[事例の概要]
特別支援学校(肢体不自由)高等部の生徒。病名は進行性筋ジストロフィー。高等部2年まで電動車いすを操作して移動し授業を受けていましたが、風邪の悪化を引き金として病状が進行し、入院後に気管切開手術を受け、コミュニケーションをとることが難しくなりました。退院後も在宅でベット上での生活を余儀なくされています。
この間に運動機能にも低下が見られ、眼球の動きと右手の親指の動きが見られる程度となっています。唇を鳴らして合図を送ることはできますが、こちらからの問いかけに「はい」「いいえ」で答えるにとどまっていました。

[学校のサポート]
本生徒のサポートについては、教師各自の専門性を生かすために、学部を超えて連携を図ることにしました。退院後に高等部の情報教育担当者と中学部の自立活動担当者が家庭を訪問し、保護者を交えてパソコンの利用について話し合いました。その結果、日常生活や介護に必要なことは本人が合図を送ることで足りていますが、学習場面ではパソコンの使用が必要ではないかということになりました。そこでパソコンに意思伝達装置を組み合わせてセットアップし、使用することにしました。パソコン上ではオンスクリーンキーボードを使用し、ワープロやブラウザを利用できます。またスイッチを使って入力できるようにしました。
パソコンと意思伝達装置のセットアップは情報教育担当者が行い、スイッチの製作は自立活動担当者が行いました。スイッチはパソコンのキーを単体で用意し、テープを巻いて製作しています。また家庭を訪問して、使っている様子や本人の意見を元にスイッチやパソコンの設定に変更を加えました。
高等部3年に進級後、病状も安定したこともあり訪問教育が行われるようになりました。授業者に対して情報教育担当者からパソコンの使用法について説明したり、直接家庭を訪問して継続的にサポートを行ったりしました。

[パソコンと意思伝達装置の用意]
当初は学校のパソコンと意思伝達装置を家庭に持ち込んで使用していましが、福祉事務所に相談した結果、意思伝達装置の補助金を申請することができました。補助金が下りるまで時間がかかったため、当面レンタルで販売店からパソコン一式を借り、補助金が下りた時点でそのパソコン一式を買い取ることになりました。このパソコンと意思伝達装置のセットアップは、特別支援学校の情報教育担当者が行いました。

[まとめ]
本事例は病気の進行に伴って支援機器が必要になったケースですが、一人の教師がかかわるのではなく、校内でも複数の部門がかかわったり、福祉関係がかかわったりしたケースです。今後は個別の教育支援計画の作成に際しても多方面との連携が必要なこともあり、担任が抱え込むのではなく協力して児童生徒の指導に当たることが求められます。


<引用・参考文献>
1)文部科学省:特別支援学校学習指導要領解説 総則等編(幼稚部・小学部・中学部),2009
2)文部科学省:特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編(幼稚部・小学部・中学部・高等部),2009
3)下山直人:自立活動の現状と課題,肢体不自由教育173,2005(pp.7-11)
4)當島茂登:自立活動の実施状況とその課題,肢体不自由教育173,2005(pp.12-17)
5)古川勝也:肢体不自由養護学校における自立活動,教育出版,2002(pp54-61)
6)独立行政法人国立特殊教育総合研究所:平成14年度プロジェクト研究「盲・聾・養護学校における新学習指導要領のもとでの教育活動に関する実際的研究ー自立活動を中心にー」報告書,2003
7)独立行政法人国立特殊教育総合研究所:肢体不自由のある子どもの「自立活動ガイドブック」,ジアース教育新社,2006