自閉症及びそれに類する障害の原因は、中枢神経系の機能障害や機能不全であるとされています。以前は、原因として親子関係の不全や、愛情のない環境に対する不適応の結果であるとする心因論的考え方もありましたが、現在では完全に否定されています。
自閉症の基本的症状として、米国精神医学会の診断基準であるDSM-Ⅳ-TR(2000)は、(1) 社会性の障害、(2) コミュニケーションの質的な障害、(3) 行動、興味及び活動の限定された反復的で常同的な様式の3つを挙げています。また、感覚の過敏性や過度の鈍感性、刺激の過剰選択性、知的能力のアンバランスさが自閉症の特徴として指摘されています。また、自閉症の児童生徒の中には知的障害を伴うことを「(1)自閉症・情緒障害児の発達と実態把握」でも指摘しました。知的障害を伴う自閉症の児童生徒の場合は、上記に挙げた基本的な配慮事項に加えて、知的発達の遅れに伴う種々の困難さ、例えば、身辺処理に関することなどにも対応することが必要となります。
さて、実際の指導に当たっては、これらの自閉症の障害特性を十分考慮することが大切となります。指導や支援のポイントについて、廣瀬ら(2004)が自閉症の3つの基本症状にそって挙げているものの概略を紹介します。

  ア 人とのかかわり方の困難(社会性の障害)への基本的な対応


多くの自閉症の児童生徒は、年少の頃には他者に関心をもたなかったり、他者からの接近を避けたり、一人でいることを好みます。このような時期に、強引に他の児童生徒と接触させたり集団の中で活動させると、パニックに陥ったり、他者とかかわることへの嫌悪感を増大させたりすることにもなりかねません。
そこで、実際の生活の場では、かかわる人が徐々に接近したり、接触したりするような配慮が必要になります。本人の好きなおもちゃや活動を通して、大人や 少人数の児童生徒とかかわるような工夫が効果的なこともあります。
その後、加齢と共に、次第に交友関係に関心を示すようにもなりますが、人とかかわる際に必要なコミュニケーションの方法を使うことができなかったり、身振りや動作やジェスチャーなどを用いることが苦手であったりします。
そこで、まずは、楽しい雰囲気でコミュニケーションがとれるような機会を頻繁につくっていく必要があります。また、本人が好む行動を設定したり、生活上必然性のある活動や遊びの機会を利用して、適切な行動を模倣したりして、実行させるような指導をしていく必要もあります。このようにかかわり方の技能を学習しながら、人とのつきあい方(話し方や、会話のルールの理解など)も習得させていく必要があります。

