助言,校内研修会への支援,保護者への支援等を行います。このLDモデル事業を通して,判断・実態把握基準(試案)の検討や,校内支援体制の構築,指導方法の工夫等を行いました。これらの仕組みについては,第2部以降で詳しく紹介します。

特別支援教育推進体制モデル事業
  このLDモデル事業が平成14年度で終了し,平成15年度からは「特別支援教育推進体制モデル事業」(資料2,p83,84参照)を全都道府県で新たに実施しています。この事業の基本理念は,いうなれば「モデル校での支援体制の構築からモデル地域全体での支援体制の構築へ」ということです。すなわち,LDモデル事業では各県数校程度を対象としていたのに対し,この事業では,全国の公立小・中学校約33,000校のうちの10%を越える約3,600校が対象となり,モデル地域の中でLD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒への支援体制の構築を目指そうとするものです。具体的には,LDモデル事業で成果が確認できた,校内委員会の設置,教育委員会における専門家チームの設置,巡回相談の実施の3つの内容を引き続き実施するとともに,ADHDや高機能自閉症についてその判断基準・実態把握の観点(試案)の検証,特別支援教育コーディネーターの指名と研修の実施等を行うこととしています。
  なお,この事業は平成19年度までを目途に,すべての小・中学校においてLD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒に対する支援体制の整備を目指すものです。

(2)支援体制の整備の概略

  上記のように,これまでLD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒への支援体制の整備に向けた事業を実施してきました。
  今後,全国各地で支援体制を整備していくに当たっては,教育行政担当者,学校関係者,専門家等の各関係者が,支援体制の全体像を理解しつつ,互いに連携し合いながら,それぞれの役割を発揮することが重要です。
  ここで支援体制の全体の概略を図示すると,次のようになります。

図:支援体制の全体像

図  支援体制の全体像






第2部 教育行政担当者用
(都道府県・市町村教育委員会等)



1.特別支援連携協議会の設置
  都道府県レベル及び一定規模の地域レベル(以下「支援地域」という。)での教育・福祉・医療等の関係機関部局とのネットワークを構築します。

(1) 広域特別支援連携協議会の設置(都道府県レベルにおけるネットワーク)
  広域特別支援連携協議会とは,都道府県レベルにおいて障害のある子どもの指導・支援にかかわる教育,福祉,医療,労働等の関係部局の連携協力を円滑にするためのネットワークです。この協議会は,教育委員会,保健福祉部局,衛生部局,労働部局及び大学やNPO等の関係者で構成される組織です。
  各関係行政部局や大学,NPO等の関係者が,それぞれの専門的な支援内容等の情報を共有することにより,障害のある子どもの多様なニーズに応え,総合的な支援を行うことができます。そして,都道府県レベルでの関係部局・機関との連携が緊密になることにより,地域レベルにおいても,保健所,福祉事務所,公共職業安定所,市区町村教育委員会等具体的な支援を行う実施機関が総合的な支援を確実に行うことができるようになります。
  例えば,保健福祉部局が所管する保育所等の情報は,協議会を通して学齢前の早期教育相談において共有され,関係機関の幅広い連携へとつながります。また,協議会における労働部局等との共通理解及び協力により,就労の実施や就労後のフォローアップの充実へとつながります。つまり,この協議会が有効に機能することにより,障害のある子どもを乳幼児期から卒業後まで,一貫して支援していく統括的システムが構築されることになります。
  この協議会の役割は,①支援地域の設定とネットワーク形成(例えば障害保健福祉圏域と整合性をとり,弾力的に設定),②個別の教育支援計画(個別の支援計画)モデルの策定,③研修,情報提供,相談に関する総合的な支援体制の構築等です。都道府県内の各支援地域の特別支援連携協議会を援助し,補強するために,常に情報収集及び情報提供を行う必要があります。
  なお,問題行動等に対応するため関係機関とのネットワークが形成されている場合には,LD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒への対応方策と生徒指導上の諸問題への解決方策と重なる場合も考えられることなどから,相互に関連を図ることも大切です。

図:多様なニーズに対応する特別支援教育を地域で支える参加型のネットワーク

図 多様なニーズに対応する特別支援教育を地域で支える参加型のネットワーク



(2) 支援地域における特別支援連携協議会の設置(支援地域におけるネットワーク)
  障害のある子どものニーズに応じた教育的支援を適切に行うためには,広域特別支援連携協議会とともに,実務担当者レベルのネットワークを構築する必要があります。このため,各支援地域においては,「支援地域における特別支援連携協議会」を設置することが望まれます。この協議会の設置に当たっては,以下のように,地域の教育資源等を実態に即して生かす工夫を行うことが大切です。
  具体的には,まず,盲・聾・養護学校の教育相談のネットワークを生かし,盲・聾・養護学校が連絡調整を図り,関係機関と連携しながら地域を支援する組織が考えられます。この他にもいろいろな在り方が考えられます。例えば,各学校と直接関係する市区町村教育委員会や教育事務所が中心となり,関係機関と連絡調整を図りながら地域を支援する組織です。また,療育センターや障害児(者)地域療育等支援事業等の相談支援ネットワークを活用して,地域を支援する組織です。ここでは,療育センターと学校における連絡調整を行う者の相互の連携が重要となります。さらに,市町村の各部局を統合し,相談窓口の一元化を図りながら,民生・児童委員,家庭相談員,大学等の相談機関,子育てサークル等地域の関係団体との連携の充実を図る組織も考えられます。

(3) 特別支援教育ネットワーク推進委員会の設置(国レベルにおけるネットワーク)
  平成15年4月に,各都道府県や支援地域でのネットワークづくりの推進に役立ててもらうために,国レベルにおいて特別支援教育に関係する14の団体から構成する「特別支援教育ネットワーク推進委員会」を設置しました。
  14団体は次のとおりです。
【校長会】
・全国連合小学校長会  ・全日本中学校長会  ・全国特殊学級設置学校長協会  ・全国特殊学校長会
【全国特殊教育センター協議会】
・国立特殊教育総合研究所(協議会の代表)
【国立大学教育実践研究関連センター協議会】
・東京学芸大学教育学部附属教育実践センター(協議会の代表)
【学術学会(教育学系・心理学系・医学系・その他)】
・日本LD学会  ・日本特殊教育学会  ・日本発達障害学会  ・日本小児神経学会  ・日本児童青年精神医学会
【親の会&NPO】
・全国LD親の会  ・NPO法人えじそんくらぶ  ・日本自閉症協会

  これらの団体の概要や連絡先については,文部科学省のホームページ
    (http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/f_03110701.htm)で見ることができます。


2.相談支援と情報提供

  各学校において専門家による指導・助言等の相談支援が受けられるようにするとともに,保護者や地域の人々への理解推進のため,LD,ADHD,高機能自閉症についての適切な情報を提供します。

(1)巡回相談の実施及び専門家チームの設置
  巡回相談は,LD,ADHD,高機能自閉症に関する専門的な知識や技能を有する巡回相談員が学校を訪問し,実態把握や評価,指導内容・方法,学校の支援体制,校内の理解啓発,保護者や関係機関との連携等について,指導や助言を行うものです。
  専門家チームは,地域の学校からあげられてきた児童生徒の事例について,LD,ADHD,高機能自閉症か否かの判断を行うとともに,望ましい教育的対応や指導について専門的意見の提示や助言を行うことを目的として設置します。教育委員会の職員,特殊学級や通級指導教室の担当教員,通常の学級の担当教員,盲・聾・養護学校の教員,心理学の専門家,医師等で構成します。また,検討の場に該当学校の教員を加えるなどして,具体的で実効性のある助言をすることが大切です。(詳しくは第4部  専門家用を参照のこと。)
  巡回相談と専門家チームは,都道府県や政令指定都市の段階で取り組むことが重要ですが,複数の専門家チームを設置したり,実情に応じて地方教育事務所や広域行政地域で設置したりする等,都道府県や指定都市内の全域をカバーできるよう整備することが大切です。
  巡回相談も専門家チームも,学校,教員を支援するという重要な役割が求められます。それだけに,高い専門性と機動性が求められますが,その一方で,この両立が課題となります。大学関係者や医師だけでなく,学校の教員を充てるなどして,地域の実情に応じて柔軟に構成することが大切です。また,巡回相談員の計画的な養成やその専門性を高める研修を行うこと,巡回相談員相互の情報交換の場をもつことも大切です。さらに,巡回相談員と専門家チームの連携協力も求められます。

図:校内委員会,巡回相談,専門家チームの関係

図 校内委員会,巡回相談,専門家チームの関係



(2)保護者や地域の人々への理解推進
  LD,ADHD,高機能自閉症及びそれらの児童生徒の指導方法等について,保護者や地域の人々に対する理解を進めていくことが大切です。このため,LD,ADHD,高機能自閉症について紹介したパンフレットの作成・配布等により情報提供を行ったり,福祉・医療部局や大学,NPO等と連携して保護者や地域住民を対象としたセミナーを開催したりするなど,適切な情報の提供に努めていくことが求められます。


3.研修と調査研究
  LD,ADHD,高機能自閉症についての理解の推進や指導力の向上を図るための教員研修を企画,実施するとともに,学校における取組を支援するなどのための調査や研究を行います。

(1)研修の企画・実施・評価
  従来の特殊教育に関する研修に加え,各校に位置付けられる特別支援教育コーディネーターの養成に関する研修や通常の学級の教員等を対象としたLD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒への理解及び指導方法等についての研修を実施する必要があります。資料3(p87~90)に国が参考として提示した特別支援教育コーディネーター養成研修の例を掲載しているので参照してください。また,全校的な支援体制を構築する上で校長等の管理職がリーダーシップを発揮することが求められており,管理職等に対する研修についても検討することが大切です。
研修の企画・実施
  研修の企画に当たっては,研修の対象者や目的を明確にして,その具体的な内容や実施方法,回数等を検討していくことが大切です。例えば,LD,ADHD,高機能自閉症についてある程度の知識のある教員を対象にした場合,講義に終始するのではなく演習を多く取り入れるなど,受講者の指導力を高めるとともに学校での実践に活用できるようにすることが考えられるでしょう。教育センターにおける研修プログラムの例を資料4(p91,92)にあげていますので参照してください。
研修会の評価
  研修の実施後,その成果や課題を的確に把握し,評価することが大切です。評価の方法の例としては,次のようなことが考えられます。
  • 担当者自らが各講座に出席して,受講者の取組の様子を見たり,講師から意見や感想を聞いたりして評価する方法。
  • 研修会終了直後に,受講者からアンケート形式で研修内容や研修方法等についての率直な意見を集約して評価する方法。
  • 研修会終了数ヶ月経過した時点で,研修の成果を学校での実践にどのように生かしたか,実践に活用するためには何が課題となっているのかなどを聞き評価する方法。
  これらの評価の結果を次年度の研修計画や研修内容の立案の際に活用し,よりよいものに改善していくことが大切です。

(2)調査や研究の実施及び成果の活用
  教育センターや教育委員会における調査や研究は,学校の支援や特別支援教育の推進体制の整備等の観点からのものが考えられます。いずれにしても調査の結果や研究の成果を適切に活用し役立てていくことが大切です。一例として,調査研究の内容及び調査結果の活用について紹介します。
  • 調査内容の例
    ①学級の学習面や行動面で気になる児童生徒の状況(担任向け)
    ②児童生徒の具体的な状況と対応(担任向け)
    ③校内支援体制の実際(管理職向け)
  • 調査結果の活用例
    これら調査の結果を分析し,次のような活用を行います。
    ①学校への支援(各校の状況により巡回相談等での担任・管理職への指導助言)
    ②調査結果の公表(教育委員会における特別支援教育の推進のための施策に反映)


4.特別支援教育体制の整備状況の把握
  各地域や学校における特別支援教育体制の整備状況を継続的に把握します。

  各都道府県や市町村の教育委員会においては,各地域や学校における特別支援教育体制の整備状況を把握するため,必要な調査項目を定め,調査を実施していくことが求められます。調査結果の評価を行い,今後の体制整備の改善につなげていくことが重要です。また,定期的に実施することで改善の進捗状況が分かるようにすることも望まれます。
  調査項目としては,例えば,次のようなものが考えられます。

(都道府県教育委員会における例)
  • 支援地域における特別支援連携協議会の設置状況
  • 支援地域又は市町村教育委員会における研修の実施状況
  • 各小・中学校における校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名の状況
  • 親の会やNPO法人等の活動状況や意見







第3部 学校用 (小・中学校)



○校長用

1.特別支援教育を視野に入れた学校経営
  リーダーシップを発揮して,特別支援教育を視野に入れた学校経営を行い,全校的な支援体制を確立します。

(1)校長のリーダーシップと学校経営
校長自身の研修の必要性
  小・中学校における特別支援教育の全校的な支援体制を確立するに当たって,校長自身がこのことの意義を正確にとらえ,リーダーシップを発揮することが大切です。そのためには,各教育委員会等が実施する研修に参加したり,校長会等での情報交換を活発に行ったりすることによって,常に認識を新たにしていく必要があります。

学校経営計画への明確な位置付け
  各学校が特別支援教育に組織(システム)として全校で取り組むためには,校長が作成する学校経営計画(学校経営方針)に特別支援教育についての基本的な考え方や方針を示すことが必要です。そして,その中で,特別な教育的支援を必要とする児童生徒への指導を学級担任任せにするのではなく,校長が先頭に立って,全教職員が協力し合い学校全体としての対応を組織的,計画的に進めるということを明確に打ち出す必要があります。

校長の指導性の発揮
  学校における特別支援教育の推進は,校長の指導性の発揮いかんによって大きく変わるものです。校内体制については,校内委員会の設置,特別支援教育コーディネーターの指名,学校内外の人材活用,近隣の盲・聾・養護学校や関係機関との連携等,さまざまな角度からの推進が求められます。また,校内支援体制の構築,校内委員会による児童生徒の実態把握,個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成,支援の実施,評価,改善のプロセスについて,校内全体で取り組めるよう校長がリーダーシップを発揮していくことが大切です。

学校経営上の留意点
  学校経営上,校長が念頭におくべき事項には,次のような内容がありますが,教頭や特別支援教育コーディネーターをはじめ校内全体で取り組んでいくこととなります。
  • 教師一人による支援から学校全体での支援への意識の向上(意識改革)
  • 学級担任や障害のある児童生徒本人を組織として支えるために必要な校内支援組織の構築(組織改革)
  • 個々の児童生徒の特性を理解し対応する教員の指導力の向上(資質向上)
  • 各教科・領域の指導計画作成に当たっての配慮事項の検討と具体化(指導改善)
  • すべての児童生徒にとって「分かる」「できる」を実感できる教育環境の整備(教育環境の整備)
  • 特別支援教育についての児童生徒や保護者への理解推進(理解推進)
  • 児童生徒の安全確保と対応方針の確立(安全確保)
  • 外部の専門機関等との連携の推進(地域連携)

(2)校内支援体制の構築
  校内の支援体制を確立するに当たっては,系統的な支援を行うための組織と仕組みを構築する必要があります。具体的には,次のような体制の構築を目指します。
  • 校内委員会を設置して,校内全体で支援する体制を整備する。
  • 特別支援教育コーディネーターを指名し,校内の教職員や,校外の専門家・関係機関との連絡調整に当たる仕組みを整備する。
  • 該当学級の学級担任だけでなく,同学年の担当教員,専科担当教員,その他ティームティーチング担当教員,少人数指導担当教員等,学校内外の人材を活用して個別や小集団での指導体制を整備する。
  • 巡回相談員,盲・聾・養護学校の教員など専門知識を有する教員,スクールカウンセラー等心理学の専門家等による支援体制を整備する。
  なお,LD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒がいじめや児童虐待の被害を受けている場合や,周囲との人間関係がうまく構築されない,学習のつまずきが克服できないといった状況が進み,不登校に至っている場合などにおいては,例えば校内の生徒指導体制との連携を図るなど,総合的に児童生徒への対応を図る必要がある場合もあります。学校の状況等によっては,このような総合的な取組を円滑に行えるような体制を組むことも重要でしょう。

(3)校内就学指導の在り方  ~校内委員会との関連で~
  校内には就学指導委員会を組織している学校も多くあります。
  特別支援教育の体制整備を進める中で,この組織は特別支援教育の校内委員会の機能に包括される場合が多いと考えられます。組織としての在り方は変わっても,就学前から就学後までの一貫した支援を行うための校内での検討を進めていく場をもつことは,これからも必要なことです。
  今後は,特殊学級や盲・聾・養護学校での教育が望ましいかどうかというだけでなく,専門家チームや巡回相談員等の支援を受けながら,どのような支援がどの程度必要なのかを明らかにしながら,保護者とも協力して対応することが大切です。

(4)校内支援体制についての保護者や地域への周知
  特別支援教育を推進するために,当該児童生徒自身の自己理解を図るとともに,児童生徒や保護者への正しい理解を広めていくことが重要です。
  例えば,次のようなあらゆる機会をとらえて理解の推進を図る必要があります。その際,校長が先頭に立って理解を進める努力を行うことが求められます。
  • 児童生徒向けには,儀式的行事でのあいさつ,全校朝会での講話等。
  • 保護者向けには,学校だよりやPTA総会,研修会等でのあいさつ等。
  • 地域向けには,学校評議員への教育方針や教育状況の説明の中でふれたり,学校保健委員会等での議題に取り上げたりする等。

2.校内委員会の設置
  校内における全体的な支援体制を整備するため校内委員会を設置します。

(1)校内委員会の役割の明確化と支援までの手順の確認
校内委員会の役割
  • 学習面や行動面で特別な教育的支援が必要な児童生徒に早期に気付く。
  • 特別な教育的支援が必要な児童生徒の実態把握を行い,学級担任の指導への支援方策を具体化する。
  • 保護者や関係機関と連携して,特別な教育的支援を必要とする個別の教育支援計画を作成する。
  • 校内関係者と連携して,特別な教育的支援を必要とする個別の指導計画を作成する。
  • 特別な教育的支援が必要な児童生徒への指導とその保護者との連携について,全教職員の共通理解を図る。また,そのための校内研修を推進する。
  • 専門家チームに判断を求めるかどうかを検討する。なお,LD,ADHD,高機能自閉症の判断を教員が行うものではないことに十分注意すること。
  • 保護者相談の窓口となるとともに,理解推進の中心となる。
  これらの機能を一度にすべて満足させなくとも,徐々に機能を拡充していく方法をとることでこれらの基本的な役割を満たしていくことも考えられます。
支援までの手順
  校内における支援を開始するまでには,保護者の理解のもとに,必要に応じて外部の専門家による判断等を踏まえて,実態把握と必要な支援内容を明確にし,校内委員会による教職員の共通理解を図りながら進めていくことが大切です。
  実際の支援に至るまでの手順は,児童生徒によっても,また,学校の支援体制によっても違いがありますが,一般的には次のような手順が考えられます。
図:支援に至るまでの一般的な手順
図 支援に至るまでの一般的な手順



