平成22年度第二期特別支援教育専門研修 講義等内容(共通講義)
1.情緒障害・言語障害・発達障害教育コース共通講義等
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講義等題目等 | 講師氏名(所属・職名) | タイトル |
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特別支援教育の基礎理論 | 千田 耕基 (前 国立特別支援教育総合研究所・部長) |
1.特別支援教育とは 2.障害児の教育の歴史 3.特別支援教育の対象と教育課程 4.特別支援学校の教育 5.個別の指導計画と個別の教育支援計画 6.小・中学校における特別支援教育 *特別支援教育研究研修員と共通 |
*都合により一部変更する場合がある。
講義等題目等 | 講師氏名(所属・職名) | 講義等内容 |
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所内見学 | 総務部研修情報課 研修係 |
研究所内の関係施設を実際に案内し、研修生活上の説明を行う。 |
図書室利用案内 | 総務部研修情報課 情報サービス係 |
研究所図書室の利用方法について、実際に閲覧室、書庫を案内しつつ、説明を行う。 |
コンピュータ端末の利用実習 | 総務部研修情報課 情報管理係 |
研究所固有のコンピュータ端末の利用について説明会を行い、実際に操作することにより、 スムーズな端末利用を行えるよう実習する。 |
発達障害教育論 | 笹森 洋樹 (発達障害教育情報センター・総括研究員) |
小・中学校の通常の学級では約6%の割合で特別な支援を必要とする児童生徒が在籍しており、 具体的な指導法、指導体制等を充実させることは教育現場における喫緊の課題となっている。本講義では、 学習障害、注意欠陥多動性障害、高機能自閉症等の発達障害について、定義と診断基準、障害特性、 指導・支援の在り方、教育制度等について概説する。 |
自閉症・情緒障害教育論 | 廣瀬 由美子 (教育支援部・総括研究員) 植木田 潤 (教育相談部・研究員) |
平成21年に文部科学省から出された通知文において、従前の情緒障害特別支援学級は、「自閉症・ 情緒障害特別支援学級」と名称が変更している。本講義においては、小・中学校の自閉症・ 情緒障害特別支援学級の対象規定となる発達障害である自閉症や、選択性かん黙等の心因性の情緒障害において、 その障害特性や状態像、指導内容、指導方法について概説するとともに、合わせて教育課程の 編成等についても述べていく。 |
理事長講話 | 小田 豊 (国立特別支援教育総合研究所・理事長) |
初等中等教育の諸課題について |
特別支援教育行政の現状と課題 | 横井 理夫 (文部科学省初等中等教育局特別支援教育課・特別支援教育企画官) |
障害のある子どもの教育の質を高めながら進めていくためには、その教育を支える高邁な理念と実行可能な 計画が必要である。本講義では、現在の特別支援教育の理念の成り立ちと、その理念を実現するために行われて いる施策についての最新の動向と今後の展望について言及する。 |
言語障害教育論 | 小林 倫代 (教育研修情報部・総括研究員) |
言語障害は、発音、話のリズム、言語の発達等のことばの能力だけでなく周囲の人たちとのコミュニケーション の問題であること等の特徴がある。本講義では、通級による指導(言語障害)、特別支援学級(言語障害)が対象 としている子どもへの教育を中心に、障害特性、指導方法及び指導内容、教育制度や教育課程等について概説する。 |
交流及び共同学習の意義と課題 | 藤本 裕人 (企画部・総括研究員) |
障害者基本法第14条や小・中学校等の学習指導要領では、障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び 生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることが明記されている。これらの趣旨を踏まえて、各学校における 交流及び共同学習の意義、教育課程上の位置づけ、実施上の配慮や工夫、実施の実際と課題等について概説する。 |
知的障害教育論 | 井上 昌士 (教育支援部・総括研究員) |
知的障害教育においては、特別支援学校(知的障害)の児童生徒の障害の多様化に伴ない、個々の障害の 状態や学習上の特性等を考慮した教育課程の編成及び指導の充実が重要な課題となっている。本講義では、 知的障害教育における教育的対応の基本及び教育課程の編成、各教科等の指導の工夫等について概説し、 職業教育や進路指導、知的発達の遅れを伴う自閉症のある児童生徒の指導の在り方等について言及する。 |
特別な教育的ニーズと情報機器の活用 | 金森 克浩 (教育研修情報部・総括研究員) 土井 幸輝 (教育研修情報部・研究員) |
