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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第107号(平成28年2月号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE(ナイセ)━━━
■目次
【お知らせ】
・研究活動についての意見募集について
・平成27年度第三期特別支援教育専門研修開講
・平成27年度「辻村賞」授賞式・記念講演会の開催(終了報告)
・インターネット講義配信の個人登録について
【NISEトピックス】
・平成27年度海外出張報告及び諸外国の教育政策動向に関する学習会の報告
【連載コーナー】
・諸外国におけるインクルーシブ教育システム構築の状況
 第6回 NISE特別支援教育国際シンポジウム報告(速報)
【NISEダイアリー】
【研修員だより】
【アンケートのお願い】
【編集後記】

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【1】お知らせ
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●研究活動についての意見募集について
 研究課題の精選や研究計画・内容の改善を図るため、平成28年度より開始
する、基幹研究(横断的、障害種別)の研究課題について、2月中にご意見
を募集します。
 また、研究の事後評価を通じた研究の質の向上のため、「平成26年度に終
了した研究課題(研究成果報告書)」について、2月中にご意見を募集しま
す。これらの意見募集は、研究所Webサイト等にて実施する予定ですので、
ご協力をお願いいたします。

○研究活動についての意見募集はこちら(2月掲載予定)→
 https://www.nise.go.jp/cms/6,0,26,224.html

●平成27年度第三期特別支援教育専門研修開講
 1月7日(木)、平成27年度第三期特別支援教育専門研修(視覚障害・聴
覚障害教育コース)が開講しました。今期(1月7日~3月11日)は、全国
から集まった31名が受講しています。
 特別支援教育専門研修は、年に三期開講し、各都道府県等で指導的立場に
立つ又は今後指導的立場に立つことが期待される教職員が、教育委員会等の
推薦を受けて受講するものです。
 研修プログラムは、約2ヶ月間の宿泊型研修で、特別支援教育全般と各障
害種別に関わる専門的な講義や演習、研究協議、実地研修等で構成されてい
ます。今期の研修は、視覚障害・聴覚障害を中心とした専門的知識や技術の
習得による指導力の一層の向上に加え、研修員同士のネットワーク作りや情
報交換も大きな魅力となっています。

○特別支援教育専門研修の内容等はこちら→
 https://www.nise.go.jp/cms/9,9961,21,116.html

●平成27年度「辻村賞」授賞式・記念講演会の開催(終了報告)
 「辻村賞」は、本研究所の初代所長であるとともに、我が国の特別支援教
育の第一人者として、その振興・発展のために尽力された故辻村泰男先生の
ご遺徳を永く記念するため、特別支援教育の領域において、特に顕著な功績
のあった方や、特に優秀な研究を行った方に対し、授与するものです。
 平成27年度「辻村賞」は、11月に開催された選考委員会において、西川公
司様(特定非営利活動法人日本肢体不自由教育研究会理事長)の受賞が決定
され、12月17日(木)に本研究所にて、授賞式及び記念講演会を開催しまし
た。
 記念講演会では、「私と国立特殊教育総合研究所と肢体不自由教育」と題
したご講演をいただき、所員にとって大変貴重な機会となりました。

※辻村泰男先生の「辻」の字は二点しんにょうです。

●インターネット講義配信の個人登録について
 本研究所では、インターネット講義配信(基礎編・専門編)105コンテン
ツをより多くの方々に活用していただくために、平成28年度から新システム
で運用することになりました。
新システムでは、
・多様な学びの場や障害種別での検索が可能になります。
・多様なデバイス(パソコン・タブレット・スマートフォン)から視聴でき
ます。
 また、現在の機関登録から個人登録に変わります。
現在、機関の代表として登録されている方も、個人としての登録が必要とな
ります。
 事前登録は、平成28年1月7日(木)から受付をはじめます。

○詳しい内容はこちら→
 https://www.nise.go.jp/cms/resources/content/11078/20151203-154933.pdf

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【2】NISEトピックス
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●平成27年度海外出張報告及び諸外国の教育政策動向に関する学習会の報告
                  海津 亜希子(企画部主任研究員)

