平成19年度 第二期 特別支援教育専門研修 肢体不自由・病弱教育コース専門講義等内容
肢体不自由・病弱教育コース ○共通専門講義等
※ 日程・内容については、都合により一部変更する場合がある。
講義等題目 | 講師氏名(所属・職名) | 講義等内容 |
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1.障害のある人と福祉 | 日浦 美智江 (社会福祉法人訪問の家・理事長) |
重度知的障害と肢体不自由を併せ持つ人たちへの地域ケアの実態を通して、重度・重複障害のある人たちの地域生活や仕事、QOL、自己決定など現在の障害福祉の課題となっている事柄をどのように考えるか、また、彼らの社会への完全参加と平等を実現するための支援はどうあればいいのか、支援者の姿勢はどうあればいいのかを共に考える。さらに、そうした社会参加を目指して学校教育は何を、どのように提供すべきかについても触れる。 |
2.移行・進路支援の在り方 | 松為 信雄 (神奈川県立保健福祉大学・教授) |
進路指導及び移行支援は、障害の重度・重複化、多様化により課題が山積している。本講義では、進路指導及び移行支援に関する東京都における取り組みを紹介し、校内支援体制の在り方、地域との連携、多職種との協働、保護者への支援などについて述べる。 |
3.子どもの発達と課題 | 西牧 謙吾 (教育支援研究部・上席総括研究員) |
人は、幸せになる為に様々な技術(医学)、制度(保健・福祉・教育・医療)を発達させてきた。この講義では、病気の成り立ちについて学びながら、病気があっても幸せに生きるための条件を日々の仕事の中で問い直すことで、どうすれば明日への仕事のモチベーションを高めることができるか、一緒に考えてみたい。 |
4.子どもの心理発達と課題 | 島 治伸 (徳島文理大学・教授) |
人間の発達を個人とその環境との相互関係だけでなく、社会文化的、歴史的な文脈との相互関係の中で捉え、母子関係、発達課題、発達的危機、そしてアイデンティティーの概念を中心に発達理論を概説する。 |
5.教育課程編成の在り方と実際(1) -病弱特別支援学校- |
川戸 明子
(大阪府立羽曳野養護学校 ・校長) |
大阪府立羽曳野養護学校は、本校の他、府内地域の拠点病院に5つの分教室をもつ病弱特別支援学校である。本校,各分教室によって,在籍する児童生徒の疾患の状況は大きく異なる。今回は、心身症や不登校、慢性疾患、悪性新生物疾患などの児童生徒の教育的ニーズに合わせた教育課程編成や指導法の工夫等について述べる。 |
6.教育課程編成の在り方と実際(2) -肢体不自由特別支援学校- |
重光 豊 (京都市立呉竹総合支援学校・校長) |
京都市では、平成15年度より17年度まで文部科学省教育研究開発学校として、総合制・地域制の下での特別支援学校における教育課程はどうあるべきか~障害種別の枠を超えた教育課程の在り方に関する研究~を行ってきた。その概要を紹介するとともに、教育課程編成上の課題や指導上の工夫等について言及する。 |
7.教科指導の在り方と実際(1) | 松原 豊 (筑波大学附属桐が丘特別支援学校・教諭) |
肢体不自由のある子どもの体育指導における課題を明らかにし、筑波大学附属桐が丘特別支援学校における取組の実際について述べる。Adapted Physical Activityの理念に基づいた体育の目標、内容、方法、評価、安全に関する配慮、評価などについて検討したい。 |
8.教科指導の在り方と実際(2) | 宍戸 秀明 (仙台市立第二中学校東北大学病院分校・教諭) |
文部科学省刊行の「病弱教育の手引-教科指導編-」を基に、病弱教育における実技を伴う教科指導について、指導上の課題を明らかにしながら指導上の留意事項について確認する。さらに、音楽科の指導の実際について教材を使って具体的に示す。 |
