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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第140号(平成30年11月号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE(ナイセ)━━━
■目次
【お知らせ】
・研究所公開のご案内
・内閣府主催の障害者週間における連続セミナーについて
・「横須賀市児童生徒ふれあいフェスタ ワークショップの部」のご案内
・第4回NISE特別支援教育国際シンポジウムの開催について
・(再案内)自閉症班公開研究成果報告会について
【海外情報の紹介】
・平成30年度東アジア・大洋州地区日本人学校校長研究協議会への参加
【連載コーナー】
・共同研究「インクルーシブ教育場面における知的障害児の指導内容・方法
の国際比較~フィンランド、スウェーデンと日本の比較から~(平成28-29
年度)」の研究成果報告書から[第4回]
・「地域実践研究員」だより[第1回]
【NISEダイアリー】
【研修員だより】
【アンケートのお願い】
【編集後記】

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【1】お知らせ
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●研究所公開のご案内
 先月号でもご案内いたしましたとおり、11月10日(土)、本研究所の一般
公開を開催します。
 年に一度の機会ということで、多くの方々にお越しいただけるよう、準備
を進めているところです。今回初めて実施する企画もございます。
 是非、お誘い合わせの上、お気軽にお越しください。

◇日時:平成30年11月10日(土) 9時30分~16時(15時受付終了)
◇主な内容
・ノンフィクション作家・中村勝雄氏による講演会
・障害者スポーツ体験「ボッチャ」
・特別支援教育の視点からの教材づくり・教具体験
・特別支援学校生徒によるあん摩マッサージ体験
・NISE特別支援教育シールラリー
・ミニ講義「発達障害の特性に関する疑似体験」
・障害のある子どものための教育支援機器の展示・実演
・障害のある子どもがくつろげる心地よい環境づくりの体験
・障害のある子どもに対する生活環境面での身近な配慮や工夫の紹介
・本研究所の最新の研究成果等の紹介
・就労系障害福祉サービス事業所等による出店(カレーライスなどの販売)
◇参加費:無料
◇事前申込:不要
◇託児サービス:有
◇駐車場:有(80台分)※混雑が予想されるため、なるべく公共交通機関を
 ご利用ください。

 各企画内容については、Webサイトにて紹介していますので、是非ご覧下
さい。

○研究所公開の詳しい内容はこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/laboratory_release

●内閣府主催の障害者週間における連続セミナーについて
 政府(内閣府)が主催する、平成30年度障害者週間「連続セミナー」が、
平成30年12月6日(木曜日)から7日(金曜日)までの二日間、「有楽町朝
日スクエア」で開催されます。特別支援教育のナショナルセンターである本
研究所の、一般の方々への理解啓発の取組について応募したところ、12月6
日(木曜日)11時50分~13時40分の時間枠をいただくことができました。セ
ミナータイトルは、「障害のある子どもの教育~特別支援教育に関するQ&A
紹介~」であり、以下のプログラムで行います。11月にはホームページ等で
お知らせしますが、メルマガの会員の皆様のご参加、あるいは、お知り合い
の方にご紹介いただきましたら幸いです。

(1)講演とミニ体験「障害を知ろう」
 本講演では、様々な障害について、発達と情報処理という視点で説明しま
す。障害に関わるミニ体験を通して、私たちが、どのような支援や配慮をす
ることができるかについて、一緒に考えてみましょう。
(2)支援教材(ICT等)のミニ展示会 
 本研究所には、特別支援教育に関する支援教材等を収集し展示している
「iライブラリー」があります。その展示の一部をご紹介します。
(3)解説と質疑応答「一般の方へ、特別支援教育Q&A」
 本研究所のホームページに掲載する予定の「特別支援教育Q&A[一般の方
への情報提供]」と発達障害教育推進センターが作成したリーフレットや
DVD、HPをご紹介します。

