ア 特別支援学校(肢体不自由)


前述のとおり特別支援学校(肢体不自由)においては、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校の教育目標の達成に努めるとともに、幼稚部、小学部、中学部及び高等部を通じ、児童生徒の障害に基づく学習上又は生活上の困難を改善・克服し自立を図るために必要な知識、技能、態度及び習慣を養うことを目標としています。
近年、特別支援学校(肢体不自由)に在学する児童生徒の起因疾患で最も多いのは、脳性まひを中心とする脳原性疾患であり、肢体不自由のほか、知的障害、言語障害等の他の障害を一つ又は二つ以上併せ有している重複障害者が多く在籍しています(図1)。
盲・聾・養護学校における重複障害学級在籍率の変化   
図1 盲・聾・養護学校における重複障害学級在籍率の変化
(出典:文部科学省「特別支援教育資料」平成19年度)

このようなことから、教育課程の編成に当たっては、学習指導要領に示されている重複障害者等に関する教育課程の取扱いを適用するなど多様な教育課程の編成が必要となります。
特別支援学校(肢体不自由)では以下に示すように、おおむね四つの教育課程を編成する学校が多くなっていますが、一人一人の児童生徒に適切な教育を行う視点から、教育課程の改善・充実を図ることが必要です。

   (ア)小学校・中学校・高等学校の各教科を中心とした教育課程

 この教育課程は、肢体不自由単一の障害のある児童生徒や肢体不自由と病弱の重複障害の児童生徒などを対象とし、小学校・中学校・高等学校の学年相応の各教科等の内容及び自立活動等の内容によって編成されています。
ただし、各教科の目標及び内容に関する事項の一部を取り扱わないことができます。(特別支援学校小学部・中学部学習指導要領(以下「小・中学部指導要領」)第1章第2節第5の1(1)、特別支援学校高等部学習指導要領(以下「高等部指導要領」)第1章第2節第6款の1(1))
例えば、肢体不自由の児童生徒については、「体育」の内容のうち器械運動などの学習の一部が困難又は不可能な場合は、当該児童生徒に、この内容を履修させなくてもよいという趣旨です。

   (イ)小学校・中学校・高等学校の下学年(下学部)の各教科を中心とした教育課程

     障害の状態により特に必要のある場合、小・中学部指導要領(第1章第2節第5の1(2)(3)(4)(5))、高等部指導要領(第1章第2節第6款の1(2)(3))に示されている教育課程の重複障害者等に関する取扱いに基づき、各教科の目標・内容の一部を取り扱わないこととしたり、当該学年より下の学年(学部)の目標・内容により編成するものです。これに加え自立活動等の内容によって構成されます。
例えば、小学部5年生の児童の場合は、小学部4年生以下の学年を指します。また、中学部の「数学」に対する小学部の「算数」を指すものです。しかし、教科の名称までを替えることはできないことに留意する必要があります。

   (ウ)知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科を中心とした教育課程

 知的障害を併せ有する児童生徒が在籍している場合に、これらの児童生徒の実態に応じた弾力的な教育課程の編成ができます。例えば、肢体不自由に加えて知的障害も併せ有する児童生徒を対象に、特別支援学校(知的障害)の各教科の目標及び内容の一部によって編成されるもので、小・中学部指導要領の第1章第2節第5の2、及び高等部指導要領の第1章第2節第6款の2のに基づくものです。これに加え自立活動等の内容を学びます。この場合も、教科の名称を替えることはできないことに留意する必要があります。なお、小学部の児童については、外国語活動及び総合的な学習の時間(中学部においては外国語科)を設けないこともできます。

   (エ)自立活動を主として指導する教育課程

 この教育課程は、重複障害者のうち、障害の状態により特に必要がある場合についての取扱いの規定によります(「小・中学部学習指導要領」の第1章第2節第5の3、及び「高等部学習指導要領」の第1章第2節第6款の3)。重複障害者については、一人一人の障害の状態が多様であり、発達の諸側面にも不均衡が大きいことから、特に心身の調和的発達の基盤を培うことを指導のねらいとする必要があります。こうしたねらいに即した指導は、主として自立活動において行われ、このような児童生徒にとっての重要な意義を有することからこの規定があると言えます。
自立活動を主として指導する教育課程では、各教科、道徳、外国語活動若しくは特別活動の目標及び内容に関する事項の一部又は各教科、外国語活動若しくは総合的な学習の時間に替えて、自立活動を主として指導を行うことができます。図2にあるようなパターンが考えられます。全授業時数の何%を自立活動が占めていれば「自立活動を主とする教育課程」と呼べますか、という質問が時々あります。「主とする」のですから、一般的には、総授業時数の半分を超える程度の時数を自立活動に充てると考えられますが、時間の長さで決めるのではなく、児童生徒の必要性に応じて編成されることが必要です。自立活動のみで児童生徒の学習内容をすべて網羅できるものではありません。他の教科や領域で取り扱う内容を含めて授業を展開することになります。

自立活動を主とした教育課程のパターン
図2 自立活動を主とした教育課程のパターン

  イ 肢体不自由特別支援学級


肢体不自由特別支援学級は、必要に応じて、小・中学校に置かれています。肢体不自由特別支援学級においては、各教科、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動のほかに、身体の動きや認知能力などの向上を目指した指導も行われています。また、指導に当たっては、児童生徒の個人差を考慮し、個別指導やグループ指導といった授業形態を積極的に取り入れたり、教材・教具の開発・工夫を行ったりするなどの配慮を行っています。さらに、通常の学級の児童生徒と運動会や給食等の場を通じて活動を共にするなど、社会性や集団への参加能力を高めるための指導にも配慮しています。
なお、多くの学級では、児童生徒が可能な限り自らの力で学校生活が送ることができるよう、例えば、廊下やトイレに手すりを取り付けたり、便器を洋式にしたりするなどの配慮もなされています。

  ウ 通級による指導(肢体不自由)


通常の学級での学習におおむね参加でき、留意して指導することが適切と考えられる軽度な障害がある肢体不自由児のうち、身体の動きの状態の改善・向上を図るための特別な指導が一部必要なものについては、通級による指導の対象とすることが適切な場合もあると考えられます。現在、肢体不自由児が通級による指導を受けている例は少数です。

  エ 通常の学級に在籍する肢体不自由児の指導


通常の学級に在籍している肢体不自由児は、小学校・中学校等の教科の内容を学習しています。教科指導のうち、体育(保健体育)や図工(美術)等の実技を伴う学習においては、教材・教具等の工夫や配慮が必要な場合があります。
また、認知面で様々な困難を有することもあるので、国語や算数・数学などの教科指導でも配慮が必要な場合があります。したがって、予め認知や学習上の特性等を把握しておくことが必要です。