9.教育課程の編成 -特別支援学級等を含む- |
山本 昌邦 (横浜国立大学・名誉教授) |
特別支援教育諸学校における教育課程の基準である「盲学校、聾学校及び特別支援学校小学部・中学部学習指導要領」の規定のうち、総則及び自立活動を中心に取り上げ、教育課程の編成・実施の要点及び今後の課題等について概説する。 |
10.特別支援学校におけるセンター的機能 (1) | 中田 正敏 (神奈川県立田奈高等学校・校長) |
特別支援教育を推進していく上で、特別支援学校のセンター的機能は大変重要である。本講義の午前中は、特別支援学校におけるセンター的機能の意義や在り方について実践を交えて概説し、午後は、肢体不自由特別支援学校におけるセンター的機能の実際について述べる。 また、各学校における実践上の工夫や課題などについて情報交換をしたい。 |
11.特別支援学校におけるセンター的機能 (2) | 小田部 恵 (東京都立あきる野学園養護学校・教諭) |
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12.医教の連携と協働 (1) -子どもが育つ共同体としての病院 |
山口 悦子 (大阪市立大学大学院・病院講師) 渥美 公秀 (大阪大学大学院・准教授) 西牧 謙吾 (教育支援研究部・上席総括研究員) |
病院も子どもが育つ地域とみることで、院内学級が単なる病気の子どもの教育の保障の場というだけでなく、医療や病院で働く様々な職種との出会いから教育に新たな可能性を見いだすことができる。大阪市立大学付属病院の試みを通して、特別支援教育に必要な視点である「地域づくり」の本質を学ぶ。 |
13.医教の連携と協働 (2) -高次脳機能障害の医療と教育的対応- |
栗原 まな (神奈川県総合リハビリテーションセンター・小児科部長) 本多 良子 (神奈川県立秦野養護学校かもめ学級・教諭) 西牧 謙吾 (教育支援研究部・上席総括研究員) |
脳炎脳症や交通事故等の後遺症として起こる高次脳機能障害は、子どもの場合、治癒過程と成長発達に修飾され、変化する多彩な障害像を呈し、既存の障害種を超える対応が求められる。子どもの高次脳機能障害の医療の実際を学び、その教育的対応について考える。 |
14.演習: 障害の理解Ⅰ・Ⅱ | 中澤 惠江 (教育支援研究部・総括研究員) 藤鹿 一之 (東京盲ろう者友の会・理事) 中山 喜崇 (長野県松本ろう学校・教諭) |
盲ろうの代表的な困難は「外部からの情報摂取」「コミュニケーション」「移動・方向定位」にある。ここでは、全盲ろうの疑似体験によって、コミュニケーション能力や情報収集能力を著しく低下させ、その低下が自分の行動や思考や感情に何をもたらすかを体験し、共感・理解を試みることで、盲ろうという重複障害の理解とともに、自らの児童・生徒とのかかわり合いについて見つめ直すきっかけを提供することを目的としている。 |
15.訪問教育における指導の実際と課題 | 吉川 一義 (金沢大学・教授) |
本講義ではまず、訪問教育の意義と歴史的経過を踏まえて現状の一端を紹介し、課題を明らかにする。ついで、訪問教育の場を念頭におきながら障害の重い子どもらへの指導の実際を紹介し、教育的かかわりのあり方を考える。保護者との相互協力についても考えたい。 |
16. 「総合的な学習の時間」の在り方と実際 (1) | 一木 薫 (筑波大学附属桐が丘特別支援学校・教諭) 山田 義成 (熊本県立黒石原養護学校 ・教諭) |
一木 薫:桐が丘特別支援学校(特に中学部を中心に)における取組の実際について述べながら、総合的な学習の時間のねらい、内容、方法、評価等について検討をしたい。 山田 義成:黒石原養護学校における取組と課題取について述べる。 |
17. 「総合的な学習の時間」の在り方と実際 (2) | 川間 健之介 (筑波大学大学院・准教授) |
