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平成21年度第一期特別支援教育専門研修 重点選択プログラム 講義等内容

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平成21年度 第一期 特別支援教育専門研修 重点選択プログラム 講義等内容

※都合により一部変更する場合がある。

①知的発達の遅れを伴う自閉症

講義等題目等 講師氏名(所属・職名) 講義等内容
自閉症教育における現状と課題井上 昌士
(教育支援部・総括研究員)
 自閉症教育をめぐる課題を整理するとともに,国立特別支援教育総合研究所の研究成果に基づいて今後の自閉症教育の在り方について論述する。
久里浜特別支援学校の授業改善の実際山内 功
(筑波大学附属
久里浜特別支援学校・教諭)
 久里浜特別支援学校における研究活動の概要と,教育課程の特徴や自閉症の特性を踏まえた指導内容及び実際の授業改善の取組等について論述する。
(演習・協議)
自閉症教育における授業改善の実際①②③④⑤
【久里浜特別支援学校における授業改善と担当教員との協議】
筑波大学附属久里浜特別支援学校
研究所関係スタッフ
 5グループに分かれて,各教室の在籍幼児児童の実態,日課,授業のねらい等について教室担当教員から説明を受け,個別の課題学習,集団での学習などを見学及び一部授業者として参加し,授業記録をとる。
 授業の記録に基づいて授業実践を振り返り,指導内容,教材・教具,指導方法,環境整備,かかわり方等の視点から協議を行う。
主体的な授業参加を促す授業改善の在り方藤原 義博
(筑波大学特別支援教育研究センター・センター長)
 自閉症児の主体的な授業参加を促す授業改善の在り方及び指導内容・方法について,授業目的に応じた活動量や参加機会の確保,人のかかわり方や動線,物や手がかりの配置の工夫,指導者の位置と役割分担の整理等の観点から論述する。
主体的な授業参加を促す支援ツールとその活用武藏 博文
(香川大学・教授)
 支援ツールのねらい・考え方,働き等について解説するとともに,自閉症児がわかって自ら動ける授業作りや支援ツールの活用の在り方について,授業の成果を家庭や地域に生かしていく視点も踏まえて論述する。
(演習・協議)
自閉症教育における授業改善のまとめ①②
研究所関係スタッフ 実践演習から得られた知見のポイントをグループごとに協議し,全体で共有化する。

