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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第94号(平成27年1月号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE(ナイセ)━━━
■目次
【新年のご挨拶】
【お知らせ】
・研究活動についての意見募集について
・第37回全国特別支援教育振興協議会の開催(終了報告)
・世界自閉症啓発デー2014 in 横須賀の開催(終了報告)
【NISEトピックス】
・特別支援教育教材・支援機器等展示会を初開催
【海外情報の紹介】
・英国リーズ近郊の小学校を訪問して
【NISEダイアリー】
【研修員だより】
【アンケートのお願い】
【編集後記】

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【1】新年のご挨拶
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 皆様、明けましておめでとうございます。本メールマガジンをいつもご愛
読いただき、誠にありがとうございます。
 昨年は、1月に、我が国においても、障害者の権利に関する条約が批准さ
れました。
 本研究所においても、夏には、Webサイトにある「インクルDB」に合理的
配慮の実践事例を掲載し、徐々にその件数を増やしているところです。さら
に、秋には、「子どもとともに」と題した、研究所のロゴマークをデザイン
したモニュメントを設置し、その除幕式を行いました。これを契機として、
今後の特別支援教育の推進に向け、研究所の職員が一つになって尽力してい
く所存です。
 専門研修に来所された皆様を始め、全国特別支援教育センター協議会の皆
様など、この教育に携わる方々とともに、力を合わせて、特別支援教育の充
実・発展に努めていきたいと思います。
 本研究所の特色である、行政施策や学校等の喫緊の課題に対応した研究活
動を基に、それを活用した研修事業や情報普及活動等を進めていくことで、
我が国の特別支援教育に関わるナショナルセンターとしての役割を果たして
いきたいと考えています。
 今年も、メールマガジン等を通して、特別支援教育に関する最新の情報や
研究所の動向をお伝えしていけるよう、更なる内容の充実を図っていきたい
と考えておりますので、忌憚のないご意見やご感想をお寄せいただければ幸
いです。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

               独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
                      理事長 宍戸 和成

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【2】お知らせ
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●研究活動についての意見募集について
 研究課題の精選や研究計画・内容の改善を図るため、「平成27年度専門研
究課題(案)」及び平成27年度において引き続き実施する「専門研究の研究
課題」について、1月中旬から2月上旬の間にご意見を募集します。また、
 研究の事後評価を通じた研究の質の向上のため、「平成25年度に終了した
研究課題(研究成果報告書等)」について、1月中旬から2月上旬までの間
にご意見を募集します。これらの意見募集は、研究所Webサイト等にて実施
する予定ですので、ご協力お願いいたします。

○研究活動についての意見募集はこちら(1月中旬から掲載します。)→
 https://www.nise.go.jp/cms/6,0,26,224.html

●第37回全国特別支援教育振興協議会の開催(終了報告)
 12月5日(金)に、国立オリンピック記念青少年総合センターにおいて、
全国特別支援教育推進連盟、文部科学省及び本研究所の共催による第37回全
国特別支援教育振興協議会を開催しました。
 今年度は、第1部を小学校・中学校・高等学校・特別支援学校のPTAの提
案及び協議「共生社会の実現に向けたPTA活動について」、第2部を特別支
援教育コーディネーターの活動の実際についての報告及び協議「特別支援教
育コーディネーターの役割と関係機関等との連携の在り方について」を主題
とし、取組状況の発表と活発な協議等が行われました。

