ア 現状と問題点


平成11年の盲・聾・養護学校の学習指導要領の改訂において、障害の状態を改善・克服するための領域である「養護・訓練」を「自立活動」に変更しています。その主な理由は、自立活動という領域が、一人一人の幼児児童生徒の実態に対応した活動であることや、自立を目指した主体的な取組を促す教育活動であることを一層明確にするためであると説明されています。
特別支援学校(肢体不自由)においては、近年、幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化の傾向が顕著で、医療的なケアを必要とする児童生徒も増えてきています。文部科学省特別支援教育資料によると、平成18年5月現在の特別支援学校(肢体不自由)(小・中学部)では約4分の3の児童生徒が重複障害学級に在籍しています。肢体不自由者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校では、このような実態に対応するために、自立活動の指導を中心とした教育課程を編成する学校が多くなってきており、これまで以上に自立活動の指導の充実が求められています。
ここでは、自立活動の指導の課題について、次の四つ観点から検討していきます。

   (ア)「個別の指導計画」の充実と活用

 学習指導要領においては、自立活動の指導に当たって、個別の指導計画を作成することが明示されています。
国立特殊教育総合研究所(当時)が平成13年に行った調査(以下「研究所の調査」)では、個別の指導計画を「すべての指導領域で作成している」と回答した学校は、全盲・聾・養護学校のうち53%、「自立活動と重複障害者のみ作成している」は34%でした。個別の指導計画に関しては学習指導要領に明示されて以後、かなり早期に各学校で取り組まれています。しかし、個別の指導計画は立てられているものの、作成が学級担任の裁量に任されその内容が十分に吟味されていなかったり、設定された目標や内容が抽象的であったりするなど、様々な問題点が指摘されており、検討すべき課題としてあげられます。
自立活動の時間における指導は、専門的な知識を有する教師の意見を参考にして、全教師の協力の下に一人一人の幼児児童生徒について個別の指導計画を作成し、実際の指導に当たることが重要です。

   (イ)自立に向けた主体的な取組を促す指導

障害のある幼児児童生徒が自己のもつ能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加するための基盤となる「生きる力」を培うためには、一人一人の障害の状態等に応じたきめ細かな指導を一層充実することが重要です。障害による学習上又は生活上 の困難を改善・克服する教育活動である自立活動は、ますます重視されてきているといえます。これまで自立に関しては、「経済的自立」、「社会的自立」などと使われてきましたが、現在では障害者の「自立」概念が従前より広い意味で用いられることが多くなってきました。
この「自立」という用語は、学習指導要領解説-自立活動編-(以下「解説書」)において、「幼児児童生徒がそれぞれの障害の状態や発達段階等に応じて、主体的に自己の力を可能な限り発揮し、よりよく生きていこうとすることを意味している。」と定義されています。すなわち、一人一人の幼児児童生徒における自立とは、「よりよく生きていこうとする」状態を指します。障害のある幼児児童生徒の適切な指導や必要な支援を考える上で、個人因子と環境因子の両側面から検討が必要であることはいうまでもなく、障害がどれほど重度であっても可能な限り幼児児童生徒の「主体的な取組」を促すべきであり、またそれを目的的な活動に高めていくことが大切です。自立に向けた教育活動は、「自己の力を可能な限り発揮し、よりよく生きていこうとする」取組を促進し拡大することです。このような教育実践を通して、個々の幼児児童生徒の「自立と社会参加」が実現されます。
「主体的な取組」について、解説書では、「児童生徒が自分のなすべきことを意識し、努力の結果、課題が達成できたという成就感を味わうことができるようにすることが必要である」と記されています。障害のある幼児児童生徒が、ある達成課題に対し、それを自分の課題として捉え、解決に向かう具体的な方法を理解し、その結果ある程度見通しをもちそれを継続することによって課題を達成します。このような主体的な活動を展開するためには、保護者を含む関係者との協力を図りながら学習への動機付けを高め、教材・教具の工夫を重ねて的確な指導を展開し、適切な評価を実施することが大切です。