(2)校内委員会の組織及び構成
校内委員会の設置
  校内委員会の設置の仕方には,次のようにさまざまな方法があります。それぞれ利点があり,各学校の実情を考えて設置していくことが大切です。
 ①新規の委員会としてとらえ,新たに設置する。
 ②従来ある既存の校内組織に,校内委員会の機能をもたせて拡大する。(活用できる校内組織としては,生徒指導部,
 学習指導部,教育相談部,校内就学指導委員会,人権尊重教育委員会等,各学校の実情に応じて考えられます。)
 ③既存のいくつかの校内組織を整理・統合して設置する。
校務分掌上の位置付け
  校内組織の設置は小・中学校によっても異なり,学校規模や上記の設置方法等によっても異なることから,ここでは一例を示します。なお,校内委員会の名称には,特別支援教育委員会,校内支援委員会,個別支援委員会等各学校の実態に応じた名称が考えられます。

図:特別支援教育校内委員会の校務分掌上の位置付けの例

図 特別支援教育校内委員会の校務分掌上の位置付けの例

委員会の構成員
  各学校の規模や実情によって一律には考えられませんが,一例を示します。例えば,校長,教頭,教務主任,生徒指導主事,通級指導教室担当教員,特殊学級担任,養護教諭,対象の児童生徒の学級担任,学年主任等,その他必要に応じて外部の関係者が考えられます。大切なことは,学校としての支援方針を決め,支援体制を作るために必要な人たちから構成することです。

(3)校内での支援の評価
  校内委員会で支援の対象となった児童生徒への支援の状況については,定期的に校内委員会に報告するとともに,校内の教職員が共通理解を図っておくことが大切です。そして,学期ごとや年度ごとなど定期的に支援の内容や方法について評価を行い,必要な見直しを行います。
  その際には,保護者の参画を得て,家庭における状況の変化などの意見を参考にすることが大切でしょう。


3.特別支援教育コーディネーターの指名と校務分掌への位置付け
  校内の関係者や関係機関との連携調整や保護者の連絡窓口となるコーディネーター的な役割を担う者を校務分掌に明確に位置付けます。

(1)特別支援教育コーディネーターの役割
  特別支援教育コーディネーターは,学校内の関係者や外部の関係機関との連絡調整役,保護者に対する相談窓口,担任への支援,校内委員会の運営や推進役といった役割を担っています。具体的には次のような活動が考えられます。

〈校内における役割〉
  • 校内委員会のための情報の収集・準備
  • 担任への支援
  • 校内研修の企画・運営
〈外部の関係機関との連絡調整などの役割〉
  • 関係機関の情報収集・整理
  • 専門機関等への相談をする際の情報収集と連絡調整
  • 専門家チーム,巡回相談員との連携
〈保護者に対する相談窓口〉

(2)指名に当たっての配慮事項
  コーディネーターには,学校全体,そして地域の盲・聾・養護学校や関係機関にも目を配ることができ,必要な支援を行うために教職員の力を結集できる力量をもった人材を選ぶようにすることが望ましいといえます。各学校の実情に応じて,教頭,教務主任,生徒指導主事等を指名する場合や養護教諭,教育相談担当者を指名する場合,特殊学級や通級指導教室の担当教員を指名する場合など様々な場合が考えられます。
  国立特殊教育総合研究所や各教育委員会等のコーディネーター養成研修に積極的に参加させ,校内でも計画的に準備を始めることが大切です。

(3)校務分掌での位置付け
  特別支援教育コーディネーターの校務分掌上の位置付けは,各学校においてコーディネーターが担う役割や校務分掌組織のつくり方によって異なってくることが予想されます。校内委員会の役割の一つとして位置付ける場合のほか,既存の生活指導部や教育相談部等の組織に位置付ける場合等,各学校の実情によりさまざまに考えられます。各学校の校長の判断で,最も実情に即した位置付けをしていくことが求められます。
  なお,例えば,平成15年5月の文部科学省初等中等教育局長通知「不登校への対応の在り方」により,各学校には不登校対応のコーディネーター的な役割を担う者を位置付けることが求められていますが,特別支援教育コーディネーターと不登校対応のコーディネーターについては,それぞれの役割が重なり合う場合も考えられることから,相互に連携を図ることが大切です。また,学校の実態等に応じ,双方の役割を担うコーディネーターの指名も考えられるでしょう。


4.校内の教職員の理解推進と専門性の向上
  校内の教職員の理解推進や指導力の向上を図るため,研修の推進が求められます。

(1)校内研修の推進
  特別な教育的支援を必要とする児童生徒への指導を校内で適切に行うためには,教員の十分な共通理解とLD,ADHD,高機能自閉症への専門的知識や理解が欠かせません。そのために,校内研修を組織的に活用し教員の意識改革や特別な教育的支援を必要とする児童生徒に対する指導力を高めていくことが求められます。
  例えば,次のような研修の例が考えられます。
  ・LD,ADHD,高機能自閉症の理解
  ・特別な教育的支援が必要な児童生徒の実態把握
  ・個別の指導計画の作成
  ・指導の実際
  ・関係機関との連携
  ・保護者との連携
  ・校内支援体制の構築  等

(2)学校外における研修への参加推進
  国立特殊教育総合研究所や教育委員会,教育センターが開催するコーディネーター養成のための研修,LD,ADHD,高機能自閉症の理解を深めるための研修や指導力の向上を図るための研修に積極的に参加させることが大切です。また,関係する学会や団体が開催する研修や大学での公開セミナー等についても,その必要性等に応じて参加を促すことが考えられます。


5.保護者との連携の推進
  保護者への理解の推進を図るとともに,保護者と協力して支援する体制づくりが求められます。

(1)保護者への理解推進
  保護者に対し,自校における特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応方針等を説明し,理解を得ることは大切です。コーディネーター等が保護者との連絡調整の窓口となる役割を担うこととなりますが,校長はリーダーシップを発揮して保護者の理解の推進を図ることが重要となります。

(2)保護者との協力
  保護者が不安に思ったことや心配事を学級担任や学校に自由に相談できるかどうかは学校と保護者との信頼関係の深さにかかっています。しかし,多くの場合「こんなことを相談してもよいものか」「どんなふうに話したらいいか」等なかなか学校に相談できない保護者が多いのが現状ではないでしょうか。また,担任もこんなことを保護者に伝えてもよいのかと躊躇してしまうこともあるでしょう。
  しかし,児童生徒の教育的ニーズに応じた指導を進めていくためには,日常的に双方が情報を交換しながら共に協力して子どもに対応することが必要です。そして,学校,保護者双方が協力して児童生徒の支援を行うために,下記のような保護者との協力体制づくりも欠かせません。

図:保護者との協力体制

図 保護者との協力体制


6.専門機関との連携の推進
  広い視野をもって,専門家や医療,福祉等の関係機関との連携を推進していくことが求められます。

(1)巡回相談員や専門家チームとの連携
  教育委員会は,LD,ADHD,高機能自閉症に関する専門的な知識や技能を有する者を巡回相談員として委嘱します。巡回相談員の主な役割は次のとおりです。
  ・児童生徒に対する指導内容・方法に関する助言
  ・学校の支援体制に関する助言  等

  また,教育委員会には,教育委員会の職員,特殊学級や通級指導教室の担当教員,通常の学級の担当教員,盲・聾・養護学校の教員,心理学の専門家,医師等で構成される専門家チームが置かれます。専門家チームの主な役割は次のとおりです。
  ・LD,ADHD,高機能自閉症か否かの判断
  ・児童生徒への望ましい教育的対応について専門的意見等の提示  等

  校長は,広い視野の中でリーダーシップを発揮して,教育委員会に設置される巡回相談員や専門家チームからの適切な助言等を受けられるよう連携を進めていくことが大切です。

(2)医療,福祉,その他の関係機関との連携
  児童生徒の能力や可能性を最大限に伸ばしていくためには,一人一人の障害の状態や程度等の専門的な判断や個々の障害の特性に基づく適切な指導が必要であることから,個別指導に当たっては,教育,心理,医療等の外部の専門家の導入や緊密な連携が求められます。
  また,地域の福祉・医療・労働等との連携も不可欠であり,単一又は複数の市町村を網羅する支援体制との関連で対応を考えていくことも必要です。さらに,企業,地域の人材,保護者等の民間の人材の活用やNPO法人との連携・協力も考慮する必要があります。
  さらに,大学との連携を深め,学生ボランティアを活用していくことも有効な方策として考えられます。

(3)盲・聾・養護学校との連携
  小・中学校が,障害の状態や特性等に応じた専門的指導を充実させるためには,障害のある児童生徒への専門的な教育を行っている盲・聾・養護学校と連携を図ることが大切です。具体的には,合同研修会,派遣研修等の研修会の充実や,巡回相談の実施などが考えられます。






○特別支援教育コーディネーター用
  特殊学級や通級指導教室の担当者がコーディネーターに指名されている場合は,教員用の「6.通級指導教室及び特殊学級の担当者の役割」も参照してください。

1.校内の関係者や関係機関との連絡調整
  校内の関係者や医療,福祉等の関係機関との連絡調整,保護者との関係づくりを行います。

(1)校内の関係者との連絡調整
  ・校内委員会の推進役として,校内の教職員の連絡調整役を行います。
  (詳細はp30,「5.校内委員会での推進役(1)校内委員会での役割」を参照)。
(2)関係機関との連絡調整
  ・関係機関との連絡調整が必要になった場合の窓口となります。
  ・地域の乳幼児検診,発達相談や療育システム,医療機関について情報を収集し整理しておきます。
   必要に応じて教員や保護者へ情報を伝えます。
  ・校内の児童生徒についての情報を他機関から収集したり,他機関と情報交換をする場合は,保護者へ
   説明し理解を求めることが望ましいでしょう。
  ・医療機関や相談機関につなぐ場合は,結果のフィードバックやフォローアップ体制
   について事前に確認しておきます。
  ケース会議のための情報収集と準備
  ・保護者の理解のもとに,以前,該当児童生徒にかかわっていた方々からも,情報を収集して
   おくことが望ましいでしょう。

(3)保護者との関係づくり
  通常の学級の中で,特別な教育的支援を必要とする児童生徒に効果的な教育活動を行うためには,障害のある児童生徒の保護者のみならず,障害のない児童生徒の保護者への理解を進めることが大切です。
  そのために学校として,自校の教育や対応の方針を具体的に説明し,理解を得ることは欠くことのできないものです。さらに,一人一人に対応した指導や個々のケースに応じた対応への理解を進めることも大切です。
  保護者への理解を推進する上では,個人情報の保護の観点から情報の管理を慎重にし,誤解や学校への不信感が生じないよう配慮することが重要です。その上で,学校だよりやPTA活動,教育相談等の機会を活用してわかりやすく説明することが大切です。


2.保護者に対する相談窓口
  保護者に対する学校の相談窓口となり,保護者を支援します。

(1)保護者の気持ちの受け止め
  • 保護者の気持ちの受け止めは,受容と共感を大切にしながら信頼関係が築けるように配慮します
  • 保護者の児童生徒への願いや,課題と思っているところ,学習面,行動面,対人関係を丁寧に聞き取っていきます。
  • 必要に応じて保護者から家庭の様子,生育歴,療育や医療等の経過についての情報を把握します。

(2)保護者とともに考える対応策
  • 話合いの中から,状況を整理し,問題点や改善点について徐々に内容を絞っていき,答えを早急に求めないことが重要です。
  • 家庭,学校,関係者が共通理解をしながら,それぞれの立場でできることを考え,一貫性のある対応策が導き出せるようにしていきます。

(3)保護者への支援体制
  • 担任とコーディネーターが連絡を取り合うことを保護者に説明し,担任とともに組織的・継続的に保護者を支援することへの理解を得ます。
  • 状況によっては,校内委員会や専門家チームでの検討について説明します。
  • 学校体制として,例えば保護者からの相談窓口をコーディネーターだけでなく校内委員会のメンバーも含める等,複数の窓口を用意することも考慮します。

3.担任への支援
  担任の教師に対して,相談に応じたり,助言したりするなどの支援を行います。

(1)担任の相談から状況を整理する
  • 担任から相談があった場合,担任の話に耳を傾けます。そして,話の内容や状況から児童生徒の情報を偏りなく多角的に聞き取っていきます。
  • 担任と一緒に,児童生徒を取り巻く状況の整理をしていきます。一緒に整理をするうちに,担任が自分の悩みを解決していく糸口が見つかる場合があります。

(2)担任とともに行う児童生徒理解と支援体制
  • 状況判断をし,担任ができることを見極めながら助言をしていきます。担任の児童生徒への理解を深めるために,総合的な理解を進めたり,今後の対応への見通しを説明したりすることが大切です。
  • 校内における組織的な支援体制や,担任への支援体制の模索を行っていきます。
  なお,児童生徒が直接相談に来た場合は,ていねいに事情を聞き,相談内容を把握した上で,担任と連携をとり,児童生徒を取り巻く状況を整理していきます。


4.巡回相談や専門家チームとの連携
  校内での適切な教育的支援につながるよう教育委員会に設置されている巡回相談や専門家チームとの連携を図ります。

(1)巡回相談員との連携
  • 校内委員会として,年間を通じて巡回相談員の相談日,相談者の調整を行います。
  • 巡回相談員の校内委員会への参加も含めて校内の相談体制づくりを模索します。
  • 巡回相談員と,ケースについての話合いができることが望ましいでしょう。

(2)専門家チームとの連携
  専門家チームへの判断依頼
  • 校内委員会において,専門家チームに依頼する必要についての検討をします。
  • 専門家チームに報告する資料を校内委員会の構成員が分担して作成し提出します。(校内委員会で収集した情報,校内委員会における実態把握・評価と判断,個別の教育支援計画や個別の指導計画,専門家チームに依頼する理由と依頼の内容等)
  • 専門家チームに判断を求める前には,保護者に十分な説明を行い理解を得ることが大切です。

  専門家チームからの指導・助言の活用
  • 専門家チームへの連絡調整と専門家チームからの情報を収集します。
  • 専門家チームからの助言を,個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成や改善,校内での支援につなげていきます。

5.校内委員会での推進役
  校内委員会の適切で円滑な運営がなされるよう推進役を担います。

(1)校内委員会での役割
  • 特別な教育的支援を必要としている児童生徒のニーズを把握し,校内委員会が運営されるように,長期的,短期的見通しをもちながら会議に臨むことは,推進役として大変重要なことです。その際,保護者と連絡して進めることが大切です。
  • 校内委員会においては,児童生徒についての情報提供や専門家チームへの判断を依頼するための協議を円滑にできるように推進していきます。
  • 個別の指導計画については,校内委員会で話合いをしながら作成し,コーディネーターとして援助できることや校内での支援の役割を明確にすることが重要です。

(2)校内の状況の把握と情報収集の推進
  教職員の気付きとニーズの把握
  • 学習面,行動面で気になる児童生徒が学校,学級にいる場合や,児童生徒への指導について悩んでいる教員がいる場合等,コーディネーターや校内委員会が校内の状況を把握できるような校内体制をつくるよう提案していきます。
  • 問題行動などが見られる場合には,早急な対応が可能な機動性のある体制がとれるようにします。
  保護者のニーズの把握
  • 日頃から,保護者の学校への要望やニーズを把握しておきます。
  • 保護者が子どもについて気になるとき,学級担任以外にも,コーディネーター等の相談窓口があることを広報しておきます。
  校内リソースの把握
  • 特別支援教育や教育相談について研修を受けていたり,活用できる資格等をもっていたりする教職員についての情報が把握できるようにしておきます。

(3)ケース会議の開催と校内委員会
  ケース会議のための情報収集と進め方
  • ケース会議が必要と考えられる児童生徒については,校内委員会だけでなく,必要に応じて柔軟にかかわりのある人たちで小さなチームをつくってケースを検討する会議を運営します。
  • 保護者の協力のもとに,以前,該当児童生徒にかかわっていた方々から,情報を収集できるよう連絡調整してみることが望ましいでしょう。
  • 会議の進め方として,児童生徒の状況報告,児童生徒の現状と課題の明確化,これからの具体的な取組みや指導方針の確認等が考えられます。
  ケース会議の結果と校内委員会
  • ケース会議の結果を記録して,個別の指導計画につなげます。
  • コーディネーターは,小グループでのケース会議の実施状況を把握し,会議の内容を校内委員会で報告し合い,職員間の共通理解を図るとともに,必要に応じて校内委員会で専門家チームに判断等を依頼するかどうか検討します。

(4)個別の教育支援計画の作成に向けて
  個別の教育支援計画とは,該当の児童生徒に対して,乳幼児期から就労までの長期的な視点で部局横断的に関係機関(教育,福祉,医療等)が連携して作成するものです。作成に当たっては,例えば「個別の教育支援計画」策定検討委員会を設置して検討を行うことも考えられます。また,作成作業においては保護者の積極的な参画を促し,計画の内容や実施について保護者の意見を十分に聞いて,計画を作成・実施し改善していくことが重要です。個別の教育支援計画については,第1部の「3.特別支援教育とは(2)特別支援教育を支える仕組み」や,第5部の保護者用「3.学校との連携(4)個別の教育支援計画と個別の指導計画」を参照してください。
  個別の教育支援計画については,これまで取組がほとんど行われていないことなどから,児童生徒の状況や学校の実情等に応じて,まずは保護者との連携を図りながら情報を収集して作成にとりかかることとし,作成・実施・評価のプロセスを通して改善を加えていくことが大切です。
  • 個別の教育支援計画の作成に当たり,外部の関係者・関係機関と連携協力する際の重要な役割を果たします。
  • 幼稚園・保育所等から小学校,中学校の関係機関等の間での情報の交換を行うことが大切です。
  • 個別の教育支援計画に記載された内容については,十分に把握していることが大切です。また,収集した情報を整理し,個別の教育支援計画の改善の際に活用しやすいようになっていることも大切です。
  • 個人情報については,適切な取扱いがなされるように留意します。

(5)校内委員会での個別の指導計画の作成への参画
  個別の指導計画については,第1部の「3.特別支援教育とは(2)特別支援教育を支える仕組み」,教員用「2.個別の指導計画の活用」や,第5部の保護者用「3.学校との連携(4)個別の教育支援計画と個別の指導計画」を参照してください。
  • 校内委員会で,個別の指導計画に盛り込む基本的な事項(例:児童生徒の状態・状況についての判断,指導・援助についての基本方針等)を検討します。
  • 作成された個別の指導計画を校内での会議等で報告し,教職員間の共通理解を図ります。コーディネーターとしては,共通理解の徹底,個別の指導計画が実施されやすいような支援体制の提案,その他必要な連絡調整を行っていきます。
  • 実施後の評価は,指導に当たる教員とともに,校内委員会において評価を行います。それに基づき,個別の指導計画の必要な改善を行っていきます。なお,学期ごとや学年ごとなど定期的に評価を行うことが望ましいでしょう。

