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本文 III 主要国における特別な教育的ニーズを有する子どもの指導について
トップ(目次) > III章トップ(目次) > 2.アメリカ-02
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II アメリカ連邦政府
1.教育行政制度の概括
 合衆国憲法修正第10条により、連邦政府の権限として規定されている以外の権限は、特に禁止されていない限り州及び市民に留保されることが定められている。教育についても、合衆国憲法の中に規定されていないことから、州の専権事項とされ、連邦政府は基本的に教育に関する権限を有しない。連邦政府の役割は教育の機会均等の保障等教育への支援に止まっている。
 州は、州憲法及び州法(州教育法)に基づき独自の教育制度を作っているが、義務教育年限がすべての州が12年であるなど、共通する部分も多い。州の教育行政は州教育委員会及び州教育長を中心に行われるが、州が定める教育方針や制度は大綱的あるいは必要最小限に止まることが多い。これを実施運用するのが州の下に位置する基礎的な教育行政単位である学区(district)で、多くの裁量が委ねられている。
 学区は一般行政単位である郡、市、タウン等とは別に設定される教育専門の行政単位である。基本的に所管区域内の初等中等教育を中心とした公立学校制度を管理するための権限が与えられている。

2.連邦政府の教育への関与
 連邦政府は教育に関する権限をもたないとされて来たが、合衆国憲法第1節第8条の一般福祉条項を根拠に、福祉の概念を広義にとらえ、国民の幸福、生活の充足を目的として教育の支援を行っている。1980年に創設された連邦教育省の使命は教育の機会均等と優れた教育実践の振興の2つとされている。具体的には各種補助金事業及び奨学金事業と教育情報の収集、統計、分析、提供及び研究・開発活動に大別出来る。
 また、連邦教育省の中に特殊教育局があり、障害児・者を対象とした連邦のリハビリテーション及び特殊教育のプログラムを所管し、州に対する補助金の支給や調査研究を実施している。