   (ウ)指導に生かす評価の工夫

 評価には、診断的評価(指導前)、形成的評価(指導中)、総括的評価(指導後)があります。評価は適切な指導と必要な支援を展開する上で大変重要な活動です。すべての教育活動において、個々の幼児児童生徒等の実態把握が出発点となります。自立活動の指導に当たっては、この的確な実態把握に基づいて個別の指導計画が作成される必要があります。
研究所の調査によると、自立活動における児童生徒の実態把握の方法で最も多かったのは、「行動観察」が95%で、以下「前担任から情報の収集」が88%、「保護者からの聞き取り」が87%、「諸検査の活用」が71%、「主治医等から医療情報の収集」が65%、「他機関に検査等を依頼する」が6%でした(複数回答)。特に特別支援学校(肢体不自由)では、「主治医などからの医療情報の収集」が83%で他の障害に比べて多く、医療機関との関連が深いことが分かりました。また、自立活動の実態把握に利用されている検査法は、最も多かったのが「発達検査」で81%、「知能検査」が58%でした。各障害種別では、特別支援学校(視覚障害)が視力検査、同(聴覚障害)が聴力検査で、同(知的、肢体不自由、病弱)では、発達検査と知能検査の活用が多く見られました(複数回答)。
自立活動の指導の評価方法では、「個別の指導目標について、取組の様子をとらえ記述する」が86%で最も多く、「学校独自に、評価の項目等を作成して評価する」が4%でした。また、約10%の学校が、「評価の在り方を検討中である」と回答しました。自立活動の評価に関して、指導者が立てた個別の指導目標に対して、指導者自らが評価を記述しているのが現状です。これらの調査結果からも自立活動に関する評価の工夫は十分とはいえません。個別の指導計画を立てる段階から評価のための視点や判断の基準を検討し、他の教員や保護者等の意見も交えながら適切な評価となるよう工夫することが大切です。「評価と指導」は、切り離すことのできない関係にあり、「指導に生かす評価」「評価に基づく指導」が求められています。

   (エ)指導体制の見直しと専門性の向上

 自立活動の時間における指導は、専門的な知識や技能を有する教師を中心として、全教師の協力の下に効果的に行われるようにすることが求められています。
ここでいう専門的な知識や技能を有する教師とは、特別支援学校の教員の免許状や自立活動を担当する教員の免許状を所有する者をはじめとして、様々な現職研修や自己研修等によって専門性を高め、校内で自立活動の指導的役割を果たしている教師も含んでいます。自立活動の指導において中心となる教師は、学校における自立活動の指導の全体計画の作成に際し、担任や専科の教師、養護教諭を含めた全教師の要としての役割を果たすことが期待されています。
なお、自立活動の時間における指導は、幼児児童生徒の障害の状態によっては、かなり専門的な知識・技能を必要としているので、いずれの学校においても、自立活動の指導を中心的に担う教師は、それにふさわしい専門性を身に付けておくことが必要です。
研究所の調査によると、自立活動に関する組織が編成されていると回答した学校種別の比率は、特別支援学校(視覚障害)が87%、同(聴覚障害)が64%、同(知的障害)が52%、同(肢体不自由)が82%、同(病弱)が70%でした。また、各学校で組織されている「自立活動部」(分掌上の名称は各学校で異なる)の機能として、最も多かったのが、「研修」で73%、次いで「指導」が54%、「研究」が36%でした。「自立活動部」の役割として、より専門性の高い指導力の育成のため、研究や研修の企画が求められていることがうかがわれました。さらに、学級担任をもたない自立活動専任教員の配置については、全特別支援学校で、自立活動専任教員を「配置している」が20%、「配置していない」が80%であり、学校種別では、特別支援学校(視覚障害)が17%、同(聴覚障害)が36%、同(知的障害)が13%、同(肢体不自由)が38%、同(病弱)が1%でした。
従前の多くの特別支援学校(肢体不自由)では、自立活動専任の教員を置いたり、校務分掌に自立活動部を設けるなどして、その専門性を確保する体制を工夫してきましたが、幼児児童生徒の障害の重度・重複化に伴い重複学級が増加したことなどから、自立活動専任教員を置かずにより多くの教員を学級担任として配置する傾向が見られます。今後、自立活動の指導に当たっては、関係する諸機関との連携や情報の収集・提供等に努め、医療等の専門家との連携、医師等の助言を効果的に学校の指導に生かすためには、「自立活動部」を設けるなど、学校として、自立活動を担当する教師の専門性を確保する体制づくりが急務です。