(6)校内研修の企画と実施
  研修会の立案
  • 教職員の特別支援教育に関する意識や知識を把握するとともに,研修内容等の要望も聞いて,LD,ADHD,高機能自閉症についての具体的な知識,指導の方法等,研修会で目指すことを明確にします。
  • 年間計画については,教職員の理解が具体的な支援につながる研修内容を企画します。
  研修会の実施と評価
  • 外部の講師には,事前に校内の教職員の特別支援教育に関する理解やニーズ,学校の状況についての情報を提供しておきます。
  • 実施後は,実際の学級経営や指導に役立っているか,教職員の意見をていねいに収集しながら,次回の研修会の内容の改善に役立てます。

6.校内での連絡調整の例(様々な対応のヒントとして)
  例えば,相談への対応といっても,担任からの場合や保護者からの場合など様々な場合が考えられます。ここでは,いくつかの場合を想定して,対応方法のヒントとなるよう連絡調整の例を紹介します。

担任から児童生徒についての相談を受けた場合
  《ポイント》児童生徒を自分自身で観察すると,相談内容が把握しやすくなります。

 担任から児童生徒についての相談を受けた場合

保護者からの相談に対応する場合
  《ポイント》保護者とは,一度で完結させようとしないで,ていねいに連絡を取り合うようにします。  保護者からの相談に対応する場合

少人数のチーム体制で弾力的に対応する場合
  《ポイント》コーディネーター,担任,保護者といった少人数のチームをつくり,速やかに弾力的に対応することが考えられます。
 少人数のチーム体制で弾力的に対応する場合

巡回相談員へ担任が相談する場合
  《ポイント》時間に制限があるので,効率よく相談できるよう事前に相談内容の整理と情報収集をしておく。  巡回相談員へ担任が相談する場合






○教員用

1.気付きと理解
  児童生徒の出すサインに気付き,つまずきや困難などの状況を理解します。

(1)学級担任や教科担任としての気付きと理解
  児童生徒一人一人に適切な教育的支援をしていくスタートとなるのは,児童生徒の出している様々なサインに対して「変だな?」「どうしてかな?」という担任の気付きです。そして,「変だな?」「どうしてかな?」と気付いたら,次に「いつ」「どこで」「どのような時」「どんな問題が起こるか」を観察し,問題となっているつまずきや困難などの様子を正確に把握することが大切です。
  児童生徒の出しているサインの中には,「これはサインなのかな?」と思うようなものの場合もありますが,それを見逃してしまったために,適切な対応が遅れてしまうこともあります。場合によっては,問題行動等につながることもあります。担任として,児童生徒の出すサインに気付く感性をもつことが大切といえるでしょう。
  担任の児童生徒のサインに対しての気付きは,次のような場面や機会にありますが,そのいくつかを例にあげてみます。

児童生徒の困っている状況からの気付きと理解の例
  担任教師の学習や生活場面で子どもが困っている状況からの気付きです。 児童生徒の困っている状況からの気付きと理解の例
指導上の困難からの気付きと理解の例
  担任教師の指導上困っている場面や状況からの気付きです。 指導上の困難からの気付きと理解の例
保護者相談での気付きと理解の例
  担任教師の家庭訪問や教育相談における保護者からの情報による気付きです。
保護者相談での気付きと理解の例

  担任の気付きの記録をとっておくとともに,「担任としてどのような対応や支援をしたか」「児童生徒の反応はどうだったか」等も記録するようにします。この記録は,校内委員会で提示する資料づくり,個別の指導計画の立案・作成,保護者面接等の際に役立つ貴重な資料となるからです。


(2)学校体制としての気付きと理解
  児童生徒のつまずきや困難の状況やその原因の理解,指導方針等が果たして正しいかどうか,不安もあるかと思います。特に原因の理解については正しくとらえないと,その後の指導も間違った方向で進めてしまう場合も起こります。学年会や校内委員会は,担任のそうした不安を取り除く場ですので大いに活用したいものです。そのためには,担任が率直に悩みを話せる雰囲気の学校であることが何よりも大切といえます。





2.個別の指導計画の活用
  児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応した個別の指導計画を立案・作成するとともに,それに基づく指導の結果を評価し,改善につなげていきます。

(1)個別の指導計画の立案・作成

気付きから手立てへ
  気付きと理解の次は,特別な教育的支援を必要とする児童生徒一人一人に,具体的にどのように支援していくかを検討し,一人一人の教育的ニーズに応じた計画を立てます。それが個別の指導計画の立案です。個別の指導計画は,校内関係者との連携のもとに校内委員会で作成しますが,ここでの話合いで担任のもつ様々な情報が必要になります。したがって,担任の日々の記録が大切になります。個別の指導計画の立案・作成の具体例や様式例については,「3.支援の実際」及び資料5「個別の指導計画の様式例」(p93~104)を参照してください。
  個別の指導計画の立案,作成は,主に次のような手順で行うことが考えられます。

情報の収集
  担任が観察した様子,保護者や関係者の情報(少人数でのチームによるケース会議記録),個別に蓄積されたファイル等から,配慮や支援が必要な実態を把握します。例としては,「文字読みが苦手」「文字がうまく書けない」「集中が続かず他のことに気をとられてしまう」などです。

目標の設定
  児童生徒にとっての具体的な目標を設定します。例えば「指示を理解する」「机上を整理する」「ワークシートの枠中に文字を書く」などが考えられます。ただし,目標は焦点を絞った方がよいでしょう。通常,目標の設定に当たっては,単元,学期,学年ごとなどに行うことが大切です。

手立ての工夫
  目標に対する具体的な手立てを設定します。例えば,配慮としては,「保護者と1週間ごとに情報交換をする」「さりげなく応援してくれる友達を同じグループにする」「座席の位置を前にする」などです。支援としては,「全体への指示の後,その子に指示をして理解したかどうかチェックする」「1時間目の開始までに机上に学習の準備ができるよう特製のチェック表を導入する」「大きめのマス目のワークシートを用意する」などです。児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて,目標,手立てや実施の方法,実施期間等を具体的に書きます。


(2)個別の指導計画の評価
  設定された目標に沿って指導した結果,どのように変わったか等について,校内委員会で評価を行います。
  個別の指導計画に基づく指導の結果として,本人の努力が認められた場合や目標を達成した場合はその子をほめてあげることも大切でしょう。また,状況が変わらない場合には,巡回相談員の活用も図りつつ,目標の設定や課題の内容,具体的な手立ての設定などを見直していくことが重要です。

  引継ぎ
  次の担任が児童生徒を理解しやすいように,一連の取組みの結果を個別の指導計画に記録しましょう。引継ぎは,個別の指導計画を渡すだけではなく,時間をとって話合いをもつことが望まれます。また,進学や転学等に際しては,適切な指導が一貫して行われるよう計画が引き継がれていくことが大切です。

  ※個別の指導計画については,第3部  特別支援教育コーディネーター用の「5.校内委員会での推進役(5)校内委員会での個別の指導計画の作成への参画」及び第5部  保護者用「3.学校との連携(4)個別の教育支援計画と個別の指導計画」も参考にしてください。


3.支援の実際(学級担任や教科担任としての配慮や支援)
  ここでは,学級担任や教科担任としての具体的な配慮や支援の例を紹介します。

(1)基本的な配慮
  • 児童生徒の苦手な面を責めるのではなく,得意な面や努力している面を見つけて,ほめたり,クラスでさりげなく紹介したり,あるいは,単元全体の中のどこかに活躍できる場面を意図的に取り込んで発表の機会をつくったりして,自信をもたせるようにしましょう。
  • 児童生徒の学習面での苦手なことや偏りについて理解しましょう。苦手なことをたくさん要求したり,みんなと同じ水準を要求したりするのではなく,一人一人の違いを大切にし,努力や達成を認め,励ましていくようにしましょう。
  • 児童生徒が安心して学習や活動に参加できるようにグループ編成や座席の位置などを工夫したり,仲間との遊びに入れるように担任から働きかけたりして,友達との関係がよい方向に広がるようにしましょう。なお,特別な配慮を必要とする児童生徒を意識しすぎるばかりに,差別感や孤立感等をもたせたり,他の子に不公平感を抱かせたりしないよう十分留意しましょう。
  • クラスの児童生徒に対し,LD,ADHD,高機能自閉症について話題にする時は,児童生徒の発達段階等を踏まえ,適切な配慮が必要となります。
  • 保護者とのこまめで前向きな情報交換を心がけましょう。小学校低学年などでは普段から連絡帳や電話で連絡を取り合ったり,必要によって話合いをしたりする機会を設けましょう。
  • 学級経営案の中に特別支援教育による支援の視点を位置付けましょう。

(2)具体的な支援
  学習面での支援
    【指示の伝え方】
  例えば,クラス全体には,注目させてから短かくポイントを絞って指示をし,そのポイントを板書します。聞き取りが苦手な児童生徒には,クラス全体への指示の後,個別にもう一度指示を伝えます。さらに,伝えたことを理解したかどうか復唱させたり,行動を見たりしてチェックします。

  【課題の出し方】
  例えば,書くことの苦手な児童生徒への対応としては,学習プリントやワークシートは,本人と相談の上一定の大きさのマス目のあるものを用意します。消しゴムで消したときに破れにくい紙を渡します。また,言葉だけではイメージがつかみにくい児童生徒への対応として,図や絵や写真など,言葉以外に視覚的な手がかりを提示します。読むことの苦手な児童生徒への対応としては,教科書の漢字にふりがなをふるようにします。文字の位置を指で押さえながら読んだり,読んでいる行だけが見えるカバーシートを使ったりします。また,文字を拡大したり,分かち書きしたりしたプリントを用意します。これらのことは,家庭と連携して行うことが考えられるでしょう。

  【事前の打合せ】
  学年でのティームティーチングや少人数学習等を生かした支援を設定しましょう。その際には,授業前に,担任とティームティーチングや少人数担当教員が支援を必要とする児童生徒の対応について必要な打合せをすることが大切です。

  行動面での支援
    【見通しをもたせる】
  教室でのルール,決まりごと,スケジュール等は視覚的に分かりやすく掲示し,児童生徒が目で見て確認できるようにしましょう。また,一日の予定は朝の会などで児童生徒に説明し,もし変更があればできるだけ早く知らせましょう。落ち着きがなくじっと座っていることができない,整理整頓ができない,次の学習の用意ができないといった場合(特に小学校低学年)は,次の手立てが有効な場合があります。なお,実施の際は,児童生徒の実態に合わせて方法を工夫することが大切です。

改善したい行動例 集中が続かず座る姿勢が崩れがち 机上の学習の用意や整理が困難
目標の設定の例
○意識をもたせるようにします
  要因として,注意集中が続かない,姿勢保持が困難などが考えられます。
  正しい座り方について本人と話し合い,姿勢よく座ることを目標にすることと取組の方法について確認し合います。
  何度も叱ったり注意をしたりしないようにします。
  本人とゆっくり話し合い,学習の前に机上の整理を目標にすることと取組の方法について確認し合います。
手立ての工夫の例
○見通しをもたせるようにします。
  特に焦点をあてたい時間を決めて,最初から長時間姿勢よく座ることをねらわず,短時間から始めます。
  毎回,チェックすることを伝え,伝えた瞬間に姿勢を直してもプラスの評価をします。
  結果はその都度本人に知らせ,できたときはていねいにほめます。
チェック表を作成し,数日は担任が本人と一緒につけます。
  評価は,最も焦点をあてたい時間に絞ります。数日間実施後,様子を見て本人チェックにします。
  焦点をあてる時間を増やし,最終的に,チェックリストなしで行動できるようにします。
目標の行動ができたかどうかのチェックとフォローアップの例
○自信をもたせるようにします。
  本人が視覚的にチェックできるシートを用意します。努力したときや達成したときは,チャンスを逃さずほめるようにします。
  また,本人が継続して実施できるようにします。

  • クラス全体でソーシャルスキルを学習しましょう。例えば,下記のように望ましい行動について絵カードやロールプレイ等で学習し,実際の場面で活用する方法が考えられます。また,高機能自閉症の児童生徒には,対人関係上の困難さが予想される場面の対処について,一定のルールとして事前に説明しておくと効果がある場合があります。


4.支援の実際(担任の配慮や支援を支える仕組み)
  ここでは,担任の配慮や支援を支える具体的な仕組みの例を紹介します。

(1)校内の様々なリソースを活用した支援
校内委員会との連携
  支援を要する児童生徒への対応は学校全体としての取組が大変重要です。担任だけの支援では限界があります。そこで,支援を要する児童生徒への対応について,コーディネーターの協力を得ながら学年で話し合うとともに,校内委員会に報告し,担任を中心としたチームで検討するようにしましょう。
通級指導教室や特殊学級の活用
  地域の学校に通級指導教室や特殊学級がある場合は,教育相談を実施したり,障害のある児童生徒への専門的な検査や指導等を実施したりしていることがあります。保護者や学校と検討し,そのようなサービスを活用するかどうか話し合っていきます。
オープン教室の設置と活用
  学校でオープン教室を設置して,その活用を工夫することで成果を上げているところがあります。例えば,通常の学級での一斉授業では,なかなかできにくい個別の対応が必要な児童生徒がいる場合,放課後に指導教員と一緒に学習をするという方法です。そこでは,視覚的に分かりやすい学習環境を用意し,興味に合わせた学習ができるようにしたり,刺激の少ない学習用の区画をつくったり,パソコンを活用したりするなどの方法が考えられます。なお,ここでの指導者としては,通級指導教室や特殊学級の担当教員,各学級や各教科の担任教員等が考えられます。

(2)学校外と連携した支援
専門家チームや巡回相談員との相談
  校内委員会を通して,専門家チームのメンバーや巡回相談員と,支援の在り方や個別の指導計画の作成について話し合うことが考えられます。
医療との連携
  ADHD等の診断は,学校での児童生徒の観察や担任のチェックが大変重要な判断材料になります。気になる行動やその変化等はできる限りメモや記録をつけるようにします。また,医師の診断により,児童生徒が各種の薬を飲む場合の薬効評価は,家庭ではなかなかできません。薬を飲んだ時間を把握し,児童生徒が薬を飲んだ時と飲んでいない時の様子を保護者を通して医師に伝えることが望まれます。
保健や福祉の関係機関との連携
  児童生徒や家庭の状況によっては,コーディネーターと情報交換しつつ,保健や福祉の関係機関との連携が必要な場合があります。関係機関との連携を進めていくことが大切となります。
盲・聾・養護学校との連携
  盲・聾・養護学校が地域のセンター的機能を発揮することが期待されていることから,最近では,小・中学校に向けて教育相談を積極的に実施したり,小・中学校等において校内研修を実施する際には様々な協力や支援を行ったりする学校が増えてきています。盲・聾・養護学校の教育機能や相談機能の活用も検討することが大切です。


5.保護者との連携
  保護者との情報交換を通してニーズを把握するとともに,支援の方法等について保護者に説明し理解を得ます。

(1)保護者との情報交換
保護者との信頼関係
  担任は,担当した学級のすべての児童生徒に適切な指導をしなければなりません。支援を必要とする児童生徒に気付いたら,保護者との情報交換を心がけます。その大前提になるのが,保護者との信頼関係です。保護者の気持ちを受容,共感して受け止めることを心がけて話し合いましょう。その際,コーディネーターとの連携協力のもとに行うことが大切です。
保護者のニーズの把握
  保護者は,その児童生徒を育ててきた最も身近な理解者であり,我が子の学習面や行動面での困難さもいち早く感じ取っています。学習面,行動面,対人関係等についての保護者のニーズを聞き取っていきましょう。
関連情報の把握
  児童生徒の困難な要因を考えて手立てを提案していくためには,以下の情報を把握しておくことが考えられます。
  家庭の様子,生育歴(言語,社会性,運動等),医療機関の受診歴,就学前の様子や小学校での状況等これらの情報を保護者の理解を得て収集し,共に検討していきます。
まずできることから取り組む
  コーディネーターの協力を得つつ,早急に担任ができる効果的な教育の在り方を具体的に検討し,まずできることから取り組んでみましょう。効果が確認できたら,また次の手立てを考えることができます。

(2)保護者を含むチームでの話合い
チームとしての対応
  指導が困難な場合の多くは,担任一人では解決の方策が見つけにくいことにあります。そのような場合は,いち早く様々な方法が検討されるように,校内委員会等で話合いをもちます。担任,コーディネーター,保護者,児童生徒にかかわる人々がチームとして援助することが重要です。同学年の担任,校内委員会,巡回相談員の活用等,段階に応じてチームでの検討が考えられます。なお,個別の教育支援計画の作成に当たっては,保護者の参画を促すことが大切です。
チームでの会議の実施
  会議の実施に当たっては,コーディネーターと連携協力し,次のことを行うことが考えられます。
  • 会議の参加者の決定
  • 会議の時間,進め方,記録の仕方の決定
  • 会議のまとめと個別の教育支援計画や個別の指導計画への反映

(3)保護者への説明
個別の指導計画についての説明
  児童生徒の教育的ニーズに応じた適切な教育的支援を行うには,より正確な児童生徒の状態の把握が重要となります。その際,情報の収集や実態把握を行うことが考えられます。担任は,得られた情報も参考にし,必要に応じて校内・校外の関係者にも提供した上で,個別の指導計画を立てることについて,保護者に説明し理解を得ておくことが大切です。
就学前情報の必要性及び引継の説明
  就学した直後に教育的支援の必要性があると考えられた場合には,就学前の情報が役立ちます。保護者等から必要な情報を得て,個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成と支援に生かすことも大切です。また,転学や進学の際には同様の配慮を行う必要があるでしょう。
個人情報の適切な取扱い
  児童生徒の個人情報の管理に際しては,個人のプライバシーが損なわれないよう適切な取扱いに注意します。


6.通級指導教室及び特殊学級の担当者の役割
  ここでは,校内に通級指導教室や特殊学級が設置されている場合,その担当者が校内でどのような役割があるかを述べています。また,担当者が特別支援教育コーディネーターに指名されている場合は,第3部の「特別支援教育コーディネーター用」を参考にしてください。