●「横須賀市児童生徒ふれあいフェスタ ワークショップの部」のご案内
 本研究所では、横須賀市教育委員会と共同主催で「横須賀市児童生徒ふれ
あいフェスタ」を開催します。本イベントは、平成30年度障害者週間キャン
ペーンYOKOSUKAの一環として行うものであり、横須賀市内に設置されている
特別支援学級や特別支援学校等の幼児児童生徒の作品を展示する「作品展の
部」(日時:平成30年11月30日(金)~12月4日(火)、会場:横須賀市文
化会館市民第1ギャラリー)と、学校等の教職員や保護者、一般市民の方々
を対象として、自閉症を含む発達障害に関する理解啓発を図る「ワークショ
ップの部」の2部構成となっています。「ワークショップの部」では、横須
賀市立横須賀総合高等学校の障害理解に関する取組や、世界自閉症啓発デー
(毎年4月2日)についても紹介する予定です。
 参加費は無料、事前申込は不要です。時間も下記の時間帯であれば、ご都
合の良い時間帯に自由に参加することができます。
多くの皆様のご参加をお待ちしております。

◇日時:平成30年12月2日(日)10時30分~15時30分
◇会場:横須賀市文化会館 展示室
 (京浜急行「横須賀中央駅」西改札を出て徒歩で約10分)
◇内容:
 発達障害教育に関する理解を深めるためのワークショップ(教材等の展示、
 心理的疑似体験、研究の紹介、など)
 横須賀市立横須賀総合高等学校の障害理解に関する取組の紹介

●第4回NISE特別支援教育国際シンポジウムの開催について
 本研究所では、「障害のある子どもと障害のない子どもの交流をめざして
 -日韓の取組から今後のインクルーシブ教育システム推進を展望する-」
というテーマで国際シンポジウムを開催します。テーマに関する様々な取組
等についての報告及びパネルディスカッションを行います。
 申込は11月1日(木)に開始しました。ぜひご参加ください。

◇日時:平成31年2月2日(土) 13時~17時30分(12時受付開始)
◇会場:一橋大学一橋講堂(学術総合センター内)
    (東京都千代田区一ツ橋2-1-2)
◇定員:400名
◇申込期間:平成30年11月1日(木)~ 平成31年1月18日(金)

○NISE特別支援教育国際シンポジウム申込のWebページはこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/training_seminar/special_symposium/h30

●(再案内)自閉症班公開研究成果報告会について
 自閉症研究班では、自閉症のある子どもの学習上又は生活上の困難を改善・
克服することを目的とした自立活動の指導と、自閉症のある子どもの目標間
のつながりを重視した指導について研究を行ってまいりました。本報告会で
は、これら研究成果の報告(「自閉症のある子どもの自立活動の授業を組み
立てる上での要点」、「自閉症のある子どもの指導目標の設定におけるポイ
ント」)と、研究協力機関であった小学校(自閉症・情緒障害特別支援学級)
と特別支援学校(知的障害)の先生方による実践報告を行います。また、
「自閉症のある子どもの主体的な学びを引き出すための授業改善」と題して、
対談を行います。多くの先生方のご参加をお待ちしております。

◇日時:平成30年11月23日(金・祝日)10時~15時30分(9時受付開始)
◇会場:国立特別支援教育総合研究所・研修棟
◇定員:100名(先着順・参加費無料)
◇参加対象:小・中学校の自閉症・情緒障害特別支援学級又は知的障害特別
 支援学級、特別支援学校(知的障害)の担当教員や指導主事等
◇申込締め切り:平成30年11月5日(月)

 本報告会のプログラムや参加申込方法等の詳細は、以下のWebページをご覧
ください。

○平成30年度公開研究成果報告会のWebページはこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/news/2018/0914

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【2】海外情報の紹介
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●平成30年度東アジア・大洋州地区日本人学校校長研究協議会への参加
              横倉 久(情報・支援部 上席総括研究員)

