ア 医学的側面からみた肢体不自由


医学的には、発生原因のいかんを問わず、四肢体幹に永続的な障害があるものを肢体不自由といいます。
先天性に四肢体幹の形成が障害されたり、生後の事故等によって四肢等を失ったりすることなどによる形態的な障害によって運動障害が起こる場合と、形態的には基本的に大きな障害はないものの中枢神経系や筋肉の機能が障害されて起こる場合があります。
運動障害の発症原因別に見ると、特別支援学校(肢体不自由)において最も多いのは脳性疾患で、次いで筋原性疾患、脊椎脊髄疾患、骨関節疾患、骨系統疾患、代謝性疾患とされています。脳性疾患や筋原性疾患等では知的障害等の合併症が見られることが多く、また、直接的な原因となる疾患による障害に加えて、それらによる長期にわたる運動障害や姿勢障害によって、関節拘縮や変形性股関節症、気道や尿路の感染症などの二次障害が見られることも少なくありません。運動障害の原因となる主要な疾患について以下に述べます。

   (ア)脳性麻痺

     脳性疾患で最も多いものは脳性麻痺です。脳性麻痺についての普遍性をもった厳密な定義について一致した見解は現在でも得られていませんが、一般的に合意の得られている規定要素を次に示します。
a 原因については、発育過程における脳の形成異常や様々な原因による脳損傷の後遺症という非進行性の脳病変であること
b 脳性麻痺というのは運動と姿勢の異常、すなわち運動機能障害であること
c 成長に伴って、症状が改善したり増悪したりすることもあるが、消失することはない
原因の発生時期について、いつからとするかについては、受胎とする点ではほぼ合意が得られています。しかし、いつまでかについては国際障害者リハビリテーション協会脳性麻痺委員会では「脳の成長、発達が完成する以前」と具体的な時期を明示しておらず、一方で我が国の厚生省研究班の定義では生後4週間までとするなど様々であるのが現状です。
脳性麻痺をひき起こす脳損傷の原因としては、出生前の原因として小頭症や水頭症、脳梁欠損、脳回形成異常などの遺伝子や染色体の異常などがあります。出生後の原因としては、胎児期や周産期における低酸素状態や頭蓋内出血があります。その他に核黄疸や感染症による場合もありますが、近年ではこれらの原因による脳性麻痺は減少しています。
主な症状から障害型が分けられています。近年では脳性麻痺の約8割を占め最も多い障害型は痙直型で、伸張反射の亢進によって四肢等の伸展と屈曲が著しく困難になってしまう状態になるものです。アテトーゼ型(不随意運動型)は、四肢等に自分の意志と関係なく奇妙な異常運動が起こるもので、最近では一部の筋肉に異常な緊張が起こるジストニアや手指等の振るえなどの症状も含めて考えられています。

   (イ)筋ジストロフィー

     筋原性疾患で多く見られる疾患としては筋ジストロフィーがあります。これは筋原性の変性疾患で進行性であり、筋力が徐々に低下して運動に困難を来すだけでなく、長期的には呼吸筋の筋力低下によって呼吸も困難になっていく予後不良な疾患です。四つの型があり、X染色体性の劣勢遺伝で幼児期頃から発症することの多いデュシャンヌ型とベッカー型、常染色体性劣性遺伝で乳児期早期に発症する福山型、常染色体性優性遺伝で先天型では新生児期か乳児期早期に発症する筋強直性型があります。

   (ウ)二分脊椎

     脊椎脊髄疾患として多いのは二分脊椎です。これは、遺伝的要素に胎生期にお  ける環境要因がかかわって発症するとされており、近年ではハイリスクの女性に受胎計画中より葉酸の投与を行うことで発生率が減少してきています。症状は病変部位によりますが、下肢の麻痺や膀胱直腸障害が主に見られます。また、水頭症がしばしば合併し脳圧を下げるための手術が必要なこともあります。

  イ 心理学的・教育的側面からみた肢体不自由


肢体不自由児は、上肢、下肢又は体幹の運動・動作の障害のため、起立、歩行、階段の昇降、いすへの腰掛け、物の持ち運び、机上の物の取扱い、書写、食事、衣服の着脱、整容、用便など、日常生活や学習上の運動・動作の全部又は一部に困難があります。これらの運動・動作には、起立・歩行のように主に下肢や平衡反応にかかわるもの、書写・食事のように主に上肢や目と手の協応動作にかかわるもの、物の持ち運び・衣服の着脱・用便のように肢体全体にかかわるものがあります。
運動・動作の困難は、姿勢保持の工夫と運動・動作の補助的手段の活用によって軽減されることが少なくありません。この補助的手段には、座位姿勢の安定のためのいす、作業能力向上のための机、移動のためのつえ・歩行器・車いす、廊下や階段に取り付けた手すりなどのほか、よく用いられる物としては、持ちやすいように握りを太くしたりベルトを取り付けたりしたスプーンや鉛筆、食器やノートを机上に固定する器具、着脱しやすいようにデザインされたボタンやファスナーを用いて扱いやすくした衣服、手すりを取り付けた便器などがあります。
肢体不自由児の運動・動作の困難の程度は、一人一人異なっているので、その把握に当たっては、個々の姿勢や身体の動かし方、バランス感覚やボディイメージなど運動を円滑に行う際に基礎となる能力の特徴を知る必要があります。具体的には、日常生活や学習上どのような困難があるのか、それは補助的手段の活用によってどの程度軽減されるのか、といった観点から行うことが必要です。