3.障害のある子の教育への関与の変遷とその法的背景
 合衆国憲法によって、連邦政府の権限の範囲が規定されており、教育は州の権限と定められており、連邦政府が教育に関与することはなかった。しかしながら、黒人の差別撤廃を求めて始まった公民権運動の結果として、1964年『公民権法』が成立した。この公民権法では教育に関連して、教職員の処遇に対して人種等による差別を行った場合、連邦政府からの補助金が停止されると規定されている。この公民権運動は、やがて障害者差別撤廃への動きへと高まり、のちの職業リハビリテーション法、全障害児教育法、アメリカ障害者法の成立へとつながり、アメリカの障害児教育に大きな影響を与えていくことになった。
 そして、1973年障害者の就職差別を禁止した『職業リハビリテーション法』が成立する。この法律の504条には、連邦政府から補助金を受けている団体はどのような団体であっても、障害のある人を差別してはならないと謳っている。すなわち、504条は障害がある人は政策の上でも、習慣や慣習の上でも、雇用やサービス提供のうえでも平等に扱われなければならないと定めた。そしてここでいう団体とは小・中学校、高校、大学、病院、州政府、地方自治体などが含まれている。しかしながら、504条は民間企業や、映画館、レストラン、ショッピングセンターなどは含まれなかったけれど、この法律によって障害のある人が自分が差別されていると感じたとき、政府に苦情を申し入れたり、法に訴えたりすることができるようになり、人権に対する認識が大きく高まった。この高まりが、1990年に、504条で対象外だったすべての企業や団体が差別することを禁じた『障害のあるアメリカ国民法』(ADA)の成立へとつながっていく。
 そして、1975年『全障害児教育法』(IDEA)が成立された。この法律によって6歳から21歳までのすべての障害児は無償で適切な公教育が提供されることになった。その特色は最も制約の少ない教育環境を提供されること、個別教育計画(IEP)が導入されたこと、サービスの連続体が提供されることの3点があげられる。やがて1986年、この法律が修正され、3歳から5歳までのすべての障害児にも無償で適切な公教育が提供されるよう追加されるとともに、個別家族サービス計画(IFSP)が導入された。また、1990年の修正では、16歳以上の生徒に対し、卒業後の地域・職業への個別移行計画(ITP)をIEPの中に明記することが定められた。
 こうした障害児を取り巻く一連の教育改革が進む中で、通常教育の改革も行われている。1994年の初等中等教育法の改正がそれで、『2000年の目標;アメリカ教育法』と言われている。この教育改革では8つの目標が掲げられているが、その強調点は読み・書き・計算の能力を引き上げようとするものである。8つの目標とは、
 (1)すべての子どもに就学までに学ぶ準備をさせていくこと
 (2)高等学校の卒業率を90%以上に引き上げること
 (3)4、8、12年生の時に主要科目においてそのレベルまで学力が達成していること
 (4)算数と理科の学力が世界一となること
 (5)すべてのアメリカ国民が読み書きができ、世界経済の競争の中で生き抜くために必要な知識、技能をもち、国民としての権利と義務を遂行すること
 (6)麻薬や暴力や武器を排除し、学習するにふさわしい規律に満ちた場所とすること
 (7)21世紀にふさわしい教育をするため、必要な知識、技能を提供すること
 (8)すべての学校は子どもの社会的、情緒的、学力的な成長を促すため親の関与と参加が高まるようなパートナーシップを促進することとなっている。
 この目標を達成し、成果を測定する方法として、各州の教育ガイドラインに沿った全州学力試験の実施とその報告の義務、校長の主導性の重視、成果に対する報酬と制裁などが進められている。この学力試験に障害児を含めると各学校の総合得点が低下することにつながるため、校長にとっては葛藤の原因ともなっているのが実情のようであった。また、州によっては特定の障害児はこれらの試験から排除されるという場合もあるようだ。
 そこで1997年にIDEAの修正がなされる。ここではいくつかの教育に関する課題が挙げられている。その主なものは、障害児の多くが通常のカリキュラムと全州学力試験から排除されており、そのためより高い学力を達成する可能性が制限されていること、障害児のドロップアウト率が障害のない子の率の倍あること、その多くが就職が困難で、刑法の世話になることが挙げられた。その主な修正点は以下のとおりである。
 (1)障害のある児童生徒の学力を高めるため、IEPが通常のカリキュラムにより明確につながりをもち、学力達成目標を示し、全州及び学区の学力試験に障害児を含めること(試験を免除された障害児の代替試験は2000年7月までに実施すること)(2)両親の関与を高めること(これまではIEP会議への参加権のみがあったが、特殊教育を受ける適格性と措置の決定にも参加することが認められた。また、IEPに記された学力達成目標の進捗状況の報告義務が学校側に課せられた。)(3)通常学級でより適切な教育が受けられるよう財政措置がなされた。(4)通常教育を担当する教師もIEP会議のメンバーとなること。(5)州に教育に関するデータの収集と保障を義務づけた。(6)障害児のさまざまなニーズに応えられるように補助金の執行法に多くの柔軟性が与えられた。(7)安全で規律ある学校にするため、障害児の規律違反に対する制裁に関する学校の裁量権、制限、義務が設けられた。(8)障害のある乳幼児のプログラム(0歳から2歳)への連邦政府補助金を増額した。
 このように法的背景とその変遷を見てみると、本来、州が担うべき教育の責任に対して、連邦政府の直接な関与が強まり、教育への影響力が増大していると言える。とりわけ連邦政府でのインタビューにおいても、ウォーリッタ特殊教育課長が力説されていたところである。

