小・中学校の通常の学級に在籍するLD等のある児童生徒のうち、これらの障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服を目的とする特別な指導が必要とされる場合は、通級による指導を行うことも考えられます。
通級による指導は、特別な教育課程の編成により行われます。障害による学習上又は生活上の困難の改善・克服を目的とする「自立活動」が中心となりますが、特に必要があるときは「各教科の補充指導」も行うことができます。指導時間については、自立活動と各教科の補充指導を合わせて年間35単位時間(週1単位時間)からおおむね年間280単位時間(週8単位時間)以内が標準とされています。なお、LD及びADHDの場合は、月1単位時間程度でも指導上の効果が期待できる場合があることから、下限が年間10単位時間とされています。
通級による指導では、通級する児童生徒の日常生活の場である家庭、学校での適応を図るために特別の指導を行います。通級による指導が、日常生活の場で生かされるためには、児童生徒への指導とともに保護者への支援、在籍学級の担任との連携が大変重要になります。
LD、ADHDのある児童生徒については、通級による指導の対象とするまでもなく、通常の学級における教員の適切な配慮やティーム・ティーチングの活用、学習内容の習熟の程度に応じた指導の工夫により、対応することが適切である者も多く見られます。
通級による指導を行うに際しては、必要に応じ、校長、教頭、特別支援教育コーディネーター、担任教員、その他必要と思われる者で構成する校内委員会において、その必要性を検討するとともに、教育委員会等に設けられた専門家チームや巡回相談等を活用します。通級による指導の対象かどうかの判断に当たっては、医学的な診断の有無のみにとらわれることのないよう留意し、総合的な見地から判断することが大切です。

  ア 自立活動の指導


自立活動の内容は、人間としての基本的な行動を遂行するために必要な要素と、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するために必要な要素で構成されています。内容は、「健康の保持」「心理的な安定」「人間関係の形成」「環境の把握」「身体の動き」「コミュニケーション」の6つの区分26項目に分類・整理されています。新しい学習指導要領では、社会の変化や児童生徒の障害の重度・重複化、自閉症、LD、ADHD等も含む多様な障害に応じた適切な指導を充実させるため、必要な項目を追加・修正するとともに、新たな区分として「人間関係の形成」が設けられています。
自立活動の指導内容は、各教科のように学習指導要領に示された内容がすべての子どもに対して指導すべき内容を示した基準であるのとは異なり、具体的な指導内容を自立活動の項目ごとにそのまま設定することを意味してはいません。区分ごとに示された内容の中から、必要な項目を選定し、それらを相互に関連づけて具体的な内容を設定することになります。

  イ 各教科の補充指導


通級による指導では、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服を目的とする指導(自立活動)が主として行われますが、特に必要がある時は、障害の状態に応じて各教科の内容を補充するための指導を含めることも認められています。
LDのある児童生徒に、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力において一部又は複数の著しい困難があり、そのことが国語や算数・数学、英語等の教科の学習に影響することがある場合には、個々のつまずきの状態に応じて教科の補充指導が必要になります。
ADHDのある児童生徒の不注意や衝動性、多動性の状態等が学習のつまずきに影響している場合は、その状態に応じて教科の補充指導が必要になります。
また、高機能自閉症やアスペルガー症候群のある児童生徒は、知的発達に遅れは
ありませんが、認知のアンバランスがあります。興味や関心のある教科とそうでない教科では、学習の定着にも大きな差がでてきます。個々の特性を踏まえて、つまずきの状態に応じた教科の補充指導を行う必要があります。
また、LD、ADHD、高機能自閉症等のある児童生徒の中には、身体の動きにぎこちなさがあったり手先が不器用であったりする場合があります。楽器の演奏や絵画、運動機能等に関して補充指導等が考えられます。

  ウ 通級による指導の担当者の役割

 