  イ コミュニケーションの困難へ対応


多くの自閉症児に話し言葉の発達の遅れが見られます。指導に当たっては、既に獲得されている児童生徒のコミュニケーション技能に応じて、現実的な目標を設定します。加齢と共に、コミュニケーションの技能の獲得状況にも個人差が出てきますが、あくまでも、本人の技能の獲得レベルに併せて、コミュニケーションの形態を選択することが重要です。例えば、絵カードや文字カード、身振りやジェスチャー、コミュニケーション・ボードなどがあります。
また、彼らの中には、自傷行動、他者への攻撃行動、かんしゃく行動などによって、コミュニケーションをとっている児童生徒もいます。これらの行動は、他者との関係を保ったり、社会的に受容されたりするには不利となるものです。このような不適切な行動を持続させている要因(例えば、他者からの注目を得るため、苦手で難しい課題からの逃避するためなど)を早急に突き止め、適切でかつ本人の技能レベルにあった行動に置き換えていく指導をする必要があります。
さらに、知的障害の程度が境界域や、正常範囲にある者(例えば、高機能自閉症)であっても、言葉の使い方や意味理解が微妙にずれていたり、比喩や冗談の理解が難しかったりすることが多くあります。例えば、学校に自転車で来てしまったA君へ、担任が「自転車、乗らないでもってかえってね」と指示したところ、A君は自転車を持ち上げて、抱えて帰った、というような具合です。これには、言外の意味を想像して捉えることや、曖昧な質問の意味を理解することが苦手であることが影響しています。慣用表現や皮肉、仄(ほの)仄(ほの)めかしなどを理解することが苦手です。相手の言ったことを言葉通りの意味として受け止めてしまうのです。
したがって、児童生徒の言語理解力・運用力を細かくアセスメントし、誤って学習してしまっている言葉や、慣用表現などについて特に注意深く指導する必要があります。最近では、コミック会話による指導が効果的であることが指摘されています。コミック会話(Gray、1994)というのは、社会的・対人的状況をイラストで具体的に示して、発言と思考を別々の吹き出しや色で書いていき、会話を目で見て分析できるように示してくれるものです。これによって、メッセージや言葉の意味の広がりを分析 したり理解したりすることができます。
また、他人の気持ちを推察することや、相手の立場に立って物事を考えることが苦手であることから、例えば、本人は素直で悪気がないのですが、太った人に対して素直に「太っているね」と言ってしまい、言われた人が気分を害するというようなこと があり、そのことでトラブルが起きることがあります。あるいは、児童生徒同士の暗黙のルールが分からず、大人に問われるままに児童生徒同士の秘密を話してしまうこともあります。このときも、本人には、友達を裏切るという悪意は全くないし、その 認識も全くありません。暗黙のルールが分からず、ただ素直に答えてしまうのです。  
さらに、こうした行動を周囲から非難されたときでも、自分の言動によって相手の 感情を害していることに、反論されたり注意されたりしていることを洞察できずに、逆に「みんながいじめる」と被害者的な受け止め方をすることがあります。このような二次的な問題を生じさせないためにも、教師の適切な対応や配慮や必要になります。
社会性における困難の指導には、問題が起こった機会を捉えて、実際的な指導をするほかに、ロールプレイなどを用いた社会的スキル訓練や、ソーシャルストーリー(Gray、1995)などによる指導があります。このソーシャルストーリーは、適切な行動をとるために必要な社会的な手掛かりや、その状況に望ましい反応をわかりやすく記述した絵本のようなものを活用するのが一般的ですが、形式はいろいろあります。例えば、授業場面では、勝手に発言するのでなく手を挙げて、先生に指名されてからと教えるようなものもあります。なお、それらのソーシャルストーリーの内容は、過敏性など、自閉症の児童生徒一人一人の特性に応じて個別的に作成されることになっています。
このような自閉症の児童生徒本人に対する指導・支援のほかに、所属学級の他の児童生徒や交流及び共同学習の相手の他学級の児童生徒も含めて、社会的スキルの指導を行ったり、障害特性を理解してもらうよう務めたり、友達関係を調整することも重要です。障害特性にあった適切な対応がされないために、自己否定感が強くなったり、逆に周囲への反発が強くなったりしたために、不登校や非行などの二次的な症状へとつながることがあります。こうしたことを防ぐためにも、教育は重要な役割を果たしています。児童生徒が自己肯定感を感じられ、生き生きできるような指導がとても大切です。

  ウ 興味や関心の狭さやこだわり、反復的、常同的な行動への対応


常同行動や自己刺激行動は、行動そのものは他者に危害を与えたり、迷惑をかけたりするものではありません。しかし、自閉症の人たちは、多くの時間をこのような行動に従事して過ごす傾向があり、そのことによって他者とかかわったり、社会的に有益な経験をしたりする機会が減少してしまいます。
そこで、常同行動や自己刺激行動を引き起こす原因等を調べ、それを取り除くための工夫や努力が必要となります。その際、常同行動や自己刺激行動を一方的に制止したり、抑制させたりすることは、かえって本人の混乱やかんしゃくやパニックを引き起こすことになりがちです。彼らの中には、先の状況が見通せない場面や、急な予定の変更などがあると、不安になって、常同行動や自己刺激行動を行う場合もあります。このような場合には、視覚的手掛かりなどを利用して、生活上の手掛かりを用意したり、日頃の生活上の配慮をしたりすることで、回避することができます。
なお、これに関しては、自閉症教育実践ガイドブック(国立特別支援教育総合研究所、2004)では、時間の経過を視覚的に示すことができるタイムタイマーという教材や、視覚化された個別のスケジュールなどが紹介されています。
さらに、これらの自閉症の3つの基本症状に沿った指導・支援のポイント(廣瀬ら、2004)に加えて、感覚の過敏性や過度の鈍感性(例えば、人との接触・接近を嫌がる、一般的な不快な音は問題ないが、特定の音には極端な恐怖を示すなど)や、刺激の過剰選択性(例えば、父親を眼鏡のみで認識しているため、父親が眼鏡を外してしまうと、父親はどこかへ消えてしまったような反応を示したりするなど、事物のある一つの刺激要素だけに反応すること)、知的能力のアンバランスさ[視覚的情報あるいは聴覚的情報を丸暗記することに優れた能力をもっていることなど(Prior、1979)]に留意して指導や支援を行うことが重要です。