ア 学習面での著しい困難の状態像とその背景要因


学習面での著しい困難というと、どのようなことが考えられるでしょうか。領域全般にわたって学習が積み上がりにくい場合、文字通り、その困難性は著しいものとなるでしょう。しかし、必ずしも学習領域全般につまずきが見られなくても、その困難さが、持続的かつ深刻さを表す場合があります。これが主に学習面でのつまずきをもつLDのある児童生徒が示す特徴です。
これらの児童生徒は、例えば、人の話を聞いて理解することはできても、自分で文章を読むとなると、文字を音に変換することがスムーズにできず、読むのがゆっくりになります。その結果、何について書かれていたか理解することができなくなったりします。また、口頭で自分の意見を発言することは流暢にできても、作文になると、書きたい文字が想起できず、言いたいことの半分も書けないような状況も見られます。LDの定義(文部省、1999)でも言及されているように、LDのある児童生徒は、全般的な知的発達に遅れは見られません。しかしながら、このような学力のアンバランス、著しい困難さが見られるのです。その要因について考えてみます。
LDは、中枢神経系(脳と脊髄)の機能障害が背後にあると推定されています。それによって、認知(情報処理)過程、つまり、情報を「受け止め、整理し、関係付け、表出する過程」のどこかに十分機能しないところをもち、その結果、学習面での深刻なつまずきが生じると考えられています。
例えば、聴覚的な刺激を処理する能力、聴覚的弁別や聴覚認知につまずきが見られる場合、聞いて理解したり、覚えたりすること、さらには、読みなどにおいても困難さを呈します。読みは、文字という視覚的な情報を、頭の中で音に変換する作業が必要なため、こうした認知能力とも深くかかわっているのです。特に欧米で見られるディスレクシア(読み書き障害)の主な原因は、聴覚的な刺激を処理する能力につまずきが見られるということで見解は一致しています。
同様に、視覚的な刺激を処理する力につまずきが見られる場合にも、読み・書きといった視覚性言語をはじめとする学習全般に影響を与えます。
その他にも、記憶する能力(学習したことを蓄積する力、学習の過程で処理する際に必要となる一時的、作動的な記憶等)や、注意の問題(学習することに対して注意を向ける力とその注意を持続させる力)、さらには、モティベーション(学習に取り組もうとする主体的な気持ち)なども学習には大きく関連しています。こうした能力が十分に機能しないと、学習面での困難さをもたらすのです。
学習面での困難さに影響するのは、上記のような子どもの内的要因だけではありません。外的な要因も大きく関与します。指導内容や方法、教材等が、その児童生徒に対して適切でない場合にも、学習面での困難さを生じさせます。LD等のある児童生徒は、認知特性のプロフィールにアンバランス(強い部分と弱い部分との間の差)が有意に見られるため、こうした指導方法や教材といった外的な刺激の性質によって、その理解度が左右されることも少なくありません。
このように、学習に著しい困難さが見られた場合には、本人の認知特性に代表される内在する要因と、課題や指導法、教材の特徴といった外的要因との両方が影響することが多いと考えられます。

  イ 学習面への指導


学習面での著しい困難さに対して、学習指導を効果的にすすめるためには、一般的な指導原理とあわせて、LD等のある児童生徒に対して特に配慮すべき特別な指導とを組み合わせて行うことが重要です。
一般的な指導原理とは、特にLD等のある児童生徒にかかわらず、すべての児童生徒に対して適用しうるものです。例えば、児童生徒が能動的に学習に取り組めるような工夫や、課題を児童生徒に合わせて細分化し、無理なく効果的に学習できるような工夫(スモールステップ)、児童生徒の取組の正誤や適否の結果を教員が即時に児童生徒に返す(フィードバック)等が挙げられます。
次に、LD等のある児童生徒の特性を考慮した特別な指導法について見ていきます。

   (ア)認知特性に配慮した指導

  LD等のある児童生徒の中には、見て理解すること(視覚的に情報を処理すること)は得意でも、聞いて理解すること(聴覚的に情報を処理すること)が苦手な子もいれば、その逆の傾向を示す子もいます。
視覚的な情報を処理することが得意な児童生徒は、言葉による説明だけでなく、絵や実物、実演(モデル)を提示することで理解が促される場合があります。逆に聴覚的な情報を処理することが得意な児童生徒は、絵や図などだけでなく、言葉によって説明を加えると理解しやすくなったりします。
さらには、一つ一つ継次的に情報を提示した方が分かりやすい児童生徒もいれば、全体像を把握しやすいよう同時的に情報提示した方が分かりやすい児童生徒もいます。
こうした児童生徒の認知特性は、日頃の児童生徒の様子をよく観察すること、さらには心理アセスメント等の結果から知ることができます。児童生徒がどのようなタイプか、どのようなやり方を得意とするかを把握し、学習のつまずきが見られた際には、児童生徒の認知特性に合わせた方法を提示してみる必要があるでしょう。

   (イ)指導形態

  認知特性に配慮した指導をする場合、さらには学習の速度などにも対応する場合には、集団といった指導形態だけでなく、小集団、ペア、個別等、柔軟に指導を行う必要があります。特に著しい学習の困難が見られる場合には、個別指導の時間を確保する必要があります。

   (ウ)代替手段の適用

  LD等のように、学習面でのつまずきの背景に内在的な要因がある場合、場合によっては代替手段で児童生徒のつまずきを補償することも重要です。例えば、書字障害をもつ児童生徒にはワープロ機能をもつ機器を導入するなどが考えられます。

学習面のつまずきに対応する場合、まずはその児童生徒がどうしてつまずいているのか(つまずきの要因)について丁寧に把握すると同時に、つまずいている領域(課題)にとって必要な力とは何か等を分析することも重要です。こうした多角的な情報の分析、アセスメントが専門的指導には不可欠です。