 去る平成27年12月18日、本研究所で「海外事情報告及び諸外国の教育政策
動向に関する講演会」を開催致しました。
 この会は、本研究所スタッフが諸外国で収集した情報の共有を図ること、
諸外国の教育政策動向を知り、日本のインクルーシブ教育システム構築の方
向性についての議論を深める機会とすることを目的としたものです。
 本会は二部構成で行われ、前半は、本研究所の大内進客員研究員による
「デンマークにおける障害のある子どもの教育」と題した講演でした。同国
から学ぶこと、学びたいこと、として「多様性(人と同じであることにこだ
わらず、他者と比較する文化がない。個が尊重されている)」「チームでの
サポート(障害がある子どもの教育では、コメディカルなスタッフがチーム
で役割を果たしている)」「一貫した支援(人事異動がない、チームで機能
することなどから支援の一貫性が保たれやすい)」「寄り道文化(人生の途
中で寄り道できる選択肢が用意されていることは、障害のある子どもには生
きやすく、キャリア形成にも役立っている)」「柔軟性と学びのスタイル
(義務教育では、競争原理ではなく、個人内の開発が重視されている。様々
なニーズのある子どもが活動しやすいインクルーシブ教育体制を構築できる)」
の5つがまとめられました。
 後半は、所内スタッフによる海外事情報告がリレー形式で行われました。
「中国、上海日本人学校虹橋校での支援」、「フランス、北米・欧州地区日
本人学校協議会参加とフランスの国立特別支援教育高等研究所(INS-HEA)
訪問」についての報告は、本研究所教育支援部教育相談支援担当が行ってい
る海外に在住する日本人学校等の保護者や教員等への教育相談支援とも連動
した内容でした。
 企画部調査・国際担当では、海外へ出張したスタッフが帰国した折には、
速やかに情報共有を図ることを目的に簡易的な報告会を所内で頻繁に開催す
るよう努めています。その一方で、本稿で紹介したような海外事情報告及び
諸外国の教育政策動向に関する講演会についても重要と捉え、年に一度のペ
ースで今後も開催していく予定です。引き続き、海外における教育の貴重な
情報を発信・共有する機会を設けていきたいと思います。

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【3】連載コーナー
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●諸外国におけるインクルーシブ教育システム構築の状況
 第6回 NISE特別支援教育国際シンポジウム報告(速報)
                    石坂 務(企画部主任研究員)

 本研究所では、平成28年1月21日(木)にインクルーシブ教育システムの
構築に関する国際シンポジウムを開催しました。
 このシンポジウムは、本研究所と協定を締結しているフランス国立特別支
援教育高等研究所(INS-HEA)及び韓国国立特殊教育院(KNISE)の専門家を
お招きし、初等中等教育におけるインクルーシブ教育システム構築に向けた
現状、課題を検討し、今後の展望を明らかにすることを目的に行われたもの
です。
 本連載では、これまで、このシンポジウムの開催に向けたカウントダウン
連載の形で、フランスと韓国の特別支援教育の状況や両国の特別支援教育の
ナショナルセンターについて、企画部の調査・国際担当職員が紹介してきま
した。
第6回は、過日開催されたNISE特別支援教育国際シンポジウムについて、速
報版として紹介します。
・・・続きはこちら→
https://www.nise.go.jp/cms/6,11268,13,257.html

・・・全7回の連載内容はこちらのリンクへ→
https://www.nise.go.jp/cms/6,10765,13,257.html

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【4】NISEダイアリー
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         「発問の工夫」
           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)

 「発問」と聞いても、ぴんと来ない人がいるかもしれない。発問とは、教
師が子どもの考えを知ったり、授業のねらいに沿って、子どもの思考を導い
たりするために、様々に工夫して“問い掛ける”ことを言う。
 現在、研究所では、第三期特別支援教育専門研修が行われている。視覚障
害教育コースと聴覚障害教育コースが開講され、1月末に後者のコースで
“授業”について話す機会を得た。そこで、標記の事柄について触れたいと
思った。その理由は、今から40年近く前になるが、聾学校に勤め始めた頃、
先輩の先生から、「『ろう教育』という月刊誌に、授業の記録が載っていて、
そこには先生の発問とそれに対する子どもの回答がすべて書いてある。それ
を読んで「発問」を勉強しなさい。」と言われたことを思い出したからだ。
 もう一度、その「ろう教育」という機関誌を見てみたいと思い、研究所の
図書室へ行ってみた。奥の書棚で発行年毎に製本された本をめくっていく。
昭和42年の9月号に該当する授業記録を見付けた。私が就職したのは、昭和
51年である。だから、当時は10年近く前の聾教育の世界の機関誌を探し、勉
強していたのだろう。昭和43年から44年にかけて、同様の授業記録を掲載し
た機関誌も見付けた。
 いずれも、指導案や授業でのやり取りの記録、そして、その後の授業研究
会の議論の様子までが掲載されていた。子どもの思考を導くために、どのよ
うな発問をすればよいか、聾教育ではそれが課題だったのだろう。やり取り
を記録したり、音声をテープに取って、それを書き起こしたりして原稿にし
たものと思われる。新米教師の頃、それらの冊子に目を通しながら、かつ自
分のクラスの子供たちに実際にやってみながら、発問の意味や大切さを学ん
だことを思い出した。

