障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に貢献します。

特別支援教育法令等データベース 総則 / 報告・答申等 - 特殊教育総合研究機関の設置について(報告) -


特殊教育総合研究機関の設置について(報告)
(昭和43年8月30日)



                          昭和43年8月30日


文部省初等中等教育局長
        天城  勲 殿


                特殊教育総合研究調査協力者会議議長
                              辻村 泰男



      特殊教育総合研究機関の設置について(報告)



 本会議は、特殊教育総合研究機関の設置および特殊教育の基本的な施策の
あり方について審議を進めてきましたが、このたび特殊教育総合研究機関の
設置について、別紙の結論に達しましたので、報告します。
 また、特殊教育の基本的な施策のあり方については、現在審議中でありま
すが、当面とるべき施策のあり方について検討し、一応別紙2のように取り
まとめましたので、参考のために中間的に報告します。
 なお、特殊教育の基本的な施策のあり方については、本年度末までに結論
を得る見通しですので、申し添えます。






別 紙       特殊教育総合研究機関の設置について(報告) I 特殊教育総合研究機関設置の必要性  最近における特殊教育の発展の状況をみると、養護学校・特殊学級の増設 などその量的拡大の面においては著しいが、特殊教育の質的充実の面におい ては、心身障害児の障害の種類、程度等の複雑多様性のため、心身障害児の 能力、特性等に応じた教育の内容・方法の確立が困難であることなど、全般 的に多くの聞題が残されている。  このような問題を解決し、特殊教育のいっそうの発展充実を期するために は、基礎となる科学的研究が必要であり、しかもその研究が総合的および実 際的に推進される必要がある。このため、その中心的機関として、特殊教育 総合研究機関を設置することが急務である。  なお、こうした特殊教育に冠する研究の成果ほ、普通児の心身発達の理解 に寄与し、教育全体の発展に大きく貢献するものであると考える。  以下、このことについて詳しく述べる。 1 特殊教育の総合的研究推進の面からの要請   特殊教育の研究には、教育学、心理学はもとより、心身の諸機能に障害 を有する者を対象とすることから医学が、社会復帰・社会適応の面から社会 学が、教材教具の開発の面から工学がそれぞれ関係するというように、多く の研究分野が関連しでいる。しかも心身障害児の能力、特性等に応じた教育 の内容・方法の確立のためには、単にそれぞれの分野からの研究だけではじ ゅうぶんな成果を期待することはできず、これらの関連諸科学相互の緊密な 協力による総合的研究が不可欠である。  しかしながら、わが国の大学等における特殊教育の研究は、教育学、心理 学等の個々の分野で行なわれており、研究者の数もじゅうぶんでない。また、 これら大学等研究機関が相互に協力して研究を総合し、発展させることので きる強力な体制に欠けているのが現状である。  このような状況を打開するために、特殊教育に関連する諸科学が協力して 総合的研究を推進する機関が必要であり、さらに、大学等における研究を有 機的に結びつけ、それぞれの協力関係を強化することによって、研究機能の 結集を図る体制が要望されている。  こうした必要にこたえるために、特殊教育総合研究機関の設置が必要であ る。 2 特殊教育の実際的研究推進の面からの要請  昭和42年度実施の「児童生徒の心身障害に関する調査」からも明らかなと おり、心身障害児の障害の状況は複維多岐にわたっているが、これに対処で きる効果的な教育の内容・方法の解明がじゅうぶんでないため、教育現場で は指導上種々の困難に直面しており、教育の実践に結びついた実際的研究の 推進が要求さわている。  特に、こうした研究の推進は、障害の複雑性と困難性のために、教育的配 慮がじゅうぶんに及んでいない重度・重複障害児や情緒障害児などの教育に おいて、強く要請されている。また、言語障害児や心身に障害を有する幼児 の早期教育についても、その教育の内容・方法にほ、まだ解明されていない 部分が多く、その研究の要望が強い。さらに、特殊教育の効率化のうえで重 要とされている障害の特性に適合した教材・教具の開発も、その特殊性のた めにきわめて不じゅうぶんである。  こうした特殊教育の立ち遅れに加えて、最近、心身障害児に対する社会的 関心が急速に高まっており、未開拓分野における研究開発について、社会的 要請が強くなってきている。  しかるに、現在の大学等における研究は、特定の学問分野における基礎的 研究にとどまらざるを得ず、教育現場や社会の要請にじゅうぶんこたえるよ うな実際的、応用的研究にまで発展しているとはいえない。  また、実際的研究は、教育現場と密接な連携をもって行なわれることが必 要であり、しかも、その成果は、すみやかに教育現場に普及されなけれはな らず、このためにも教員の研修が強く要請されている。  