4.米国におけるインクルージョンの実施状況 −全米と訪問州との比較−
 1999年、連邦政府は議会に対し、『IDEAの実施状況についてのアメリカ合衆国議会への第21回年次報告』が提出された。この報告書は、全米から集められた統計資料を集計し、分析するとともに、その結果を表にして掲載している。多くの統計資料は、1996-1997年度のものとなっているので、1997年のIDEA修正前の実態を表しているものといえる。また、この資料によると提供される教育の場は次のように分類されている。
 (1)通常学級:一日のうち通常学級外で教育を受ける割合が21%未満のもの(最も制約の少ない教育環境としている)
 (2)リソースルーム:同じくその割合が21%以上60%以下のもの
 (3)分離学級:同じくその割合が60%以上のもの
 このほか、特別な教育的ニーズを必要とする子には、公立の特殊教育機関(分離型学校)や私立の特殊教育機関(分離型学校)、公立特殊教育学校(寄宿制学校)や私立の特殊教育学校(寄宿制学校)、在宅・病院・訪問などの教育の場が提供されている。このようにIDEA修正前でも、さまざまな教育の場が提供されている。
 そこで、今回連邦政府にインタビューした際入手した『IDEAの実施状況についてのアメリカ合衆国議会への第21回年次報告』書をもとに、訪問州であるテキサス、ヴァージニア、カルフォルニア、ニューヨークと先進州と評判高いミネソタ及び全国平均を比較検討した。
 その結果は、表1・表2・表3に示した通りである。筆者が訪問したテキサス、ヴァージニア州においては、インタビューした教育関係者は誰もが、ロをそろえてインクルージョンは推進しなければならないと話していた。1997年のIDEAの修正後、障害児の学力の向上等教育現場ではさまざまな課題を背負いつつ、前向きに取り組む姿が印象的であった。連邦政府のリーダーシップのもと、それぞれの州の実状を勘案しつつ、着実にIDEAの浸透とインクルージョンが実施されていると思われた。さらに、6歳から11歳にいたる特別な教育的ニーズを必要としている子どもの障害種別に応じた教育の場の提供について、検討してみた。結果は以下の表1−表15のとおりである。
 州によって、その力点の入れ方に温度差があるのか、インクルージョンの実施状況には、障害種別によってもばらつきは見られた。しかし、知的障害、自閉症、重複障害などのインクルージョンについては、今後の大きな課題となっているようである。

1996-1997 全 人 数 障害児の数
3歳-21歳 72,104,000人 5,750,000人

表1.3-21歳のすべての障害児(%)
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 27.51 47.71 22.73 0.87 0.01 0.11 0.00 0.86
ヴァージニア 42.24 29.21 25.33 0.93 0.59 0.61 0.22 0.86
カルフォルニア 52.70 19.44 24.10 1.27 1.62 0.19 0.21 0.47
ニューヨーク 42.49 12.64 33.67 6.60 2.49 0.66 1.05 0.40
ミネソタ 63.46 21.33 10.26 3.38 0.27 0.69 0.40 0.21
全国平均 46.22 26.71 22.42 2.26 1.07 0.39 0.26 0.67

表2.6-11歳のすべての障害児(%)
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 35.27 48.49 15.36 0.36 0.01 0.03 0.00 0.49
ヴァージニア 50.75 25.55 22.53 0.51 0.31 0.12 0.05 0.18
カルフォルニア 64.20 13.67 20.21 0.81 0.75 0.10 0.05 0.21
ニューヨーク 44.53 13.93 34.12 4.58 1.96 0.28 0.42 0.18
ミネソタ 75.72 16.95 5.33 1.31 0.16 0.24 0.17 0.12
全国平均 55.65 23.93 18.08 1.25 0.61 0.15 0.09 0.23

表3.12-17歳のすべての障害児(%)
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 16.90 55.28 24.98 1.05 0.01 0.11 0.01 1.66
ヴァージニア 32.81 38.12 25.35 1.22 0.83 0.89 0.39 0.38
カルフォルニア 40.98 29.43 24.50 1.03 2.69 0.27 0.42 0.67
ニューヨーク 41.34 12.73 33.24 7.33 2.09 1.06 1.64 0.55
ミネソタ 57.11 26.56 8.99 4.48 0.43 1.31 0.75 0.37
全国平均 36.24 33.78 24.35 2.46 1.31 0.61 0.44 0.81

