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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第71号(平成25年2月号)
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■目次
【お知らせ】平成24年度国立特別支援教育総合研究所セミナーを開催しまし
た(速報)
【お知らせ】諸外国の教育政策の動向に関する講演会、及び本研究所職員の
海外出張報告会を開催しました
【お知らせ】平成24年度第三期特別支援教育専門研修開講
【お知らせ】第3回キャリア教育推進者研究協議会を開催しました
【海外情報の紹介】イタリアの障害がある子どもの教育に関する情報収集
【連載コーナー】サバン -自閉症の不思議で大きな可能性- 第1回
【研修員だより】
【アンケートのお願い】
【編集後記】
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【1】お知らせ
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★NEWS★
●平成24年度国立特別支援教育総合研究所セミナーを開催しました(速報)
 本研究所では、平成24年度国立特別支援教育総合研究所セミナーを1月29日
(火)から30日(水)の2日間にわたり、国立オリンピック記念青少年総合
センターにおいて開催しました。本年度も、定員を上回る参加申込みをいた
だき、活発に協議等を行うなど、無事成功裏に終了することができたものと
思います。なお、詳細につきましては、次号のトピックとして紹介する予定
です。

●諸外国の教育政策の動向に関する講演会、及び本研究所職員の海外出張報
告会を開催しました
 本研究所では、特別支援機教育のナショナルセンターとして、諸外国の障
害のある子どもの教育に関する情報を収集し、調査・分析を行うとともに、
国内の情報及び諸外国の情報を国内外に提供しています。その一環として、
平成24年12月21日(金)、岡典子氏(筑波大学准教授)、宮内久絵氏(茨城
キリスト教大学講師)による米国・英国の障害のある子どもの教育政策の動
向についての講演会、及び専門研究等で実施した海外渡航調査や国際学会等
の参加に関する報告会(対象国は、韓国、ニュージーランド、中国、アメリ
カ、イギリス)を実施しました。今後の我が国におけるインクルーシブ教育
システムの構築に向けて、諸外国の教育政策の動向に関する情報の収集・分
析とそれに基づく議論は、一層重要性を増していくものと考えられます。
 講演会の詳しい内容については、Webサイトに3月掲載予定の特総研ジャ
ーナル第2号をご覧ください。また、本研究所職員が海外出張により収集し
た情報については、本メールマガジンの中で「海外情報の紹介」として順次
紹介しています。

●平成24年度第三期特別支援教育専門研修開講
 1月9日(水)、平成24年度第三期特別支援教育専門研修が開講しました。
 特別支援教育専門研修は、障害のある幼児児童生徒の教育を担当する教職
員に対し、専門的知識及び技術を深めさせるなど必要な研修を行い、その指
導力の一層の向上を図り、今後の各都道府県等における指導者としての資質
を高めることを目的とした約2ヶ月間の研修で、年に三期開催しています。

 今期(平成25年1月9日~3月15日)は情緒障害・言語障害・発達障害教育
コースで、全国から70名の教職員が、それぞれの専修プログラムごとに研修
に励んでいます。研修の主な内容は、特別支援教育全般と各専修プログラム
毎の障害種別に関わる講義を中心に、演習、研究協議、実地研修などから構
成されています。
 この研修では、知識、技術の習得のみならず全国から集まった教職員同士
のネットワークづくりも魅力となっています。