○全国特別支援教育推進連盟のホームページはこちら→
 http://homepage3.nifty.com/suishinrenmei/index.html

●世界自閉症啓発デー2014 in 横須賀の開催(終了報告)
 今年で5回目となる「世界自閉症啓発デー2014 in 横須賀」を、筑波大学
附属久里浜特別支援学校との共催で12月6日(土)に開催しました。
 国連が「世界自閉症啓発デー」と定めたのは4月2日ですが、障害者週間
(12月3日~12月9日)に当たり横須賀市が行う「障害者週間キャンペーン
YOKOSUKA」の一環として、自閉症についての理解啓発を目的に、横須賀市
及び横須賀市教育委員会の後援を得ての開催となりました。
 今年度は、「自閉症の世界を知ろうよ~ちいさな つながりを ひろげよう
~」のテーマで、(1)映画「星の国から孫ふたり」の上映、(2)映画のシーン
に見られる自閉症の特徴の理解と支援の方法についてのミニ講義、(3)当事
者からのメッセージというプログラムで行われました。
 当日は、小さなお子さん連れのお母さんからご年配の方まで、スタッフを
含め160余名の参加がありました。最後のプログラムまで、参加者は熱心に
耳を傾けていました。また、横須賀市立横須賀総合高校の5名の高校生ボラ
ンティアが案内・誘導係として活躍しました。

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【3】NISEトピックス
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●特別支援教育教材・支援機器等展示会を初開催
              新平 鎮博(教育情報部 上席総括研究員)

 12月6日と7日の2日間、国立京都国際会館において、特別支援教育教材・
支援機器等展示会を開催しました。
 この展示会は、今年度の新規事業である「支援機器等教材普及促進事業」
の一環として、教員が実際に活用している支援機器等教材やその活用事例を
紹介するために行ったものです。教育現場の先生方が実際にデモンストレー
ションを行って、説明をするという企画です。
 事前登録された223名のうち延べ166名の参加に加え、95名の当日参加があ
りました。また、同時開催のATACカンファレンスに約1,200名が参加してお
り、その中からも多くの方が参加しました。さらに、ご後援頂きました京都
市には事前に参加証を200名分送付し、こちらからも多数のご参加を頂くこ
とができました。京都市からは市長、教育長も見学に来られました。
 展示ブースでは、12名の先生方にご協力頂きましたが、どのブースも、実
際の機器や教材を見ながら、あるいは触れながら活発な意見交換が行われ、
終日の盛況ぶりでした。
 京都まで行けなかった!という方は、平成27年1月30日に東京・国立オリ
ンピック記念青少年総合センターで開催する「国立特別支援教育総合研究所
セミナー」でも展示会を行います。さらに、平成27年度は、各地域で小規模
な展示会も検討しています。ぜひ、実際に機器を「見る」、「聞く」、「触
れる」を体験してください。
 最後に、デモにご協力頂いた先生方に深く感謝いたします。

○本研究所「iライブラリー(教育支援機器等展示室)」に関する情報はこ
ちら→
 http://forum.nise.go.jp/ilibrary/htdocs/

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【4】海外情報の紹介
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●英国リーズ近郊の小学校を訪問して
                 齊藤 由美子(企画部 主任研究員)

 2014年10月初旬、英国のロンドンとリーズを訪問する機会を得、現地の小
学校・中学校・特別学校を視察しました。英国では、「特別な教育的な手立
て」を必要とするほど、「学習における困難さ」があるならば、その子ども
は特別な教育的ニーズ(SEN: Special Education Needs)があると捉えられ
てきました。ここでは訪問した学校の中から、リーズ近郊の小学校のSEN対
象の子どもの教育の様子を紹介します。
 メドゥフィールド小学校は児童数400名、学区域は低所得者層が多く、英
語を母国語としない家族も居住する地域です。この学校では、実に45%の子
どもがSENの対象であり、学習の困難さが特に大きい場合に発行される教育
計画であるステートメントをもつ子どもが2名いました。学校スタッフのリ
ストには、教員24名、学習支援員28名、事務や運営業務に携わるスタッフ6
名、保護者支援や子どもの精神面のサポートを行うスタッフ3名、掃除や給
食スタッフ9名の名前がアルファベット順に記載されていました。
 SENコーディネーターの方に案内されて校内を見学しました。校舎に入っ
てまず印象的だったのは、各教室の入り口に面する広いオープンスペースで
す。このスペースには、様々な大きさのテーブルやいすが配置され、SEN対
象の子ども一人一人のニーズに応じた学習コーナーが設置されていました。
見学したディスレクシアの7歳の女の子の個別指導では、絵カードや単語カ
ードを用いて音と文字を結びつける学習を行っていました。彼女は毎日30分
の個別指導を受けているとのことでした。3年生の教室では、10名程度の子
どもたちがいくつかのテーブルに分かれ、読書をしていました。この教室の
一角にはステートメントをもつ自閉症の男の子のコーナーがあり、絵カード
のスケジュールや数・文字を学ぶ教材等が用意されていました。見学当時、
この男の子はオープンスペースで学習をしていましたが、教室ではこのコー
ナーが彼の学習や生活の拠点になっているようです。
 「オアシス」と呼ばれる部屋には、ラーニングメンターという精神面のサ
ポートをするスタッフが常駐しています。日当たりのよい落ち着いた空間に
ソファやクッションが置かれ、ウサギが飼われていました。ここには、子ど
もだけではなく、保護者や教員が相談に来ることもあるそうです。
 英国は現在、SEN及び障害のある子どもの教育の大きな改革の移行期にあ
ります。従来のステートメントは、地域の保健・福祉・医療等と連携して作
成するEHC(Education, Health and Care)プランとなり、子どもとその家
族の意向をより反映した計画となるということです。メドゥフィールド小学
校では「子どもたちのWell Being(健康で安心なこと、幸せ)を一番に考え
る」という言葉が印象的でした。この改革による成果を、英国の子どもの
Well Beingの充実という視点から、今後も注目していきたいと思います。