表4.6-11歳のSPECIFIC LEARNIING DISABILITIES
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 13.48 76.19 10.22 0.04 0.00 0.00 0.00 0.07
ヴァージニア 31.54 50.37 17.80 0.02 0.21 0.01 0.01 0.05
カルフォルニア 56.25 22.06 21.18 0.18 0.25 0.00 0.01 0.07
ニューヨーク 47.71 18.44 32.67 0.41 0.56 0.01 0.14 0.05
ミネソタ 77.61 20.29 1.59 0.38 0.06 0.03 0.05 0.01
全国平均 44.96 38.66 15.92 0.19 0.20 0.01 0.02 0.05

表5.6-11歳のSPEECH OR LANGUAGE IMPAIRMENTS
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 92.50 6.14 1.32 0.01 0.00 0.00 0.00 0.03
ヴァージニア 97.74 0.64 1.33 0.04 0.10 0.00 0.00 0.15
カルフォルニア 91.55 3.54 4.81 0.04 0.03 0.00 0.00 0.03
ニューヨーク 61.81 10.19 26.55 0.70 0.60 0.02 0.10 0.03
ミネソタ 94.48 4.04 0.76 0.50 0.05 0.00 0.14 0.04
全国平均 90.39 5.52 3.76 0.16 0.10 0.00 0.01 0.06

表6.6-11歳のMENTAL RETARDATION
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 2.50 20.58 74.64 1.61 0.06 0.03 0.01 0.58
ヴァージニア 2.24 13.52 82.73 0.87 0.15 0.04 0.05 0.40
カルフォルニア 8.12 10.27 74.86 4.63 0.97 0.00 0.03 1.13
ニューヨーク 7.66 6.84 70.20 11.54 3.17 0.02 0.35 0.22
ミネソタ 30.62 44.84 21.11 3.03 0.05 0.00 0.02 0.32
全国平均 13.34 27.77 54.91 2.93 0.62 0.07 0.07 0.29

表7.6-11歳のEMOTIONAL DISTURBANCE
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 11.51 45.53 39.61 1.57 0.03 0.00 0.01 1.74
ヴァージニア 15.04 16.71 60.18 4.69 2.43 0.22 0.52 0.22
カルフォルニア 9.10 6.29 51.76 5.00 24.53 0.00 2.37 0.96
ニューヨーク 14.39 5.36 51.32 18.05 5.82 2.40 2.10 0.57
ミネソタ 63.99 14.88 14.23 4.31 0.81 0.74 0.79 0.26
全国平均 24.15 22.32 41.82 5.89 3.82 0.61 0.78 0.61

表8.6-11歳のMULTIPLE DISABILITIES
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 5.81 41.81 47.08 2.67 0.13 0.27 0.00 2.22
ヴァージニア 24.50 25.89 46.76 1.14 0.59 0.42 0.06 0.64
カルフォルニア 8.91 9.18 67.19 9.45 1.89 1.08 0.00 2.30
ニューヨーク 11.43 9.15 43.38 24.60 8.64 0.24 1.51 1.04
ミネソタ - - - - - - - -
全国平均 11.82 18.57 46.50 14.79 5.02 0.70 0.64 1.96

表9.6-11歳のHEARING IMPAIRMENTS
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 18.72 34.96 41.53 4.06 0.12 0.41 0.00 0.20
ヴァージニア 35.99 15.47 40.23 0.65 0.00 7.33 0.00 0.33
カルフォルニア 36.47 10.32 45.94 1.29 0.69 5.20 0.02 0.07
ニューヨーク 41.79 7.86 25.61 8.59 13.42 2.24 0.44 0.04
ミネソタ 65.03 13.29 9.56 6.29 0.12 5.59 0.00 0.12
全国平均 39.62 17.13 30.15 4.48 2.26 5.34 0.37 0.29