各学校で取り組まれている「総合的な学習の時間」の実践に関して、様々な課題が指摘されている。ここでは、肢体不自由特別支援学校における取組を中心に、学習のねらい、方法、内容、評価について検討すると同時に教科や自立活動との関連について講義する。 |
18. 演習: 障害の理解Ⅲ -私からのメッセージ- |
磯田 真一 (マイクロソフトディベロップメント㈱・ITラーニング所属) 渡邉 正裕 (教育研修情報部・研究員) |
体験をもとにした講義をとおして、障害のある方への対応の在り方について振り返る。 |
19.緩和的ケア | 松島 たつ子 (ピースハウス病院ホスピス教育研究所・所長) |
死という最大の喪失、その悲しみを癒すことができるのか。講義ではホスピス緩和ケアの考え方と日本の現状を説明した後、ホスピスの入院相談から入院中の療養生活、死別後のケアまで、独立型ホスピスにおけるケアの実際を紹介し、終末期ケアについて考えてみたい。 |
20.演習: 障害の理解Ⅳ -動きをとおして考える- |
當島 茂登 (教育支援研究部・総括研究員) 林 菊盛 (千葉県立船橋特別支援学校・教頭) 滝川 国芳 (教育支援研究部・主任研究員) 徳永 亜希雄 (企画部・主任研究員) |
「ボッチャー」「車いす」「運動障害の疑似体験」の体験をとおして、障害のある子どもの視点から、適切な指導や必要な支援の方法について検討する機会とする。 |
21.学ぶということの意味 | 佐伯 胖 (青山学院大学・教授) |
過去の学習論の変遷を、行動主義から、認知心理学を経て、状況的学習論へという3つのパラダイム転換として捉える。 とくに、最近の正統的周辺参加論を中心に、学習・発達観の転換、それに伴う個体能力還元主義からの脱皮を説く。 |
○研究協議等
題目等 | 内容等 |
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研究協議 | 指導事例や学校事例など、自らかかわっている事例について小グループで協議を行う。 小グループは、コース全体が5班に分かれ、それぞれの班に研究所職員が入る。 全体で8コマを設定している。 |
課題研究 | 研修員それぞれの課題の解決に向け、図書館での資料収集、他機関への訪問等、研修員が主体的に計画を立てて取り組む研修の時間である。 全体で10コマを設定している。 所外での研修を行う場合は、所定の手続きによる。 |
○肢体不自由教育専門講義等
講義等題目 | 講師氏名(所属・職名) | 講義等内容 |
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1.コミュニケーションに視点を置いた指導の実際 | 齊藤 由美子 (教育支援研究部・研究員) |
肢体不自由や重度の障害のある子どもとのコミュニケーション、特に、シンボルを用いないレベルでのコミュニケーションを考える際、①学習者(障害のある子ども)、②コミュニケーションのパートナー、③環境の状況や文脈、この3つのそれぞれに焦点をあてた配慮が必要である。この講義では、コミュニケーションの「3フォーカス フレームワーク」の考え方を紹介し、学校や生活の実際的な場面での具体的な観察点や配慮事項、工夫について実例を挙げながら考えてきたい。 |
2.肢体不自由教育の現状と課題 | 下山 直人 (文部科学省初等中等教育局特別支援教育課・特別支援教育調査官) |
肢体不自由教育の現状を考察するとともに、肢体不自由特別支援学校の特色ある教育活動を紹介しながら、特別支援教育における肢体不自由教育の在り方や課題について言及する。 |
3.重度・重複障害のある子どもの身体運動の捉え方 | 笹本 健 (企画部・上席総括研究員) |
重度・重複障害がある子どもに対し、彼らの「身体運動・身体の動き」を教育的な課題とするとき、どのようにそれらを捉えたらよいのか、どのように実践の展開を行ったらよいのか、について日本における昨今の教育施策の動向に照らし合わせながら述べるとともに、実践事例を紹介する。 |
