ア 生徒の実態に応じた表現する力の伸長


肢体不自由のある生徒は、身体の動きに困難があることから、表現の方法が限られ、考えたことや感じたことを十分に伝えられないことがあります。近年、生徒の障害が重度化するにつれて、表現に対する困難さも大きくなっていることから、各教科・科目の指導において、生徒の実態に応じて表現する力の伸長に努めることが大切です。
表現する力の伸長を図るためには、種々の体験的な活動を通して表現しようとする意欲を高めることが大切です。特に、各教科・科目の指導においては、観察・実験、見学や調査などの体験的な学習、自然体験や社会体験などを十分に確保することが求められます。
そして、表現しようとする意欲を高めながら、個々の生徒の言語活動や身体の動きに応じて、表現するために必要な知識、技能、態度及び習慣を一層育成するように努めることが大切です。言語活動については、話したり書いたりする力だけではなく、各教科・科目における言語活動の状況についても把握する必要があります。また、身体の動きについては、筆記やコンピュータへの入力等を助けるための補助用具の活用状況を把握することをはじめ、他の補助用具を活用する可能性についても検討することが必要です。このような表現に関する実態を踏まえて、個々の生徒の表現する力を各教科・科目の指導を通してどのように育成していくのかを明確にして、指導に当たることが重要です。
各教科・科目の指導においては、学習内容の確実な習得を図る観点から、様々な方法を活用することが必要です。そこで、指導に当たっては、生徒の得意な方法を用いるなど、個々の生徒の表現に対する意欲を大切にしながら、次第に多様な方法を身につけたり、表現の方法を工夫したりできるように指導することが求められます。

  イ 指導内容の精選、発展的な指導


小学部・中学部と同様に、高等部においても、生徒の身体の動きの状態や生活経験の程度等を考慮して、基礎的・基本的な事項に重点を置くなど指導内容を適切に精選するとともに、発展的、系統的な指導ができるようにすることが大切です。
その際、学習に偏りやむらが生じ、発展的、系統的な学習が妨げられることのない内容にする工夫も必要です。一方、高等部は多くの生徒にとって学校教育の最終段階であることから、卒業後の自立に必要な知識・技能等を身に付けさせるための指導内容を必要に応じて重点的に取り上げるよう工夫することも求められます。

  ウ 身体の動きの状態やコミュニケーション等に関する指導


各教科・科目、特に保健体育、芸術、家庭などの実践的・体験的な活動が中心となる各教科・科目の内容には、自立活動の「身体の動き」や「コミュニケーション」等に関するものが数多く含まれています。したがって、小学部・中学部と同様に、身体の動きやコミュニケーション等が困難な生徒に対して、各教科・科目における実践的・体験的な活動を展開する際には、その状態を改善・克服するように指導や援助を行うことが必要です。そのためには、特に自立活動における指導との密接な関連を保つようにし、学習効果を一層高めるようにすることが大切です。同様に、個々の生徒についての配慮点等を指導計画の中で明確にしておくとともに、教師は具体的な方法についても身に付けておくことが必要です。
なお、このような実践的・体験的な活動の際には、生徒の身体の動きやミュニケーション等の困難の改善に重点が置かれ過ぎて、各教科の目標を逸脱してしまうことのないよう留意しなければなりません。

  エ 学習時の姿勢や認知の特性等に応じた指導方法の工夫


小学部・中学部と同様に、高等部においても、生徒が、効果的に学習を行うためには学習時の姿勢に十分配慮することが重要です。学習活動に応じて適切な姿勢を保持することにより、不適切な姿勢による身体の変形を予防するとともに、学習を効果的に進めることもできます。したがって、学習活動に応じて生徒自らが、適切な姿勢や活動しやすい姿勢を考えたり、いすや机の位置及び高さなどを調整したりできるように指導することが大切です。
また、高等部は各教科・科目における学習内容が多様になり深まるので小学部・中学部と同様に、生徒の認知特性に応じて指導方法を工夫することも一層重要になります。脳性疾患等の生徒の場合には、課題を見て理解したり聞いて理解したりすることに困難がある場合があります。こうした場合には、生徒の認知特性を考慮して、説明や教材の定時の仕方を工夫するとともに、課題を理解していることを確認することが大切です。また、様々な資料を収集して分析したり、実験・観察に取り組んだりする学習については、生徒個々の認知の特性に応じて学習を進めることができるように指導方法を工夫することが必要です。その際に、指導計画や学習指導案の中に具体的な工夫の内容を明記することが大切です。

  オ 補助用具や補助的手段の工夫、情報機器の活用


小学部・中学部と同様に、生徒の身体の動きや意思の表出の状態等に応じて、適切な補助用具や補助的手段を工夫するとともに、コンピュータ等の情報機器などを有効に活用し、指導の効果を高めるようにすることが大切です。
補助用具の例として、歩行の困難な生徒については、つえ、車いす、歩行器などが、また、筆記の困難な生徒については、筆記用自助具や筆記の代替をする機器及び生徒の身体の動きの状態に対応した入出力機器などが挙げられます。また、補助的手段の例としては、身振り、コミュニケーションボードの活用などが挙げられます。
なお、肢体不自由の状態それ自体の改善か、補助用具や補助的手段の活用かという問題が常に提起されますが、これは単に二者択一の問題ではなく、生徒の発達段階、身体の動きや意思の表出等の状態やその改善の見通し、学校卒業までの期間等を考慮して、どちらに重点を置いたらよいか、専門の医師及びその他の専門家の指導・助言をも得て総合的に判断されるべきものです。
高等部段階においては生徒が卒業後の自立を間近に控えていることから、補助用具や補助的手段の活用の指導に十分配慮する必要があります。