②重度・重複障害

講義等題目等 講師氏名(所属・職名) 講義等内容
重度・重複障害のある子どものかかわりの観点川住 隆一
(東北大学大学院・教授)
 重度・重複障害のある子どもたちが主体的・能動的に様々な学習活動を展開するために、子どもたちの身体のごくわずかな動きや自己刺激行動などの自発的な動きや行動から、人との関係が深まる糸口や、子どもが周囲の世界に関心を向ける糸口等の子どもとかかわる観点について述べるとともに、子どもが環境状況等について情報を収集し、知覚・認知していくための中心的な活動である探索活動についても言及する。
(講義・協議)
医療的ケアを必要とする子どもの教育的支援
大崎 博史
(教育研修情報部・主任研究員)
金崎 美和子
(島根県立出雲養護学校・教諭)
北川 末幾子
(大阪府立藤井寺支援学校・養護教諭)
 学校教育における医療的ケア実施の現状を概説するとともに、医療的ケアを必要とする子ども達を学校がどのような体制で、どのように支援しているのかについて各学校から話題提供を行う。また、教員と看護師の連携協力体制や医療的バックアップ体制、保護者の参加と協力の仕方、医療的ケアの実施による子どもへの教育的効果について検証し、医療的ケアを必要とする子どもの教育的支援の現状と課題について言及する。
(講義・演習・協議)
重複障害のある子どもの環境の把握とコミュニケーション①
-障害の理解-
中澤 惠江
(企画部・上席総括研究員)
齊藤 由美子
(教育研修情報部・研究員)
 知的障害や運動障害に感覚障害を併せ有する子どもにかかわるとき、情報及びコミュニケーションを保障することが不可欠である。この演習では、「弱視」「難聴」等の疑似体験によって、情報収集能力やコミュニケーション能力を低下させた状態が行動や思考や感情に何をもたらすかを体験し、障害状況の理解と共感を試みる。この演習によって、自らの児童生徒とのかかわり合いについて見つめ直すきっかけを提供すると共に、感覚障害を併せ有する重複障害のある子どもへの配慮について学ぶことを目的としている。
(講義・協議)
重複障害のある子どもの環境の把握とコミュニケーション②
-アセスメントから実践へ-
齊藤 由美子
(教育研修情報部・研究員)
 この講義では、実態把握の難しいコミュニケーションの困難な重複障害のある子どもに対して、視覚による環境把握の初期的な力、受信・発信方法、人とのやりとりの力についてのアセスメントについて概説する。これらのアセスメントは、重複障害のある場合に見落とされがちな子どもの持つ力への気づきを促すことを目指している。さらにアセスメントの結果をどのように実践へと展開するかについて、実例を挙げて言及する。
(講義・演習・協議)
重複障害のある子どもの環境の把握とコミュニケーション③
-コミュニケーションを促すわかりやすい環境づくり-
西谷 貴美江
(横須賀市立養護学校・総括教諭)
角野 ひろ子
(横須賀市立養護学校・総括教諭)
 重度の知的障害を併せ有する重複障害のある子どもとのコミュニケーションを考える際、その子どもとって「なに」「どこ」「だれ」が把握しやすいような環境を整えることは重要である。子どもの実態把握から行う環境設定の配慮、コミュニケーションが生じやすくなる物理的・人的環境や状況の文脈づくりについて、学校や生活場面で行う具体的な配慮や工夫について、実践例を通して論述するとともに、演習を行う。
重度・重複障害のある子どもの授業づくり山田 規美江
(北海道教育大学・非常勤講師)
 教育にとって一番大切な日々の「授業」について考え、教師が、重度・重複障害のある子どもを目の前にしたとき、どのように子どもと向き合うのか、子どもの思いや願いをかなえるためにはどうすれば良いか等について言及するとともに、子どもの「学ぶ」ことへの興味関心を大切にした授業づくりはいかにあるべきかについて考えを述べる。
(講義・協議)
訪問教育の現状と指導の実際
大崎 博史
(教育研修情報部・主任研究員)
長 正晴
(埼玉県立和光特別支援学校・教諭)
黒川 和枝
(神奈川県立金沢養護学校・教諭)
 訪問教育は、重度・重複障害のある子どもや療養中の児童生徒の他、学校に通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対して、教員が家庭や児童福祉施設、医療機関等を訪問して行う教育である。訪問教育の授業を展開するにあたっては、子どものその日の体調や訪問先の事情に大きく影響を受けることがある。また、通学生に比べて、授業場所や授業数等も限定されている。しかしながら、子ども一人ひとりにじっくりとかかわり、子どものニーズに十分対応できる教育でもある。 この講義では、訪問教育の現状を概説し、実際に家庭訪問教育、施設訪問教育担当教員の話題提供を受け、訪問教育における指導上の工夫や配慮点等、訪問教育の現状と課題、指導の実際について協議する。

〇実地研修
(希望により、1箇所を選択。希望数によっては調整する場合がある。)