情報化が進展する中、コミュニケーションの拡大、学習の補助や余暇活動の充実、また社会参加を促進する 一助として特別なニーズのある子どもの情報機器の活用への関心が高まっている。本講義では、特別な教育的 ニーズのある子どもの教育における情報化と支援について概説する。また、アシスティブ・テクノロジー (支援技術)を利用したコミュニケーション支援や情報教育の実践例を紹介する。 |
重複障害教育論 | 大崎 博史 (教育研修情報部・主任研究員) 齊藤 由美子 (教育研修情報部・研究員) |
重複障害教育は、複数の種類の障害を併せ有する児童生徒を対象とする教育(盲ろう教育を含む)である。 本講義では、児童生徒の障害の多様化、重度重複化に対応した適切な教育を推進するための基礎事項について 概説し、教育課程の編成と個別の指導計画、実態把握と指導方法等の観点から重複障害教育の現状と課題に ついて言及する。 |
教育と福祉・医療・労働との連携-校内支援体制の充実に向けて- | 藤井 茂樹 (教育相談部・総括研究員) |
児童生徒と一人ひとりの特別な教育的ニーズに応える教育を進めるためには、学校外の医療・福祉・ 労働等の関係機関との連携協力が不可欠である。しかし、各学校では、先ず、自校の校内支援体制の充実に 向けた取組が重要である。あらためて、校内支援体制の在り方について論述する。 |
病弱教育論 | 滝川 国芳 (企画部・総括研究員) |
病弱・身体虚弱の児童生徒の状態や生活環境等に応じた適切な教育を行うことは学習の空白や遅れ を補完するだけでなく、生活を充実させ、心理的な安定を促すとともに心身の成長・発達に好ましい影響を 与え、健康状態の回復・改善等を促したりすることにも有効に働くと考えられている。本講義では、病弱教 育の対象となる疾患の概要、病弱教育の歴史と制度、意義、教育課程等を概説するとともに病弱教育の現状 と課題、今後の在り方について考える。 |
所内施設見学 | 発達障害教育情報センター・ 教育研修情報部・ 教育相談部・重複班 |
以下の研究所固有の設備・機器等を見学する予定。 ・発達障害教育情報センター「支援機器・教材教具展示室」、 ・「i・ライブラリー」、 ・教育相談について(スヌーズレン・ルーム含)、 ・生活支援研究棟 |
行動と学習の見方 | 園山 繁樹 (筑波大学・教授) |
子どもの行動や学習は、彼らを取り巻く環境に多く影響を受ける。特に一見すると問題と見なされる 行動については、そこに関与している人的・物理的要因を明らかにしたうえで具体的かつ効果的な手だてを 検討し、生活及び学習環境を整えることが重要である。本講義では、子どもの行動と学習の見方について応 用行動分析的な視点から論じる。 |
心理検査の活用(WISC-Ⅲを中心に) | 名越 斉子 (埼玉大学・准教授) |
LD、ADHD、高機能自閉症等の子どもの発達の状態や認知特性を評価するためには、WISC-ⅢやK-ABCの ような標準化された知能検査を用いて専門的なアセスメントを行うことが重要である。本講義では、LD、ADHD、 高機能自閉症等の子どものアセスメントによく使われる発達検査であるWISC-Ⅲ、K-ABCを中心に検査内容、 検査方法、結果の解釈そして活用の仕方について解説し、実際について演習を通して学ぶ。 |
(講義・演習) 学校における組織の活性化と指導的教員の役割 |
佐々木 亮子 (有限会社アールズセミナー・代表取締役) |
各都道府県の特別支援教育に指導的な立場で携わる教 員が学校経営に参画し、地域や他機関との様々な連携を 進める際に必要なリーダーシップについて講義する。また、学校経営に必要なマネジメントや職員研修の あり方についても触れる。講義には演習形式が含まれる。 |
諸外国における障害のある子どもの教育 | 中澤 惠江 (企画部・上席総括研究員) 大内 進 (教育支援部・部長) 滝川 国芳 (企画部・総括研究員) 齊藤 由美子 (教育研修情報部・研究員) |
個々の子どもの持つ教育的なニーズに重点をおくインクルーシブな教育をめざす様々な施策を行 う国々が増える中、わが国では、「障害者の権利条約」の署名・批准の中で障害児教育を改めて考える 契機を迎えている。本講義では、先進諸国で行われている障害児教育を紹介しながら、わが国における 特別支援教育の方向性について言及する。また、障害に対する考え方の歴史的な変遷を踏まえた、 今後の特別支援教育における障害の考え方についても併せて言及する。 |
医療連携による教育的支援と意義 | 西牧 謙吾 (教育支援部・上席総括研究員) |
生命の保障と心身の安定は、障害のある子どもの生活の質を保障するうえで重要な課題である。 従来、教育と医療の連携は、重度重複障害のある子どもに対する医療的ケアが重視されてきたが特別支 援教育体制の中でその対象や位置づけが多様化している。本講義では、教育的支援の観点から教育と 医療の関わりと、その教育的意義について論述する。 |
視覚障害教育論 | 田中 良広 (教育相談部・総括研究員) |
視覚障害のある児童生徒の教育において、心理学、生理学及び病理学に関する知見は必要不可欠である。 本講義では、まず、それらの観点から視覚障害の基礎事項について概説する。また、盲教育及び弱視教育 それぞれにおける教科教育における配慮事項や適切な教材作成、点字、歩行、弱視レンズの活用等といった 自立活動における指導等の観点から視覚障害のある児童生徒への教育的対応について論じる。 |
