ア 自閉症・情緒障害教育の対象


文部科学省初等中等教育局特別支援教育課による就学指導資料(2002)では、情緒障害について「情緒の現れ方が偏っていたり、その現れ方が激しかったりする状態を、自分の意思ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に支障となる状態」とした概念規定をしています。
人は誰も、時には情緒不安定に陥り、そのことで通常の行動が保てなくなることが起こりますが、情緒不安定になる原因が特定され一過性の場合がほとんどです。そのため、特定される原因が取り除かれれば問題は解決されます。しかし、就学指導資料で規定されている情緒障害とは、主として人間関係のあつれきなどの要因で、情緒障害の現れ方が継続するなど生活に支障をきたしている場合と、自閉症などの中枢神経系の機能障害や機能不全が要因で、学校生活で特別な指導や支援が必要な場合を想定しています。
そこで、同資料では、情緒障害教育の対象者を以下のように分類しています。

 「第1のタイプは、発達障害に包括される障害である自閉症及びそれに類するものにより、言語発達の遅れや対人関係に形成が困難であるため、社会的適応が困難である状態である。第2のタイプは、主として心理的な要因の関与が大きいとされている社会的適応が困難である様々な状態を総称するもので、選択性かん黙、不登校、その他の状態(多動、常同行動、チックなど)である。」

つまり、自閉症であっても、言語発達や対人関係に特別の問題が感じられず、学校生活を送る上で支障がない場合は自閉症・情緒障害教育の対象にはなっていません。同様に、選択性かん黙等においても、社会的適応の問題が生活に支障をきたさない場合は対象になりません。
自閉症・情緒障害教育の対象になる児童生徒は、障害の程度によって、特別支援学級での指導と通級による指導の二通りがあります。教育的対応の基準としては、「障害のある児童生徒の就学について」(平成14年5月27日付け14文科初第291号初等中等教育局長通知)により、以下のように示されています。
自閉症・情緒障害特別支援学級の基準では、「(1) 自閉症又はそれに類するもので、他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難なもの、(2) 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、社会生活への適応が困難である程度のもの」となっています。
これ以前の就学基準では、発達障害に位置付けられる自閉症等と、心理的関与が想定される選択性かん黙等を包括して、「情緒障害を有する者」とまとめられていましたが、平成14年度の就学手続きに係る政令改正時に、両者は原因も指導法も大きく異なることから、二つに分けられて明記されています。なお、「自閉症又はそれに類するもの」といった記述が意味するところは、アスペルガー障害などを示しています。
(注:平成21年2月3日付け20文科初1167号通知において、情緒障害特別支援学級における障害種の明確化のために、それまで特別支援学級の対象としてきた「キ情緒障害者」を、「キ自閉症・情緒障害者」と改めています。これによって、従前の情緒障害特別支援学級の名称は、「自閉症・情緒障害特別支援学級」という名称に変更されています。)
自閉症や情緒障害のある児童生徒に対する通級による指導は、これまで「障害のある児童生徒の就学について(平成14年5月27日付け14文科初第291号初等中等教育局長通知)」により、情緒障害者の障害の種類及び程度を「一 自閉症又はそれに類するもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの」「二 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの」としてきましたが、近年、これらの障害の原因及び指導法が異なることが明らかになってきたことから、「一」に該当する者を「自閉症者」とし、「二」に該当する者を「情緒障害者」として分類を見直すため、学校教育法施行規則が改正され、平成18年4月1日より施行されています(「学校教育法施行規則の一部改正等について(平成18年3月31日17文科初第1177号初等中等教育局長通知)」)。

  イ 自閉症・情緒障害教育に係る教育課程の編成


自閉症・情緒障害教育の対象となる児童生徒の教育課程編成に関して、学校教育法施行規則第138条や第140条では、自閉症・情緒障害特別支援学級や通級による指導(自閉症者・情緒障害者)において、特に必要がある場合は、特別の教育課程を編成することができると明記されています。
小学校学習指導要領解説(総則編)や中学校学習指導要領解説(総則編)では、特別支援学級等において特別な教育課程を編成する場合は、学校教育法に定める小・中学校の目的や目標を達成することが前提とし、その上で、対象の児童生徒の実態や障害の程度などを考慮して、特別支援学校学習指導要領に示された内容を取り入れるなどすることと記載されています。つまり、特別支援学級等においては、小・中学校の教育課程を基準としながら、特別支援学校学習指導要領を参考にして実情に応じた教育課程の編成を行うことが可能になっています。
また、同解説では、通級による指導においても、主として各教科等の指導を通常の学級で行うことを原則として、一部特別な指導は、特別支援学校学習指導要領における自立活動の目標を参考にしたり、内容を取り入れたりするなどして学習活動が実施できると述べられています。