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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第108号(平成28年3月号)
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■目次
【お知らせ】
・世界自閉症啓発デー2016について
・平成27年度国立特別支援教育総合研究所セミナーの報告(速報)
・インターネット講義配信の個人登録について
【NISEトピックス】
・インクルーシブ教育システム推進センター(仮称)の開設について
・ICT活用実践演習室の設置について
【海外情報の紹介】
・2015年度ヨーロッパロービジョン学会への参加報告
【連載コーナー】
・諸外国におけるインクルーシブ教育システム構築の状況
 第7回 NISE特別支援教育国際シンポジウム報告(全文)と今後の展望
【NISEダイアリー】
【特別支援教育関連情報】
・平成28年度特別支援教育関連予算案について
【研修員だより】
【アンケートのお願い】
【編集後記】

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【1】お知らせ
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●世界自閉症啓発デー2016について
 毎年4月2日は、国連総会で定められた世界自閉症啓発デー(World Autism
 Awareness Day)です。
 我が国では世界自閉症啓発デー・日本実行委員会が組織され、本研究所は
共催機関としてこれに参加し、自閉症について、広く啓発する活動を行って
います。
 世界自閉症啓発デー2016では、「つながる、世界とみんなの青い光」をテ
ーマとするシンポジウムを、4月9日(土)に、全社協・灘尾ホール(新霞
が関ビル:東京都千代田区霞が関)で開催します。また、4月2日(土)の
夕方には、東京タワー ライト・イット・アット・ブルーを行います。
 詳しい内容につきましては、世界自閉症啓発デー・日本実行委員会のWeb
サイトをご覧ください。

○世界自閉症啓発デー・日本実行委員会のWebサイトはこちら→
 http://www.worldautismawarenessday.jp/

●平成27年度国立特別支援教育総合研究所セミナーの報告(速報)
 本研究所では、平成27年度国立特別支援教育総合研究所セミナーを2月25
日(木)から26日(金)の2日間にわたり、国立オリンピック記念青少年総
合センターにおいて開催しました。本年度も、定員を上回る参加申込みをい
ただき、活発に協議を行うなど、無事成功裏に終了することができたものと
思います。
 なお、詳細につきましては、次号のトピックとして紹介する予定です。

●インターネット講義配信の個人登録について

◇事前登録を受け付けています

 本研究所では、インターネット講義配信(基礎編・専門編)105コンテン
ツをより多くの方々に活用していただくために、平成28年度から新システム
で運用することになりました。
新システムでは、
 ・多様な学びの場や障害種別での検索が可能になります。
 ・多様なデバイス(パソコン・タブレット・スマートフォン)から視聴で
  きます。
 また、現在の機関登録から個人登録に変わります。
現在、機関の代表として登録されている方も、個人としての登録が必要とな
ります。

○詳しい内容はこちら→
 https://www.nise.go.jp/cms/resources/content/1107/20151203-154933.pdf

 新システムによる視聴は、4月からです。
※現在の講義を視聴(4月30日まで)するには、機関登録が必要です。

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【2】NISEトピックス
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●インクルーシブ教育システム推進センター(仮称)の開設について
                 原田 公人(企画部上席総括研究員)

 学校教育は、障害のある幼児児童生徒の自立と社会参加を目指した取組を
含め、「共生社会」の形成に向けて、インクルーシブ教育システム構築に向
けた特別支援教育の推進が急務です。
 本研究所では、平成28年度より、新たにインクルーシブ教育システム推進
センター(仮称)を組織し、インクルーシブ教育システムの構築に向けた研
究及び事業を、横断的に迅速かつ効率的に進めるための体制を整備すること
としました。
 具体的には、所内のリソースを一元化し、研究から普及、実践支援を推進
するため、3ライン(地域実践研究担当、国際情報集積発信担当、情報発信
・普及担当)を設けます。特に、地域実践研究担当では、地域や学校が抱え
る課題を研究テーマとして設定し、地域と協働して研究することとします。
皆様のご理解とご参画をお願いいたします。

●ICT活用実践演習室の設置について
              梅田 真理(教育研修・事業部総括研究員)

 本研究所では、今年度、ICT機器等を活用した指導の充実・普及を図るこ
とを目的として、最新のICT機器等を整備した「ICT活用実践演習室」(以下、
「本演習室」)を設置しました。本演習室では、特別支援教育専門研修等に
おいて、障害のある児童生徒が「通常の学級」に在籍した場合の基礎的環境
整備や合理的配慮等について考える上で、特にICT活用はどうあるべきかに
ついての、実践を通した検討や授業研究等を行います。
 設備としては、児童生徒用タブレットPCとWi-Fiでつながる電子黒板や授
業の様子を別室で検討できるカメラシステムも整備しています。また、授業
者、児童生徒役以外の研修員が、授業の映像を見ながら内容についてディス
カッションやグループワークなどができるよう、可動式で多様な組合せが可
能な什器を設置しました。
 平成28年度は、特別支援教育専門研修を始めとして、様々な研修で活用す
る予定です。

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【3】海外情報の紹介
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●2015年度ヨーロッパロービジョン学会への参加報告
              田中 良広(教育研修・事業部総括研究員)