  イ 自立活動における主な指導内容


自立活動の内容は、人間としての基本的な行動を遂行するために必要な要素と、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するために必要な要素を、六つの区分と26の項目に分類・整理したものです。六つの区分とは、「健康の保持」「心理的な安定」「人間関係の形成」「環境の把握」「身体の動き」「コミュニケーション」です。具体的な指導を展開するに当たっては、これらの六つの区分と26項目を各区分ごと又は各項目ごとに別々に指導することが意図されているわけではありません。したがって、指導に当たっては、六つの区分と26の項目の内容の中から、個々の幼児児童生徒に必要とする項目を選定し、それらを相互に関連付けて具体的に指導内容を設定する必要があります。学習指導要領においては、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するために、できるだけ早期から学校を卒業するまで一貫した教育が重要であることから、幼稚部、小学部、中学部及び高等部の自立活動の内容を同一の示し方としています。
ここでは自立活動の内容を、六つの区分と26項目のうち肢体不自由児の指導に関連する区分・項目について例示します。この意図は各内容のイメージをつかみやすくすることにあり、特に示された内容のみが指導の対象となるものではなく、他の項目との関連して実際の指導内容が作られていくことに留意する必要があります。

   (ア)健康の保持について   

  • 生命を維持し、日常生活を行うために必要な身体の健康状態の維持・改善を図る。
  • 体温の調節、覚醒と睡眠など健康状態の維持・改善に必要な生活のリズムの安定を図る。
  • 食事や排泄などの生活習慣の形成、衣服の調節、室温・換気、感染予防のための清潔の保持など健康な生活環境を形成する。
  • 二分脊椎の幼児児童生徒の場合は、尿路感染の予防のため、排泄指導、清潔の保持、定期的検尿等に十分留意した指導をする。
  • 進行性疾患のある場合は、絶えず自分の体調や病気の状態に注意するとともに、これらについて正しく理解して、身体機能の低下を予防するような生活の自己管理に配慮した指導をする。
  • 下肢切断によって義肢を装着している場合は、断端の清潔保持等、当該部位に関して自ら適切な養生を施したり、義肢を適切に管理する。さらに、床ずれ等のある場合には、体位の変換を行って患部への圧迫が長く続かないようにしたり、床ずれが生じやすい部位の皮膚を清潔に保つ。
  • 乾布摩擦や軽運動、自然の諸要素(空気、水、太陽光線等)を利用した身体の皮膚や粘膜の鍛錬、血行の促進、呼吸機能の向上、体温の調節などを行い、健康状態の維持・改善する。

   (イ)心理的な安定について 

  • 心理的な安定を図り、対人関係を円滑にし、社会参加の基盤を培う。
  • 障害があることや過去の失敗経験などにより、二次的に生じる自信欠如や情緒が不安定になる場合には、自分のよさに気付くようにしたり、自信がもてるように励ましたりして、活動への意欲を促す。
  • 障害が重度で重複している幼児児童生徒の中で、情緒が安定しているかどうかを把握することが困難な場合は、安定した健康状態を基盤にして「快」の感情を呼び起こし、その状態を継続できるようにするための適切なかかわり方を工夫する。
  • 場所や場面が変化することにより、心理的に圧迫を受けて適切な行動ができなくなる場合は、教師と一緒に活動しながら徐々に慣れるよう指導する。
  • 肢体不自由があり移動が困難な場合は、手段を工夫し実際に自分の力で移動ができるようになるなど、障害に伴う不自由を自ら改善し得たという成就感がもてるような指導をする。
  • 障害の状態が重度のため、心理的な安定を図ることが困難な場合には、寝返りや腕の上げ下げなど、不自由な運動・動作をできるだけ自分で制御するような指導をして、自己を確立し、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する意欲を育てる。

   (ウ)人間関係の形成

  • 人に対する認識がまだ十分に育っておらず、他者からの働き掛けに反応が乏しい重度の障害がある場合は、抱いて揺さぶるなど幼児児童が好むかかわりを繰り返し行って、かかわる者の存在に気付くように指導する。
  • 経験が乏しいことから自分の能力を十分理解できていない場合には、自分でできること、補助的な手段を活用すればできること、他の人に依頼して手伝ってもらうことなどについて、実際の体験を通して理解を促す指導をする。
  • 集団参加の基礎となる、集団の雰囲気に合わせたり、集団に参加するための手順やきまりを理解して、遊びや集団活動に積極的に参加できるようになる。