4.肢体不自由のある子どもの教育環境とバリアフリー | 飯野 雄彦 (社会福祉法人みなと舎「ゆう」・施設長) |
肢体不自由の障害は、ご本人にとってのハンディであるばかりでなく、そのご家族にとっても大きなハンディとなっている。そのハンディを埋める手段こそ障害に対する精神的・肉体的・社会的バリアフリーを生むもととなるのだが、埋める手段とは何か考えていきたい。 |
5.認知、コミュニケーションの発達と障害 | 宇佐川 浩 (淑徳大学・教授) |
知的障害のある子どもへの認知発達臨床アプローチの意義とその果たす役割について概観し、知的障害のある子どもの認知発達過程とその子どもの認知発達に応じて必要とされる臨床アプローチについて論述する。 (*知的障害教育コースと共通) |
6.重度・重複障害のある子どもへのAAC活用 | 渡邉 章 (教育研修情報部・総括研究員) |
重度の表出障害のある人の双方向のコミュニケーションを確保する拡大・代替コミュニケーション(AAC)の考え方を述べ、実際の生活や学習の場での具体的な活用方法について検討する。 |
7.ICFの視点から見た身体へのアプローチ | 徳永 亜希雄 (企画部・主任研究員) |
これまで行われてきた肢体不自由のある子どもの身体の動きに関する指導について、ICF(国際生活機能分類)の視点から概観すると共に、今後期待される、多職種間の連携のもとでの、身体についてのアプローチについて検討する。 |
8.肢体不自由特別支援学校における新しい学校経営 | 神山 寛 (東京都立光明養護学校・校長) |
特別支援教育への変革期の中で、国の主な動向と、肢体不自由特別支援学校のこれまでの実績を継承し、これからの特別支援教育に関する諸施策と関連させ、新しい学校経営について講義する。また全国の肢体不自由特別支援学校の動向や取組の実際について述べる。 |
9.自立活動における評価と指導 | 古山 勝 (千葉県立銚子特別支援学校・教諭) |
肢体不自由のある子どもの指導について、自立活動における評価と指導の実際について述べる。内容として、1)教育課程と自立活動、2)自立活動の内容、3)個別の指導計画(実態把握、目標設定など)、4)自立活動における評価を取り上げる。 |
10.言語発達の評価と指導の実際 | 坂口 しおり (東京都立府中養護学校・教諭) |
本講義では、ことばの発達やその障害について概説しつつ、ことばに障害のある子どもへのアセスメント法について講義する。また、指導の実際を紹介しながら 肢体不自由のある子どものコミュニケーションに関する支援のあり方について考える。特に、最近の脳科学の研究領域についても言及する。 |
11.医療的ケアを必要とする子どもへの医学的対応 | 山田 美智子 (神奈川県立こども医療センター重症心身障害児施設・施設長) |
当センターには、重症心身障害児施設が併設されている。機能として、在宅児への医療的ケアのバックアップ、有目的・有期限で施設入所を進め、家族の急用やレスパイトを目的にした短期入所を推進した在宅支援を行ってきた。施設を利用した肢体不自由特別支援学校の教員研修を28年間行っている。横浜市の医療的ケアの取り組みを紹介し、「在宅及び特別支援学校における日常的な医療の医学的・法律的整理に関する研究」報告書を受け、文部科学省から出された「盲・聾・養護学校におけるたんの吸引等の取り扱いについて(通知)」について横浜市の立場から意見を述べる。 |
12.肢体不自由のある子どものポジショニング | 花井 丈夫 (横浜療育医療センター・リハビリテーション科長) |
PTの立場から、肢体不自由のある子どもたちへのかかわり方について、ポジショニングを中心に述べたい。学校や家庭等での生活をできるだけ快適に過ごし、ひいては機能向上にもつながるような子どもたちへの介助の仕方について、介助する側の姿勢や身体の使い方等に重点を置きながら、実技を交えて取り組む。 |