 ○特別支援教育専門研修の内容等はこちら→
  https://www.nise.go.jp/cms/9,0,21,116.html

●第3回キャリア教育推進者研究協議会を開催しました
 1月19日(土)から20日(日)の2日間にわたり、本協議会を開催しまし
た。本協議会は日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(C)「特別支援教
育におけるキャリア教育の充実を図るための研修パッケージ開発(研究代表
者:菊地一文)」の一環として行ってきたもので、全国のキャリア教育推進
担当者、管理職、指導主事等、100名を越える参加者がありました。
 一日目は、研究成果報告、パネルディスカッション、立教大学大学院特任
教授の渡辺三枝子氏による講演、ポスターセッションを行いました。講演で
は、「キャリア発達を支援する教育」の理解を図り、推進する上で重要なキ
ーワードである「キャリア」「発達」「competency」について解説していた
だき、特別支援教育分野において期待されることについてもお話しいただき
ました。また、ポスターセッションでは、約30件の各校・各地域における実
践や研修の報告を基に、参加者と活発な協議を行いました。
 二日目のグループ別研究協議では、ファシリテーションスキルの向上のた
め、短時間で推進上の課題の明確化や、具体的な解決方策を探ることを目指
し、多くの成果が挙げられました。
 本協議会において、「キャリア発達支援研究会」を立ち上げることが確認
されました。本協議会は、研究会の年次大会として継続して実施し、積極的
な情報発信と皆様からのたくさんの参加を求めていく予定です。今後ともよ
ろしくお願いいたします。

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【2】NISEトピックス
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★海外情報の紹介★
●イタリアの障害がある子どもの教育に関する情報収集
              大内 進(教育支援部長/上席総括研究員)

 平成24年12月17日から23日の7日間、イタリアのミラノ、ボローニャ、ベ
ネツィアに滞在し、視覚障害教育用教材の開発及び普及に関する調査及びイ
ンクルーシブ教育に関する情報収集を行いました。日本学術振興会学術研究
助成基金助成金基盤研究(C)「2次元画像から3次元空間理解を促すための
障害児教育用教材の開発と活用に関する研究(研究代表者:大内進)」によ
り実施したものです。
 触覚教材に関する調査では、ミラノ盲人協会とボローニャの盲人施設を訪
問しました。イタリアでは、1970年代からインクルーシブ教育が実施されて
います。こうした状況の下、ミラノ盲人協会では、触覚教材作成室を設け、
様々な触覚教材をイタリア全土の学校等に有償で提供しています。特に、真
空成型による半立体的な触覚教材を多数製作しています。その開発状況を調
査しました。幼児用の絵本、算数・数学分野、理科分野、社会科分野等の教
材が継続的に開発されていることが確認できました。日本では、教材は指導
者の手作りが中心で、それも凸図のような平面的な触覚教材に偏っている現
状にあり、今後のインクルーシブ教育システム構築への取組に参考になると
ころがありました。
 ボローニャの盲人施設「視覚障害者のための手でみる美術館アンテロス」
では、絵画のイメージを半立体的に翻案した作品をとおして、視覚に障害が
ある人の絵画理解の支援に取り組んでいます。当館とはこれまでも共同研究
を行っており、「神奈川沖波裏」、「姿見七人化粧」などの作品を共同作成
してきました。新たな作品を開発に向けて当館学芸員、翻案作成にあたる浮
彫作家,視覚障害当時者から聴き取り調査を行いました。
 イタリアの障害がある子どもの教育に関しては、ミラノで聴覚障害教育機
能を有した高校訪問、ベネツィアでリハビリテーション施設訪問調査と保護
者への面接調査を実施しました。フルインクルージョンの下でも、聴覚障害
や視覚障害についてはもともと障害がある子どもの教育を行っていた学校に
健常の子どもが在籍する形で、その専門性が継承されていることが確認でき
ました。また、障害のある子どもの教育は,学校教育だけでなく地域のリハ
ビリテーションセンターやトレーニングセンターが活用され、学校教育期間
中も医療や福祉機関が、障害のある子どもの育成のために積極的に関与して
いることも確認できました。

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【3】連載コーナー
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●サバン -自閉症の不思議で大きな可能性-
         渥美 義賢(国立特別支援教育総合研究所客員研究員)

