ア 行動面での著しい困難の状態像とその背景要因


ADHD、高機能自閉症等の障害特性による行動上の特性が、学校での集団生活において著しい適応の困難につながっている場合があります。しかし、多くの場合、それらの行動特性は、「やる気」や「態度」の問題と受け止められがちで、障害特性として、気付かれにくかったり、認められなかったりする面があります。
注意の集中困難や多動性、衝動性のあるADHDの児童生徒等は、ちょっとしたことに注意が逸れやすく、すぐに席を離れて立ち歩いてしまいます。何でもやりたがりますが、一つのことに集中して最後までやり遂げることが苦手です。また、自分の思い通りにならないと、かーっとなりやすく、人を叩いたり物を壊したりしてしまうこともあります。本人が無意識にとった行動が、集団生活での不適切な行動につながりやすく、注意されたり叱責されたりすることがどうしても多くなります。そして、「落ち着きがない」「約束を守れない」「自分勝手」等、周りから厳しい評価を受けてしまいがちです。
高機能自閉症等のある児童生徒の場合は、言葉やジェスチャーを使ってコミュニケーションしたり、想像力を働かせて相手の気持ちを察したりすることに困難があります。そのため、場面や状況に関係なく、思いついたことを一方的に話し始めることがあります。また、特定のものにこだわると、他のことにうまく切り替えることができません。周りには理由がよく分からず、突然、予想もつかない行動をとってしまうこともあります。そのような行動は、集団生活で様々な不都合さを生じ、不適応につながっていきます。
不慮のことや予想がつかない変化にはとても不安感を覚える一方で、難しい単語や外国語を知っていたり、計算力に優れていたりする場合もあるため、「できるのにやらない」「協調性がない」「わがまま」等と受け止められてしまうことが多くあります。
ADHDも高機能自閉症も原因はまだはっきり分かっていませんが、中枢神経系に何らかの機能不全があると推定されています。しかし、本人にとって適切ではない周りの人たちのかかわりや生活している環境等による心理・社会的な要因が、脳の器質的要因や遺伝等の生物学的要因に影響を与えて、行動面の問題をより大きくしてしまう可能性があることには留意が必要です。
障害として認められないと必要な支援が受けられず、うまく取り組むことができない失敗経験が重なり、自信や意欲を失ったり、自己評価の低下につながったりしていきます。周りで注意したり叱責したりする人たちや社会に対しての反発心を強めてしまう場合も出てきます。このような心理状態から、望ましくない行動がさらに現れたり、できていた学習ができなくなったり等の二次的な障害が、本来の障害特性である一次的障害に加えて起こってきます。
一次的障害は、基本的には大きく変わっていくものではありません。その障害特性によるつまずきや困難さを補助・支援することを第一に考え、時間をかけて可能なところから対応を図っていく必要があります。二次的な障害は、適切な支援で改善していきます。一次的障害による困難さに対する支援とともに、二次的障害に対する予防や改善を考えながら支援を工夫することが大切です。

  イ 行動面への指導・配慮


ADHD、高機能自閉症等のある児童生徒等の教育的ニーズは多様であることから、一人一人の実態把握を行動上の問題だけでなく、教科学習や対人関係の状況、学校生活への適応状態等、様々な観点から行う必要があります。また、ADHD、高機能自閉症等のある児童生徒の保護者や学級の他の児童生徒とその保護者へ、その障害特性の理解を積極的に図っていくことも大切です。
行動面への指導・配慮は、小学生など低年齢段階から適切な指導を行うことが重要です。対人関係に関する技能をはじめとして、社会生活を営む上で必要な様々な技能を身に付けさせ、適切な行動に向けての自己管理能力を高めていきます。自信の回復や自尊心(自己有能感)の確立、自分の行動への振り返りや他者が自分をどうとらえているかの理解等も大切なことです。
問題行動や非行等の問題への配慮のほかに、周りの児童生徒等との関係によるいじめや不登校等の問題についても配慮が必要です。共感的理解の態度をもち、一人一人の長所やよさを見つけ、それを大切にした指導・支援を考えていきます。
以下に指導・配慮についての具体的な例をいくつか上げてみます。

   ア)指示は分かりやすく、活動の見通しをもたせる

    一度にたくさんの情報が与えられると混乱してしまいます。指示は分かりやすく、はっきりと出します。長い説明は避けて、一つ一つ情報を提示するようにします。
目標や約束は、学級のめあてとして、分かりやすく絵や文字で掲示することも有効です。いつまで、どこまで取り組めばよいのか、活動の見通しをもたせることも大切です。到達点のゴールを具体的に(目標時間や問題数など)示します。

   (イ)認められる行動を教える

    注意や叱責で問題となる行動をやめさせる対応よりも、何が認められる行動なのか、その都度、具体的に教えていきます。問題行動が起きている時は、かなり興奮した状態にあるので、まず気持ちを受け止めるようにし、少し落ち着いてから対応するようにします。過去の経験から問題行動の生じる可能性が高いことが予想される場合は、困難に直面させるよりも、できるだけ困難を避けるようにします。援助しても問題を起こさずに済んだ経験を積ませる等、安定して落ち着いている状態を意識させていくことが大切です。気持ちを落ち着かせ、自分の行動を振り返ることができるように、特別な場所や人を確保することの検討も必要になる場合があります。教師の見方や接し方は、その学級の児童生徒の見方や接し方のモデルになります。日頃からよい行動は積極的に認めることにより、お互いがよいところを認め合える学級作りが大切です。

【高機能自閉症等への指導・配慮】
高機能自閉症の場合には、光や音、身体接触等の刺激への過敏性があることや、問題を全体的に理解することが難しいこと、過去の不快な体験を思い出してパニック等を起こしやすいこと等の特性に配慮が必要です。行動面につまずきが見られたら、一般的には考えにくい、独特のこだわりや感覚の過敏さが情緒的な不安定を招きやすいという観点で対応を工夫します。それらの特性に応じた指導ができるように、特別な指導の場を検討することも必要です。