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【5】NISEダイアリー
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          「想像なくして、創造なし」

 上記のような言葉がある。いろいろな機会に耳にしたり、目にしたりする
ことがあろう。私は、筑波大学附属久里浜特別支援学校に勤めていた時に見
付けた。筑波大学が開学40周年を迎え、ブランドスローガンとして、
“IMAGINE THE FUTURE”を掲げた。それを説明する団扇が配られ、そこに記
載してあった。(「想像できなければ、創造できない。」と。)
 聾学校での勤務経験から考えると、「想像」と「創造」は、同音異義語
(「音=そ、う、ぞ、う」は同じだが、「意味」が異なる言葉)に当たる。
そんなことからも、この表現に惹かれたのかもしれない。同音異義語につい
ては、文脈の中でその意味を考えなければいけない。耳から言葉が入りにく
い聴覚障害のある子どもにとっては、なかなか困難なことだ。
 
 聴覚障害がある場合、言葉を身に付けることだけが課題ではない。実は、
相手の気持ちを考える(想像する)ことも、なかなか容易なことではない。
「顔で笑って、心で泣いて」などという表現の理解を図ることは簡単ではな
い。相手の表情を見て、「笑っているから嬉しいのだ。」などと単純に考え
てしまいがちである。苦笑いもあれば照れ笑いもある。場面や経緯、背景を
考慮して、笑いの中身を想像しなければいけない。
 つまり、場の状況や事の順序、人間関係などを含めて、気持ちを想像する
ことが必要になる。このことは、聴覚障害のある子どもばかりに当てはまる
ことではない。自閉症のある子どもにも当てはまる。自閉症のある子どもの
場合は、いろいろな表情を図示した絵をもとに、そのような顔をした場合の
気持ちを考えさせていた。聴覚障害と自閉症、障害は異なるが、気持ちを想
像するという課題は共通していた。おもしろいものだと思った。

 こうしたことは、子どもだけの問題だろうか。そうとも言えない。関わる
私たちの課題でもある。なぜなら、子どもの気持ちが想像できなければ、次
の関わりに進むことができない。たとえ、関わったとしても、的外れでは子
どもの指導にならないだろう。
 つまり、指導を考えるということは、まず、個(子ども)を知ることから
始める必要がある。しかも、「個」の状態は、一人一人異なるものである。
個別の指導計画が取り上げられるようになったのは、そのためであろう。
 一人一人の実態に即した指導内容・方法を工夫することとは、まさに、個
に応じた指導を創造することに相違ない。
 
 そんな意味で、私は「想像なくして、創造なし」という言葉に惹かれたの
だ。障害のある子どもの教育とは、概してこのようなものなのではないか。
決まった教科書がある訳ではない。子どもに即して、指導内容・方法を組み
立てていかねばならない。これまでもそうしてきたし、これからもそうだろ
う。