 第1回 サバン事始め

 サバンとは、脳に障害があり、それと関連して特定の領域で常人を越える
卓越した能力を示すこと、及び、それを示す人のことです。サバンが起きる
脳の障害は自閉症に限られてはいませんが、自閉症のある子どもではサバン
を示す割合が高いことが知られており、自閉症の脳機能とサバンの脳機能に
は何らかの関連性があることが推察されています。
 サバンの不思議さの一つは、その特異な能力、例えば驚異的な記憶力や計
算能力、芸術的能力が、教えられていないにも関わらず開花することです。
ヒトの能力の開花には教育は必要がない?勉強なんてしなくたって何でもで
きるかも?いや、そんなことは一般的にはないと思われますが、教えられて
いないことを常人には不可能なレベルで成し遂げることができるサバンの存
在は不思議です。そして、サバンの人たちは、なぜそんなすばらしいことが
できるのか、その理由を説明することはできません。脳科学も、現時点では
ほとんど解明ができていません。
 このような現状では、限られた説明しかできませんが、サバンについて多
少とも関連する情報を提供したいと思います。自閉症のある子どもたちの一
人ひとりから、持っている才能と可能性を引き出し、その望ましい発達に多
少とも寄与できることを期待しています。また、サバンの能力は我々全ての
ヒトに備わっている可能性も推測されています。その可能性にも触れていき
たいと思います。著者は「もしかすると勉強を全くしなくても算数で満点が
とれるようになるかもしれない」という夢想が捨てられません。

 ・・・続きはこちら→
  https://www.nise.go.jp/cms/6,7818,13,257.html

 ・・・全6回の連載内容はこちらのリンクへ→
  https://www.nise.go.jp/cms/6,7827,13,257.html

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【4】研修員だより
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 今号は、平成19年度第三期特別支援教育専門研修修了の門林嘉樹先生から
お寄せいただきました。

「無題」
               門林 嘉樹(静岡県立富士特別支援学校)

 キャリア教育、ICF、コミュニケーション、主体性・・・これらの言葉を
聞くとき、久里浜での日々を思い出します。それは、研修室の風景であった
り、一緒に研修をした教員の仲間の顔であったり、ぼんやりと、しかし、確
かな実感とともに、まるでタイムスリップしたかのように思い浮かんできま
す。
 久里浜での日々は、僕に、
「障がいの重い子と言われる児童生徒のキャリア教育ってなんだろう?」
「パラダイムシフトとは、僕の中の規範とは何で、どう変革させることなん
だろうか?」
「あなたは、子どもを取り巻く環境を、子ども自身を知っていますか?」
「あなたは、心から子どもと通じ合うことができていますか?」
「あなたは、子どもの主体性を尊重した関わりができていますか?」
等、たくさんの疑問や課題を投げかけてくれました。
 久里浜での日々を終えて5年。障がいが重いといわれる子ども達と日々、
勉強しながら、時々、これらの疑問や課題にぶつかります。
 答えが見つかったと思うと、さらに、新たな疑問が浮かんできたり、また
は、さらに分からなくなったりすることを繰り返す毎日です。暫くは、この
厄介な問題と向き合うことになりそうです。

 ○静岡県立富士特別支援学校のWebサイトはこちら→
  http://www.edu.pref.shizuoka.jp/fuji-sh/home.nsf/IndexFormView?OpenView

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【5】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。

 ○アンケートはこちら→
  https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=81258&lang=ja

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【6】編集後記
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 温暖な三浦半島も、今の時期はさすがに寒く、先日は珍しく雪が積もりま
した。この冬は一段と寒さが厳しいようですが、読者の皆様のところはいか
がでしょうか。インフルエンザの流行等も気になっております。
 今号では、最近の本研究所の取組を紹介するとともに、新たな連載として
「サバン -自閉症の不思議で大きな可能性-」を開始いたしました。全6
回の予定です。どうぞ楽しみにされてください。
 また、研修員だよりでは、5年前のこの時期に、筆者が担当した研修コー
スに来られ、他の地域より少し早い春の訪れを一緒に感じながら、研修に取
り組まれた門林先生より、研修の振り返りと日々の実践を重ねた声を寄せて
いただきました。今来られている70名の専門研修員の先生方は、3月までの
間にこちらで何を感じ、戻られた後、どのようにこちらを振り返られるのか
なあと想像しています。地元の子どもたちやご同僚にもたくさんの「学び」
のお土産を届けていただければと願っています。
 ところで、少し先のお話になりますが、年度替わりの異動等で、本メルマ
ガへの登録アドレスが使えなくなる方も例年いらっしゃるようです。ご面倒
をおかけしますが、その際は再登録のほうもよろしくお願いいたします。
                   (第71号編集主幹 徳永亜希雄)
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次号も是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第71号(平成25年2月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
           E-mail a-koho[アットマーク]nise.go.jp
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