   (ア)児童生徒を支援する校内リソースの担当者としての役割

  • a 担任からの相談への対応
    通級指導教室の担当者は、担任から相談があった場合には、まず話を聞き、つまずきや困難の状況を一緒に整理していくことになります。その際、一面的な視点からだけで整理することがないように留意が必要です。相談内容から状況をつむことができ、助言をする場合には、その担任の理解の範囲を見極めながら担任の実行できる内容を助言していくようにします。
    特別支援教育の担当者として児童生徒の理解と解釈を求められた時には、授業参観を行ったり、児童生徒と接したりして、多角的な視点から児童生徒の情報を収集し、総合的な解釈になるよう心がけます。また、組織的な援助やかかわりを視野に入れて説明していくことも大切です。
  • b 学年会での支援の在り方の検討
    通級指導教室の担当者は、特別支援教育の担当者としての専門性を生かして、情報収集と問題の発見に協力するようにします。
    学年会等での情報交換の中から状態の把握が必要とされた児童生徒については、集会時や学校行事などでの行動観察や、学習や行動の特徴から総合的に考えて実態把握をしていきます。学年会等では、その児童生徒の緊急課題の見極めや言動についての解釈、支援の仕方や具体的な配慮の仕方、教材の提供等について助言したり、学年としての共通理解について話し合ったりしていくようにします。
  • c 児童生徒へ直接、支援をする場合の留意点
    通級指導教室の担当者が、通常の学級における学習活動の中で支援する場合は、あくまでも担任の指導内容やねらいに沿うことができるように、事前に話合いをもつことが重要です。
    通常の学級での実際の指導場面では、周囲の児童生徒の動向にも気を配り、支援する児童生徒に個別にかかわり過ぎることで、その児童生徒に差別感や孤立感、羞恥心などが生まれないよう十分に配慮することが大切です。選択教科、総合的な学習の時間などの指導の場合も同様に行います。学校行事や学年行事等では、組織の一員としての動きをしつつも、担任との連携のもとで、さりげなく支援することが重要です。

   (イ)担任からの依頼で行う個別指導や少人数指導

通級指導教室の担当者が、担任からの依頼で個別の指導を行う場合には、担任の意向だけではなく、児童生徒本人の意見もよく聞き、支援してほしいことを把握して指導内容を考えることになります。
少人数での指導を行う場合の指導は、学級のような大きな集団ではなく、小集団という特性を生かした指導のねらいを考えることになります。例えば、集団で学習する方法(意見の言い方等)を学ばせる、ソーシャルスキルを養う、友達とのかかわり方を学ばせるなど、ねらいを明確にして指導を行うようにします。最終的には大きな学級集団の中でも、少人数指導で培われたことが発揮できるようになるようにしていきます。
さらに、個別の指導や少人数での指導は、児童生徒にとって精神的な支えとなるような居場所であったり、担当者が相談相手であったりして支えていくことも重要なことです。

   (ウ)校内委員会への協力と専門的な知識の活用

通級指導教室の担当者は、学年会等での情報や担任からの相談を踏まえて、児童生徒について知り得ている情報を校内委員会へ提供する役割を担うこともあります。 
校内委員会での話合いでは、できる限り専門用語を使用せずに、児童生徒の状況を説明することが大切です。そして、教室での具体的な支援の方法や具体的な教材・教具について示したり、アイディアを提供したりするなど、これまで培ってきた特別支援教育の専門的な知識と経験を活用し、提案していくことが重要です。さらに、校内委員会で個別の指導計画の作成をする場合には、できる限り話合いに参加して、担当者として援助できることや役割を明確にしていくことが望まれます。

   (エ)保護者への支援(教育相談等)

通級指導教室の担当者が、担任からの依頼があって保護者の相談を行う場合には、あらかじめ担任から児童生徒の様子や相談内容等について情報を得ておくことが大切です。1回の面談で一方的に指導や助言をして終了することは、保護者に不信感や反感を抱かせることにもなり、注意が必要です。担任と相談しながら、保護者と担当者との信頼関係を作り上げるよう、相談を継続していくことが重要になります。
なお、担任とともに保護者を支援する場合には、担任への支援も視野に入れ、補助的な立場で支援することが重要になります。要望があれば専門機関についての情報を提供することも大切です。

   (オ)特別支援教育コーディネーターとの連携

   校内の特別支援教育コーディネーターとは、できる限り定期的な情報交換を行うように心がけ、校内事情の把握に努めることが重要です。特別支援教育コーディネーターから援助の依頼を受けた場合も、校内における特別支援教育コーディネーターとの役割分担を明確にし、効果的な支援体制が構築できるよう協力する必要があります。