 こうした発問に関する研究は、なぜか少なくなってきている。手間が掛か
るせいだろうか?コミュニケーション重視ということで発問への興味が削が
れているためだろうか?「授業の最初に行う発問は何か?」、「授業の山場
でどんな発問をするのか?」そんなことを必死に考えていた頃が懐かしい。
 授業について話す機会を得たことで、自分なりに振り返る時間をもつこと
ができた。「授業づくり」や「授業改善」が話題となる今日、授業において
欠かすことのできない「発問」について、もう一度考えてみてほしいと思う。
大事なことは、ねらいに沿った授業を進めるための手立てとしての発問とい
う意味だけでなく、子どもの頭の中を探るための発問も大切にしたい。それ
は、子どもと先生の“仲”を育む役割も果たすから。
 そんなことを考えながら、昭和61年の「聴覚障害」誌を眺めていた。する
と、私が書いた原稿が見付かった。やはり、指導案ややり取りが掲載されて
いた。最初に勉強したことを10年後に自分なりにまとめたのだろう。すっか
り記憶から消えていた。でも、発問の大切さは、今でも頭に残っている。

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【5】研修員だより
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 今号は、平成16年度第一期特別支援教育専門研修を修了された原満登里先
生からお寄せいただきました。

「修了証書・・・そして、再び」
        原 満登里(山梨大学教育人間科学部附属特別支援学校)

 「あなたは平成16年度独立行政法人国立特殊教育総合研究所 短期研修を
修了したことを証します」11年の月日が経った今でも大切に保管されている
修了証書と研修レポートと思い出です。これらは日々の仕事に忙殺されそう
になったとき、仲間と夢中になって研鑽を重ねた初心を思い出すための心の
糧として大切にしているものです。しかし、本当に今でも日々の教育活動に
役立っている内容とは、経験も状況も違う85名の研修員に真摯に向き合って
くださった研究所の先生方の姿勢と仲間とのつながりです。研修員にどんな
課題があっても一緒に考え抜いてくださる先生方の姿勢に教師としての在り
方を学びました。仲間とは昨年「修了10年の会」を行いました。残念ながら
私は出席できませんでしたが、同期の先生方とは今でも情報交換を行ってい
ます。この11年で特殊教育から特別支援教育へと大きく変革し、教育の在り
方も時代に合わせて変わりますが、変わらないのはやはり教師としての姿勢
と周りとの連携ではないでしょうか。修了証書はいただきましたが、子ども
と真剣に向き合い、考え続ける教師の輪を広げていきます。
・・・とはいえ、もう一度久里浜での生活をしたいなぁ・・・と思う今日こ
の頃でした。

○山梨大学教育人間科学部附属特別支援学校のWebサイトはこちら→
 http://www.ccn.yamanashi.ac.jp/~fuyok/

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【6】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。

○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=38693&lang=ja

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【7】編集後記
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 久里浜は温暖な地といわれますが、冬真っ只中ですのでさすがに寒い日が
続いています。現在、第三期特別支援教育専門研修(視覚障害・聴覚障害教
育コース)が行われており、全国各地から派遣された先生方が日々、講義や
演習、実地研修に積極的に取り組んでいます。
 さて、「研修会」「セミナー」「学習会」などと様々な名称がありますが、
私達には「研修」する機会が設けられています。研修とは「学問や技芸など
をみがき、おさめること」(新村出編、広辞苑第6版、角川書店より引用)
ですが、自分の興味や関心がある分野を選択できるものから参加が義務づけ
られているものまで様々あります。自分の興味や関心が高い分野には積極的
に参加したいですが、参加が義務づけられていたり興味の低かったりする分
野はできればパスしたいものです。しかし、「研修内容に興味を持ってみる、
ちょっとだけ前の方に座ってみる、勇気を出して講師の先生に質問してみる
」など、研修への考え方や取り組み方を自分でちょっと工夫することで、苦
手な分野や興味の低い分野からも多くのことや意外なことを学ぶことができ
る!!最近、それをすごく実感しています。
 「何故だろう...?」それは、研究所に指導講師でいらっしゃる先生方
の講義、過去に専門研修でいらした先生方の近況、現在いらしている先生方
の専門研修への真摯な取り組みに触れたことで、何事も選り好みをせずに学
ぶことが大切であると「研修」することができたからかもしれません。
 本メールマガジンには、NISEの研究活動や研修会等の情報がたくさん紹介
されています。これからも皆様に役立つ情報発信ができるように努めてまい
りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
                                   (第107号編集主幹 村井 敬太郞)

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次号も是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第107号(平成28年2月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
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