 子どもの思いを想像し、それを受けて指導内容・方法を創造する。そして
子どもに関わり、その小さな変化に感動したり、発憤したりする気持ちがこ
の教育の原動力のような気がする。
 障害者の権利に関する条約の批准に伴い、障害者基本法の見直しも行われ
た。その中にある「障害者が、・・・十分な教育が受けられるように」とい
う言葉を考える時の基本的な姿勢、それは、「想像なくして、創造なし」で
あるように思う。

           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)

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【6】研修員だより
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 今号は、平成25年度第一期特別支援教育専門研修を修了された森雅明先生
からお寄せいただきました。

「壁が見える部屋から」
                森 雅明(岐阜県立可茂特別支援学校)

 「多くの人と繋がること。それがあなたの人生の宝物になる。」私を研修
に送り出した校長の言葉です。
 宿泊棟の私の部屋は海側ではなく、山側だったため、窓からは石の壁が一
面に広がり、そこから毎日講義に出かけました。講義は特別支援教育の基礎
から様々な分野にわたる内容で、毎日私の脳を刷新しました。研究協議にお
いては、グループで意見をぶつけ合って合意形成していく難しさを感じなが
らも、限られた時間の中で一つの意見も無駄にしない話し合いの大切さを学
びました。宿泊棟での研修員の交流は、寝る間を惜しんで互いに話をしまし
た。これらから得た知識は多く、その情報量は私の許容量を遙かに超過して
しまいました。これからの人生において、私のもっている能力、知識だけで
は対応できない事がたくさんあるでしょう。その時に、専門性に長けた研修
の仲間を頼ることができます。2か月という長くもあっという間に過ぎた海
辺の研究所での「壁を見続けた」期間に、一緒に食事をし、学び、遊び、励
ましあった仲間は一生の宝物です。

○岐阜県立可茂特別支援学校のWebサイトはこちら→
 http://school.gifu-net.ed.jp/kamo-sns/

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【7】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。

○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=24692&lang=ja

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【8】編集後記
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 旧年中は、NISEメールマガジンのご愛読をはじめ、本研究所の諸事業に対
して、ご理解・ご協力をいただき、ありがとうございました。新たな年を迎
え、新たな気持ちで本号をお送りできることを、とても嬉しく思っています。
 
さて、今回は、私にとって4回目の編集主幹となりました。この機会に、こ
れまでの担当号をあらためて読み返してみました。
 1回目は、平成20年3月号(第12号)でした。この年度は、特別支援教育
元年ともいわれ、同号は、冒頭で発達障害教育情報センター設置準備室の発
足を伝える号でした。2回目は、平成23年7月号(第52号)でした。東日本
大震災から間もないこの時期、同号は、被災された皆様へのお見舞いから始
まる構成となっていました。3回目は、平成25年2月号(第71号)でした。
前の年に中央教育審議会初等中等教育分科会から、インクルーシブ教育シス
テム構築に関する内容の報告が出された後の本号では、「特別支援教育の現
状と課題-共生社会の形成に向けた特別支援教育を考える-」をテーマに掲
げた、研究所セミナー開催報告から始まる構成となっていました。
 これら3本だけを振り返ってみても、それぞれの時期における、特別支援
教育を巡る動向や時勢の変化等を読み取ることができました。そして、4本
目の本号では、障害者の権利に関する条約の批准や「インクルDB」等の昨今
の動きを盛り込んだ、理事長の挨拶から始まる内容をお届けしました。
 本年も、我が国唯一の特別支援教育のナショナルセンターとして、皆様に
とってお役に立つ、最新の情報を盛り込んだメールマガジンを発行してまい
ります。どうぞよろしくお願いいたします。
                  (第94号編集主幹 徳永 亜希雄)

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次号も是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第94号(平成27年1月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
           E-mail a-koho[アットマーク]nise.go.jp
          ([アットマーク]を@にして送信してください。)

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いてはこちら→
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