メルマガ連載記事 「インクルーシブ教育システム構築に向けて」
第1回


障害者権利条約の概要と批准までの経緯 

国立特別支援教育総合研究所理事 新谷 喜之  

 平成18年12月の第61回国際連合総会において、「障害者の権利に関する条約」が採択されました。この条約は、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳を促進することを目的として、障害者の権利の実現のための措置等について規定するものです。
 この中で、教育については第24条に規定されており、同条約が求めるインクルーシブ教育システム(inclusive education system)について、障害のある者が一般的な教育制度(general education system)から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」(reasonable accomodation)が提供されること等が必要とされています。
 この条約の批准に向けた検討を進めるため、我が国では平成21年12月に、障害者施策の推進に関する事項について意見を求めるため、障害者、学識経験者から構成される「障がい者制度改革推進会議」を設置、翌年7月には文部科学省からの審議要請を受けて、中央教育審議会初等中等教育分科会(以下、初中分科会という。)に「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」を設置し、様々な議論を重ねてきました。
 そして、平成23年8月、障害者基本法の一部を改正する法律が公布・施行され、教育について、国及び地方公共団体は、障害者が十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である子どもが障害者でない子どもと共に教育を受けられるよう配慮しなければならない等の規定が定められました。
 また、平成24年7月には、「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」という初中分科会報告が、取りまとめられました。
 その後、平成25年6月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の制定(施行は一部の附則を除き平成28年4月)や就学手続の見直しのための学校教育法施行令の改正(平成25年9月施行)など必要な国内法令の整備等を進め、同年12月に国会で承認され、平成26年1月20日に批准されました。なお、本条約は平成26年2月19日に我が国について効力を生ずること
となりました。
 先に述べました初中分科会報告の要点については、次号で説明します。

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 インクルーシブ教育システム構築支援データベース「基礎的情報」
 http://inclusive.nise.go.jp/ 
 

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