通級による指導は、通常の学級で多くを学びつつ、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服することが目的であり、障害の状態等に応じた特別の指導を特別な場所で行います。特別の指導とは、特別支援学校における自立活動の指導を参考にして行うことを原則とし、特に必要がある場合には、障害の状態に応じた教科の補充指導を行うこととされています。
通級による指導の指導形態は、大きく分けて個別指導と集団指導があります。個別指導では、自閉症者については、教科学習、言語やコミュニケーションなどにかかわる基礎的な知識・技能が主な指導内容となり、選択性かん黙等の情緒障害者については、カウンセリング的な対応や心理的な安定を促すなどの指導が中心となります。
集団指導では、音楽、運動、製作などの活動を通して、基本的生活習慣の育成、遊びや対人関係、コミュニケーションなど社会的適応力の育成が主な指導のねらいとなります。なお、指導に当たっては、視聴覚機器等を有効に活用し、指導の効果を高めることも大切です。
通常の学級や日常生活の中で活かしていくことができるよう、通級による指導をより有効なものとするためには、在籍する学級の担任等や家庭との緊密な連携を図ることが重要です。

  ア 自立活動の内容 


平成21年3月に告示された特別支援学校幼稚部教育要領、小学部・中学部学習指導要領、高等部学習指導要領においては、自立活動の目標が「個々の児童又は生徒が自立を目指し、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、もって心身の調和的発達の基盤を培う」と明記されています。この目標を達成するために、今回の改定では、自立活動の内容は6区分(健康の保持、心理的な安定、人間関係の形成、環境の把握、身体の動き、コミュニケーション)の下に26項目が示されています。
今回の改定では、自立活動においても社会の変化や子どもの障害の重度・重複化、自閉症、LD、ADHD等も含む多様な障害に応じた適切な指導を一層充実させるため、他者とのかかわり、他者の意図や感情の理解、自己理解と行動の調整、集団への参加、感覚や認知の特性への対応などに関することが新たに付け加えられました。
特に、新区分の「人間関係の形成」においては、通級における指導の対象でもある高機能自閉症やアスペルガー障害の児童生徒に大きく関与することが想定されます。その点を含めて、特別支援学校の自立活動の内容を理解することが重要です。
なお、自立活動の内容の指導を行う場合には、以下の「健康の保持」等の区分における項目ごとに指導するのではなく、児童生徒の実態に応じて、区分を超えて、必要となる項目を選定し相互に関連付けることが必要です。

○健康の保持

  • 生活のリズムや生活習慣に形成に関すること
  • 病気の状態の理解と生活管理に関すること
  • 身体各部の状態の理解と養護に関すること
  • 健康状態の維持・改善に関すること

通級による指導を受けている児童生徒は、強いこだわりや固執性などの特性から、生活のリズムが乱れたり、行動のパターン化が見られたりして、日常の生活習慣を身に付けることが難しい場合があります。家庭と連携を図りながら、課題について保護者と共通理解をして、家庭と学校とが一貫した対応を心がけることが大切です。


○心理的な安定

  • 情緒の安定に関すること
  • 状況の理解と変化への対応に関すること
  • 障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する意欲に関すること

通級による指導を受けている児童生徒は、様々な要因で心理的に緊張したり、不安になったりすることから集団生活での適応が困難になりがちです。このような場合は、環境的な要因が心理面に大きく関与していることも考えられることから、刺激の調整をしたり、過敏さを軽減したりするなど、不安定を引き起こす要因への対応とともに、環境の改善に十分に配慮しながら、情緒の安定を図っていきます。

失敗経験の積み重ねによる二次的障害で生じる自信喪失や、自己評価の低下に対する指導も大切です。
また、状況の理解が困難なことから新しい場面への抵抗が大きかったり、変化に対する対応が難しかったりすることもあります。予定表を活用するなどして、事前に見通しをもつことができるような工夫をしていきます。

○人間関係の形成

  • 他者とのかかわりに基礎に関すること
  • 他者の意図や感情の理解に関すること
  • 自己の理解と行動の調整に関すること
  • 集団への参加の基礎に関すること

通級による指導を受けている児童生徒の中には、特に対人関係が上手にとれないことで、通常の学級での生活に支障をきたしている場合が多く見られます。心理的な安定やコミュニケーションの内容と合わせて、対人関係の基礎的なスキルの獲得と拡充、自分の気持ちや行動をコントロールするためのスキルの獲得と拡充、集団参加のためのスキルの獲得と拡充等を目的に指導をしていくことが重要です。

