個別の指導計画は、自立活動の指導や重複障害の児童生徒の指導に加えて、各教科等にわたり作成することが、学習指導要領に示されました。実際には、特別支援学校(肢体不自由)では、すでに重複障害以外のほとんどの児童生徒についても、自立活動の領域のみならず、学校での教育活動全体について作成されています。その場合には、自立活動の個別の指導計画については、教育活動全体の個別の指導計画に含まれることになります。特別支援学校(肢体不自由)の場合には、その児童生徒の障害の状態が多様であり、自立活動のみの指導計画なのか、教育活動全体の指導計画なのかを明確にする必要があります。
ここでは肢体不自由の児童生徒について、教育活動全体の指導計画と自立活動の指導における指導計画について取り上げます。つまり、教育活動全体の個別の指導計画があり、その一部として自立活動の個別の指導計画が含まれます。
肢体不自由があり、学習の困難さが少ない場合は、教科等の学習は小・中学校と同じ内容となる場合があり、その際には自立活動のみの個別の指導計画が作成されることもあります。自立活動の個別の指導計画においては、自立活動の時間の指導と各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間との関連を十分図る必要があります。

  ア 教育活動全体の個別の指導計画

 

   (ア)実態把握と本人、保護者の意見

 実態把握に当たっては、担任のみならず複数の教師で行うことが効果的です。その内容としては、学習上の配慮事項や学力、基本的な生活習慣、特別な施設・設備や教育機器の必要性、興味・関心、人やものとのかかわり、心理的な安定の状態、コミュニケーションの状態等を全体的に把握します。児童生徒の行動観察や諸検査の結果に加えて、医療機関や保護者等第三者からの情報による実態把握も大切となります。
特に、肢体不自由の児童生徒の場合には、呼吸の様子やてんかん発作等の健康に関する把握、集団場面での対人行動やコミュニケーションの方法、視知覚認知の困難さ、さらに運動発達の状況、手指や上肢の動き、姿勢や移動手段等を把握する必要があります。就学前に医療機関等で訓練等を受けている場合もあり、その情報を保護者や医療機関に確認することも必要になります。
また、個別の指導計画を作成する上では、児童生徒や保護者の意見をどのように反映させるかが大切になり、その意見を尊重しつつ、保護者と児童生徒の実態を確認します。

   (イ)重点指導目標の設定-長期目標や短期目標-

本人や保護者の意見を参考に、その実態把握を基に、一年程度の長期的目標及び一学期程度の短期目標を設定します。これは、教育活動全体の指導目標であり、重点を置いて教育活動で取り組む目標となります。実態把握とのつながりを明確にし、すべての教育活動で重点的に取り組む目標を設定します。肢体不自由の児童生徒では、例えば、「多くの場面で、相手に自分の意思を明確に伝える」「手や腕の緊張を抜いて、操作性を高める」などがあります。

   (ウ)各領域・教科ごとの指導目標の設定

 実態把握等に基づき、各領域・教科ごとの指導目標を設定します。この場合も一年程度の長期的目標及び一学期程度の短期目標を設定します。さらにそれらの目標と重点指導目標を関連付けます。また、必要に応じて、各領域教科の構造の見直しを行います。
児童生徒の障害の状態や発達の程度に応じて、学校で教育課程が設定されています。その領域・教科に従って、実態把握等の情報をもとに、目標設定します。国語や算数の教科、特別活動等の目標に照らして、児童生徒の目標を設定します。

   (エ)各領域・教科ごとの指導内容、指導の手立て、達成状況の評価の観点の設定

 それぞれの目標に対して、指導する内容、具体的な手立て、達成状況の評価の観点を設定します。

  イ 自立活動の個別の指導計画


自立活動の個別の指導計画(年間計画)のモデル案を表3に示しました。一つのモデルであり、それぞれの学校において工夫した書式が使用されています。

   (ア)自立活動の目標設定

 教育活動全体の目標を踏まえて、領域の一つである自立活動の指導において、達成を目指す目標を設定します。この場合には他の領域・教科では取組が難しく、かつ自立活動の目標に沿ったものを取り上げます。一年程度の長期的目標及び一学期程度の短期目標を設定します(表3の(1) 及び(2) )。肢体不自由の児童生徒の場合には、身体の動きが困難であることから、領域・教科の学習を進めていく上で身体の動きやコミュニケーションに関する目標となる場合が多いようです。
例えば、「安定して座位を保持する」「独歩で10メートル移動する」「肩や首、上肢に緊張を入れずに発声する」「トーキングボードを使って、家庭での様子を報告する」などです。
この目標設定においても、可能であれば児童生徒や保護者の意見も記入します
(表3の(3) 及び(4) )。

   (イ)指導内容と方法の設定

 自立活動の目標を設定したら、それを実現するために必要な学習内容を整理し、どのような方法で指導するかを検討します。その際に指導上で留意すべき点を明確にします。合わせて達成状況を評価する観点や基準等を設定します(表3の⑤)。
例えば、「安定して座位を保持する」ことを目標にするならば、「上体のまっすぐな位置が分かる」「腰を起こして、腰が崩れないようにする」「背中を曲げずに、伸ばす」等の学習内容が挙げられます。これらの内容を具体的に、児童生徒にどう指導するか、その際の留意点を挙げます。
例えば、「安定して座位を保持する」ことを目標とした場合、身体の動きの内容に加えて、「垂直が分かる」等の「環境の把握」の内容、「指示を受けとめ、それに応じる」等の「コミュニケーション」の内容とも密接にかかわっている場合が多くあります。六つの区分の内容から必要な項目を選定し、それらを相互に関連付けて、指導内容を設定することが求められます。
それぞれの指導内容について、具体的な指導の手立てを明確に記述します。

   (ウ)学校の教育活動全体を通じて行う自立活動の指導

 時間の指導の目標、指導内容等を設定したら、その目標を実現するために、学校の教育活動全体で、どのような指導が可能かを検討します。指導可能な時間帯や手立てを設定し、指導の実際について明確にします(表3の⑥)。この教育活動全体で行う指導が充実することで、時間の指導の成果がより確かなものになります。
例えば、「安定して座位を保持する」ことについては、座位の姿勢をとる時間を確認します。朝の会や教科の学習の時間、本人に負担にならない範囲で、姿勢が崩れないように手立てを工夫し、本人が姿勢を意識するような取組を行います。

   (エ)評価と次の計画検討、教育課程の検討

 全体の個別の指導計画、自立活動の個別の指導計画について、学期の評価(表3の⑦)、計画の見直しを繰り返し、年間の評価(表3の⑧)、及び次年度の計画を検討します。自立活動の評価は、個別に設定した目標に照らして、それがどれだけ実現できたかを評価することになります。設定された目標があいまいであると、この評価が難しくなります。その意味で目標設定の段階で評価の仕方を検討しておくことが重要です。
また、これらの評価を基に、各領域・教科の構造の見直しを行い、教育課程の在り方について検討します。

自立活動の個別の指導計画案
表3 自立活動の個別の指導計画案