(1)児童生徒を支援する校内リソースの担当者としての役割
担任からの相談への対応
  担任からの相談の場合,まず話を聞くようにします。できるだけ偏りなく情報を聞き取り,一緒に状況を整理していきます。その際,一方的な情報収集に偏らないよう留意します。
  相談内容から状況がつかめ助言をする場合,その担任の理解の範囲を見極めながら担任の実行できる内容を助言していきます。
  障害児教育の担当者としての児童生徒の理解と解釈を求められた時は,多角的に考えられる児童生徒像として,総合的な解釈になるよう心がけます。組織的な援助やかかわりを視野に入れて説明していくことが望まれます。

学年会での支援の在り方の検討
  担当者としての専門性を生かして,情報収集と問題の発見に協力します。学年会での情報交換の中から状態の把握が必要とされた児童生徒について,集会時や学校行事などでの行動観察や,学習や行動の特徴から総合的に考えて実態把握していきます。学年会等では,その児童生徒の緊急課題の見極めや言動についての解釈,支援の仕方や具体的な配慮の仕方,教材の提供等について助言したり,学年としての共通理解について話し合ったりしていきます。

児童生徒へ直接支援をする場合の留意点
  通常の学級における活動の中で支援する場合は,あくまでも担任の指導内容やねらいに沿えるように事前に話合いをもちます。実際の指導場面では,周囲の児童生徒の動向に注目しながらも,支援する児童生徒へ個別にかかわり過ぎることで,逆に差別感や孤立感,羞恥心などが生まれないよう十分配慮します。
  選択教科,総合的な学習の時間などの指導の場合も同様です。学校行事や学年行事等では,組織の中の一員としての動きをしつつ,担任の連携のもとに,さりげなく支援していきます。

(2)担任からの依頼で行う個別指導や少人数指導
  • 個別の支援を行う場合,まず本人の意見をよく聞き,支援してほしいことを把握して指導内容を考えていきます。
  • 少人数での支援を行う場合,指導のねらいとして集団で学習する方法を学ばせる,ソーシャルスキルを養う,友達とのかかわり方を学ばせるなど,ねらいを明確にしながら指導に当たります。さらに,精神的な支えとなるよう居場所づくりや相談相手として支えていくことも重要なことです。
  • 担任との連携については,「4.支援の実際(1)校内の様々なリソースを活用した支援」を参照してください。

(3)校内委員会への協力と専門的な知識の活用
  • 児童生徒について知り得ている情報を校内委員会へ提供していきます。
  • 校内委員会で個別の指導計画の作成をする場合,できれば話合いに参加して,担当者として援助できることや役割を明確にしていくことが望まれます。
  • 校内委員会での話合いの中ではなるべく専門用語を使用しないで児童生徒の状況を説明するようにします。教室での具体的な支援の方法や具体的な教材,教具について示したり,アイディアを提供したりするなど,専門的な知識を活用していきます。

(4)保護者への支援(教育相談等)
  • 担任から依頼があって保護者の相談を行う場合,あらかじめ担任から情報を得ておくとよいでしょう。1回の面談で完結しようとせずに,担任とも相談しながら面談を継続して支援していきます。保護者によっては,安心して話せるようになり,子育てへの見通しがもてたら,具体的な指導や助言をしていきます。
  • 担任とともに保護者を支援する場合には,担任への支援も視野に入れ,補助的な立場で支援していきます。要望があれば専門機関についての情報も提供します。

(5)コーディネーターとの連携
  校内の特別支援教育コーディネーターとは,できれば定期的な情報交換を行うことが望ましいでしょう。しかし,不定期でも情報交換しあって校内事情の把握に努めます。コーディネーターから援助の依頼を受けた場合も,校内におけるコーディネーターとの役割分担を明確にし,効果的な支援体制が構築できるよう協力していきます。






第4部 専門家用



○巡回相談員用

1.巡回相談の目的と役割

(1)目的
  児童生徒一人一人のニーズを把握し,児童生徒が必要とする支援の内容と方法を明らかにするために,担任,特別支援教育コーディネーター,保護者など児童生徒の支援を実施する者の相談を受け,助言することが巡回相談の目的です。また,支援の実施と評価についても学校に協力します。

(2)役割
  巡回相談の役割としては,次のようなことが求められます。
  • 対象となる児童生徒や学校のニーズの把握と指導内容・方法に関する助言
  • 校内における支援体制づくりへの助言
  • 個別の指導計画の作成への協力
  • 専門家チームと学校の間をつなぐこと
  • 校内での実態把握の実施への助言
  • 授業場面の観察  等

  このような役割を担うこととなりますので,機動的かつ柔軟に学校への助言等が行えるようにすることが求められます。また,学校に対して適切な助言を行うためには,校内の窓口となるコーディネーター等との連携を深めるとともに,専門家チームと有機的・効果的に連携協力していくことが大切です。

(3)巡回相談員に必要な知識と技能
  巡回相談を実施していくためには次のような知識と技術が必要とされます。
①特別支援教育に関する知識と技能
②LD,ADHD,高機能自閉症など発達障害に関する知識
  児童生徒のつまずきや困難さを理解し,LD,ADHD,高機能自閉症の特性を配慮した支援を行うために,LD,ADHD,高機能自閉症など発達障害などに関する知識が必要です。
③アセスメントの知識と技能
  心理検査等を実施し,結果を解釈するだけではなく,行動観察や生育歴等の情報も総合して児童生徒のニーズを把握することが大切です。
④教師への支援に関する知識と技能
⑤他機関との連携に関する知識と技能
  各機関の役割を把握し,密接な連携が行われるような配慮をしつつ連携体制を推進していくことが必要です。
⑥学校や地域の中で可能な支援体制に関する知識
⑦個人情報の保護に関する知識
  対象となる児童生徒のニーズを把握していくときに,多くの個人情報を収集しなければならないこともありますが,個人情報の取扱いに留意することが必要です。

2.学校への支援

(1)学校のニーズの把握
  教師や保護者の気付きによって対象となる児童生徒が特定されている場合は,その児童生徒について,担任やコーディネーター,管理職等の学校関係者との情報交換や保護者等との面談,授業場面の観察,授業以外の活動場面の観察,検査等を行って児童生徒の状態を把握するとともに,学校のニーズも把握します。また,特定されている児童生徒以外にも支援を必要とする児童生徒がいることを想定して,担任及び学校全体の気付きを促していくことも大切です。

(2)教師への支援
  教師の悩みや迷いを明確にし,対象児童生徒の実態を正確に把握することができるような情報を提供します。児童生徒の実態を把握するための視点を提供することが必要な場合もあります。また,具体的な対応方法について,教師の主体性を重視しながらも,支援の方法についてのアイディアや教材を紹介します。

(3)校内委員会への支援
  支援が継続して行われるよう,校内支援体制の整備に協力します。既存の分掌・委員会等を有効に生かすことに留意しつつ,新しい取組で成功した例などを紹介することにより,柔軟な取組が行われるように助言します。

(4)校内研修会や理解推進等の支援
  校内研修会には次のような目的があります。第1に特別な支援を必要としている児童生徒への気付きを促すことです。第2に,支援が必要な児童生徒に対する具体的な対応の方法に関する知識を提供することです。第3に,校内支援体制の意義と体制づくりについての理解を深めることです。これらの目的が十分に達成される形で校内研修会が実施されるように,学校のニーズに合う講師を紹介したり,自らが講師として協力したりします。また,学校のニーズに合うように,研修会の内容について助言します。さらに,児童生徒を対象とした理解推進のための活動について助言,協力することも大切です。

(5)保護者との連携・支援
  校内で行われる保護者向けの研修会に協力します。また,校内委員会からの要請に応じて,児童生徒の状態を保護者に説明したり,家庭での対応について助言したりします。


3.専門家チームとの連携

(1)学校と専門家チームをつなぐ
  校内委員会から専門家チームに判断を依頼する場合,必要に応じて,巡回によって把握した児童生徒の実態を基礎資料として提供します。また,専門家チームから判断と助言が提示された場合,その内容を授業や学校生活に具体的に位置付けるために,教師に対して説明や助言をします。なお,専門家チームとの連携を深めるため,必要に応じて専門家チームの会議に参加することも考えられます。

(2)研修等
  地域の巡回相談員間の情報交換の場や研修の機会を設けることにより,巡回相談員の資質の向上を図ります。巡回相談員,専門家チームの構成員が中心となって,実際に児童生徒の支援にかかわる関係者が定期的な事例研究会を開催していきます。

巡回相談員と専門家チームとの連携図

図  巡回相談員と専門家チームとの連携







○専門家チーム用

1.専門家チームの目的と役割

(1)目的
  専門家チームは,学校からの申し出に応じてLD,ADHD,高機能自閉症か否かの判断と対象となる児童生徒への望ましい教育的対応について専門的な意見の提示や助言を行うことを目的として教育委員会に設置されるものです。LD,ADHD,高機能自閉症ではないと判断された場合,あるいは他の障害を併せ有するような場合にも,どのような障害あるいは困難さを有する児童生徒であるかを示し,望ましい教育的対応について専門的な意見を述べることが期待されています。

(2)役割
   専門家チームの役割としては,次のようなことが求められます。
  • LD,ADHD,高機能自閉症か否かの判断
  • 児童生徒への望ましい教育的対応についての専門的意見の提示
  • 学校の支援体制についての指導・助言
  • 保護者,本人への説明
  • 校内研修への支援  等
  学校に対して適切な支援を行うためには,校内の窓口となるコーディネーター等との連携を深めるとともに,巡回相談員と有機的・効果的に連携協力していくことが大切です。

(3)構成員と規模
  専門家チームは,教育委員会や特殊教育センター等における専門家による相談機関と位置付けられます。
構成員
  チームは,教育委員会の職員,特殊学級や通級指導教室の担当教員,通常の学級の担当教員,盲・聾・養護学校の教員,心理学の専門家,医師等での構成が考えられます。さらに,福祉関係者,保健関係者,対象となる児童生徒が在籍する学校の特別支援教育コーディネーター,保護者等が必要に応じて参加できるシステムにしておくことにより,的確で具体的な対応の内容・方法を示すことができると考えられます。対象となる児童生徒の状態や学校のニーズに応じて会議を随時開催できるようなチームを構成するためには,構成員の数が多くなりすぎないように考慮することも大切です。
  各地域におけるLD,ADHD,高機能自閉症について専門的知識を有する者については,「特別支援教育ネットワーク推進委員会」を構成する関係団体に問い合わせてみることができます(p13,14参照)。
チームの規模
  地域規模や資源,対象児童生徒,緊急性に応じて柔軟に考えていくことが大切です。都道府県に一つだけ設置されている場合は,学校と専門家チームの情報交換が時機を逃すことなく行うことが難しくなることが多いようです。的確な判断と学校や地域の実態に応じた教育的対応の内容を示すためには,対象の児童生徒が在籍する学校での行動観察や保護者との面談が必要となる場合もあります。学校や保護者のニーズに応えることができるようにするためには,教育事務所単位や市区町村単位等でチームを構成することが考えられます。会議開催のための日程調整,必要な情報の収集,メンバーの意見の集約等,実務的な作業も多々ありますので,機動力のあるチームを構成することによって,専門家チームの機能が発揮されるようにすることが大切です。


2.LD,ADHD,高機能自閉症の判断

(1)判断の手順の概略
  通常の学級には様々な困難を示す児童生徒が在籍しています。その状態がわかりにくいために適切に対応されないまま学校生活を送り,いわゆる二次的な障害を示すようになっている児童生徒もいます。多様な困難さに加え,家庭での対応が十分になされていない,あるいは不適切であるために問題が増幅されることもあります。
  以上のような現状を踏まえ,次のような観点から判断を行います。
知的能力の評価
  個別式知能検査の結果から知的能力の評価を行います。
認知能力のアンバランス
  知能検査だけではなく,他の心理検査も必要に応じて実施し,対象となる児童生徒の認知能力の特徴を把握します。
教科の学習に関する基礎的能力の評価
  校内委員会から提出された資料,学力検査等の結果から,学習の到達度やつまずきの特徴を把握します。
心理面・行動面の評価
  校内委員会から提出された資料,巡回相談員や専門家チームの構成員が行った行動観察の資料等から心理・行動面の特徴を把握します。
医学的な評価
  対象となる児童生徒に医学的な評価が実施されていることが望ましいので,必要に応じて判断の後に保護者への助言として,医療機関の受診を勧めます。特に,ADHD,高機能自閉症の可能性がある場合は,必要に応じて医療機関への受診を勧めていくことが大切です。
  以上のような観点から収集した情報に基づき,資料に掲載した判断基準に従って専門家チームとしての判断を行います。

(2)配慮事項
  一度LD等の判断が行われた後(判断されなかった場合も含めて)も,定期的な見直しを行うことができる体制を作っておくことが必要です。これまで判断が行われた事例の中にも,障害の状態が変化していく場合があること,年齢段階によって必要とされる支援の内容が変化していくことが予測されることから,判断と助言の内容を見直していくことができるような体制にしておくことが望まれます。
  また,判断と助言に基づいた教育的支援が,学校でどのように実施されているのか,どのように効果をあげているかなどを追跡評価していくことも専門家チームの役割です。


3.判断と助言のまとめ方

(1)専門家チームの意見の内容
  専門家チームは,対象となる児童生徒の状態について判断の結果を示しますが,併せて,判断の根拠についても報告することが重要です。また,児童生徒の特性とその特性の生かし方,支援の方法や配慮事項についても伝えることが大切です。

(2)学校への助言
  支援の方法については,学校において,教科の学習や学校生活の中に具体的に位置付けられる内容でなくてはなりません。各教科の授業場面や係活動,休み時間などの学校生活の中で,担任が中心となって実行できる対応について,できるだけ具体的に示すことが大切です。専門的意見をまとめた報告書の作成例については,資料6(P105~108)を参照してください。
  口頭での説明が必要な場合もありますが,この場合,巡回相談員が専門家チームの構成員であれば,巡回相談員が判断結果と助言の内容を説明することが望ましいといえます。
  必要に応じて,学級経営,指導形態,指導方法など可能な校内支援体制への工夫についても助言します。
  これらの助言を行う際は,学校で作成されていく個別の指導計画へとつながるような内容であることが大切です。

(3)巡回相談員への助言
  専門家チームによる専門的意見等を巡回相談員に伝え,巡回相談員が各学校を支援する際に役立てることが大切です。

(4)保護者への助言
  児童生徒の特性の説明だけではなく,家庭で実行できるような配慮事項を具体的に伝えます。保護者が児童生徒の状態を理解し,家庭の中でできる配慮を意欲的に取り組むことができるよう助言します。ADHD等の判断がなされた場合は,必要に応じて専門医がいる医療機関を紹介し,受診するように勧めていきます。






第5部 保護者・本人用



○保護者用

1.子どもの理解と保護者の心構え

(1)子どもの気付きと理解
  早期の気付きと,早期からの支援が後の子どもの成長発達に効果的なことは言うまでもありません。子どもに何らかのつまずきがあるのではないかと気付いた場合は,早いうちに専門機関等に相談し,場合によっては診断を受けておくことが望まれます。
  LD,ADHD,高機能自閉症は,全般にわたり発達に遅れがあるわけではないので,気付くことが難しいと言われることがあります。しかし,その一方で,親の会の調査によれば,言葉の遅れ,特定のものへのこだわり,動作がぎこちない,集団行動が取れない等の特性から,大半の保護者は3歳位までに子どもに何らかの障害があるのではないかと気付いています。
  LD,ADHD,高機能自閉症の子どもたちは,幼児期には診断が難しい場合や,その状態が成長に従って変わってくる場合もありますが,保護者は子どもが得意なこと,苦手なこと等,子どもの特性をきちんと把握し理解した上で,それに合わせた援助や療育に将来を見据えて取り組んでいくことが大切です。

(2)保護者の心構え
  一般に,保護者が子どもの障害に気付き,受容に至るまでには,下記に示すようなプロセスを経ていく傾向があるとされています。多くの保護者から,もっと早く対応しておけばよかったという声があがっています。障害を受容していくことは難しいことですが,結果として子どもにもよい影響を与えることにつながります。
疑念・混乱
  LD,ADHD,高機能自閉症の子どもたちは,乳幼児期には育てにくかったり,逆に手間がかからなかったりする場合もありますが,通常の発達とずれを示すことがあります。幼児期には,何か気になるという思いを多くの保護者が感じるようです。落ち着きがなかったり,集団行動が取れなかったりする場合には,育て方の問題として責められる場合もあります。原因が分からないために,子どもの様子に心配を抱きつつも否認したり,混乱に陥ったりしてしまいます。
ショックと安堵
  こうした葛藤の時期を経て診断を受け,LD,ADHD,高機能自閉症といった診断名が付いた時には大きなショックを受けます。一方で,育て方の問題ではなかったことが明確になったことで,多くの保護者が一瞬ほっとした気持ちになります。
努力・挑戦
  そして何とか発達の遅れを取り返そうという取組が始まります。親子ともに目の前にある課題や行動等に対して一所懸命取り組みます。
障害の受容
  以上のような段階を経て,子どもの状態を正面から受け入れられるようになります。目の前の課題に背伸びして取り組むのではなく,将来を見通して現実的な対処への取組を始めます。
  適切に支援・療育を重ねていくと,苦手な部分を克服したり,得意な分野で補うことにより問題を克服したりして,目立たなくなるケースもあります。しかし,各種の支援や療育を重ねても,どうしても克服できない苦手な部分が残り,生涯にわたり何らかの困難を伴うケースもあります。

(3)子どもの心のケア
  LD,ADHD,高機能自閉症の子どもたちは,一所懸命やっているのに勉強がうまくいかない,周囲から仲間はずれにされ,忘れ物をして先生から叱られる等,成功体験が少なくストレスを貯め込んで,自信を失ってしまったりする場合があります。こうしたことの積み重ねで意欲を失ってしまったり,いわゆる二次的な障害に陥ったりする場合もあります。家庭内では,小さな成功体験の場を作ったり,よいところを誉めたり,好きな遊びの時間を作ったり,自信を付けさせたり,精神的に解放される場面を作ったりすることが大切です。
  また,本人が自分は他の人とはどこか変わっていると気付き,思い悩む時が来ます。子どもがそのようなサインを出して来た時には,子どもの不安を解消するために,子ども自身の自分への気付きに添って説明することが必要です。子どものよい点を話題にし,人はそれぞれ個性や違いがあり,得意なことや苦手なことがあること,障害や困難は子ども自身のほんの一部に過ぎないこと,苦手な部分を補うためには努力が必要なことなどを,子どもの自尊心を尊重しながら,理解できるように説明することが大切です。
  さらに,保護者は親として子どもの養育に取り組むだけでなく,よき支援者であることが求められます。時として叱ったり,厳しく教えたりすることも必要となりますが,そうした中にも子どもが常に保護者の愛情を感じ取れるよう心がけ,子どもの心を支え続けるよき理解者として,共に歩んでいくことが大切です。