 平成30年9月10日~12日、平成30年度東アジア・大洋州地区日本人学校校
長研究協議会に出席しました。本研究所では、海外に赴任される方々が帯同
されるお子さんの相談のうち、特別支援教育に関する相談(特別な教育的ニ
ーズのある子どもたちを対象)や日本人学校からの相談を行っています。
 日本人学校校長研究協議会は、毎年、4つのブロックに分かれて開催され
ていますが、そのうちの一つ、政府共催(外務省、文部科学省)の校長会に
参加させていただき、特別支援教育に関する情報提供や相談を行っています。
在外邦人の中で、小・中学校の学齢の児童生徒は、84,253人、うち、日本人
学校92校に19,568人、補習校221校に22,051人が在籍しています。それ以外
は、インターナショナルスクールや現地校等に在籍しています。
 今回の研究協議会は、オーストラリア西オーストラリア州(以下、西豪州)
パース日本人学校を主管校として開催されました。研究協議会には、地区に
ある38校の校長先生、外務省及び文部科学省、公益財団法人海外子女教育振
興財団、NPO法人全国海外子女教育国際理解教育研究協議会と、本研究所が
参加いたしました。また、西豪州日本人会が協賛し、来賓として、在パース
日本国総領事館より総領事が臨席されました。外務省、文部科学省からの情
報提供や相談会のほか、各団体からも情報提供が行われ、別途、文部科学省
から「新学習指導要領の考え方」の基本となる考え方が説明されました。
 本研究所からは、全体会で小・中学校の学習指導要領解説(各教科)で示
された「障害のある児童・生徒への配慮事項について」のテーマで情報提供
を行いました。加えて、参加された全校長先生との個別相談への同席、課題
別研修テーマⅡ「特別支援教育」での助言・指導、全体協議での指導・講評
等、研究所及び特別支援教育に係る情報発信・情報収集等の多くの機会をい
ただきました。
 研究協議会の合間に、パース日本人学校と同一敷地内にあるCity Beach
小学校を訪問し、授業参観を行いました。両校は日常的に運動場や遊具を共
同利用し、体育・音楽・図工等の授業や活動を一緒に行うこともあるとのこ
とでした。こうした恵まれた環境の背景には、パース市のある西豪州と日本
は、活発な要人往来、資源エネルギー分野(鉄鉱石・天然ガス)を中心とし
た経済関係や文化交流等、様々なレベルでの人的交流に支えられて極めて良
好な関係が維持されており、州政府の日本人学校に対する理解が大いに影響
しているとのことでした。
 City Beach小学校では、通常の学級の教室で特別な教育的ニーズのある
子どもがサブティーチャーの支援を受けながら、10までの数の合成分解を学
習している様子を見て、国や教育システムの異なる環境の中でも子どもたち
の学びには変わりがないことを目の当たりにし、特別支援教育の一層の大切
さを再認識した次第です。
 今後も本研究所は、ナショナルセンターとして、海外からの特別支援教育
に関する相談・支援を行ってまいります。

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【3】連載コーナー
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●共同研究「インクルーシブ教育場面における知的障害児の指導内容・方法
の国際比較~フィンランド、スウェーデンと日本の比較から~(平成28-29
年度)」の研究成果報告書から 
 第4回 「事例3 小学校5年生の体育の交流及び共同学習の実践」
                    知的障害教育研究班 清水 潤
                     (研修事業部 総括研究員)