13.聴知覚・認知の評価とその指導 | 藤本 裕人 (企画部・総括研究員) |
聴知覚の基本的な発達過程をふまえ、聴覚と音声言語の関係、重複障害児の聴力検査の実際について紹介の演習を行う。 |
14.知的障害教育における領域・教科を合わせた指導の理論 | 木村 宣孝 (教育支援研究部・総括研究員) |
知的障害教育における教育課程編成の在り方を概説するとともに、特に領域・教科を合わせた指導の考え方及び子ども主体の学習活動の展開の在り方について論述する。 (*知的障害教育コースと共通) |
15. 摂食困難への対応 | 向井 美惠 (昭和大学・教授) |
肢体不自由のある児童生徒の中には、食物摂取機能に障害がある場合も多い。生活機能の基本である摂食・嚥下機能の発達過程、機能不全の内容を理解し、教育の場で実践できる知識を身に付ける。 |
16.視知覚・認知の評価とその指導 | 佐島 毅 (筑波大学・准教授) |
肢体不自由児や障害が重度の子どもの中には、視覚に何らかの障害や問題を持っている子どもが少なくない。しかし、私たちは、見えにくいために分からなかったり不安であったりする子どものことを見過ごしてはいないだろうか。ここでは、様々な視覚の問題と、見えにくさのある子どもの認知状態への理解を深めたい。また「視る」という視点から、子どもの実態を正しく評価・把握し、アプローチする方法について具体的に考えたい。 |
17.原初的コミュニケーション論 | 鯨岡 峻 (中京大学・教授) |
以下の視点から障碍の重い子どもとのコミュニケーションを考える。(1)人はなぜコミュニケーションに向かうのか、(2)感性的に通じ合う経験、(3)感性的コミュニケーションの身体的基盤、(4)障碍の重い子どもとのコミュニケーション、(5)コミュニケーションにおける教師の役割 |
18. 重複障害のある児童生徒の指導 -肢体不自由- |
徳永 豊 (企画部・総括研究員) |
実態把握、目標設定、指導内容・方法、評価において、動きに不自由がある場合の課題や工夫について考える。特に、行動の基礎となる対人意識や運動、社会性の発達を促すために、からだの動きを題材にした取組とその基本的考え方について紹介する。 (*知的障害教育コースと共通) |
19.身体の動きの評価と指導の実際 | 徳永 豊 (企画部・総括研究員) |
受講者自身が身体を動かす体験をもとに、①身体を動かす中での困難さ、②一緒に「身体の動き」の指導に取組む構造、③必要となる力の要素(子ども側と教師側)を考え、動きの指導における工夫や実施の展開、その評価について検討する。 |
20. 肢体不自由のある子どもの感覚運動指導の実際 | 當島 茂登 (教育支援研究部・総括研究員) |
肢体不自由特別支援学校には教科前学習の段階の子どもが多く在籍している。このような子ども達に対する指導の一つとして感覚運動指導がある。本講義の前半は、発達の初期段階における感覚運動指導の重要性について述べる。特に、指導内容・方法を検討する手がかりになる学習の系列、アセスメント法などについても言及する。講義の後半は実技をとおして考える。 |
21. 障害のある子どもの思春期の課題と性教育 | 田村 和宏 (びわこ学園障害者支援センター・センター長) |
障がいのある子どもたちは、思春期にはいると身体だけではなく心の世界も大きく変化します。こころとからだの大きな変化は、時に障がいによって子どもたちの内面で均衡がとれず、大きな葛藤となってさまざまな姿となって現れてきます。 本講義では、性のことをはじめとした子どもたちの葛藤や自己変革の願いに対してそこにどうむきあっていくのかということについて、具体的なケースを通してともに学びあいたい。 |
○実地研修
1、2は、各班よりいずれか1か所を選択し、受講する。
