メルマガ連載記事 「諸外国におけるインクルーシブ教育システム構築の状況」
第6回


NISE特別支援教育国際シンポジウム報告(速報)

 石坂 務(企画部 主任研究員)
  

 本研究所では、平成28年1月21日(木)にインクルーシブ教育システムの構築に関する国際シンポジウムを開催しました。
 このシンポジウムは、本研究所と協定を締結しているフランス国立特別支援教育高等研究所(INS-HEA)及び韓国国立特殊教育院(KNISE)の専門家をお招きし、初等中等教育におけるインクルーシブ教育システム構築に向けた現状、課題を検討し、今後の展望を明らかにすることを目的に行われたものです。 
 本連載では、これまで、このシンポジウムの開催に向けたカウントダウン連載の形で、フランスと韓国の特別支援教育の状況や両国の特別支援教育のナショナルセンターについて、企画部の調査・国際担当職員が、紹介してきました。第6回は、過日開催されたNISE特別支援教育国際シンポジウムについて、速報版として紹介します。 
 

 本研究所では、協定を締結しているフランス国立特別支援教育高等研究所(INS-HEA)及び韓国国立特殊教育院(KNISE)の専門家をお招きし、初等中等教育におけるインクルーシブ教育システム構築に向けた現状、課題を検討し、今後の展望を明らかにすることを目的に、1月21日に、一橋講堂(東京・千代田区)において、「NISE特別支援教育国際シンポジウム」を開催しました。教育関係者、行政関係者、研究者、保護者、学生等、186名の参加がありました。
 プログラムは、基調講演、本研究所からのプレゼンテーション、フランス・韓国・日本のシンポジストによる報告と討論、という流れで行われました。 
 開会式では宍戸和成(本研究所 理事長)の挨拶に続き、小松親次郎氏(文部科学省 初等中等教育局長)からもご挨拶がありました。 
 

宍戸和成(本研究所 理事長)  小松親次郎氏(文部科学省 初等中等教育局長)

 

 基調講演では、柘植雅義氏(筑波大学教授、内閣府障害者政策委員会委員、日本LD学会理事長、本研究所客員研究員)より、「国連の障害者権利条約と教育における合理的配慮の観点-これまでの経緯を含めた日本の対応と今後の展望-」をテーマに、1.国連の障害者権利条約と日本の対応(障害者の権利を確かなものにするために)、2.日本の教育における合理的配慮と対応(確かな学びと豊かな生活を支えるために)、3.日本の今後の展望(障害のある子どもの明るい未来に向けて)の話題がありました。
 

柘植雅義氏(筑波大学教授、内閣府障害者政策委員会委員、日本LD学会理事長、本研究所客員研究員)  会場の様子

 

 本研究所からのプレゼンテーションでは、勝野頼彦(本研究所 理事)より「インクルーシブ教育システム構築に向けた特総研の取り組み」、齊藤由美子(本研究所 総括研究員)より「諸外国における障害のある子どもの教育の状況」の紹介がありました。
 

勝野頼彦(本研究所 理事)  齊藤由美子(本研究所 総括研究員)

 

 シンポジウムでは、まず、「各国のインクルーシブ教育システム構築の取組の現状と課題-初等中等教育段階を中心に-」をテーマに、フランス、韓国、日本の各シンポジストからの報告がありました。MAUGUIN Murielle 氏(フランス国立特別支援教育高等研究所INS-HEA)からは、フランスにおける取組と紹介として、1.インクルーシブ教育システム構築に向けた現行の政策・施策、2.フランスの課題、3.インクルーシブ教育システム構築に必要な施策の話題がありました。
 KIM Suk-Jin 氏(韓国国立特殊教育院KNISE)、からは韓国における取組と紹介として、1.特殊教育および統合教育に関する法令、2.韓国における特殊教育および統合教育の政策の現状、3.韓国国立特殊教育院による特殊教育/統合教育支援の現状の話題がありました。 
 笹森 洋樹(本研究所 上席総括研究員)からは、日本の取組と紹介として、1.日本における特別な教育的ニーズのある子供の教育の現状、2.インクルーシブ教育システム構築に関する研究の取組、3.インクルーシブ教育システム構築と合理的配慮に関する現状と課題、の話題がありました。 
 

MAUGUIN Murielle 氏(フランス国立特別支援教育高等研究所INS-HEA)  KIM Suk-Jin 氏(韓国国立特殊教育院KNISE)

 

 各国の報告後、報告内容を踏まえて、基調講演者の柘植雅義氏を交えて討論を行いました。討論では、合理的配慮が個別の指導計画にどのように記載されているか、インクルーシブ教育システム構築に向けた専門性をもった教員の育成について等、各国の情報交換を合わせ討論されました。討論の中で、障害のある子どもへの大学進学などの高等教育の課題や、合理的配慮の合意形成の問題等、日本がこれから重点的に取り組むべき課題について、各国から貴重な示唆が得られました。
 

笹森 洋樹(本研究所 上席総括研究員)  シンポジウムの様子

 

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