(4)医療からの支援
  LD,ADHD,高機能自閉症の子どもたちは「中枢神経系に何らかの機能不全がある」と推定されていますが,原因は完全に解明されているわけではありません。また,医学的に根本的な治療をする方法もないというのが現状です。
  これらの子どもたちには,医学的な診断が必要な場合がありますし,医療からの支援が有効な場合もあります。特にADHDについては,子どもによっては症状の抑制に高い効果を示す薬があり,薬物療法が用いられることがあります。
  しかし現状では,これらの薬については健康保険の適用外であり,また,副作用がおこる場合等もあり,専門医と相談して納得した上で,慎重に使用することが求められます。
  ADHDの薬物療法はあくまでも症状を一時的に抑制するものであり,根本的に治療するものではありません。しかし,注意集中困難などの主症状を一時的に抑制することにより,療育に効果が出てきたり,本来もっている能力を発揮したりすることが期待できます。


2.家庭でできること

(1)子どもとのかかわり方
愛情のメッセージを絶やさない
  子どもに自信をもたせ,自己の存在感,生きがい等を育てていくことが,二次的な障害を未然に防ぎ障害を克服する力となっていきます。保護者は,時には叱ったり,厳しく接したりすることが必要ですが,その場合でも「私は貴方が可愛くて,好きで,誰よりも愛している!」というメッセージを絶えず送り続けることがとても大切です。
子どもと保護者の信頼関係の樹立
  子どもの困難を克服していくためには,子どもと保護者が信頼関係を築き上げ,一緒になって取り組んでいくことが必要です。そのためには上述の愛情のメッセージとともに子どもを認め信頼している姿勢を示すことなどから,家庭の中で子どもとの信頼関係を築き上げていくことが,人間として人生を豊かに送るための土台づくりになっていきます。
他の子どもの発達との違いを見極めること
  特に知的に高い子どもほどLD,ADHD,高機能自閉症かどうかの見極めが困難な場合があります。性格の偏りなのか見極めが難しい場合もありますが,発達のアンバランスを生活全般にわたって観察することにより見分けることができます。早期に発見し,適切にかかわっていくことが,将来の社会生活をスムーズに送れるようにするために何より大切です。
細かいことはあまり注意しないこと
  勉強面や生活面など不得意な部分の改善に一所懸命取り組んでいると,いつも注意をしているような状況に陥ってしまいがちです。こうなると,かえって逆効果になり,子どもと保護者がともに精神的にまいってしまいます。これだけはというポイントに絞り,細かいことはあまり注意しないことが時には必要です。

(2)生活面
  LD,ADHD,高機能自閉症の子どもたちの中には,学校の勉強は何とかこなすものの,基本的な生活習慣が身に付かないまま,成人期を迎えてしまう場合が多く見受けられます。整理整頓,金銭管理,身だしなみ,忘れ物をしない等は自立に欠かせないスキルであり,将来を見据えて幼少期から日常生活の中で計画的に取り組んでいくことが大切です。
  また,家事などの手伝いに取り組ませることも大切です。洗濯物たたみ,食器洗い,部屋の掃除,風呂の掃除など,子どもが一人で行うのが難しいことは,最初は一緒に取り組み,徐々に援助を減らして,一人でこなせるようにしていきます。やり方を覚えた時や,手伝いができた時は必ず誉めるなど,意欲を高め,楽しく取り組めるように心がけます。

(3)行動面
  こだわり,自分勝手,強迫観念,対人関係の形成の困難さ等,子どもたちがもつ特性は,周囲の理解を得ることが難しく,学校生活だけでなく将来自立し社会生活を送って行く際にも問題になってきます。この子どもたちは,経験のないことについて頭では判っていても実際の場面でうまく対応できないことがあります。本人の特性を生かしながら,社会に適応していくためには,人間関係をスムーズにしていくための対応の仕方を身に付けていくことが大切です。様々な経験や体験学習をする中で考えさせながら,対処方法を身に付けさせたり,行動の自己調節,自己制御の心を育てたりすることも必要です。
  子どもが自己制御を身に付け,多動,パニック等の行動面の問題を克服していくことは簡単ではありません。無理じいや周囲の焦りは,かえって逆効果になることもありますので,じっくりと取り組むことが必要です。本人がストレスを少しずつ発散でき,親子ともに精神的に解放できる場を作ることも忘れてはならない大切なことです。

(4)学習面
  LD,ADHD,高機能自閉症の子どもたちは,全般的には知的発達に遅れがなく,周囲から学習面の遅れを本人のやる気のなさや努力不足と思われがちです。しかし,視覚・聴覚等の認知特性や注意集中等に困難があるために,子どもそれぞれに,得意な分野,不得意な分野があります。学校の先生とも相談しながらその特性に合わせた取組が必要です。
  家庭で勉強に取り組む時にも,学校の先生に相談しましょう。また,専門機関を利用している場合は,担当の先生とも相談して,役割分担をしながら,一貫性のある指導となるよう心がける必要があります。
  不得意な分野については,子どものつまずきを把握し,スモール・ステップで取り組みます。不得意な分野で追いつめたり,無理に努力を強要したりすると逆効果になりかねません。小さな成功や努力を誉め,自信や意欲を高めるように心がけます。例えば計算については,電卓を使うなどの補助具を活用することにより,その問題を克服していく方法もあります。
  机上の勉強では理解が難しいことでも,身近なことや実体験に結び付けると理解しやすくなります。例えば,今日学校であったことを話す,旅行に行く場所を一緒に地図で調べる,アルバムの写真を見ながらその時の話をする,買い物の計画を立てて金額を計算してみる等,実体験と結び付け,楽しみながら取り組めるようにすると効果的です。
  不得意な分野にばかり目を向けるのではなく,得意な分野を伸ばすように心がけることが大切です。得意な分野が伸びてくると,やればできるという気持ちが育ち,本人の自信にもなります。また,このことによって不得意な分野をカバーすることや,自立に生かすことにつながりますので,うまく支援していくことが大切です。


3.学校との連携

(1)連携の方法
担任との信頼関係の構築
  まず,重要なのは,担任の先生との間に信頼関係を築くことです。必要に応じて,校長先生,養護教諭,担任の先生と話し合う場をもちます。お互いの立場を理解し合い,子どものためによい方法をともに考えるという態度で臨むことが重要です。

情報の共有化
  情報の共有化が重要です。連絡帳や電話,メールなどを使い,お互いに負担にならない程度に,連絡は密にするよう心がけます。先生には,参考になると思う資料は簡潔にまとめて渡すようにします。特に,薬の服用等を行っている場合は,主治医の先生と相談しながら,学校での子どもの様子をよく観察してもらうなど細かいサポートが必要です。

情報の引継ぎ
  学年や学校が変わる時に,取り組んできたことが途切れたり,環境の変化で子どもが落ち着きをなくしたりする場合があります。新旧の担任の先生や関係者の間で情報が適切に引き継がれることが大切です。場合によっては,話合いの場を設けてもらうことが考えられます。学校に校長から指名された特別支援教育コーディネーターがいる場合には,学校内外の関係者間の調整を担うようになりますので,コーディネーターと相談することがよいでしょう。

周囲の保護者との関係
  子どもの行動面の問題等から,子どもや保護者が孤立してしまう場合があります。学校や周囲の保護者に対してLD,ADHD,高機能自閉症ということを話すかどうか,またクラスの子どもたちにどう説明するかも難しい問題ですが,うまく伝えることで,周囲の誤解を解き,状況を好転させるきっかけとなる場合もあります。また,クラスの子どもや保護者の理解と協力を得ていくには,積極的にPTA活動に協力したり,保護者同士お互いの人間関係や協力関係を深めたりすることが効果的です。

盲・聾・養護学校の活用
  盲・聾・養護学校は,その地域の相談のセンター的機能を担うことが求められています。専門的な知識をもった先生や様々な資格を有する専門家がいる場合もあり,相談窓口を開設している学校が多くなってきました。地域の盲・聾・養護学校について情報を収集し,活用することも考えられます。

(2)家庭の様子を伝える
  生育歴や療育歴を中心に,日常生活での特徴的な行動や家庭で実施して効果的であった対応の方法を具体的に伝えます。担任の先生に理解しやすいように簡潔にまとめます。さらに専門機関・療育機関を利用している場合は,その取組の資料を渡すだけでなく,その機関の専門家(医師,カウンセラー等)を学校に紹介し,可能なら学校での話合いに参加してもらったり,担任の先生に話を聞いてもらったりしましょう。

(3)学校での様子を知る
  家庭と学校では,子どもの状態が違うことがよくあります。特に学校の中での友達関係や休み時間などの様子を知ることは大切です。成功体験があるか,いじめはないか,クラスに居場所はあるか,集団の中でトラブルがないかなどの観点を挙げ,担任の先生から話を聞きましょう。先生に子どものことで気になることや困っていることがないか,保護者の方から尋ねることも大切です。また,可能であれば,学校に出向き子どもの様子を直接観察してみると,学習態度や授業中の様子などを把握することができます。

(4)個別の教育支援計画と個別の指導計画
「個別の教育支援計画」
  これは一人一人の障害のある子どもについて,乳幼児期から学校卒業後まで,一貫した長期的な計画を策定しようとするものです。より長期的視野に立った支援が必要な子どもたちですから,子どもの成長に伴い関係機関間の連携を図っていくことが大切です。また,個別の教育支援計画の作成作業においては,保護者が積極的に参画していくことが期待されます(第1部の「3.特別支援教育とは(2)特別支援教育を支える仕組み①個別の教育支援計画」参照)。
「個別の指導計画」
  これは,児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応して,指導目標や指導内容・方法等を盛り込んだ指導計画で,例えば,単元や学期,学年等ごとに作成され,それに基づいた指導が行われます。校内委員会において計画が作成されますが,児童生徒の実態把握に当たっては,保護者等との連携に十分配慮する必要があることから,必要な情報を提供することが求められます。児童生徒の認知の偏りや情緒の状態などを考慮し,国語や算数・数学など特定の教科の個別指導や社会性,行動上等の計画を作成します。計画を立て,それに基づき実践し,その結果を評価し次の改善につなげる一連の過程(Plan-Do-See)を繰り返していくことが重要です。(第1部「3.特別支援教育とは(2)特別支援教育を支える仕組み」及び,第3部の教員用「2.個別の指導計画の活用」を参照)


4.学校外の支援

(1)専門機関の利用
  LD,ADHD,高機能自閉症については,学校外の機関や団体を活用していくことも大切です。相談,診断,療育,医療,自助団体等様々な機関や団体がありますが,それぞれ専門領域,対応方法,方針等が異なります。費用負担を伴う場合もあるので,関係者や地元の親の会等で情報を得るなど,事前に検討した上で利用する必要があります。
様々な専門機関と得られる支援の例
(教育相談(相談),診断,判定,個別指導,集団指導,機能訓練,薬物療法,カウンセリング等,個々の機関によって専門領域や取り扱う内容が異なります。)
  ・教育委員会や教育センター
  ・児童相談所
  ・大学の研究室や教育実践総合センター
  ・医療機関(精神科,神経科,小児科等)
  ・民間の教育機関
  ・その他
  (障害者福祉センター,障害児療育センター,障害児施設,自閉症・発達障害支援センター等)

(2)親の会,NPOの活用
  LD,ADHD,高機能自閉症関係の親の会やNPOとしては,各地方に支部組織をもつ次の3つの団体があります。この他にも各地域ごとに積極的に活動を行っているいくつかの関係団体があります。

全国LD(学習障害)親の会
・歴史と主な活動
平成2年2月に設立。主な活動として,関係行政機関に対するLDへの理解を高めるための活動,日本LD学会等の研究者等との交流,ウェブサイトの開設などを通じた社会的理解の向上に取り組んでいます。また,日本障害者協議会等に加盟し,他の障害者団体や支援団体との交流・情報交換を行っています。会報「かけはし」の発行等により,各地の親の会への情報提供や活動支援に取り組んでいます。
・各支部の活動
41都道府県に54団体があります。保護者の勉強会,キャンプ,算数教室,有識者の講演会,子育て報告会,学校・職場見学会等を行っています。また,自治体や関係機関などに対して,LDへの理解を高めるための啓発活動を行っています。
・組織
加盟団体は54団体,総会員数は約3,000名。全国7ブロックの理事制で運営。
・入会方法
各地域の親の会に直接問い合わせ
(全国LD親の会のHPに各会の連絡先を掲載)
・連絡先
      住  所:〒162-0823  東京都新宿区神楽河岸1-1  東京ボランティアセンター27号
      電  話:なし
      FAX:020-4669-0604  (A4一枚以内のみ受信可)
      E-Mail:jpald@mbm.nifty.com
      URL:http://www.normanet.ne.jp/~zenkokld/

特定非営利活動法人(NPO法人)えじそんくらぶ
・歴史と主な活動
平成10年に設立。平成14年1月特定非営利活動法人化。主な事業は,ADHDのある子どもとその家族の支援のほか,最新情報の収集と研究,医療・心理・教育等の専門家の支援と連携にも取り組んでいます。具体的には,書籍発刊,講演会開催,個人・集団指導,ソーシャルスキルトレーニング,カウンセリング,ペアレントトレーニング,会報誌発行,ボランティアの養成など。
・各支部の活動
現在15都道府県に地元のNPOえじそんくらぶ会員が設立した「えじそんくらぶの会」があり,本部と連携して講演会開催,個人・集団指導,SST,カウンセリング,会報誌発行等を行っています。会員としては当事者,保護者を中心に教育,医療,心理,福祉関係者などの専門家が参加しています。
・組織
会員数(正会員及び準会員)約1,200名。代表,副代表,理事,監事で構成
・入会方法
事務局に問い合わせ又はホームページから。各地のえじそんくらぶの会については,直接各会へ問い合わせ。
・連絡先
      住  所:〒358-0011  埼玉県入間市豊岡1-1-1-924
      電  話:042-962-8683
      FAX:042-962-8683
      E-Mail:info@e-club.jp
      URL:http://www.e-club.jp/

社団法人  日本自閉症協会
  ・歴史と主な活動
昭和43年に自閉症児親の会全国協議会を結成し,平成元年には社団法人日本自閉症協会となりました。主な事業として,医療,教育,福祉,労働問題等の行政活動を中心にし,研究,資料収集,療育キャンプ,保護者研修,福祉相談,機関誌(「いとしご」)や研究誌の発行,図書類の刊行などを行っています。
・各支部の活動
  各都道府県に支部があり,高機能部会を設けている支部もあります。各支部では,保護者からの相談に応じたり研修会を実施したりするなど地方活動の拠点となり,専門家などの協力を得て,自閉症児・者のよりよい社会環境づくりの活動をしています。
・組織
  会員数(正会員,賛助会員)11,625名。会長,副会長,常務理事,理事,監事,評議員で構成
・入会方法
保護者は各支部を通して申し込む。その他は本部へ電話で問い合わせ
・連絡先
      住  所:〒162-0051  東京都新宿区西早稲田2-2-8
      電  話:03-3232-6478
      FAX:03-5273-8438
      E-Mail:asj@mub.biglobe.ne.jp
      URL:http://www.autism.or.jp/







○本人用

「LD,ADHD,高機能自閉症(こうきのうじへいしょう)の3人の青年から意見をいただきました。これらの意見は,本人の経験(けいけん)や気持ちをよくあらわしており,本人,保護者(ほごしゃ)をはじめ,教員や関係者(かんけいしゃ)にも参考(さんこう)になるものです。□の枠(わく)でくくられたものは,「本人からのメッセージ」として一部アレンジして掲載するものです。」

1.自分のことを知るために
自分が得意(とくい)なこと,不得意(ふとくい)なことを理解(りかい)しておこう
  計算はできるけれど応用問題(おうようもんだい)はできない,体育は得意(とくい)だけれど工作の細かいことは苦手,ついつい忘れ物をしてしまう,みんなと合わせて行動するのは苦手など,みんなそれぞれに,得意(とくい)なことや苦手なことがあります。苦手なことは,努力したり工夫したりすることにより,じょうずになることができます。しかしその前に,自分が得意(とくい)なこと,苦手なこと,直した方がよいことなどについて,自分で理解(りかい)しておくことが大切です。
  自分では気がつかないこともありますから,お母さん,お父さんやクラスの先生や専門家(せんもんか)の先生などから教えてもらうとよいでしょう。分かるまで教えてもらい,どうやったらできるようになるかについても,アドバイスを受けるようにしましょう。

  「私は他の子があまり知らないようなことをいろいろ知っていた。たとえば,他の学校の住所,生徒(せいと)数,先生の人数を知っていたし,世界の都市の人口とか車についてはくわしかった。」


一人一人が違(ちが)っているのは当たりまえで,それはすばらしいことです
  人間は一人一人がそれぞれ違(ちが)っていて,顔,背(せ)の高さ,好(す)きな食べ物などがまったく同じ人というのはいないし,みんな違(ちが)うからよいのです。苦手なことや「やりにくさ」がある人は「自分は何か人と違(ちが)う」と感じて悩(なや)むことがありますが,苦手なことや「やりにくさ」はその人のすべてではなく,ほんの一部にすぎません。だれでも得意(とくい)な面,不得意(ふとくい)な面がありますが,得意(とくい)な面やよい面を大いに伸(の)ばし,不得意(ふとくい)な面にも努力(どりょく)して取り組んでいくことが大切なのです。


不得意(ふとくい)な(弱い)ところだけに目を向けるのではなく,自分の得意(とくい)な(強い)ところに目を向けよう
  「サッカーはクラスで一番だね」「虫のことは何でも知っている」「いつもちゃんとあいさつができて,えらいね」など,得意(とくい)なことやよい面について,お母さん,お父さんや先生にほめられたり,友だちから認(みと)められたりすると,うれしいものです。
  不得意(ふとくい)なことがあると,どうしてもそれが気になってしまいますが,得意(とくい)なことやよい面をさらに伸(の)ばしたり,アピールしたりしていくことも大切です。

  「塾(じゅく)の先生のアルバイトでは,つい提出(ていしゅつ)する書類(しょるい)を忘(わす)れてしまったり,遅刻(ちこく)してしまったりといったことが起こってしまう。その代わり,ADHDやLD傾向(けいこう)のお子さんを教えると,他の先生よりうまく教えることができる。また,自分の意見をうまくまとめて話すことは昔から得意(とくい)だったので,特(とく)に小論文(しょうろんぶん)の授業(じゅぎょう)ではわかりやすいという評価(ひょうか)を得(え)ている。
  このように,自分の欠点(けってん)を改善(かいぜん)することだけにやっきになるよりは,それらの欠点(けってん)を補(おぎ)なって余(あま)りある長所を自分の中に発見してそれを積極的(せっきょくてき)にアピールしていく方が,仕事をうまくやっていくことができると私(わたし)は考えている。」