 平成27年9月23日から30日にかけて、科学研究費補助金(慶應義塾大学・
中野泰志教授)にかかる研究の一環として、2015年度ヨーロッパロービジョ
ン学会に参加してきました。今回の開催地はオックスフォード大学のキーブ
ル・カレッジでした。オックスフォードへはロンドンから電車で1時間弱で
到着しましたが、街全体が落ち着いた雰囲気で、まさに大学都市に相応しい
佇まいでした。キーブル・カレッジの校舎はどれも中世に建てられたものば
かりで、まるで映画のハリーポッターに出てくる魔法学校そのものでした。
 本学会はヨーロッパロービジョン研究・リハビリテーション協会が主催し
ており、2年毎に開催されています。開催期間中には、基調講演、シンポジ
ウム、セッション(口頭発表)、ポスター発表が行われました。私は中野教
授との連名で、中野教授が中心となって開発を進めているUDブラウザについ
てポスター発表をさせていただきました。UDブラウザは高等学校の教科書デ
ジタルデータをPDFファイルに変換し、iPadにインストールして閲覧するこ
とができるデジタル教科書閲覧用ビューアのアプリです。全国の特別支援学
校(視覚障害)高等部での実証実験を経て改良がなされ、現在では無料で一
般に公開されています。ヨーロッパではこのような機能を持つアプリは開発
されてはいないようで、概要を説明してリフロー表示や読み上げ機能等のデ
モを行った後には必ずと言って良いほど、英語版を公開する予定はないのか
との質問を受けました。日本で開発されたアプリが世界中で活用されること
を想像すると、グローバリゼーションの一端を肌で感じたように思えました。

 本学会の発表内容で特徴的だったのは、脳損傷後の適応と可塑性、同側性
半盲(何らかの原因で視覚中枢に損傷を負ったことにより、片眼、あるいは
両眼の左右どちらか側の視野が欠損した状態)と他の視野障害といった、中
枢性視覚障害に焦点を当てた発表が非常に多かったということです。
 よく「眼は体表に出ている脳」という言い方がされますが、これは人間が
ものを「見る」という行為が如何に視覚中枢に依存しているかを如実に物語
っている表現です。同時に、それだけ視覚のメカニズムを解明することが困
難であるという事実を示しているとも言えます。そのように考えると、より
困難なことへ挑戦するという発表者の探究心を感じるとともに、今後は中枢
性視覚障害への対応が眼科学における主要なテーマになっていくのではない
かと思われます。
 視覚障害教育においても、中枢性の視覚障害がある児童生徒への適切な対
応が求められていることから、この分野における今後の研究成果に期待した
いと思います。

○ヨーロッパロービジョン学会のWebサイトはこちら→
 http://www.eslrr.org/

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【4】連載コーナー
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●諸外国におけるインクルーシブ教育システム構築の状況
 第7回 NISE特別支援教育国際シンポジウム報告(全文)と今後の展望
                  海津 亜希子(企画部主任研究員)

 本研究所企画部の調査・国際担当職員がリレー形式で担当してきた本連載
も今回が最終回です。こちらの連載は、平成28年1月21日(木)の「NISE特
別支援教育国際シンポジウム」の開催に向け、カウントダウン連載の形で行っ
てきました。
 最終回となる今回は、過日開催されたNISE特別支援教育国際シンポジウム
について、前回(第6回)の速報版に続き、 基調講演、本研究所からのプ
レゼンテーション、フランス・韓国・日本のシンポジストによる報告と討論
について、その全容をお伝えいたします。

・・・続きはこちら→
https://www.nise.go.jp/cms/6,11314,13,257.html

・・・全7回の連載内容はこちらのリンクへ→
https://www.nise.go.jp/cms/6,10765,13,257.html

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【5】NISEダイアリー
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         「イメージの共有」
           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)

 昨年末に、共生社会とインクルーシブ教育システムについて、話をする機
会を得た。いずれも、抽象的な概念であり、聞く人にどのようにイメージを
もってもらうかが大切だと思った。コミュニケーションにおいては、話し手
と聞き手の間に、用いられる言葉の共通のイメージが存在してこそ、話が通
じ共に考えることができる。これは、聾学校で子どもとかかわる中で学んだ
ことでもある。単に話せば意味が通じるという訳ではない。子どもがどんな
イメージを頭に浮かべているかを常に確かめながら、言葉を選ぶ必要がある。

 共生社会については、まず、公的な説明がどうなっているかということが
気になり、共生社会政策を担当する内閣府のHPから模範的な回答を探した。
そこには、「国民一人一人が豊かな人間性を育み生きる力を身に付けていく
とともに、国民皆で子どもや若者を育成・支援し、年齢や障害の有無等にか
かわりなく安全に安心して暮らせる『共生社会』を実現することが必要です。」
との説明が載っていた。これに基づけば、「共生社会」という言葉を修飾し
ている「国民一人一人が・・・安全に安心して暮らせる」社会が、その意味
を表していると言えよう。しかし、長い。もっと端的に言わないと、例えば、
聴覚障害の子どもとイメージを共有することは難しそうだ。
 また、「障害の有無等にかかわりなく・・・」とあることから、同じHPに
ある「障害者施策」についても調べてみた。すると、「障害の有無にかかわ
らず、国民誰もが互いに人格と個性を尊重し支え合って共生する社会を目指
し、障害者の自立と社会参加の支援等を推進します。」という説明を見付け
た。共生社会の要件として、「互いの人格と個性の尊重」が重要であること
が分かる。