   (エ)環境の把握

  • 視覚、聴覚、触覚と併せて、姿勢の変化や筋、関節の動きなどを感じ取る感覚なども十分に活用できるようにする。
  • 感覚の過敏さや認知の偏りなど個々の特性に適切に対応できるようにする。
  • 位置関係の認知が困難で、文字や図形を正しく書くことができない場合には、一つの文字や図形を取り出して輪郭を強調して見やすくしたり、文字の部首や 図形の特徴を話し言葉で説明したりすることなどで効果的に学習する。
  • 感覚を有効に活用し、空間や時間などの概念を手掛かりとして、周囲の状況を把握したり、環境と自己との関係を理解したりして、的確に判断し、行動する。
  • ものの機能や属性、形、色、音が変化する様子、空間・時間などの概念の形成を図ることによって、認知の手掛かりとして活用できる。
  • 概念を形成する基礎である上下、左右、前後、高低、遠近等の空間に関する構造化を妨げられることがあるため、身体の動き、特に姿勢と対象の位置の関係を重視し、空間の構造化を図り、認知や行動の手掛かりとなる概念が構成されるよう指導する。

   (オ)身体の動き

  • 日常生活に必要な動作の基本となる姿勢保持や上肢・下肢の運動・動作の改善及び習得、関節の拘縮や変形の予防、筋力の維持・強化を図ることなどの基本的技能に関すること。
  • 全身又は身体各部位の筋緊張が強過ぎる場合は、その緊張を弛めたり、弱過ぎる場合には、適度な緊張状態をつくりだせるような指導が必要である。
  • 補助的手段の活用に関する指導内容には、各種の補助用具の工夫とその使用法の習得も含まれている。
  • 表現活動を豊かにするために、コンピュータの入力動作を助けるための補助用具も重要なものである。
  • 食事、排泄、衣服の着脱、洗面、入浴などの身辺処理及び書字、描画等の学習のための動作などの基本動作を身に付けることができるようにする。
  • 自力での身体移動や歩行、歩行器や車いすによる移動など、日常生活に必要な移動能力の向上を図ること。
  • 作業に必要な基本動作を習得し、その巧緻性や持続性の向上を図るとともに、作業を円滑に遂行する能力を高めること。
  • 身体の動きの面で、関係する教科等の学習との関連を図り、作業における基本動作の習得や巧緻性、敏捷性の向上を図るとともに、目と手の協応動作における作業の姿勢や持続について、自己調整できるよう指導する。

   (カ)コミュニケーション

  • 幼児児童生徒の障害の種類や程度、興味・関心等に応じて、表情や身振り、各種の機器などを用いて意思のやりとりが行えるようにするなど、コミュニケーションに必要な基礎的な能力を身に付ける。
  • 幼児児童生徒の障害の状態や発達段階等に応じて、話し言葉以外にも様々なコミュニケーション手段を選択・活用し、それぞれの実態に応じて、周りの人々との円滑なコミュニケーションができるようにする。
  • コミュニケーションを通して、事物や現象、自己の行動等に対応した言語の概念の形成を図り、体系的な言語を身に付けることができるようにすること。
  • 発音・発語に困難があり、文字の習得が十分でない場合には、具体物や写真、絵カード、簡単な記号などを利用してコミュニケーションを図り、文字や語彙の習得を促すこと。
  • 話し言葉や各種の文字・記号、機器等のコミュニケーション手段を適切に選択・活用し、コミュニケーションが円滑にできるようにする。
  • 場や相手の状況に応じて、主体的なコミュニケーションを展開できるようにする。
  • 日常生活における友人との会話、目上の人への対応、対話や会議、電話の応対などにおいて適切な言葉の使い方ができるようにしたり、コンピュータを活用してコミュニケーションができるように指導する。

  ウ 指導時間と指導形態

 

   (ア)指導時間

<小学部・中学部の場合>
小学部又は中学部の各学年の自立活動の時間に充てる授業時数は、児童又は生徒の障害の状態に応じて、適切に定めるものとされています。自立活動の指導は、個々の児童生徒が自立を目指し、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服しようとする取組を促す教育活動であり、児童生徒の障害の状態や発達の段階等に即して指導を行うものです。したがって、自立活動の時間に充てる授業時数も、個々の児童生徒の障害の状態等に応じて適切に設定される必要があります。このため、自立活動に充てる授業時数については、一律に標準としては示さず、各学校が実態に応じた適切な指導を行うことが重要です。ただし、標準授業時数を示さないからといって、自立活動の時間を確保しなくてもよいということではなく、個々の児童生徒の実態に応じて、適切な授業時数を確保する必要があるということです。
また、自立活動の時間に充てる授業時数は、各学年の総授業時数の範囲に含まれることとなっていますが、児童生徒の実態に即して適切に設けた自立活動の時間に充てる授業時数を、学校教育法施行規則別表第1又は別表第2に加えると、総授業時数は小学校又は中学校の総授業時数を上回ることもあります。こうした場合には、児童生徒の実態及びその負担過重について十分考慮し、適切な授業時数を確保することが大切です。