 本事例は、知的障害のある小学校5年生のCさんが、5年生になって初め
て通常の学級の体育の授業に参加し、自分の力を発揮していく過程を検討し
た実践です。
 Cさんは運動が苦手で、特に体のバランスをとる動きなどを苦手としてい
ました。5年生になり、特別支援学級の同学年の友達が同授業に参加するこ
ととなったこと、一緒に参加すると交流学級の児童の関わりが自然であった
ことから、Cさんは安心して体育の授業に参加し続けることができました。
おだやかで、分かりやすい授業を行う交流学級の担任との関わりを、Cさん
が楽しみにしていたことも、授業に意欲的に参加できた大きな要因と考えら
れます。
 本事例では、4月から9月までの間に、Cさんが参加する授業を5回参観
しました。ここでは3回目と4回目に参観した単元「体つくり運動」の中か
ら、4人組で友達の動きをまねる活動を行った場面について紹介します。
 3回目に参観した時の様子です。4人組で友達の動きをまねる活動は初め
てでした。各自が5つの動きを自由に考え、1つずつ示し、まねることを4
人が順に行う活動で、Cさんは最後の4番目を担当しました。Cさんは友達の
動きに注目したり、動きをまねたりできずにいましたが、3番目の友達の動
きには注目していました。そして、Cさんの番になると、恥ずかしいながら
も、自分なりに考えた5つの動きを示していました。
 授業終了後、特別支援学級担任と交流学級担任との振り返りの中で、Cさ
んが5つの動きを自分なりに考え、表現していたことを伝えました。そして、
同じ活動を事前に特別支援学級で学習してから交流学級の授業に参加するこ
とで自分の力を一層発揮できると考え、次回も同じ活動を取り入れていただ
くことを提案しました。
 次の体育の前日、Cさんは特別支援学級担任と一緒に交流学級担任を訪ね、
交流学級担任から、明日の体育でも友達の動きをまねる活動を行うこと、5
つの動きを考えておくことなどを聞きました。そして、特別支援学級で友達
と一緒に学習しながら、5つの動きを考えました。当日(4回目の参観)は、
自分が考えた5つの動きを小さな紙にメモして持参しました。順番は3番目
でしたが、事前の学習と手掛かりのメモにより、自信をもって自分が考えた
動きを表現することができました。
 交流及び共同学習において、知的障害のある子どもたちができそうなこと、
自分の力を発揮できそうなことを、特別支援学級担任と交流学級担任はもち
ろん、学年や発達の段階に応じて、本人も一緒に考えていくことが大切であ
ると考えます。本実践を通じて整理した「事前学習の経過と実践のポイント」
は、多くの学校において参考になるでしょう。
 
 本事例が詳しく掲載されている研究成果報告書は、以下のURLからダウン
ロードすることができます。

○本共同研究の研究成果報告書はこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/study/intro_res/joint

 次回は、小学校3年生の理科の交流及び共同学習の実践事例を紹介する予
定です。どうぞお楽しみに。

●「地域実践研究員」だより[第1回]
                              橫尾 俊
       (インクルーシブ教育システム推進センター 主任研究員)

 インクルーシブ教育システム推進センターでは、平成28年度よりインクル
ーシブ教育システムの構築に向けて、地域や学校が抱える課題を本研究所と
都道府県・指定都市教育委員会との協働の下で行う「地域実践研究事業」を
実施しています。平成28年度から平成32年度までの5年間を通じて、インク
ルーシブ教育システム構築のための包括的な研究課題(メインテーマ)を2
課題設定し、各メインテーマの下には具体的な研究課題(サブテーマ)を設
定しています。地域実践研究事業に参画していただく都道府県・市区町村教
育委員会には、サブテーマを1つ選択して申請していただき、地域実践研究
員を派遣していただいています。地域実践研究員の派遣形態については、長
期派遣型(1年間を通じた派遣)と短期派遣型(年3回、1回につき2日間
の派遣)があります。
 本年度は、5地域から6名の長期型の先生、8地域から10名の短期型の先
生が本研究に参画されています。今回のメールマガジンから3回の連載とし
て、長期型の先生より、地域実践研究への取組や活動状況等について報告し
ていただく予定です。
 本事業に関する詳しい情報は、以下のWebサイトをご参照ください。また、
Webサイトには、平成31年度地域実践研究事業に係る公募書類を掲載してお
ります。是非ご覧いただければと思います。

○本年度の研究テーマの詳細についてはこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/about_nise/inclusive_center

〇地域実践研究員からの報告
「インクルーシブ教育システムの理解啓発に関する研究」
              地域実践研究員(長期派遣型) 若月 雅子
                (埼玉県立所沢おおぞら特別支援学校)