表10.6-11歳のORTHOPEDIC IMPAIRMENTS
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 18.57 43.46 33.33 1.05 0.03 0.00 0.00 3.56
ヴァージニア 51.89 14.48 32.96 0.22 0.00 0.00 0.00 0.45
カルフォルニア 30.18 9.91 47.22 10.74 0.49 0.00 0.00 1.46
ニューヨーク 63.86 9.19 21.33 2.28 2.84 0.11 0.06 0.33
ミネソタ 75.03

18.46

4.25 1.33 0.27 0.00 0.00 7.06
全国平均 45.42 19.07 29.39 3.56 0.99 0.04 0.03 1.50

表11.6-11歳のOTHER HEALTH IMPAIRMENTS
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 16.97 56.24 22.88 0.54 0.01 0.01 0.00 3.35
ヴァージニア 38.81 36.92 23.43 0.13 0.28 0.00 0.00 0.44
カルフォルニア 65.55 10.52 20.38 0.54 1.57 0.00 0.08 1.36
ニューヨーク 49.04 19.83 26.95 3.18 0.40 0.03 0.12 0.46
ミネソタ 74.99 20.32 3.53 0.51 0.14 0.00 0.14 0.37
全国平均 41.41 36.87 18.44 0.88 0.40 0.04 0.50 1.92

表12.6-11歳のVISUAL IMPAIRMENTS
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 22.86 43.47 28.44 1.08 0.00 2.52 0.00 1.62
ヴァージニア 76.37 16.48 3.85 0.00 0.00 3.30 0.00 0.00
カルフォルニア 41.18 14.67 38.82 2.43 0.65 1.30 0.00 0.95
ニューヨーク 50.47 6.31 24.30 7.92 9.80 0.54 0.27 0.40
ミネソタ 78.48 8.86 1.27 1.27 0.00 8.86 0.00 1.27
全国平均 50.41 19.42 19.74 3.50 1.89 3.91 0.51 0.61

表13.6-11歳のAUTISM
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 6.79 26.33 65.64 0.70 0.00 0.05 0.05 0.43
ヴァージニア 6.25 10.20 74.18 8.39 0.16 0.00 0.00 0.31
カルフォルニア 11.38 6.97 68.28 7.01 6.02 0.00 0.08 0.27
ニューヨーク 9.23 3.19 21.21 48.85 14.27 0.22 2.63 0.39
ミネソタ 47.68 25.00 25.71 1.43 0.18 0.00 0.00 0.00
全国平均 16.89 12.29 54.32 10.12 5.41 0.08 0.55 0.34

表14.6-11歳のDEAF-BLINDNESS
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 0.00 4.65 65.12 6.98 0.00 18.60 0.00 4.65
ヴァージニア 0.00 0.00 100.0 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
カルフォルニア 15.79 12.28 66.67 5.26 0.00 0.00 0.00 0.00
ニューヨーク 0.00 12.50 25.00 50.00 0.00 12.50 0.00 0.00
ミネソタ 50.00 20.00 10.00 0.00 10.00 10.00 0.00 0.00
全国平均 18.21 8.75 41.25 14.82 4.46 8.57 1.61 2.32

表15.6-11歳のTRAUMATIC BRAIN INJURY
STATE 通常
クラス
リソース
ルーム
分離
クラス
公立特殊教育機関 私立特殊教育機関 公立特殊学校
(寄宿制)
私立特殊学校
(寄宿制)
家庭・病院・訪問
テキサス 11.22 47.80 40.00 0.98 0.00 0.00 0.00 0.00
ヴァージニア 24.29 38.57 34.29 1.43 1.43 0.00 0.00 0.00
カルフォルニア 31.96 15.81 45.36 1.37 2.75 0.00 0.00 2.75
ニューヨーク 34.15 15.85 39.62 5.74 2.46 0.00 0.27 1.91
ミネソタ 58.57 28.57 8.57 1.43 0.00 0.00 0.00 2.86
全国平均 30.24 25.86 34.01 2.05 6.05 0.05 0.60 1.14