<高等部の場合>
高等部の各学年における自立活動の時間に充てる授業時数は、生徒の障害の状態に応じて、適切に定めるものとされています。小学部・中学部と同様に、自立活動に充てる授業時数については、一律に標準としては示さず、各学校が実態に応じた適切な指導を行うことが重要です。この場合も、標準授業時数を示さないからといって、自立活動の時間を確保しなくてもよいということではなく、個々の生徒の障害の状態に応じて、適切な授業時数を確保する必要があるということです。

   (イ)指導形態

自立活動の指導においては、個別の指導計画を作成することとなっています。自立活動の指導形態は個別指導を基本としますが、児童生徒の実態や指導内容等により、学校では様々な指導形態が工夫されています。基本的には以下に示す三つの指導形態が考えられます。

  • 第一は、個別指導の形態です。一人の幼児児童生徒に対して一人の教師が指導を行います。この指導形態では、個々の児童生徒の障害の状態に応じたきめ細かな指導や支援が可能です。しかし、幼児児童生徒同士のかかわりや集団のもつダイナミックな活動が難しいといえます。
  • 第二は、小集団で指導する形態です。幼児児童生徒の障害の状態や発達段階別に小集団を構成します。この指導形態では、幼児児童生徒同士のかかわりがあり、相互に刺激し合いながら学習することが可能です。一人の教師が指導を行う場合と、複数の教師がティームを組んで行う場合が考えられます。複数の教師が指導を行う場合は、教師間の相互の連携を密にすることにより、指導効果が期待できます。
  • 第三は、大集団で指導する形態です。一定の幼児児童生徒の集団を対象に、一人又は複数の教師が指導を行います。この指導形態では、幼児児童生徒同士が大きな集団の中で個性を発揮し、相互に刺激し合いながら学習することが可能です。
  • 障害のある幼児児童生徒の状態や学校の実情に応じて、より効果的な指導を行う上で、多様な指導形態を検討する必要があります。いずれの指導形態を選択するかは、幼児児童生徒の実態や指導内容、教師の資質等を考慮して決定する必要があります。
     

  エ 指導の評価


自立活動の評価は、診断的評価(実態把握)に始まり、形成的評価を行い、最終的に総括的評価を行って、次の指導に引き継がれます。その他に、指導における教師のかかわり方の評価や授業そのものの評価もありますが、ここでは、指導における子どもの学習の評価を取り上げます。
診断的評価は、現在の障害の状態や発達の状況を正確に把握して、指導目標を設定するための評価です。指導を始めるに当たって、今何ができて、何ができないかを明らかとするものであり、指導計画を立てる基礎となります。例えば、肢体不自由のある子どもが文字を書くことを評価する場合には、鉛筆をどのようにもつか、横や斜めの線は引けるか、ひらがなのパターンは理解しているかなどを評価していきます。このような評価を通して、文字を書くことに取り組む際に、少しの援助があれば可能なことは何かを明らかにして、指導目標を設定していくことになります。この場合には、「できない」だけの情報では課題設定は困難であり、「ここまではできるが、ここになると難しい。これぐらい援助すると一人では難しいこともできる」という情報が大切になります。
形成的な評価は、指導の中で子どもの学習過程を評価するものです。「それでいいよ」という学習状況について、子どもへのフィードバックも含まれます。日々の授業の中で行っていることを、記録して教師間で共有することが大切になります。授業中の子どもの姿勢や動き、行動記述や子どもの作品等が手掛かりとなります。個別の目標や授業でのねらいが不確かだと、この形成的評価が難しくなります。この形成的な評価のまとめが総括的評価につながります。
総括的評価とは、その指導を学期や学年ごとに総括的に評価するものです。当初の目標がどの程度達成できたかを判断するものです。計画を立てる段階から、評価のための規準と判断基準を明確にしておくことが重要になります。姿勢や動きを評価する際には、ビデオ記録や写真記録が手掛かりになります。また、書字や描画などの作品など、さらには標準化された検査を活用するなど、より客観的な方法をとることが求められます。
自立活動においては、個別の指導計画を基にその総括的な評価が行われます。その意味で、指導前の状態と比較して、どの程度進歩したかの評価となります。これは個人内評価であり、可能であれば、発達等の外的な基準との関連付けを行ったり、複数の教師で共通に確認する必要があります。そうしないと教師の主観的な評価になる可能性が高くなります。