 久里浜の研究所へ来てから半年が過ぎました。地元の埼玉県から毎日通う
私は、研究所前のバス停を降りると感じる潮風に背中を押され、研究員室の
窓から見える海の景色にエネルギーをもらい、地元では決して体験すること
ができない環境の中で、贅沢な時間を過ごしていると感じながら日々を送っ
ています。
 研究所へ来た当初は、「地域の課題を解決する」ために何ができるだろう
と模索する日々が続き、「見通しがもてないことの不安さ」を身に染みて感
じる毎日でした。しかし、研究所の先生方や地域実践研究員同士で、地域の
状況について情報交換し合う中で、これまでの現場経験では考えることのな
かった様々な視点に気付くことができました。刺激を受けたことで自ずと課
題解決に向けての糸口を見つけることができたように感じます。
 今年度の地域実践研究では、「インクルーシブ教育システムの理解啓発に
関する研究」をテーマに取り組んでいます。埼玉県が抱える課題の一つに
「教員の指導力向上」があり、昨年度までの地域実践研究ではその解決のた
め、「学校長や特別支援教育コーディネーターを対象にした研修プログラム
の作成」に取り組みました。そこで今年度からは、小・中学校の通常の学級
の教員に焦点を当て、「通常の学級でできる特別支援教育の視点を踏まえた
効果的な手段や方法及び校内研修等の在り方」についての研究を行い、特別
支援教育に関する知識及び指導力向上の一助となるよう取り組んでいます。
県内の4市の研究協力機関と連携を図りながら通常の学級の教員の実態調査
を行い、現状と課題についてまとめ、ポイントを整理して情報提供をしたい
と考えています。
 研究所では、国の法令や施策、各県の学校教育の在り方、教育委員会の動
向等、これまで教諭の立場では意識して考えることが少なかった多くの情報
に触れ、意識を強くもつことができ、私自身、学校教育を「広い視野で捉え
た上で実践する」ことの重要さ、大切さに気付くことができました。こうし
た経験は、研究所への派遣を通して出会えた多くの先生方のおかげであり、
「気付き」と「出会い」は私にとって大きな財産となりました。埼玉県の将
来を担う子どもたちのため、そして埼玉県の特別支援教育のために、研究成
果のみならず、研究を通じて得られた多くの知見を還元できるよう、今後も
精一杯努めたいと思います。

「教育相談・就学先決定に関する研究」
               地域実践研究員(長期派遣型) 熊谷 祥
                       (長野県諏訪養護学校)

 先日、勤務校を久しぶりに訪れ、文化祭を見てきました。学校現場を離れ
て僅か数カ月ですが、そこには別人と見間違えるくらいに心身共に成長した
子どもたちの姿がありました。自分の想像を遥かに超えた変化を実感し、不
思議な感覚を覚えました。
 思えば、勤務していた頃は、日々の業務をこなすことに必死で、鈍感にな
っていたと気付きました。子どもの姿を見ていたつもりでも、本当は見落と
していたことがたくさんあったように思います。「“変化に気付く敏感さ”
をもち、次への指導につなげていく」――そんな当たり前のことも充分に出
来ていなかったと反省しながら、研究所の宿泊棟への帰路につきました。
久里浜に来て半年になりますが、今回の長期派遣を通して、教員として培っ
てきた現場の感覚に加え、更にその現場を様々な視点から俯瞰的に見る機会
を与えていただいております。数多くの価値観に触れながら、これまでの自
分と照らし合わせ、その度に新たな発見に出逢う充実した毎日を過ごしてい
ます。自分に関わってくださっている全ての方々には、感謝以外の言葉が見
つかりません。
 現在は、地域実践研究員として「教育相談・就学先決定に関する研究」を
行っています。就学先決定におけるプロセスの中で、合意形成が成されるま
での本人・保護者への情報提供、関係機関の役割とその連携、担当者に求め
られている専門性等について、現状と課題を明らかにし、各自治体の参考と
なる取組を集約し、課題解決に向けた方策を明らかにしたいと考えています。
調査のために教育委員会や療育センターを訪問しているところですが、教育
相談・就学先決定に携わる多くの方々が、子どもと保護者のために日々尽力
されていることを感じます。その方々の想いが届くような形で、研究の成果
を発信出来たら、と考えています。
 「勉強とは、自分の無知を徐々に発見していくことである」―これは歴史
学者のウィル・デュラント氏の言葉ですが、まさに今の自分。「そうなんだ、
知らなかった…」と打ちのめされる毎日です。自身が成長することは勿論、
地域のために何ができるか。このことを常に考え、探求を続けていきたいと
感じます。