診断名(しんだんめい)は同じでも,どんな「やりにくさ」があるかは人によって違(ちが)います
  LDは,「話を聞く」「言葉を話す」「文字を読む」「字を書く」「計算する」などのどこかに「やりにくさ」があることをまとめて表す診断名(しんだんめい)です。ですから,診断名(しんだんめい)は同じでも,どの部分に「やりにくさ」があるかは,人によって違(ちが)います。
  例(たと)えば,A君とBさんは二人ともLDと診断(しんだん)されています。A君は,計算と体育が苦手だけれど,本を読むことや作文は得意(とくい)。Bさんは,本を読むのは苦手だけれど,計算は得意(とくい)。というように同じ診断名(しんだんめい)でも「やりにくさ」のある部分が違(ちが)うのです。
  LD,ADHD,高機能自閉症(こうきのうじへいしょう)という診断名(しんだんめい)だけではなく,自分がどの部分に「やりにくさ」があって,どこが不得意(とくい)な部分なのか,そしてどのように改善(かいぜん)していけばよいのかを知っておくことが大切です。

  「私は歴史(れきし),地理,漢字は得意だった。算数の計算はできるけれど応用問題(おうようもんだい)はできなかった。文章を理解(りかい)するのが苦手で,『どういうことを言っているのか述(の)べよ』というような問題は,苦手だった。物の名前だったら説明(せつめい)できるけど,言葉は毎日使っていても説明(せつめい)することができない。たとえば『社会ってどういう意味?』と聞かれても答えられない。」


自分のことを知る方法(ほうほう)
  だれでも,自分のことは自分ではわからないものです。自分について知りたいと思ったら,まずお母さんやお父さんに聞いてみましょう。自分が得意(とくい)なこと,不得意(ふとくい)なことなどを聞いて,得意(とくい)な点やよい点を伸(の)ばし,不得意(ふとくい)な点は少しでもへらすように取り組んでみましょう。
  自分のことをくわしく知りたい場合は,専門家(せんもんか)の先生の診断(しんだん)を受けるという方法(ほうほう)もあります。診断(しんだん)というのは,専門家(せんもんか)の先生にくわしく調べて判断(はんだん)してもらうことで,何種類(なんしゅるい)かの検査(けんさ)やテストを受ける必要(ひつよう)があります。



2.学習面や行動面・生活面で気をつけること

(1)学習面で気をつけること
苦手,きらいと思っていることも,あきらめないで取り組んでみよう
  忘れ物をしたり,宿題を忘れたりしてしまう,先生の話に集中できないことがある,服の着替(きが)えがおそいなど,苦手なことがあっても,それはずっと続(つづ)くものとは限(かぎ)りません。苦手なことを「どうせできない。」とあきらめてしまうと,できるようにはなりません。努力(どりょく)したり工夫(くふう)したりして取り組めば,少しずつできるようになります。苦手で,きらいと思っていることでも,少しできるようになってくると「やればできる」ということが分かって,おもしろくなってくるものです。できそうなことを見つけ,まずやってみましょう。そして苦手なことが一つできるようになったら,他のことにも取り組んでみましょう。


自分に合う勉強の方法(ほうほう)を教えてもらい,見つけよう
  苦手なことでも,やり方を変(か)えてみたり,工夫(くふう)して取り組んだりするとできるようになることがあります。たとえば,計算が苦手な場合に,①何度も繰(く)り返し練習する,②計算の手順(てじゅん)を小さく分けて,どこで間違(まちが)いやすいのかを見つけて練習する,③計算のやりかたを変(か)えてみる(かけ算を足し算で考えるなど),④暗算で間違(まちが)うことが多ければ筆算を使う,などいろいろな方法(ほうほう)があります。学校の先生や専門家(せんもんか)の先生に相談して,自分に合う学び方を教えてもらい,見つけるようにしましょう。


いろいろな道具をうまく使おう
  LDのある人は,工夫(くふう)したり努力(どりょく)したりしても「やりにくさ」をうまくカバーできないことがあります。そういう場合は,視力(しりょく)がよくない人がメガネをかけるように,色々な助けや道具を利用(りよう)する方法(ほうほう)がありますので,先生などに相談してみましょう。
  教科書などの字を読むことが苦手な人は,字の下に線を引いたり,拡大(かくだい)した教科書を使ったりすることにより,読みやすくなります。字を書くことに困難(こんなん)がある人は,パソコンを使って文を書くことも一つの方法(ほうほう)です。その他にも,計算機(けいさんき)やテープレコーダーなど,いろいろな道具を使って,苦手な部分をカバーする方法(ほうほう)を見つけましょう。

  「私は字を書くことがとても苦手なため,小・中学校では文章を書くことがずっと苦痛だったが,高校のときにパソコンを使うようになってから文章を書くことが全く苦にならなくなった。パソコンという道具の存在(そんざい)によって,文章を書くという苦手なことが一気に得意(とくい)なことに変(か)わった。」


(2)行動面・生活面で気をつけること
(す)きなこと,熱中(ねっちゅう)できること,得意(とくい)なことを見つけよう
  だれでも苦手なことやきらいなことに取り組む時は,おもしろさを感じることができないし,集中することがむずかしいものです。ところが,得意(とくい)なことや好(す)きなことなら集中できるのです。このように熱中(ねっちゅう)できることがあると,上達(じょうたつ)も早く得意(とくい)なことが増(ふ)えてきますし,いやなことがあっても気分を変(か)えることができます。
  自分で,好(す)きなこと,熱中(ねっちゅう)できること,得意(とくい)なことを見つけるようにしましょう。

  絵を描(えが)くとか,世界の天気予報(てんきよほう)を調べるなど,得意(とくい)なことや好(す)きなことなら集中きる。苦手なことになると,みんなについていけないし,一緒(いっしょ)にやることがむずかしかった。」


心を落ちつける方法(ほうほう),コツを身に付(つ)けよう
  いやなことがあったり,がまんしたり,無理(むり)をしたりすると,少しずつエネルギーがたまってきて,イライラして爆発(ばくはつ)してしまうことがあります。
  運動をしたり,好(す)きなことに熱中(ねっちゅう)したり,小さな爆発(ばくはつ)をたまに起こして,エネルギーを少しずつ使うことにより,イライラや大きな爆発(ばくはつ)が起きるのを防(ふせ)ぐことができたという人もいます。もし,イライラして爆発(ばくはつ)しそうだと感じた時は,静(しず)かな場所に行って一人でしばらくいることで,気持ちを落ち着かせることができます。自分なりに,イライラや爆発(ばくはつ)を防(ふせ)いだり,抑(おさ)えたりするコツを身に付(つ)けるようにしましょう。

  「私は,人と合わせることができなかった。ずっとトイレに入っている時もあった。安心するためだったと思う。そっとしておいてほしい時もあった。」


宿題,持ち物,約束(やくそく)を忘れないように,メモやノートを使ってみよう
  ついつい宿題や持ち物を忘れてしまうことが多い人は,思い出せるように工夫(くふう)をすることが大切です。忘れてはいけないことはメモやノートに書いて毎朝見るようにする,約束(やくそく)したら部屋のカレンダーに書き込むようにするなど,工夫(くふう)してみましょう。


自分の身の回りのことは,自分でできるようにしよう
  食事,片付(かたづ)け,服の着替(きが)え,トイレ,フロなど,自分の身の回りのことで,できることが増(ふ)えると,自信(じしん)がつきますし,好(す)きなところにも自由に行くことができるようになります。身の回りのことは自分でできるようにしていくためには,学校だけでなく家での取組も大切です。目標(もくひょう)を決めて,少しずつ取り組んでいきましょう。


うまく話ができるようになろう
  相手に自分が言いたいことを伝えたり,相手が言っていることをちゃんとわかったりすることは,とても大切なことです。いきなり話しださないで,「ちょっといいですか」「質問(しつもん)があるのですが」と言ってから,話し始めましょう。また,人の話を聞く時は,話を最後(さいご)まで聞くようにし,分からないことがあったら,質問(しつもん)しましょう。



3.サポートを受ける(その1)(お母さんやお父さん,友だちから)

  みなさんのまわりには,お母さんやお父さん,友だち,学校の担任(たんにん)の先生,特別支援教育(とくべつしえんきょういく)コーディネーターの先生,通級指導教室(つうきゅうしどうきょうしつ)や特殊学級(とくしゅがっきゅう)の先生,学校外のいろいろな専門家(せんもんか)の先生などがいます。こうしたまわりの人たちに,自分だけではうまくいかない「やりにくさ」や悩(なや)みについて,サポート(支援(しえん))を受けることが大切です。

(1)お母さんやお父さんから
  お母さんやお父さんは,あなたが生まれてからずっと,あなたのことを育て,見守ってきているので,あなたのことを一番よく分かっています。また,お母さんやお父さんは,あなたが「やりにくさ」を乗り越(こ)えて,成長(せいちょう)していくことを心から願(ねが)っています。


よく話し合ってみよう
  学校であったこと,うれしかったこと,悲しかったことなど,自分の気持ちや考えをすなおに話しましょう。また,困(こま)っていること,分からないことなども相談してみましょう。


一緒(いっしょ)に取り組んでみよう
  お母さんやお父さんに協力(きょうりょく)してもらって,不得意(ふとくい)なことや苦手なことを乗り越(こ)えてい きましょう。家の中で身につけることもたくさんありますので,お母さんやお父さんに教えてもらったり,相手になってもらったりしながら,前向きに取り組んでいきましょう。

  「親が他の友だちとの比較(ひかく)を口にすることがよくあり,とても苦痛(くつう)だった。子どもの長所を見て伸(の)ばすように取り組んでほしいと思う。」


(2)友だちから
自分のことを理解(りかい)してくれる友だちを作るようにしよう
  いいことがあった時にいっしょに喜(よろこ)べる,困(こま)っている時にお互(たが)いに助け合う,元気のない時に励(はげ)まし合うなど,なかのよい友だちがいると,楽しいし,元気が出てきます。
  また,友だちに助けてもらったり,友だちを助けたり,時には注意をしてくれたり,いっしょに喜んだりすることを通じて,いろいろなことを学びあうことができるのです。

  「運動会はきらいだったし,みんなに合わせようとしたけれど,むずかしかった。みんなが僕(ぼく)に合わせようと工夫(くふう)するなど,まわりの人がよくしてくれたので,がんばろうと思った。」


自分の障害(しょうがい)や困難(こんなん)のことを,他の人にうまく伝えられるようになろう
  友だちとして,なかよくつきあっていくためには,友だちに自分のことを分かってもらうことが大切です。自分の障害(しょうがい)や困難(こんなん)については,いきなり伝えるのではなく,ある程度(ていど),自分のことを分かってもらえるようになってからにし,実際(じっさい)にどんなことで困(こま)っているのかを具体的(ぐたいてき)に話すようにしましょう。友だちにいつどのように伝(つた)えるかはむずかしいし,勇気(ゆうき)がいることです。

  「クラスの人が小さい声で,僕(ぼく)の障害(しょうがい)のことを話していた。何で分かったのだろうと思った。なぜ悪いことのようにコソコソ言うのだろうと思って,いやな感じがした。」

  「ノートをとることなど自分が苦手なことについて助けてもらえる友だちがいるとよい。」


あいさつをしよう
  友だちに助けてもらったら,「どうもありがとう」と,きちんとお礼を言いましょう。友だちの方もお礼を言われると,とても気分がいいし,「助けてあげてよかった」と思ってくれます。また,友だちの物をこわしてしまったり,約束(やくそく)を守れなかったりした時は,「ごめんなさい」と,気持ちをこめてあやまりましょう。
  また朝,友だちや先生と会ったら「おはよう」「おはようございます」と自分からあいさつしましょう。「こんにちは」「さようなら」など,気持ちよくあいさつができると,自分も気分いいものですし,友だちとなかよくすることができます。


同じようなタイプの友だちをつくろう
  同じようなタイプの友だちがいると,とても楽な気持ちでつきあうことができます。友だちから「主人公になったつもりで読むと物語がよく分かるよ」「イライラした時は,しばらく一人になって深呼吸(しんこきゅう)をすると,気持ちが落ち着くよ」「メモがなくなって,また忘れ物をしてしまった」など,うまくいったことや失敗(しっぱい)したことなどの話しを聞くこともできて,とても役に立ちます。様々(さまざま)な支援(しえん)をしてくれる機関(きかん)や親の会などに行くと,同じようなタイプの友だちと知り合うことができる場合もあります。

  「同じ傾向(けいこう)のある子どもが集まる会に参加(さんか)すると,とても貴重(きちょう)な経験(けいけん)になると思う。自分よりもさらに大変(たいへん)な状況(じょうきょう)におかれている人の話を聞いたり,反対にうまくやっている人たちの生活上や学習上の工夫(くふう)などを知ったりすることは,自分の障害(しょうがい)に対する理解(りかい)を深めたり,自分自身を見つめ直したりすることに,大きな助けになった。」



4.サポートを受ける(その2)(学校の先生,学校以外の専門家(せんもんか)から)

(1)担任(たんにん)の先生から
あなたのことをよく理解(りかい)してもらおう
  担任(たんにん)の先生には,あなたが得意(とくい)なこと,不得意(ふとくい)なことをよく理解(りかい)してもらいましょう。お母さんやお父さん,前の担任(たんにん)の先生から説明(せつめい)してもらうと,うまくいくこともあります。

  「小学校の1・2年の時の担任(たんにん)の先生は,ぼくのことを分かってくれたのでよかった。けれど,3~6年の時はあまり分かってもらえなかったし,人といっしょのようにできないので,自信(じしん)を失(うしな)ってしまった。どの先生も,『ぼくにはちょっと違(ちが)う所があるのだ』ということを分かってくれたらよかったのに,と思う。」


得意(とくい)な部分やがんばりにも目を向けてもらおう
  不得意(ふとくい)な部分が多いと,先生もそこに目が行ってしまいがちです。得意(とくい)な部分やがんばりにも目を向けてもらいましょう。たとえば,国の名前をたくさん覚(おぼ)えた,リコーダーを吹(ふ)けるようになった,自転車に乗れるようになった,というようなことを先生にも話しましょう。

  「中学校の時,最初(さいしょ)の頃(ころ)は授業(じゅぎょう)を聞いていなくて,ノートには関係(かんけい)ないことを書いていた。ある時,先生が『ちゃんと黒板に書いてあることを書きなさい』と言ってくれたことをきっかけに,黒板を写すようになり,授業(じゅぎょう)を聞くようになってきた。そうしたら,ちょっとずつ授業(じゅぎょう)が理解(りかい)できるようになった。」


まず,担任(たんにん)の先生に相談してみよう
  勉強でわからないこと,友だちのこと,休み時間のこと,分からないこと,悩(なや)んでいること,困(こま)っていることがあったら,まず担任(たんにん)の先生に相談してみましょう。いろいろと相談すると,アドバイスしてくれたり,困(こま)っていることを解決(かいけつ)する方法(ほうほう)をいっしょに考えてくれたりすると思います。

  「僕(ぼく)がここまでこられたのも,いろんな人が特別(とくべつ)に助けてくれたからだと思う。学校ではつらかった時もあったけど,みんなからきらわれなかったからよかったと思う。」


(2)学校の特別支援教育(とくべつしえんきょういく)コーディネーター,通級指導教室(つうきゅうしどうきょうしつ)や特殊学級(とくしゅがっきゅう)の先生から   「特別支援教育(とくべつしえんきょういく)コーディネーター」というのは,勉強などに困(こま)っている人の相談に乗ったり,アドバイスをしたり,学校以外の専門家(せんもんか)を紹介(しょうかい)してくれたり,連絡(れんらく)をとってくれたりする先生です。これからはどの学校にも「特別支援教育(とくべつしえんきょういく)コーディネーター」の先生がいるようにしていくことになっています。
  「通級指導教室(つうきゅうしどうきょうしつ)」,「特殊学級(とくしゅがっきゅう)」というのは,いろいろな障害(しょうがい)や困難(こんなん)のある人が勉強している教室や学級のことです。


(こま)っていることを相談してみよう
  特別支援教育(とくべつしえんきょういく)コーディネーターや通級指導教室(つうきゅうしどうきょうしつ)や特殊学級(とくしゅがっきゅう)の先生に,困(こま)っていることや分からないことを相談してみましょう。

  「通級指導教室(つうきゅうしどうきょうしつ)では,苦手な勉強を個別(こべつ)に教わり,いろいろ分かるようになったやればできるってことが分かった。体育も教えてくれて,ボールをけるのがうまくなった。前転もそれまでは骨(ほね)が折(お)れると思ってやらなかったけど,結局(けっきょく)やったらできたし,骨(ほね)も折(お)れてなかったので安心した。」

  「言われて気がつくことが多くあった。たとえば,食べ方がきたないことを注意されて,きれいに食べるようになった。」


(3)学校以外の専門家(せんもんか)から
  学校の外にも,教育センター,病院,大学など,あなたをサポートしてくれる所があって,いろいろな専門家(せんもんか)の先生が診断(しんだん),相談,指導(しどう)などをしてくれます。


自分の障害(しょうがい)や困難(こんなん)をよく分かってくれて,頼(たよ)りになる先生を見つけよう
  専門家(せんもんか)の先生はそれぞれ得意(とくい)なことが違(ちが)っているし,いろいろなタイプの先生がいます。自分の障害(しょうがい)や困難(こんなん)をよく分かってくれて,相談にのってくれたり,指導(しどう)してくれたりする先生がいると,とても心強いものです。

  「専門家(せんもんか)の先生は,ぼくが歴史(れきし)を好(す)きなことを知っていたので,ぼくの成長(せいちょう)について,第二次世界大戦後(だいにじせかいたいせんご)の日本の高度成長(こうどせいちょう)にたとえて,ぼくに分かるように話してくれて,『このままにしていてはいけない,がんばれ』と,言ってくれた。日本も戦後(せんご),がんばって復興(ふっこう)したから今の姿がある,その話を聞いて自分もがんばれると思った。」







参考資料



 資料1

LD,ADHD,高機能自閉症の判断基準(試案),実態把握のための観点(試案),指導方法


※LDについては,「学習障害児に対する指導について(報告)」(平成11年7月),ADHDと高機能自閉症については,「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」(平成15年3月)から引用。

◎判断基準

LD(学習障害)