 ここまで考えてきても、まだ、子どもとイメージを共有するにはほど遠い。
何かいい手はないかと考えつつ、たまたま、実家で息子の部屋に入る機会が
あった。ふと、クローゼットにある完成したジクソーパズルが目に入った。
クリスチャン・ラッセン(ハワイの画家)が描いたイルカの尾びれと夜の月
をモチーフにした絵で、それを基にしたジグソーパズルだ。1000ピースもあ
るだろうか。完成したパズルをケースに入れ、大切に飾ってあった。
 そこで閃いた。これなら、共生社会について、子どもとイメージを共有で
きるかもしれないと。ピース、一つ一つを個々の人間として考えよう。一つ
でも欠ければ完成しない。つまり、一人一人が貴重な存在である。これは、
それぞれの「人格と個性を尊重すること」と同じではないかと思った。そし
て、共生社会は、いつか突然出来上がるものではなく、日ごろの地道な努力
の結果として、徐々に完成形に近付いていくのだということも。

 子どもに限らず、人とのやり取りにおいては、言葉を砕きつつ、イメージ
を共有する努力を惜しんではならないと思う。そして、そのイメージを上手
に確かめる努力も欠かせない。ジグソーパズルと共生社会、直接関係はない
が、考える手掛かりにはなりそうである。

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【6】特別支援教育関連情報
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●平成28年度特別支援教育関連予算案について
 平成28年度政府予算案の閣議決定にともない、文部科学省において、本年
1月、予算案の発表資料を同省のWebサイトに掲載しました。詳しくは下記
をご覧ください。
 
○文部科学省が公表した内容はこちら→
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/01/08/1365887_2.pdf#page=16

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【7】研修員だより
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 今号は、平成27年度第二期特別支援教育専門研修を修了された渡邉莉都先
生からお寄せいただきました。

「専門研修での3つの‘出会い’」
                 渡邉 莉都(高知県立山田養護学校)

 久里浜での研修を終え、勤務校に戻って3ヶ月が経ちました。忙しく過ぎ
ていく日々の中で、職員室の机に、新しく並んだ研修資料や文献に目を向け
ると、久里浜の日々を思い出し、懐かしく思っています。久里浜での研修で、
私は3つの‘出会い’をすることになりました。1つ目は「知識」との出会
いです。特別支援教育をあらゆる方法(講義、演習、実地研修、協議)で、
あらゆる視点(教育そのもの、行政、福祉、就労、保護者)から学び、たく
さんの知識を得ることができました。2つ目は「人」との出会いです。
お世話になった研究所の先生方、講師のみなさん、そして、2ヶ月の苦楽を
共にした全国の研修生のみなさんとの出会いは、今の私を奮起させてくれる
糧となっています。3つ目は新しい「考え方」との出会いです。学びを深め、
実践に生かしていくためには、実践と理論を関連付けることや研究の仕方そ
のものについて、その楽しさ、私自身の中に新しく生まれた考え方です。3
ヶ月経った今、まだまだ悩むことも多いですが、久里浜での学びを、今度は
同僚と共に深め、子どもたちのために生かすべく、奮闘しています。3つの
‘出会い’、かけがえのない時間を、本当にありがとうございました。

○高知県立山田養護学校のWebサイトはこちら→
 www.kochinet.ed.jp/yamada-s/

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【8】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。

○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=92878&lang=ja

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【9】編集後記
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 木漏れ日の中に春の訪れを感じる季節となってまいりましたが、お住いの
地域はいかがでしょうか。この度、この第108号(平成28年3月号)を皆様
のお手元にお届けできたことを大変嬉しく感じております。本号は、インク
ルーシブ教育システム推進センター(仮称)の開設やICT活用実践演習室の
設置、インターネット講義配信の個人登録といった本研究所の目玉となる新
たな取組についてお届けいたしました。研修員だよりでは、渡邉莉都先生に、
専門研修での「知識」「人」「考え方」との3つの出会いについて綴ってい
ただきました。あたたかい文章を拝読し、昨年の第二期特別支援教育専門研
修の閉講式で聞いた研修員の歌声を思い出しました。
 さて、今年度も残すところあと一ヶ月となりました。各学校では卒業式や
終業式を迎え、本研究所も3月11日に第三期特別支援教育専門研修が閉講と
なります。3月は別れの季節であり、新たな出会いに向けて目標を定める季
節です。本研究所も特別支援教育の更なる充実に向けて、新たな目標を定め、
努めて参りたいと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。
                    (第108号編集主幹 半田 健)

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次号も是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第108号(平成28年3月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
           E-mail a-koho[アットマーク]nise.go.jp
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