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【4】NISEダイアリー
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         「運動会の案内状」
           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)

 隣の学校(筑波大学附属久里浜特別支援学校)から、運動会の案内状が届
いた。
 実は例年と異なる方法で。これまでは、事務職員を経由して、封書が届け
られたり、担当の先生が、直接、封書を届けてくれたりしていた。
 今年は違った。前もって六年生の担任から電話が来て、「子どもが案内状
を届けに伺いたいので、いつがいいですか?」と問い合わせがあった。そし
て、約束した時間に、子どもたちが部屋を訪れ、直接、手渡してくれた。同
じように約束をしていた理事と、私の部屋で一緒に応対をした。
 六人の子どもたちのうち、三人は、私が、以前、隣の学校に勤めていた時
は幼稚部に在籍していた。早いもので六年生になっていた。残りの三人は、
小学部一年生の時に入学して来た子どもたちである。
 一人の男の子が、「見に来てください。」と言いながら、案内状と簡単な
手紙を渡してくれた。六人の中の、ある元気のいい子に、「幼稚部の頃、覚
えている?」と訊ねたら、「はい。」とのこと。人との関わりが難しい子だ
ったが、その日は機嫌がよかったのか、答えてくれた。つい、「お兄ちゃん
は何年生になったの?」と訊ねてみた。「中学二年生。」とのこと。受け答
えも上手になった。初めての部屋で、みんなきょろきょろしていたが、椅子
に掛け、立派に役目を果たすことができた。
 こんな出来事を通して、子どもたちに経験させることの大切さを考えた。
「こんなことをさせたらできるだろうか?」、「相手に迷惑を掛けないだろ
うか?」と大人は心配する。そして、ついつい、「やめた方がいいか。」と
なってしまう。それでは、子どものもっている可能性を伸ばせないと思う。
体験させるにしても、子どもを知っていれば、どのような準備をして、どの
ような順序で話したり行動させたりすればいいかが見つかるはず。それが大
切だと思う。ただ、経験させればいいというのでは、指導にはならない。経
験させるための準備が必要になる。それが想像することだと思う。「こうす
れば、この子は言える。手渡せる。落ち着いていられる。」などと、考える
ことが必要になる。
 そして、こうしたことは、学校側だけの課題ではない。子どもたちを受け
止める私たち(研究所などの相手)の問題でもある。障害のある子どもたち
の教育を考える私たちにとって、こうした子どもたちに実際に触れ合うこと
が大切である。交流及び共同学習は、学校だけの課題ではない。社会におい
てこそ、そうした機会が必要だと思う。
 研究所では、今年から就業体験を希望する高等部の生徒の受け入れを始め
た。そのきっかけは、隣の学校との話し合いの中で生まれた。今、二回目の
受け入れを検討している。様々な課題に直面しながら、研究所としての受け
入れを、せっかく来てくれる生徒たちの役に立つものにしていきたいと思う。
また、研究所では、障害のある方の雇用にも努めている。
 研究所は、実際的な研究を総合的に行うことを目的の一つとしている。そ
れを果たすためには、障害のある子どものことを直に知ることが、先ずは必
要だと思う。

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【5】研修員だより
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 今号は、平成29年度第一期特別支援教育専門研修を修了された中川智香子
先生からお寄せいただきました。

      「大切にしていきたい宝物
       ~たくさんの人との出会い、そして充実した研修~」
                  中川 智香子(滋賀県立聾話学校)