  次の判断基準に基づき,原則としてチーム全員の了解に基づき判断を行う。
  A.知的能力の評価
   ①全般的な知的発達の遅れがない。
・個別式知能検査の結果から,全般的な知的発達の遅れがないことを確認する。
・知的障害との境界付近の値を示すとともに,聞く,話す,読む,書く,計算する又は推論するのいずれかの学習の基礎的能力に特に著しい困難を示す場合は,その知的発達の遅れの程度や社会的適応性を考慮し,知的障害としての教育的対応が適当か,学習障害としての教育的対応が適当か判断する。
   ②認知能力のアンバランスがある。
・必要に応じ,複数の心理検査を実施し,対象児童生徒の認知能力にアンバランスがあることを確認するとともに,その特徴を把握する。
  B.国語等の基礎的能力の評価
   ○国語等の基礎的能力に著しいアンバランスがある。
・校内委員会が提出した資料から,国語等の基礎的能力に著しいアンバランスがあることと,その特徴を把握する。ただし,小学校高学年以降にあっては,基礎的能力の遅れが全般的な遅れにつながっていることがあるので留意する必要がある。
・国語等の基礎的能力の著しいアンバランスは,標準的な学力検査等の検査,調査により確認する。
・国語等について標準的な学力検査を実施している場合には,その学力偏差値と知能検査の結果の知能偏差値の差がマイナスで,その差が一定の標準偏差以上あることを確認する。
  なお,上記A及びBの評価の判断に必要な資料が得られていない場合は,不足の資料の再提出を校内委員会に求める。さらに必要に応じて,対象の児童生徒が在籍する学校での授業態度などの行動観察や保護者との面談などを実施する。
  また,下記のC及びDの評価及び判断にも十分配慮する。
  C.医学的な評価
   ○学習障害の判断に当たっては,必要に応じて医学的な評価を受けることとする。
・主治医の診断書や意見書などが提出されている場合には,学習障害を発生させる可能性のある疾患や状態像が認められるかどうか検討する。
・胎生期周生期の状態,既往歴,生育歴あるいは検査結果から,中枢神経系機能障害(学習障害の原因となり得る状態像及びさらに重大な疾患)を疑う所見が見られた場合には,必要に応じて専門の医師又は医療機関に医学的評価を依頼する。
  D.他の障害や環境的要因が直接的原因でないことの判断
   ①収集された資料から,他の障害や環境的要因が学習困難の直接的原因ではないことを確認する。
・校内委員会で収集した資料から,他の障害や環境的要因が学習困難の直接の原因であるとは説明できないことを確認する。
・判断に必要な資料が得られていない場合は,不足の資料の再提出を校内委員会に求めることとする。さらに再提出された資料によっても十分に判断できない場合には,必要に応じて,対象の児童生徒が在籍する学校での授業態度などの行動観察や保護者との面談などを実施する。
   ②他の障害の診断をする場合には次の事項に留意する。
・注意欠陥多動障害や広汎性発達障害が学習上の困難の直接の原因である場合は学習障害ではないが,注意欠陥多動障害と学習障害が重複する場合があることや,―部の広汎性発達障害と学習障害の近接性にかんがみて,注意欠陥多動障害や広汎性発達障害の診断があることのみで学習障害を否定せずに慎重な判断を行う必要がある。
・発達性言語障害,発達性協調運動障害と学習障害は重複して出現することがあり得ることに留意する必要がある。
・知的障害と学習障害は基本的には重複しないが,過去に知的障害と疑われたことがあることのみで学習障害を否定せず,「A.知的能力の評価」の基準により判断する。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)

  以下の基準に該当する場合は,教育的,心理学的,医学的な観点からの詳細な調査が必要である。
  A.以下の「不注意」「多動性」「衝動性」に関する設問に該当する項目が多く,少なくとも,その状態が6カ月以上続いている。
   ○不注意
・学校での勉強で,細かいところまで注意を払わなかったり,不注意な間違いをしたりする。
・課題や遊びの活動で注意を集中し続けることが難しい。
・面と向かって話しかけられているのに,聞いていないようにみえる。
・指示に従えず,また仕事を最後までやり遂げない。
・学習などの課題や活動を順序立てて行うことが難しい。
・気持ちを集中させて努力し続けなければならない課題を避ける。
・学習などの課題や活動に必要な物をなくしてしまう。
・気が散りやすい。
・日々の活動で忘れっぽい。
   ○多動性
・手足をそわそわ動かしたり,着席していてもじもじしたりする。
・授業中や座っているべき時に席を離れてしまう。
・きちんとしていなければならない時に,過度に走り回ったりよじ登ったりする。
・遊びや余暇活動におとなしく参加することが難しい。
・じっとしていない。または何かに駆り立てられるように活動する。
・過度にしゃべる。
   ○衝動性
・質問が終わらないうちに出し抜けに答えてしまう。
・順番を待つのが難しい。
・他の人がしていることをさえぎったり,じゃましたりする。
  B.「不注意」「多動性」「衝動性」のうちのいくつかが7歳以前に存在し,社会生活や学校生活を営む上で支障がある。
  C.著しい不適応が学校や家庭などの複数の場面で認められる。
  D.知的障害(軽度を除く),自閉症などが認められない。

高機能自閉症

  以下の基準に該当する場合は,教育的,心理学的,医学的な観点からの詳細な調査が必要である。
  A.知的発達の遅れが認められないこと。
  B.以下の項目に多く該当する
   ○人への反応やかかわりの乏しさ,社会的関係形成の困難さ
・目と目で見つめ合う,身振りなどの多彩な非言語的な行動が困難である。 ・同年齢の仲間関係をつくることが困難である。 ・楽しい気持ちを他人と共有することや気持ちでの交流が困難である。
【高機能自閉症における具体例】
・友達と仲良くしたいという気持ちはあるけれど,友達関係をうまく築けない。
・友達のそばにはいるが,一人で遊んでいる。
・球技やゲームをする時,仲間と協力してプレーすることが考えられない。
・いろいろな事を話すが,その時の状況や相手の感情,立場を理解しない。
・共感を得ることが難しい。
・周りの人が困惑するようなことも,配慮しないで言ってしまう。
   ○言葉の発達の遅れ
・話し言葉の遅れがあり,身振りなどにより補おうとしない。
・他人と会話を開始し継続する能力に明らかな困難性がある。
・常同的で反復的な言葉の使用または独特な言語がある。
・その年齢に相応した,変化に富んだ自発的なごっこ遊びや社会性のある物まね遊びができない。
【高機能自閉症における具体例】
・含みのある言葉の本当の意味が分からず,表面的に言葉通りに受けとめてしまうことがある。
・会話の仕方が形式的であり,抑揚なく話したり,間合いが取れなかったりすることがある。
   ○興味や関心が狭く特定のものにこだわること
・強いこだわりがあり,限定された興味だけに熱中する。
・特定の習慣や手順にかたくなにこだわる。
・反復的な変わった行動(例えば,手や指をぱたぱたさせるなど)をする。
・物の一部に持続して熱中する。
【高機能自閉症における具体例】
・みんなから,「○○博士」「○○教授」と思われている(例:カレンダー博士)。
・他の子どもは興味がないようなことに興味があり,「自分だけの知識世界」を持っている。
・空想の世界(ファンタジー)に遊ぶことがあり,現実との切り替えが難しい場合がある。
・特定の分野の知識を蓄えているが,丸暗記であり,意味をきちんとは理解していない。
・とても得意なことがある一方で,極端に苦手なものがある。
・ある行動や考えに強くこだわることによって,簡単な日常の活動ができなくなることがある。
・自分なりの独特な日課や手順があり,変更や変化を嫌がる。
   ○その他の高機能自閉症における特徴
・常識的な判断が難しいことがある。
・動作やジェスチャーがぎこちない。
  C.社会生活や学校生活に不適応が認められること。


◎実態把握のための観点(試案)

LD(学習障害)

  A.特異な学習困難があること
   ①国語又は算数(数学)(以下「国語等」という。)の基礎的能力に著しい遅れがある。
・現在及び過去の学習の記録等から,国語等の評価の観点の中に,著しい遅れを示すものが1以上あることを確認する。この場合,著しい遅れとは,児童生徒の学年に応じ1~2学年以上の遅れがあることを言う。
      小学校2,3年生    1学年以上の遅れ
      小学校4年生以上又は中学生 2学年以上の遅れ
   ②全般的な知的発達の遅れがない。
・知能検査等で全般的な知的発達の遅れがないこと,あるいは現在及び過去の学習の記録から,国語,算数(数学),理科,社会,生活(小学校1及び2年生),外国語(中学生)の教科の評価の観点で,学年相当の普通程度の能力を示すものが1以上あることを確認する。
  B.他の障害や環境的な要因が直接の原因ではないこと
・児童生徒の記録を検討し,学習困難が特殊教育の対象となる障害によるものではないこと,あるいは明らかに環境的な要因によるものではないことを確認する。
・ただし,他の障害や環境的な要因による場合であっても,学習障害の判断基準に重複して該当する場合もあることに留意する。
・重複していると思われる場合は,その障害や環境等の状況などの資料により確認する。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)及び高機能自閉症

  A.基本方針
・学校における実態把握については,担任教員等の気付きを促すことを目的とすることが重要である。
・障害種別を判断するためではなく,行動面や対人関係において特別な教育的支援の必要性を判断するための観点であることを認識する必要がある。
・学校では,校内委員会を設置し,同委員会において,担任等の気付きや該当児童生徒に見られる様々な活動の実態を整理し,専門家チームで活用できるようにすることが求められる。専門家チームでは,このような学校における実態把握をも含めて,総合的に判断をすることになる。
  B.留意事項
・ADHDや高機能自閉症等,障害の医学的診断は医師が行うものであるが,教員や保護者は,学校生活や家庭生活の中での状態を把握する必要がある。
・授業や学校生活において,実際に見られる様々な特徴を把握できるような観点を設定する必要がある。
・高機能自閉症等の一部には,行動としては現れにくい児童生徒の内面的な困難さもあることに留意する必要がある。
・授業等における担任の気付きを,注意集中困難,多動性,衝動性,対人関係,言葉の発達,興味・関心などの観点から,その状態や頻度について整理し,校内委員会に報告する。
  C.観点
   ○知的発達の状況
・知的発達の遅れは認められず,全体的には極端に学力が低いことはない。
   ○教科指導における気付き
・本人の興味のある教科には熱心に参加するが,そうでない教科では退屈そうにみえる。
・本人の興味ある特定分野の知識は大人顔負けのものがある。
・自分の考えや気持ちを,発表や作文で表現することが苦手である。
・こだわると本人が納得するまで時間をかけて作業等をすることがある。
・教師の話や指示を聞いていないようにみえる。
・学習のルールやその場面だけの約束ごとを理解できない。
・一つのことに興味があると,他の事が目に入らないようにみえる。
・場面や状況に関係ない発言をする。
・質問の意図とずれている発表(発言)がある。
・不注意な間違いをする。
・必要な物をよくなくす。
   ○行動上の気付き
・学級の児童生徒全体への一斉の指示だけでは行動に移せないことがある。
・離席がある,椅子をガタガタさせる等落ち着きがないようにみえる。
・順番を待つのが難しい。
・授業中に友達の邪魔をすることがある。
・他の児童生徒の発言や教師の話を遮るような発言がある。
・体育や図画工作・美術等に関する技能が苦手である。
・ルールのある競技やゲームは苦手のようにみえる。
・集団活動やグループでの学習を逸脱することがある。
・本人のこだわりのために,他の児童生徒の言動を許せないことがある。
・係活動や当番活動は教師や友達に促されてから行うことが多い。
・自分の持ち物等の整理整頓が難しく,机の周辺が散らかっている。
・準備や後片付けに時間がかかり手際が悪い。
・時間内で行動したり時間配分が適切にできない。
・掃除の仕方,衣服の選択や着脱などの基本的な日常生活の技能を習得していない。
   ○コミュニケーションや言葉遣いにおける気付き
・会話が一方通行であったり,応答にならないことが多い。
(自分から質問をしても,相手の回答を待たずに次の話題にいくことがある。)
・丁寧すぎる言葉遣い(場に合わない,友達どうしでも丁寧すぎる話し方)をする。
・周囲に理解できないような言葉の使い方をする。
・話し方に抑揚がなく,感情が伝わらないような話し方をする。
・場面や相手の感情,状況を理解しないで話すことがある。
・共感する動作(「うなずく」「身振り」「微笑む」等のジェスチャー)が少ない。
・人に含みのある言葉や嫌味を言われても,気付かないことがある。
・場や状況に関係なく,周囲の人が困惑するようなことを言うことがある。
・誰かに何かを伝える目的がなくても,場面に関係なく声を出すことや独り言が多い。
   ○対人関係における気付き
・友達より教師(大人)と関係をとることを好む。
・友達との関係の作り方が下手である。
・一人で遊ぶことや自分の興味で行動することがあるため,休み時間一緒に遊ぶ友達がいないようにみえる。
・口ゲンカ等,友達とのトラブルが多い。
・邪魔をする,相手をけなす等,友達から嫌われてしまうようなことをする。
・自分の知識をひけらかすような言動がある。
・自分が非難されると過剰に反応する。
・いじめを受けやすい。
※DSM-IV,ASSQ,「ADHD児の理解と学級経営」(仙台市教育センター,平成13年度),「注意欠陥/多動性障害(ADHD)等の児童・生徒の指導の在り方に関する研究」(東京都立教育研究所,平成11年度)を参考にした。


◎指導方法

LD(学習障害)

A.  従来の特殊教育の特徴は,教科の指導と並んで障害に基づく種々の困難の改善・克服を目指す自立活動の指導を行うことにある。これに対し,学習障害児に対する指導は,特定の能力の困難に起因する教科学習の遅れを補う教科の指導が中心となる。このため,学習障害とは別の理由により教科学習に遅れが見られる児童生徒に対する指導内容・方法と重複する部分も少なくなく,学習障害に特有の指導内容・方法を明確に示すことは現時点では困難である。ただし,反面これは,障害のない児童生徒に対する指導においても,学習障害児に対する指導内容・方法を広く活用することができるということも意味している。
B.  また,従来の特殊教育においては,障害の種類や程度に応じた固有な指導内容・方法,あるいは指導形態があるが,学習障害児については,困難のある特定の能力の種類により指導方法等が異なることもあり,学習障害児に共通した一般的な指導方法は現時点では確立されていない。
  さらに,同一の能力に困難を有していても,個々の学習障害児に生じている学習上のつまずきや困難などは様々であり,これらを改善するためには,個々の実態に応じた指導を行うことが必要である。
  その際,個々の児童生徒の認知能力の特性に着目した指導内容・方法を工夫することが有効である。
C.  具体的指導方法については,調査研究協力校や国立特殊教育総合研究所等における研究が参考となる。
  まず,調査研究協力校における研究では,学習障害児又はそれに類似した児童生徒に対する指導方法として,学習障害児等が興味・関心を持って授業に参加できるような指導や,達成感を持てるような指導が大きな効果を上げたことが報告されている。具体的には,困難のある能力を補うための教材を用いた指導,スモールステップによる指導,自信をつけさせたりやる気を持たせることができる指導,同一の課題を繰り返して実施する根気・集中力を養う指導といった例が挙げられている。
  また,国立特殊教育総合研究所における研究では,児童生徒のつまずきに速やかに気付いて個に応じた指導をすることが可能なティームティーチングの活用や,集団の中では落ち着きがないため一斉指導では学習に集中できない児童生徒に対する個別指導が効果を上げたことが報告されている。とりわけ,それぞれの児童生徒の認知能力の特性や学習の仕方に配慮して個別に指導計画を設け,苦手な分野の学習にも長所を生かせるような指導が重要であること,具体的には,
①  教材の種類とその示し方,板書の仕方,ノートの取り方の指導などの工夫が大切であること
②  読み書き計算と強い関係のある,文字,記号,図形の認知等に配慮した指導や手指の巧緻性を高める指導も有用であること
③  「書くこと」や「計算すること」が特別に困難な場合には,ワープロやコンピュータあるいは電卓など本人が取り組みやすい機器等の併用が効果的であること
が報告されている。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)及び高機能自閉症等

  A.基本的な考え方
  <ADHDの指導・高機能自閉症等の指導共通>
・ADHD・高機能自閉症等のある児童生徒の教育的ニーズは多様であることから,一人一人の実態把握を,単に行動上の問題の把握のみならず,教科学習や対人関係の形成の状況,学校生活への適応状況など様々な観点から行うことが必要である。
・ADHD・高機能自閉症等のある児童生徒の保護者,クラスメイト,クラスメイトの保護者への理解推進も積極的に進める必要がある。
・ADHD・高機能自閉症等のある児童生徒に対して,個別の指導計画による指導が見られ,効果を上げている例も見られるが,当該児童生徒への一層の教育の充実ということから,その作成にあたっては,通級指導教室や特殊学級など校内の特殊教育の担当者からの支援を得ることが望ましい。個別の指導計画を作成し,運用するに当たっては,保護者への十分な理解と連携が求められる。個別の指導計画の作成や運用の在り方については,研究開発学校における取り組みの成果等を参考に検討することが考えられる。
・知的発達には遅れがないものの学習面や行動面で様々な状態を示し,社会的適応にも困難を示すことがあることから,生徒によっては中等教育段階の早い時期から,障害の特性に配慮した職業に関する教育が必要である。
  <ADHDの指導>
・多動行動等に対応するためには,小学生など低年齢段階からの適切な指導が重要である。
・生活技能(主として対人関係技能)を身に付けることが大切である。その際には,適切な行動に向けての自己管理能力を高めることも大切である。
・問題行動,非行等への配慮が必要である。
・自信回復や自尊心(自己有能感)の確立,さらには自分で自分の行動を振り返ったり,他者が自分をどうとらえているのかを理解したりすることも大切である。
・投薬(中枢刺激剤等)の効果が認められる場合があることから,医療との連携が重要である。
  <高機能自閉症等の指導>
・光や音,身体接触などの刺激への過敏性があること,問題を全体的に理解することが不得意であること,過去の不快な体験を思い出してパニック等を起こすこと等の特性に対応することが大切である。
・主として心因性の要因による選択性かん黙等への対応とは異なり,その特性に応じた指導ができるように指導の場に関する検討が必要である。その際には,通常の学級における特性に応じた補充的な教育内容やその指導方法等について検討が必要である。
・2次的障害が顕著に現れる場合もあることから,特に思春期には丁寧な対応が重要である。
・アスペルガー症候群は,言語機能に大きな困難性を有しないが,その他の行動特性は自閉症と同様であることから,教育的対応上は高機能自閉症と同様と考えることができる。
  B.具体的な配慮
  <ADHDの指導・高機能自閉症等の指導共通>
・共感的理解の態度をもち,児童生徒の長所や良さを見つけ,それを大切にした対応を図る。
・社会生活を営む上で必要な様々な技能を高める(ソーシャルスキルトレーニング)。それらは,ゲーム,競技,ロールプレイ等による方法が有効である。
・短い言葉で個別的な指示をする(受け入れやすい情報提示,具体的で理解しやすい情報提示)。
・いじめ,不登校などに対応する。
・本人自らが障害の行動特性を理解し,その中で課題とその可能な解決法,目標を持つなど対処方法を編み出すよう支援する。
・校内の支援体制を整える。
・周囲の子どもへの理解と配慮を推進する。
・通級指導教室での自信と意欲の回復を図る(スモールステップでの指導等による)。
・通級指導教室担当者は,在籍学級担任への児童生徒の実態や学習・行動の状況等に関する情報提供や助言をする。
・医療機関と連携する。
  <ADHDの指導>
・叱責よりは,できたことを褒める対応をする。
・問題行動への対応では,行動観察から出現の傾向・共通性・メッセージを読み取る。
・不適応をおこしている行動については,その児童生徒と一緒に解決の約束を決め,自力ですることと支援が必要な部分を明確にしておく。
・グループ活動でのメンバー構成に配慮する。
・刺激の少ない学習環境(机の位置)を設定する。
  <高機能自閉症等の指導>
・図形や文字による視覚的情報の理解能力が優れていることを活用する。
・学習環境を本人に分かりやすく整理し提示する等の構造化する。
・問題行動への対応では,問題行動は表現方法のひとつとして理解し,それを別の方法で表現することを教える。
・環境の構造化のアイディアを取り入れること(見通しがもてる工夫や,ケースによっては個別的な指導ができる刺激の少ないコーナーや部屋の活用等)が効果的である。
・情報の受け入れ方や心情の理解などにおいて,障害のない者とは大きく異なることを踏まえた対応をする。