特別支援教育におけるICF活用 | 徳永 亜希雄 (企画部・主任研究員) |
障害者基本計画で「WHO(世界保健機関)で採択されたICF(国際生活機能分類)については、
障害の理解や適切な施策推進の観点からその活用方策を検討する」とされ、特別支援教育を含めた様々
な分野で活用されてきた。 特別支援学校学習指導要領解説でも触れられたICF及びその児童版であるICF-CYについて、 これまでの本研究所での研究成果を踏まえ、特別支援教育における具体的な活用の在り方について論述する。 |
大脳の生理と病理 | 西牧 謙吾 (教育支援部・上席総括研究員) |
障害の原因には、中枢神経系の障害等の関与が指摘されている。本講義では、発生から分娩までの生理、 また、脳・神経系の構造と機能、それらによって脳機能の障害によって発現する脳障害や疾患についての 基本的な知識について解説する。 |
発達論 | 鯨岡 峻 (中京大学・教授) |
人は、他者との相互的な関わりの中で「育てられる」と同時に関わり手である他者も「育てて」いる。 教育の場においても子どもは教員や仲間との関わりから自らの発達を遂げ、ともに成長し合っている。 この複雑な現象を理解するためには事実だけを積み上げるのではなく、その意味を掘り起こすことが重要である。 本講義では、複雑な子どもの発達の意味を掘り下げていくために必要な知見を関係発達の観点から論じる。 |
肢体不自由教育論 | 長沼 俊夫 (教育支援部・総括研究員) |
肢体不自由のある児童生徒は、身体の動きだけでなく認知やコミュニケーション、健康面等に課題がある ことが多く日常生活における多様な困難さが見受けられる。本講義では、それらの課題や心理、生理、 病理の特性等について教育的な文脈で整理し、教育課程や指導内容及び方法について概説する。また、 教員の専門性について考える。 |
聴覚障害教育論 | 小田 侯朗 (教育研修情報部・総括研究員) |
聴覚障害教育は、言語(日本語)の獲得を目的として言語指導法を追求してきた歴史がある。 特別支援教育体制にあって、聴覚障害児は様々な場において適切な教育的支援が求められる。 このため発達段階に応じたコミュニケーション手段の選択、早期教育・高等教育の充実、科学技術の進歩に 伴う補聴システムの整備等、課題が山積している。これらを概観し、課題解決のための方途について言及する。 |
脳機能と発達障害 | 渥美 義賢 (発達障害教育情報センター・センター長) |
発達障害のある子どもの指導・支援にあたり、脳科学の応用が重視されてきている。本講義では、 学習、知覚、認知、コミュニケーション能力等の脳機能に関する最新の知見を紹介する。また、 脳科学の視点から、発達障害のある子どもの特性や状態像の捉え方について概説する。 |
○実地研修
題 目 等 | 研 修 先 | 研 修 内 容 |
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筑波大学附属久里浜特別支援学校における指導の実際 | 筑波大学附属 久里浜特別支援学校 |
実地研修は、充実した取り組みを行っている関連機関を訪問・視察することを通して、環境整備の
工夫や授業及び指導・支援の在り方等に関する知見を得ることを目的とする。
発達障害のある子どもの教育の充実を図ることは、わが国の重要課題である。本研究所に隣接し連携協力
関係にある筑波大学附属久里浜特別支援学校は、知的障害を伴う自閉症のある幼児児童に特化した実践を
行っている。自閉症教育の中心的な役割を担っている当校での教育活動の見学を通して、自閉症をはじめと
する発達障害のある子どもの教育の在り方について見識を深める機会とする。
学校の教育活動及び研究実践についての講話と各教室等の指導の状況を見学させていただく予定。
筑波大学附属久里浜特別支援学校 〒239-0841 神奈川県横須賀市野比5-1-2 |
○研究協議
題 目 等 | 内 容 等 |
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研 究 協 議 | テーマを設定し、研修員がそのテーマに沿って問題の解決や課題の実現に向けて主体的、
自発的に協議を行うことを目的とした班別の「研究協議」の時間を10コマ設定しています。 ①コースオリエンテーションと班別で自己紹介(1コマ) ②事前レポートに基づいた問題意識の協議と整理、テーマ設定(計2コマ程度) ③決定したテーマに基づく班内での協議(計5コマ程度) ④協議の結果をポスターにまとめ、発表し、全体で協議 (準備1コマ、発表1コマ) 班編成は、研修員個々の課題等に基づき少人数(10班を予定)で行うこととしています。 そのため、事前にレポートを提出してください。 研修員が円滑に協議を進めることができるように、関係研究職員が協議の進行に関わる相談や 助言に当たります。 なお、研究協議は割り振られたコマ時間(10コマ)の範囲で計画的に実施することとし、 時間外に行うことのないよう留意すること。 |