 美しい海岸線を臨むことができる国立特別支援教育総合研究所。ここで、
教員人生の財産となる素晴らしい時を過ごし、素敵な人達と出会うことがで
きました。
 研修では、インクルーシブ教育システムの推進に向けた具体的な取組や新
しい学習指導要領、各自治体で加速する手話言語条例の成立などに触れ、聴
覚障害教育を取り巻く状況が大きく変わりつつあることを実感できました。
また、様々な分野において第一線でご活躍中の経験豊かな熱き講師陣による
ご講義は、これからの聴覚障害教育に求められる専門性を深めることができ
るとともに、新しい視点を数多く学び得る機会となりました。
 グループ活動となる研究協議では、目の前の子ども一人ひとりのことを真
剣に考え、丁寧に実践を積み重ねている他府県・他校種の先生方と共に学び
合うことができました。些細なことにも、互いに納得のいくまで意見を交換
し合い、夜中まで熱い討議を重ねた日もありました。気付けば、困ったとき
には助け合える、そして共に成長できる仲間となっていました。
 特総研での学びと出会いを励みに、子ども達に真摯に向き合いながら、こ
れからも研鑽し続けていきたいと思います。

○滋賀県立聾話学校のWebサイトはこちら→
 http://www.rouwa-sh.shiga-ec.ed.jp/

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【6】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。

○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=57773&lang=ja

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【7】編集後記
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 いつも、本メールマガジンをご愛読いただき、ありがとうございます。
 今回のメールマガジン140号では、連載記事のほか、特別支援教育に関わ
る各種イベント等の案内や海外情報についての記事を掲載することとしまし
た。読者の皆さんにとって有益な情報となっていれば幸いです。
 さて、先日、ある学会が開催した大会に参加してきました。本学会は、主
に耳鼻科の医師や言語聴覚士の方を対象とした、いわゆる「医療系」の学会
ですが、「高齢者」と「乳幼児」を今回の大会の中心テーマとし、今後の超
高齢化社会を見据えた対応の充実や、出生時からの確実な障害への対応につ
いて、研究発表と積極的な討議が進められていました。
 特別支援教育においても、障害者の生涯学習や早期からの切れ目ない支援
の充実など、これまで中心に進められてきた幼児教育や義務教育、後期中等
教育段階に留まることなく、支援の必要性などについて議論が進められてい
るところです。今回の学会参加を通して、医療関係者はもとより、多様な関
係者との連携が、今後ますます必要となっていくことについて、改めて強く
感じた次第です。
 話は変わりますが、平成29年3月、東京大学CoREF(http://coref.u-tokyo.ac.jp/)
から「協調学習 授業デザインハンドブック 第2版」が発行されました。
 本ハンドブックによりますと、この「協調学習」については、「子ども達
一人ひとりが主体となって学びながら、他者との関わりを通じて自分の考え
をよくしていくような学び」と示されています。この「学び」は、他者と一
緒に考えることで建設的相互作用が起き、自らの考えを深めることにつなが
るという理論であり、学習指導要領で示されている「主体的・対話的で深い
学び」にも重なる一つの学習方法でもあります。
 具体と詳細については、関連するWebページ(http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5515)
等に譲りますが、本ハンドブックによりますと、この「学び」は、一人では
十分な答えが出ない課題に対して、子ども一人ひとりに課題意識をもたせた
後、小グループによる「エキスパート活動」を通して整理された部分的な考
え方を中グループでの「ジグソー活動」によって統合し、さらには、それぞ
れの中グループが導き出した答えを「クロストーク」によって交流し学び合
い、最終的には、「一人では十分な答えが出なかった課題」について、再度、
自ら答を考えさせるというものです。
 こうした「学び」は、特別支援教育はもとより、教育に携わる私たちにも
必要な「学び」であるように感じます。私たちは、そして読者の皆さんの多
くは、特別支援教育に関わる(一部の分野かもしれませんが)専門家でもあ
るでしょう。それぞれの専門性を基盤としながら、他の分野や立場などの方
の知見に触れ、「クロストーク」することにより、これまで解決し得なかっ
た課題に対しても、解決の可能性が広がるように思います。
 本メールマガジンには、毎号、幅広い情報を掲載しています。中には一見、
読者の皆さんの業務には、関連しないように思える情報もあるかもしれませ
んが、ぜひ、こうした情報にも積極的に触れていただくことで、新たな気付
きや知見へと繋がり、専門性の拡充に役立つことを期待しています。今後も、
本メールマガジンのご愛読をよろしくお願いします。
                  (第140号編集主幹 宇野 宏之祐)

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次号も是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第140号(平成30年11月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
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