題  目  等 研  修  先 研修内容
重度・重複障害者の一生涯を通した支援の在り方と実際
  1. 社会福祉法人横浜共生会
    「どんとこい・みなみ」
    (地域活動ホーム)
  2. 社会福祉法人みなと舎
    「ゆう」
    (知的障害者更生施設)
  3. 社会福祉法人訪問の家
    「朋」
    (知的障害者更生施設)
  4. 社会福祉法人聖テレジア会
    「小さき花の園」
    (重症心身障害児施設)
  5. 会福祉法人風祭の森
    「太陽の門」
    (重症心身障害児(者)施設)
 重度・重複障害のある方の一生涯を通した支援を実施している福祉施設での実際の活動の様子を知り、受講者もその活動に一緒に参加し、活動後に一日の振り返りと協議を行うことによって、あらためて障害のある方々への学校教育の在り方について見つめ直すことを目的としている。
  1. 「どんとこい・みなみ」は、生活支援やデイサービス、余暇活動支援、みなみっこルーム等のサービスを実施している地域活動ホームで、一人ひとりのメンバーが自分で選び、自分で決めるための支援を組織的に実施しているところでもある。
    〒232-0033 神奈川県横浜市南区中村町4-270-3
  2. 「ゆう」は、重度・重複障害のある人を対象とした知的障害者更生施設である。学校卒業後の日中の活動の場として地域での生活を支えている。メンバー一人ひとりに対応した支援等のユニークな取組も実施している。
    〒234-0104 神奈川県横須賀市芦名2-8-17
  3. 「朋」は、メンバーそれぞれの個性を生かし、人との出会いを広げながら社会人として地域の中で暮らしていくことを目指している知的障害者更生施設であり、学校卒業後の方々の活動の場でもある。
    〒247-0034 神奈川県横浜市栄区桂台中4-7
  4. 「小さき花の園」は、重症心身障害児(者)施設で、障害のある人の人生を少しでも明るく、幸せなものにするためにはどうしたらよいのか、また少しでも可能性を引き出すためにはどのようにしたらよいのかを常に追究し、信頼と希望を抱いて人々に仕える姿勢を貫いている施設である。
    〒248-0033 神奈川県鎌倉市腰越1-2-1
  5. 「太陽の門」は、重症心身障害児(者)施設で、知的障害と身体障害のある利用者一人ひとりのためにすべてを優先して貢献し、明るく楽しい日常生活のための環境をつくるために、安心感と信頼感に基づいた医療、福祉を提供することを理念としている施設である。
    〒250-0032 神奈川県小田原市風祭563

③情報手段活用

講義等題目等 講師氏名(所属・職名) 講義等内容
アシスティブ・テクノロジーの活用畠山 卓朗
(早稲田大学人間科学学術院・教授)
 コミュニケーションエイドについてその歴史と背景、理論と実践について論じる。
(講義・演習)
アシスティブ・テクノロジーの導入と評価
棟方 哲弥
(企画部・総括研究員)
 WATIのアセスメントツールを用いたアシスティブ・テクノロジーの導入方法並びに国際生活機能分類(ICF)を用いた評価手法について検討する。
(講義・実習)
特別支援学校における情報手段の活用
外山世志之
(東京都立光明特別支援学校・主任教諭)
渡辺 崇史
(日本福祉大学・准教授)
金森 克浩
(教育研修情報部・総括研究員)
太田 容次
(発達障害教育情報センター・主任研究員)
 肢体不自由教育における支援機器活用の実践事例を中心に情報手段の活用方法を紹介する。
 またスイッチや入力装置の製作演習を行う。
小・中・高等学校等における特別支援教育での情報手段の活用 西谷 淳
(滋賀県甲賀市健康福祉部 発達支援室・室長補佐)
 発達障害教育における情報手段による支援について、その障害特性と支援方法について論じる。
個別の指導計画と情報手段の活用西谷 淳
(滋賀県甲賀市健康福祉部 発達支援室・室長補佐)
 特別支援教育推進体制モデル事業にかかる指定地域の実例と個別の指導計画について紹介し、その運営における情報ネットワークの活用について論じる。
情報モラルと個人情報保護江田 裕介
(和歌山大学・教授)
 発達障害児への情報モラル教育についてその課題と,具体的な指導方法について論じる。
情報手段活用を推進するための施策丹羽 登
(文部科学省初等中等教育局 特別支援教育課・特別支援教育調査官)
 特別支援教育における情報機器利用の位置づけとその課題について論じる。
  1. 学習指導要領における情報教育
  2. 情報化対応事業の概要
  3. 特別支援教育における情報手段の活用 (ICT)の実際とその意義
  4. 特別支援教育における情報手段の活用 (ICT)と今後の課題
(実習)
情報関連支援機器の活用と情報普及(1)(2)(3)(4)
棟方 哲弥
(企画部・総括研究員)
金森 克浩
(教育研修情報部・総括研究員)
太田 容次
(発達障害教育情報センター・主任研究員)
田代 洋章
(アクセスインターナショナルe-AT事業部)
岡部 優子
(アクセスインターナショナルe-AT事業部)
 情報関連支援機器の基本操作、設定、メンテナンス方法について、実際に支援機器を操作して実習を行う。
また、支援機器の普及方策についてWeb教材を作成する。
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