これらの要請にこたえるために、特殊教育総合研究機関の設置が必要であ る。 II 特殊教育総合研究機関の基本的性格  I で述べた種々の要請にこたえるために、特殊教育総合研究機関は、次の ような械能を有することを基本的性格とする。 1 特殊教育の総合的研究を行なう。  関連諸科学の各分野の協力による研究組織のもとに、特殊教育の総合的研 究を実施する。 2 学校教育の実践に結びついた実際的研究を行なう。  学校における教育的実践に役立つ実際的研究を行なう。このため、他に実 験研究の場が得られない重度・重複障害児等の教育の研究については、実験 教育研究施設を付設し、その他の障害児の教育研究については、既設の学校、 福祉施設または医療施設等の協力を得て実験研究を行なう。 3 大学等研究機関に対する協力活動  大学等研究機関と協力し、特殊教育研究に関する内外の情報、資料の提供、 研究セミナーの実施、客員研究員の受入れなどにより研究の促進を図る。 4 特殊教育の指導的立場に立つ教員等の研修を行なう。  特殊教育の指導的立場に立つ教員その他専門分野の教務員を研究室に配置 して実地研修を行ない、研究成果を教育現場た普及する。 III 特殊教育総合研究機関の概要 1 名   称 特殊教育総合研究所(仮称) 2 設置目的  心身障害児の教育について、閑連諸科学の協力による総合的、実際的研究 を行なうとともに、情報の収集、挺供、特殊教育の指導者等の研修を行ない、 もって特殊教育の振興に関する諸方策の推進に資する。 3 設置方式  この機関の基本的性格にかんがみ、文部大臣の所轄機関とすることが適当 である。 4 設置場所  心身障害児およびその保護者の利便、職員の確保等を考慮して、東京また はその近郊とすることが適当である・。 5 事業の内容  (1) 研 究      関連諸科学の協力のもとに特殊教育の、内容・方法の改善、確立     のために総合的、実際的研究を行なう。なお、当面の主要な研究と     して次のようなものが考えられる。     ア 心身障害児の特性に関する研究     イ 教育的診断と判別に関する研究     ウ 重度・重複障害児教育の研究     エ 情緒障害児教育・言語障害児教育の研究     オ 早期教育の研究     カ 学習指導法および教材教具の改善、開発に関する研究  (2) 大学等研究機関との協力活動      特殊教育研究に関する内外の情報、資料の収集、管理、提供、研     究成果の普及を行なうとともに、研究者に対する研究セミナーの実     施、客員研究員の受け入れなどの協力活動を行なう。  (3) 研 修      特殊教再の指導的立場に立つ教員その他専門分野の教職員に対し     て、各研究室への配慮により長期研修を行なう。 6 組   織  (1) 評議員会      この研究機関の事業計画、予算、人事、その他の運営、管理に関     する重要事項について研究機関の長に助言するため評議員会を設け     る。  (2) 研究部門      研究部を障害別に設けることを原則とするが、研究主題に応じ、     各研究部の協力により、有機的な連携のもとに研究ができるように     する。なお、研究部門には、臨床研究、治療教育を行なうために教     育相談、教再診断の施設を設ける。  (3) 企画・情報管理部門      大学等研究機関との協力活動、研究セミナーの実施、情報の収集、     管理、提供、研究成果の普及等を行なうための部門を設ける。  (4) 研修部門      特殊教育の指導的立場に立つ教員その他専門分野の教職員の研修     を行なうための部門を設ける。  (5) 附属実験教育研究施設      重度・重複障害児の教育研究を行なうための実験教育研究施設を     研究部門に附属して設ける。なお、これらの障害児以外の障害児の     教育に関する実験研究については、国公私立の特殊教育諸学校、特     殊学級、福祉または医療施設の協力を得て行なう。
付      特殊教育総合研究所(仮称)の組織図の例示         +--- 研究部門         |    視覚障害研究部  ---+         |    聴覚障害研究部  ---+         |    精神薄弱研究部  ---+         |    肢体不自由研究部 ---+--- 附属実験教育研究施設         |    病弱虚弱研究部  ---+・・・ 協力実験学校等         |    言語障害研究部  ---+ 所長 --+--+    情緒障害研究部  ---+      |  |     教材開発研究部  ---+      |  |    評議委員 |         +-- 企画・情報管理部門         |         +-- 研修部門         |         +-- 事務部門
別紙2 <省略>
サイトポリシー情報公開個人情報保護調達情報・契約監視委員会| Copyright © 独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所