題目等 | 研修先 | 研修内容 |
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特別支援学校の取り組みの実際① | 神奈川県立座間養護学校 | 当研究所の課題別研究「ICF児童青年期バージョンの教育施策への活用に関する開発的研究」の研究協力機関である同校において、肢体不自由のある子どもの教育を中心に、ICFの考え方に基づく教育実践について考える機会とする。 各教室等における指導の様子を見学した後、学校の取り組みについて質疑応答いただく予定である。 神奈川県立座間養護学校 〒228-0024 神奈川県座間市入谷2-314-1 |
特別支援学校の取り組みの実際② | 東京都立城南養護学校 | 当研究所の課題別研究「肢体不自由のある子どもの教育活動における「評価」及び「授業の改善・充実」に関する研究」の研究協力機関であり、肢体不自由のある子どもの教育の実際について研修を行い、教育活動における評価及び授業の改善・充実のあり方について考える機会とする。 各教室等における指導の様子を見学した後、学校の取り組みについて質疑応答いただく予定である 東京都立城南養護学校 〒144-0046 東京都大田区東六郷2-18-19 |
○病弱教育専門講義等
講義等題目 | 講師氏名(所属・職名) | 講義等内容 |
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1.不登校児の心理 | 石川 瞭子 (創造学園大学・教授) |
近年、不登校の状態像は多様化の傾向にあり、現代型ないし新しいタイプの不登校が報告されて10年以上が経過する。 現代型の不登校は多様なタイプがあるため、解決の決め手や有効策がないとされている。 講義では、これらの中でも特に対応が困難とされる、校内型不登校の現状と対応策の提案を行う。 |
2.病弱教育の現状と課題 | 丹羽 登 (文部科学省初等中等教育局特別支援教育課・特別支援教育調査官) |
我が国の病弱教育の現状について、①20世紀の病弱教育 ②病気の種類の変遷 ③病弱教育の意義 ④これからの病弱教育について分析し、21世紀の病弱教育の在り方について考察する。 併せて病弱教育の充実のための課題と具体的展開の方策について考える。 |
3.学習のつまずきの実態把握とその指導 | 海津 亜希子 (企画部・研究員) |
学習のつまずきに対してアプローチするには、どういう領域や課題においてつまずきを示すのか、つまずき方に特徴がみられるかなど、詳細な実態把握が不可欠になる。ここでは、その実態把握の際の視点と方法、さらには指導方法について、事例を交えながら概説する。 |
4.病気のある子どもの見方 | 村上 由則 (宮城教育大学・教授) |
慢性疾患は障害としての性格をもち、病弱児には特別な援助が必要である。
教育は、病状変動の認知、変動の原因の認識、生活水準での対処、そしてそれらを支える受容にとって、重要な役割を担う。 ここでは、子どもの行動と援助に関して具体例をあげて検討する。 |
5.小児ガンにおけるトータルケアの在り方 | 細谷 亮太 (聖路加国際病院・副院長) |
小児がんの中でもっとも高頻度に発生する白血病の子どもたちのトータルケアとはなにかをまず説明する。 続いて、病気の説明の仕方(病名告知)、子どもたちのQOL、ターミナルケア、そして亡くなった子どもの家族へのケアなどについて考えを述べる。 (*所外研修として、聖路加国際病院にて行う。) |
6.病気のある子どもへの自己管理支援 | 武田 鉄郎 (和歌山大学・教授) |
病弱のある子どもの自己管理を支援していくために、健康の概念、セルフケアについての概念を明確にし、自己管理能力を高めるための支援の仕方を探る。 その中で、ストレス対処過程でのソーシャルサポートや対処行動、又は自己効力感の効用について述べる。 |
