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盲・聾・養護学校における自立活動の指導について

プロジェクト研究「盲・聾・養護学校における新学習指導要領のもとでの教育活動に関する実際的研究-自立活動を中心に-」(平成12~15年度)の概要

国立特殊教育総合研究所 教育支援研究部

石川 正孝

 平成11年3月の盲・聾・養護学校の学習指導要領の改訂により、従来の「養護・訓練」が新たに「自立活動」に改められ、その自立活動の指導に当たって個別の指導計画を作成することが求められた。 本プロジェクト研究では、新学習指導要領の大きな改善事項である自立活動に焦点を当て、「生きる力を育む」教育活動に関する実際的かつ総合的な検討を行うことを目的とした。

  1. 研究全体の概要
  2.  本プロジェクト研究は、次のような研究活動を進めた。

    1. 自立活動の指導に関する実態調査の実施と報告
    2. 子どもの実態に即した自立活動の指導に関する実践事例研究の実施
    3. 個に応じた教育活動の展開に関する学校システムの研究
    4. 特殊教育諸学校の今後のあり方に関する研究
  3. 自立活動に関する実態調査から
  4.  平成13年12月に本プロジェクト研究の一環として、全国盲・聾・養護学校を対象に自立活動に関する現状を調査した。この調査では、盲・聾・養護学校の在籍児童生徒の実態として、 盲・聾・肢・病の単一障害が19.5%、知的の単一障害が46.6%、重複障害が、33.9%を占めた。類型別の教育課程の児童生徒数の割合では、学年相応に準じる教育課程15.5%、 下学年適用5%、知的障害養護学校の教育課程53.5%、自立活動を主とする教育課程20.8%、その他5.3%であった。この数字から、盲・聾・養護学校在籍児童生徒の80%以上が、 知的障害に配慮された教育課程を適用されていること、また重複障害のある児童生徒は自立活動を主とする教育課程の他に、知的障害養護学校の教育課程を適用される場合があることがわかった。

     さらに、この調査の中で自由記述で回答を頂いた自立活動の指導に関する教職員が考えている課題、指導形態毎の指導内容などについて、分析を進めた。自立活動の指導の課題については、 「専門性の向上、研修」が多く挙げられ、また、自立活動の指導と教科や他領域の指導との関連を図る上での課題や問題点については、障害種を越えて、「自立活動の指導内容の整理」と 「児童生徒に関する教師の共通理解」について多くの指摘があった。

  5. 研究協力校における実践事例
  6.  本プロジェクト研究の研究協力校における実践事例では、児童生徒の実態の変化に応じた学校体制の見直し、個別の指導計画作成での保護者の参画、教員間の共通理解からの授業の充実、 関係機関との連携、他職種の専門家との協働など様々な視点から各学校が進める自己改革の取り組みがみられた。

  7. 海外の指導カリキュラム
  8.  スウェーデンでは、人権にかかる国際的な条約・宣言に基づく義務教育諸学校の学習指導要項の一部に知的障害の生徒のための基礎特殊学校と初期の発達段階にある重度・重複障害児のためのトレーニングスクールに関する教育課程が定められた。 トレーニングスクールの教育課程計画には「創造的活動」、「コミュニケーション」、「動作・運動」、「日常生活動作」及び「現実の理解」の5つの教科領域が設けられ、それぞれ教科領域ごとに、 教科領域の目標と教育における役割、学校の努力目標、授業領域の成り立ちと特色、生徒が学校卒業時に到達しているべき目標について記述される。

     英国資格カリキュラム局により編集された「学習困難児のためのカリキュラムの立案、指導、評価」は、通常学校、特殊教育学校、特殊学級、私立学校を問わず、 応用できることを意図してつくられた。対象となる生徒は、キーステージ4のレベル2以上に進む見込みのない重度・重複障害の生徒が含まれる。基本能力(コミュニケーション、数の応用、情報技術、 他者との協力、学識と成績の向上、問題解決)思考能力(感覚的認知と認識、早期の思考能力)、他の優先学習能力からなる。

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