そのためには、知的発達に遅れのない高機能自閉症やアスペルガー障害の児童生徒であっても、最初は個別指導などを中心に、状況の理解や話の文脈から必要な情報を得るための指導を行ったり、相手の表情や口調などから気持ちを読み取ったりする指導をするなどして、次第に集団を広げていき、個別指導で培った力を小集団でも活かせるよう指導を重ねていくことが大切です。
小集団指導では、ゲームや運動を通して一般的によく行われている指導にSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)があります。SSTでは、自立活動のこの区分の内容を中核にして組み立てていくことも可能です。例えば「挨拶」「状況に応じた言葉遣い」「待つこと」「我慢すること」「人を賞賛すること」等、社会性の基礎となる様々なスキルを獲得し汎用することができます。
また、小集団指導で重要なことは、どのような特徴をもった子ども同士を組み合わせて集団をつくるかが重要にポイントになります。一人一人の児童生徒の実態や年齢、通級による指導の経験年数などを考慮して、個別の指導計画に即した集団構成が大切になります。

○環境の把握

  • 保有する感覚の活用に関すること
  • 感覚や認知の特性への対応に関すること
  • 感覚の補助及び代行手段の活用に関すること
  • 感覚を総合的に活用した周囲の状況の把握に関すること
  • 認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に関すること

通級による指導を受けている児童生徒は、いろいろな感覚器官を総合的に活用して情報を収集したり、周囲の状況を把握したりすることに困難さが見られます。そのため、的確な社会的判断をくだしたり、適切な対応をしたりすることが苦手であることが多くなるため、視覚的手掛かりを活用し、イメージや概念を環境の構造や状態と対応させるなど、わかりやすく示して、状況に応じた対応がとれるように指導をしていきます。

また、感覚を通して得た情報を記憶し、物の具体的なイメージをもつことができるように教材・教具を工夫したり、環境の設定に配慮したりして、概念の形成を図ることが大切です。

○身体の動き

  • 姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること
  • 姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用に関すること
  • 日常生活に必要な基本動作に関すること
  • 身体の運動能力に関すること
  • 作業に必要な動作と円滑な遂行に関すること

通級による指導を受けている児童生徒は、バランス感覚や協応動作、巧緻性などに問題があり、運動能力や作業の円滑な遂行に困難さがある場合があります。

個々の能力や発達段階に応じて、身体活動をさかんにし、バランスのとれた運動能力、確実性のある作業の遂行能力を高める必要があります。日常生活に必要な動作の基本となる姿勢保持や、運動・動作の習得などの基本的技能を基礎として、身辺自立等の生活習慣のための動作及び書字、描画などの学習のための動作等の基本動作を身に付けることができるようにします。
作業の円滑な遂行については、作業に必要な基本動作を習得し、その巧緻性や持続性の向上を図るとともに、作業を円滑に遂行する能力を高めることが大切です。また、作業における姿勢や持続時間などについて、自己調整し、意欲がもてるように指導することが大切です。

○コミュニケーション

  • コミュニケーションの基礎的能力に関すること
  • 言語の受容と表出に関すること
  • 言語の形成と活用に関すること
  • コミュニケーション手段の選択と活用に関すること
  • 状況に応じたコミュニケーションに関すること

コミュニケーションの基礎的能力を高めるためには、認知の発達、言語概念の形成、社会性の育成及び意欲の向上と関連していることを留意する必要があります。話し言葉や文字や記号などを用いて、相手の意思を受け止めたり、自分の考えを伝えたりするなど、言語を適切に受容して表出できるようにすること、コミュニケーションを通して事物や現象、自己の行動などに対応した言語の概念の形成を図り、体系的な言語を身に付けることができるようにすること、場や相手の状況に応じて、 主体的なコミュニケーションを展開できるようにすることが大切です。

指導に当たっては、児童生徒の状態や成長過程に応じた正しい言葉の使い方について、できるだけ実際的な場面を活用したり、場を設定したりして、具体的に指導を行うことが大切です。
コミュニケーションを円滑に行うためには、伝えようとする側と受け入れる側との人間関係が大きく関与していることにも留意が必要です。集団生活の中において、できるだけ良好な人間関係が成立するよう、配慮が必要です。

  イ 教科の補充指導の内容


教科の補充指導とは、障害の状態に応じた特別の指導であり、単に教科の遅れを補充するための指導ではないことに留意することが必要です。指導の内容によっては、自立活動の内容と関連付けて指導する場合もあります。
通級による指導を受ける自閉症等の児童生徒は、全体的又は特定の認知能力に困難な面があり、障害の状態に応じて、いくつかの教科(算数、国語、理科、社会など)に渡って、数の概念、文章の理解、推理力や想像力などを必要とする内容などについて指導します。
教科の補充指導を行う場合も、認知能力を高めるために、弁別、対応、仲間集め、言葉や仕草の理解、状況の説明、会話などの伸長を図るために、音声模倣や発声・発語などの指導に留意する必要があります。
さらに、授業の形態、教材・教具などを工夫して指導を行う必要があります。特に、教科の補充指導については、児童生徒一人一人の理解の状況や習熟の程度に応じた指導を行う必要があります。在籍校との連携を密に図り、共通理解に立って、計画的に指導に当たることが大切です。