 ※上記の具体的な配慮は,すべての年齢層に共通というわけではなく,年齢によって,異なることに注意する必要がある。また,同年齢であっても,個々の状態に応じて配慮事項は変わることに注意する必要がある。
※また,いくつかの指導実践では,通常の学級で可能な配慮と,通級指導教室等における配慮が有効な場合もあることが報告されている。




 資料2

「特別支援教育推進体制モデル事業」の概要


平成15年度予算額      98,990千円


1  趣    旨

① 平成11年7月の「学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒指導方法に関する調査研究協力者会議」の報告に基づいて、学習障害(LD)のある児童生徒に関する指導体制の充実事業を行い、各学校における学習障害(LD)のある児童生徒の実態を把握し、巡回相談を行うことにより、指導の充実を図ってきたところである。
② また、「21世紀の特殊教育の在り方について(平成13年1月)」の最終報告を踏まえて、小・中学校等に在籍する注意欠陥/多動性障害(ADHD)や高機能自閉症等のある児童生徒など特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応が求められていることから、平成15年3月の「今後の特別支援教育の在り方について」の最終報告においては、これらの障害の定義、判断基準(試案)等が示されたところである。
③ このため、学習障害(LD)のある児童生徒に加え、注意欠陥/多動性障害(ADHD)や高機能自閉症のある児童生徒を含めた、総合的な支援体制の充実を図るためのモデル事業を実施する。

2  内    容

① 注意欠陥/多動性障害(ADHD)や高機能自閉症のある児童生徒等に対する指導のための体制整備
  学習障害(LD)のある児童生徒に対する指導体制の充実事業で組織された教育委員会の専門家チーム、学校における校内委員会を活用し、注意欠陥/多動性障害(ADHD)や高機能自閉症のある児童生徒を含めた判断・実態把握を行うための支援体制を整備する。また、判断・実態把握基準の有効性を検証するとともに、学校内での注意欠陥/多動性障害(ADHD)や高機能自閉症等のある児童生徒に対する適切な指導のための体制整備の充実を図る。

② 特別支援教育コーディネーター
  特別な支援を必要とする児童生徒については、その一人一人の教育的ニーズに対応して計画的に、かつ適切に教育を行うことが重要である。このため、小・中学校に設置された校内委員会で担当教師等に指導・助言を行ったり、教育委員会の指導主事と連携調整を図るほか、福祉・医療機関等の関係機関との連絡調整を行うなど、各学校において指導的な役割を担う特別支援教育コーディネーターの在り方について検討を行う。

③ 巡回相談
  小・中学校の教員を対象に、専門家による巡回相談事業を実施し、学習障害(LD)注意欠陥/多動性障害(ADHD)や高機能自閉症等のある児童生徒へも対象を拡充し、指導方法の確立を図る。

④ 委嘱先    47都道府県



特別支援教育推進体制モデル事業


特別支援教育推進体制モデル事業




資料3

特別支援教育コーディネーター養成研修について
~その役割,資質・技能,及び養成研修の内容例~


I  特別支援教育コーディネーターの役割
  特別支援教育コーディネーターを校務として明確に位置付けることにより,学校内の教職員全体の特別支援教育に対する理解のもと学校内の協力体制を構築するとともに,小・中学校又は盲・聾・養護学校と関係機関との連携協力体制の整備を図る。
  具体的な役割として,小・中学校の特別支援教育コーディネーターは,(1)学校内の関係者や関係機関との連絡・調整,及び,(2)保護者に対する学校の窓口として機能することが期待される。一方,盲・聾・養護学校の特別支援教育コーディネーターは,これらに地域支援の機能として,(3)小・中学校等への支援が加わることを踏まえ,(4)地域内の特別支援教育の核として関係機関とのより密接な連絡調整が期待される。

II  特別支援教育コーディネーターに求められる資質・技能
 1  小・中学校の特別支援教育コーディネーター
  (1) 連絡・調整に関すること
   ①校内における特別支援教育体制の構築に関すること
    ・協力関係を推進するための情報収集,情報共有
    ・交渉力や人間関係調整力
  (2) 特別な教育的ニーズのある児童生徒や保護者の理解に関すること
   ①障害のある児童生徒の発達や障害全般に関する一般的な知識
    ・特にLD,ADHD等の軽度発達障害
   ②児童生徒,保護者,担任との相談
    ・カウンセリングマインド
  (3) 障害のある児童生徒など教育実践の充実に関すること
   ①障害のある児童生徒の教育に関する一般的な知識
    ・関係する法令
    ・教育課程や指導方法(特にLD,ADHD等の軽度発達障害)
   ②個別の指導計画の作成・実施・評価及び個別の教育支援計画に関すること
    ・少人数指導や個別指導などティーム・ティーチングの活用等

 2  盲・聾・養護学校の特別支援教育コーディネーター
  (1)  連絡・調整に関すること
   ①地域における関係機関とのネットワークの構築に関すること
    ・協力関係を推進するための情報収集,情報共有
    ・交渉力や人間関係調整力
    ・ネットワークの構築力
  (2)  特別な教育的ニーズのある児童生徒や保護者の理解に関すること
   ①障害のある児童生徒,特にLD,ADHD等の軽度発達障害
   ②児童生徒,保護者,担任との相談
    ・カウンセリングマインド
  (3)  障害のある児童生徒など教育実践の充実に関すること
   ①障害のある児童生徒の教育に関係する知識
    ・関係する法令
    ・教育課程や指導方法(特にLD,ADHD等の軽度発達障害)
   ②個別の教育支援計画の作成・実施・評価
    ・少人数指導や個別指導などティーム・ティーチングの活用等
III  特別支援教育コーディネーター養成研修の内容例
 1 小・中学校の特別支援教育コーディネーターに関する事柄
形態 講義等の題目 内    容
講義 特別支援教育コーディネーター概論 コーディネート(連絡・調整)の目的,小・中学校の特別支援教育コーディネーターの役割,校内におけるコーディネーションの実際,特別支援教育推進上の配慮事項について
講義 コーディネーターに求められる個人情報の管理 コーディネーターに求められる人権の認識,個別の指導計画作成等に係る個人情報等,個人情報の管理の在り方について
講義 支援体制の構築とチームによる支援 学校内における特別支援教育体制の構築(例えば,校内委員会の設置・運営,校内支援体制の構築,保護者や関係機関との協力関係の推進,個別の指導計画の作成等),少人数指導や個別指導を行うティーム・ティーチングの活用等のチームによる支援の進め方について
講義 特別な教育的ニーズのある児童生徒の教育の実践に関すること ①障害のある児童生徒の発達や障害全般に関する一般的な知識
 ・特にLD,ADHD等の軽度発達障害 ②障害のある児童生徒の教育に関する一般的な知識
 ・関係する法令
 ・教育課程や指導方法(特にLD,ADHD等の軽度発達障害)
 ・個別の指導計画の作成・実施・評価
 ・個別の教育支援計画について
 ・少人数指導や個別指導などティーム・ティーチングの活用
③児童生徒,保護者,担任との相談
  ・カウンセリングマインド
演習 事例研究
チームによる支援
学校内における特別支援教育体制の構築の事例に基づく研究協議
演習 連絡・調整力の養成・向上 ①連携協力関係を推進するための情報収集,情報共有の効果的な進め方
②交渉力の学習
③人間関係調整力の学習
講義 コーディネーションの計画と評価 コーディネーションによる全体的な取組の評価とその生かし方について

2  盲・聾・養護学校の特別支援教育コーディネーターに関する事柄

形態 講義等の題目 内    容
講義 特別支援教育コーディネーター概論 特別支援教育に係る法令,特別支援教育コーディネーターの目的及び役割,地域におけるコーディネーションの実際,特別支援教育推進上の配慮事項について
講義 コーディネーターに求められる個人情報の管理 コーディネーターに求められる人権の認識,個別の教育支援計画作成等に係る個人情報等,個人情報の管理の在り方について
講義 支援体制の構築とチームによる支援 小・中学校等内における特別支援教育体制の構築(例えば,校内委員会の設置・運営,校内支援体制の構築,保護者や関係機関との協力関係の推進,個別の教育支援計画の作成等),少人数指導や個別指導を行うティーム・ティーチングの活用等のチームによる支援の進め方について
講義 関係機関とのネットワークの構築 ネットワークづくりが必要な関係機関の情報収集,関係機関の担当者リストの作成等,関係機関とのネットワークの構築の進め方,及び地域における関係機関等との連絡・調整の実際について
講義 特別な教育的ニーズのある児童生徒の教育の実践に関すること ①障害のある児童生徒,特にLD,ADHD等の軽度発達障害 ②障害のある児童生徒の教育に関係する知識
  ・関係する法令
  ・教育課程や指導方法(特にLD,ADHD等の軽度発達障害)
  ・個別の指導計画の作成・実施・評価
  ・個別の教育支援計画の作成・実施・評価
  ・少人数指導や個別指導などティーム・ティーチングの活用
③児童生徒,保護者,担任との相談
  ・カウンセリングマインド
演習 事例研究
チームによる支援
小・中学校等内における特別支援教育体制の構築の事例に基づく研究協議
演習 事例研究
ネットワークの構築
関係機関とのネットワークの構築の事例に基づく研究協議
演習 連絡・調整力の養成・向上 ①連携協力関係を推進するための情報収集,情報共有の効果的な進め方 ②交渉力の学習 ③人間関係調整力の学習 ④ネットワークの構築
講義 コーディネーションの計画と評価 コーディネーションによる全体的な取組の評価とその生かし方について







 資料4

教育センターにおける研修プログラムの例



◎特別支援教育コーディネーターを養成するための研修
研修種別:対象者全員
対 象 者:各校の特別支援教育コーディネーター
研修目的:特別支援教育コーディネーターとしての必要な知識の習得と実践的指導力の育成を図る。
研  修  内  容  例 時間
〇特別支援教育とは(講義)
〇特別支援教育コーディネーターの役割(講義)
〇個人情報の管理(講義)
半日
〇校内委員会の機能(講義)
〇支援体制づくりの実際(演習)  ※代表者による提案・協議
半日
〇LD,ADHD,高機能自閉症の理解と支援(講義)
〇従来の特殊教育対象の児童生徒の理解(講義)
1日
〇LD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒の実態のとらえ方,教育的診断の仕方,個別の指導計画作成上の留意点(講義) 〇個別の指導計画の立案(演習)  ※全員が作成 1日
〇ソーシャルスキルトレーニングの実際(演習)
※個別の指導計画とビデオによる提案・協議
半日
〇授業における支援の実際(演習)
※個別の指導計画とビデオによる提案・協議
半日
〇コーディネーションの評価と次年度の計画立案(演習)
※全員がレポート作成,代表者による発表
半日

◎通常学級の担任のLD,ADHD,高機能自閉症に対する理解を深めるための研修
研修種別:希望者
対 象 者:通常学級の担任,特殊学級担任,養護教諭,養護学校担任
研修目的:LD,ADHD,高機能自閉症に対する基礎的な知識を取得し理解を深める。
研  修  内  容  例 時間
〇特別支援教育の概要(講義)

〇LD・ADHDの理解と支援の在り方(講義)
1日
〇高機能自閉症の理解と支援の在り方(講義)
〇事例協議・質疑応答(演習) ※事例協議については,事前に事例提供者を求め,レポート作成を依頼しておくようにします。
1日

◎通常学級の担任のLD,ADHD,高機能自閉症に対する指導力をつけるための研修
研修種別:希望者
対 象 者:通常学級の担任,特殊学級担任,養護教諭,養護学校担任
研修回数:2回程度
研修目的:通常の学級に在籍するLD,ADHD,高機能自閉症の問題点のとらえ方や指導目標・手立て等,個別の指導計画の立案を通して指導方法を学ぶ。
研  修  内  容  例 時間
〇事例の対象児童生徒の問題点のとらえ方や指導目標・手立ての立案の仕方(講義)
〇個別の指導計画の立案(演習)
1日
〇個別の指導計画の立案(演習)
〇協議内容の発表・講師の指導助言(演習・講義)
1日

◎管理職の特別支援教育全般についての理解を深めるための研修
研修種別:対象者全員
対 象 者:校長及び教頭
研修目的:管理職として,特別支援教育についての理解を深め,校内委員会等の支援体制づくりの一助とする。
研  修  内  容  例 時間
〇特別支援教育の概要(講義)
〇コーディネーターの指名上の留意点(講義)
〇校内委員会と支援体制づくり(講義)
※2年目以降は,支援体制の実際として提案・協議を取り入れた内容に発展させていくとよいでしょう。
1日

◎ 初任者の特別支援教育やLD,ADHD,高機能自閉症に対する理解を深めるための研修
研修種別:対象者全員
対 象 者:初任者
研修目的:特別支援教育や軽度発達障害について学び,初任者としての必要な知識を習得する。
研  修  内  容  例 時間
〇特別支援教育の概要(講義)
〇LD,ADHD,高機能自閉症について(講義)
〇LD,ADHD,高機能自閉症に対する支援の在り方(講義)
1日

◎教職経験者の特別支援教育やLD,ADHD,高機能自閉症に対する理解を深めるための研修
研修種別:対象者全員
対 象 者:初任者
研修目的:10年の教職経験を生かし,LD,ADHD,高機能自閉症の指導の実際について事例協議を通してよりよい支援の在り方を学ぶ。
研  修  内  容  例 時間
〇支援の実際(事例提案・協議)
〇講師による指導助言(講義)
1日

◎巡回相談員としての専門性や資質の向上を図るための研修
研修種別:対象者全員
対 象 者:巡回相談員
研修目的:事例協議,研修講座での指導助言,授業研究等を通して,巡回相談員としての専門性や資質の向上を図る。
研  修  内  容  例 時間
〇事例児童生徒の情報分析と個別の指導計画の立案(演習) 半日
〇1学期の指導経過報告(演習)
〇指導助言する講座の事例検討(演習)
1日
〇他講座での指導助言(実践) 1日
〇2学期の指導計画の立案(演習)
〇授業検討(演習)  ※指導案検討
1日
〇授業における支援の実際(実践) 半日
〇事例児童生徒の変容と課題(演習)
〇コーディネーションの評価(演習)
半日
※巡回相談員は「専門的知識を有する者」という前提で研修内容例を示しています。






 資料5

  個別の指導計画の様式例 (PDF 195KB)






 資料6

  専門家チーム報告書の作成例 (PDF 241KB)







策定協力者及び資料提供者名簿(五十音順)

(職名は平成16年1月現在)


○ガイドライン策定協力者 
   赤  間     宏 仙台市教育委員会教育相談課指導主事
   石  隈  利  紀 筑波大学心理学系教授
   伊  藤  逞  子 社団法人神奈川学習障害教育研究協会相談・指導室長
   緒  方  明  子 明治学院大学文学部教授
   金  澤  義  廣 千葉市養護教育センター指導主事
   河  村     久 東京都渋谷区立臨川小学校長
   小  枝  達  也 鳥取大学教育地域科学部教授(障害児病理学)
   酒  井  晴  夫 東京都三鷹市立第二中学校長
   篠  原  幹  浩 福岡県教育委員会教育振興部義務教育課指導主事
   須  田  初  枝 社団法人日本自閉症協会副会長
   高  山  恵  子 NPO法人えじそんくらぶ代表
   田  中  康  雄 国立精神・神経センター精神保健研究所児童・思春期精神保健部
               児童期精神保健研究室長
   月  森  久  江 東京都杉並区立中瀬中学校教諭
   鳥  海  順  子 山梨大学教育人間科学部教授(附属教育実践総合センター)
   西  谷     淳 滋賀県甲西町立三雲小学校教諭
   鋒  山  智  子 京都府総合教育センター指導主事
   山  岡     修 全国LD親の会会長

○資料提供者(本人用) 
   鈴  木  大  知 大学生
   藤  堂  高  直 大学生
   松  本  太  一 大学院生


本ガイドラインの策定に当たっては,厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部及び独立行政法人
国立特殊教育総合研究所から協力を得た。

○厚生労働省 
   大  塚     晃 社会・援護局障害保健福祉部企画課障害福祉専門官
   山  口  和  彦 社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課障害福祉専門官

○独立行政法人国立特殊教育総合研究所 
   小  林  倫  代 聴覚・言語障害教育研究部言語機能障害教育研究室長
   松  村  勘  由 聴覚・言語障害教育研究部言語器質障害教育研究室長
   佐  藤  克  敏 知的障害教育研究部軽度知的障害教育研究室主任研究官
   篁     倫  子 病弱教育研究部病弱教育研究室長
   海  津   亜希子 病弱教育研究部病弱教育研究室研究員
   花  輪  敏  男 情緒障害教育研究部情緒障害教育研究室長
   大  柴  文  枝 情緒障害教育研究部情緒障害教育研究室主任研究官
   是  枝   喜代治 情緒障害教育研究部情緒障害教育研究室主任研究官
   棟  方  哲  弥 情報教育研究部教育工学研究室長
   廣  瀬   由美子 分室主任研究官

なお,文部科学省においては,次の者が本ガイドラインの策定に当たった。 
   上  月  正  博 初等中等教育局特別支援教育課長
   内  藤  敏  也 初等中等教育局特別支援教育課特別支援教育企画官
   石  塚     等 初等中等教育局特別支援教育課課長補佐(併)軽度発達障害支援専門官
   柘  植  雅  義 初等中等教育局特別支援教育課特別支援教育調査官


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