7.難病の子どもと福祉 | 小林 信秋 (難病の子ども支援全国ネットワーク・事務局長 |
子どもの難病は指定されているだけで500種類を越え、全国で20万人以上の子ども達が難病と闘っている。 難病のこども支援全国ネットワークは、これらの子どもと家族のために情報提供と交流活動を進めている。その活動の一端を紹介しながら難病の子どもと福祉について講義を行う。 |
8.アレルギー疾患の医療と学校保健 | 大矢 幸弘 (国立成育医療センター遺伝科・科長) |
小児のアレルギー疾患は有病率の高い慢性疾患であるが、さまざまな誤解が敷衍しており、不適切な対応や情報に振り回されて苦しむ患者・家族が絶えない。 高い水準の根拠に基づく対応によって、学校保健現場で解決できることは何か、という視点を軸に授業を進めていきたい。 (*所外研修として、国立成育医療センターにて行う。) |
9.未熟児医療と障害のある子ども | 楠田 聡 (東京女子医科大学母子総合医療センター・教授) |
新生児医療の目覚しい進歩により、低出生体重児、ことに出生体重1,500g未満の極低出生体重児の生存率は飛躍的に向上した。その進歩の光と陰に焦点を当てて、今後の未熟児医療について考える。医療現場から、これらの児がもつ発達上のリスクにも言及する。 (*所外研修として、東京女子医科大学附属病院母子総合医療センターにて行う。) |
10.発達障害のある子どもの理解と支援 | 藤井 茂樹 (教育支援研究部・総括研究員) |
LD・ADHD・高機能自閉症は障害として気づかれにくいところがあり、従って適切な対応も遅れがちになる。また、これらの子どもは周囲の人や環境との適応過程にストレスを受け易く、心理面、身体面、行動面の症状・問題を呈することも少なくない。心身症や習癖も含めた適応障害の理解と心理教育的対応を論じる。 |
11. 医学の進歩と遺伝病 | 大橋 博文 (埼玉県立小児医療センター遺伝科・科長) |
医学の分野としてますますその重要性が注目されている臨床遺伝学の基礎を説明する。先天異常と遺伝病、遺伝病の分類と概説、主な染色体異常症、遺伝相談と出生前診断などに関連して医療倫理についても触れる予定である。 慢性疾患は障害としての性格をもち、病弱児には特別な援助が必要である。教育は、病状変動の認知、変動の原因の認識、生活水準での対処、そしてそれらを支える受容にとって、重要な役割を担う。ここでは、子どもの行動と援助に関して具体例をあげて検討する。 |
12. 病気のある子どもの自立活動の実際 | 平賀 健太郎 (大阪教育大学・講師) 辻 優子 (福岡市立福岡中央特別支援学校・教頭) |
障害観の変化、自立観の変化について述べると共に、養護・訓練から自立活動に学習指導要領が改訂された経緯、ポイントを述べ、病気の多様化・重症化に対応していくための自立活動の授業や評価について概説する。 また、自立活動の授業を進めていく際に、行き詰まりという観点から自立活動に関して課題整理・解決方法を提案する。指導の実際として、慢性疾患の自立活動の実際、心身症等の自立活動の実際について講義し、よりよい自立活動の在り方について協議を行う。 |
13.関係性の障害とその対応 | 植木田 潤 (教育相談部・研究員) |
子どもの情緒発達は、現実の人間関係である「対人関係」と、各人の心的な世界で展開される人間関係である「対象関係」という二つの「関係性」の中で育まれていく。障害や疾病のある子どもが陥る二次障害の背景には、しばしばこうした関係性の障害が認められることがあり、ここでは、その力動について理解するとともに、その対応について事例を通して考えていくことを予定している。 |
14.児童虐待 | 岡本 正子 (大阪教育大学・教授) |
