情緒障害という用語は、昭和36年の児童福祉法の一部改正に伴い、情緒障害児短期治療施設の開設時から使われるようになりました。さらに昭和42年には、この施設の対象児の規定が示されていますが、そこでの対象児は、登校拒否(当時使用)やかん黙などの非社会的問題を有する児童、反抗や退学などの反社会的問題行動を有する児童、チックなどの神経的習癖を有する児童たちで、自閉症や自閉的傾向のある児童は別の施設での治療が求められていました。
一方、文部省(現:文部科学省)においては、昭和42年に「児童生徒の心身障害に関する調査」が全国規模で実施され、その調査内容には、既設の6障害の特殊学級(現:特別支援学級)の他に、新たに情緒障害の項目が加わっていました。当時、その情緒障害の分類別基準は、知的障害や明確な身体障害がないという前提で、登校拒否や神経症、精神病、かん黙、さらに症状面を中心にした記述から想定される自閉症や脳の器質的障害が挙げられていました。このように、厚生省と文部省の行政分野の違いによって、情緒障害という用語の概念規定が異なっているという状況がありました。しかし、昭和42年の文部省の全国調査によって、さらに情緒障害児に対する教育の必要性が浮彫になったわけです。
さて、情緒障害特殊学級(当時)の誕生は、学校教育における自閉症教育のスタートでもありました。昭和41年には、現在の東京都公立学校情緒障害児教育研究会(いわゆる都情研)の前身であった、『自閉症といわれた子の担任の会』が設立され、研究者と東京都の教員が中心になって、特に通常の学級での自閉症教育の在り方を模索していきました。そして、昭和44年には、東京都杉並区立堀之内小学校に我が国初の情緒障害特別支援学級が開設され、情緒障害特別支援学級における自閉症教育が開始されていきました。
現在、文部科学省の調べでは、平成20年度の自閉症・情緒障害特別支援学級数は12,727学級あります。そして、そこで指導を受けている児童生徒数は、38,001人となっています。同様に通級による指導では、自閉症の児童生徒が5,469人、情緒障害の児童生徒が3,197人で合計8,666人が制度を利用しています。
なお、これまでは、一般に情緒障害児に対する教育を「情緒障害教育」と呼んでいましたが、情緒障害特別支援学級が自閉症・情緒障害特別支援学級と改名されたことから、本書では、それを「自閉症・情緒障害教育」と呼ぶことにします。