全国の児童養護施設では、約3万人の子どもたちが虐待を理由に入所し、近隣の小中高等学校に通学しています。虐待は、学校現場で発見される場合もあり、教員といえども、基礎的な知識が必要です。この講義では、日本における児童虐待の現状と教員としての対応の仕方を中心に述べる。 |
15.神経・筋疾患の医療と学校保健 | 夛田羅 勝義 (国立病院機構徳島病院・副院長) |
筋ジストロフィーという疾患を通じて、呼吸すること、食べることの意味を考え、病気の子どもにとって、教育の意義を医師の立場から言及する。また、筋ジスという病気と折り合いをつけ、自分らしい生き方をするとはどういうことかを考える。 |
16.病気のある子どもへの心理的支援 | 篁 倫子 (お茶の水女子大学・教授) |
病気に罹り、病気と共に生き、あるいは死に直面する時、子どもはどのような心理的過程をとおるのか。それに対してトータルケアにおける教育の役割とは、教師がなす心理的援助とは何かを考える。 |
17. 病弱教育の歴史 | 滝川 国芳 (教育支援研究部・主任研究員) |
我国の病弱教育対象児童生徒の病気の種類の変遷について社会的背景及び学校衛生と併せて概観し、特別支援教育における病弱の子どもの教育の在り方を考える基盤を培う。 (1)病弱虚弱教育の萌芽期(2)休暇集落全盛期(3)戦後の教育制度における病弱教育の位置づけ(4)対象児童生徒の病気の種類の変遷 |
18. 病気と共に生きること | 岡 茂 (東海大学・教授) |
疾病や内部障害をもつ人々の行動・生き方・価値観について論述する。様々な疾病や虚弱さを担いながら、よりよい人生を生きるとはどういうことか、何が必要かという問題を、現在の行動を横軸に、ライフ・スパンを縦軸にとり、事例を交え考察する。 そもそも自己とは何か、人生を生きることは自己を生きることであり、どのような要素から成り立っているのか、さらに自己認知の変革について考える。 |
○実地研修
題目等 | 研修先 | 研修内容 |
---|---|---|
1.医療施設での取組の実際① | 聖路加国際病院 (東京都立墨東養護学校訪問教育による院内学級) |
白血病の子どもたちの医学、看護、心理、教育等からのトータルケアの実際を研修し、その実態を把握すると共に、白血病、腫瘍などの小児がんに羅患した子どものターミナルケア、トータルケアの在り方について考える機会とする。 聖路加国際病院 (東京都立墨東養護学校訪問教育による院内学級) 〒104-8560 東京都中央区明石町9-1 |
2.特別支援学校での取組の実際 | 神奈川県立秦野養護学校 | 病弱特別支援学校での「個別教育計画」や「個別の支援計画」について、実践例を基に研究協議を行う。 教育相談機能の強化、地域と共同で行う研究・研修事業、地域ネットワークづくり等のセンター的機能充実に向けた活動の実際について学校を訪問し研修を行う。 神奈川県立秦野養護学校 〒257-0025 神奈川県秦野市落合500 |
3.医療施設での取組の実際② | 東京都立光明養護学校そよ風分教室 (国立成育医療センター院内学級) |
国立成育医療センターは,我が国の小児の高度専門医療センターとして位置づけられている。難病患者への高度先駆的医療の実際と小児救急医療、周産期医療を含めた成育医療全般について,病院視察を行う。また,センター内の院内学級の授業参観を通して,児童生徒の学習環境の一考としたい。 東京都立光明養護学校そよ風分教室 (国立成育医療センター院内学級) 〒157-8535 東京都世田谷区大蔵2-10-1 |
4.医療施設での取組の実際③ | 東京女子医科大学母子総合医療センター | 新生児医療の目覚しい進歩により、低出生体重児、ことに出生体重1,500 g 未満の極低出生体重児の生存率は飛躍的に向上した。しかし、これらの児には発達上のリスクを持つ子どもたちが少なくない。新生児医療の現場を見学し、現代医療と子どもの生活の質を考える。 東京女子医科大学母子総合医療センター 〒162-8866 東京都新宿区河田町8-1 |