5.連邦政府教育省での面接調査のまとめ
 我々は連邦政府教育省において以下の項目に関して質問した。

1)特別な教育的ニーズのある子どものインクルージョンに関する国レベルの法律及び規則としてどのようなものがありますか。

 (1)IDEA(Individuals with Disabilities Education Act)
  1975年に「the Education for ALL Handicapped Children Act PL 94−142(全障害児教育法)」として成立し、その後の修正を経て、1990年に「Individuals with Disabilities Education Act (IDEA) PL1O1−476(個別障害者教育法)」と名称を変更した。1997年の最終修正を経て現在に至っている。
  ◇IDEAの要点
  (1)障害がある子どもとその家族に対して無償で適切な教育を保証すること
  (2)0歳から21歳までの障害のある子どもとその家族に対して適切な教育を提供すること
  (3)連邦政府は州政府と学区に対して援助すること(費用の40%を負担する)
  (4)最も制約の少ない教育環境を保証すること (LRE:Least Restrictive Environment)
  (5)個別教育計画の作成 (IEP:Individualized Education Program)
  (6)サービスの連続体を提供すること
  ◇最終修正の要点
  (1)障害のある児童生徒の学力を高めるため、IEPが通常のカリキュラムにより明確につながりをもち、学力達成目標を示し、全州及び学区の学力試験に障害児を含めること(試験を免除された障害児の代替試験は2000年7月までに実施すること)
  (2)両親の関与を高めること(これまではIEP会議への参加権のみがあったが、特殊教育を受ける適格性と措置の決定にも参加することが認められた。また、IEPに記された学力達成目標の進捗状況の報告義務が学校側に課せられた。)
  (3)通常学級でより適切な教育が受けられるよう財政措置がなされた。
  (4)通常教育を担当する教師もIEP会議のメンバーとなること。
  (5)州に教育に関するデータの収集と保障を義務づけた
  (6)障害児のさまざまなニーズに応えられるように補助金の執行法に多くの柔軟性が与えられた。
  (7)安全で規律ある学校にするため、障害児の規律違反に対する制裁に関する学校の裁量権、制限、義務が設けられた。
  (8)障害のある乳幼児のプログラム(0歳から2歳)への連邦政府補助金を増額した。
  (9)IEPにかかわる手続きを簡素化し、教師の事務量を減らした。

 (2)初等中等教育法の改正(アメリカ2000年の目標)
 1994年に、アメリカで教育改革が行われ、その関連で障害のある子どもの教育についても以下のような改革が行われた。
  ◇通常の教育の改革
  (1)就学前に学ぶ準備ができていること
  (2)高校の卒業率を高めること
  (3)4年、8年、12年の段階において主要教科の習熱度が決められた水準に達していること
  (4)算数と理科の学力を世界一にすること
  (5)すべてのアメリカ人が読み書きができること
  (6)学校が規律を回復すること
  (7)専門的技能を高めるアクセスをすること
  (8)保護者と学校が連携すること
  (9)障害児もこの考え方に含め、取り組みが行われ、通常の教育のカリキュラムに障害児もアクセスすることが求められ、学校に対して次の2つの対応が求められた。
   ・通常の教員が特殊教育に関わり、特殊教育の教員が通常の教育に関わること
   ・通常の学級でのCo-teachingの推進に繋がること

 (3)職業リハビリテーション法504条(障害児の教育へのアクセスの保証)
 1973年に障害のある子どもへの教育へのアクセスについて差別してはならないことを規定した。IDEAの対象とならない軽度の障害児に対する教育的サポートの根拠となった。しかし、補助金の対象とならないために、州政府や地域の負担増となった。

2)就学前(小学校へ入る前まで)の特別な教育的ニーズのある子どもについて、国レベルではどのような対応が行われていますか。

 義務教育は、障害のない子どもについてはK〜12学年(5歳〜17歳;幼稚園年長から高校3年)までとなっているが、3歳から5歳までの子どもの中で障害があると認められた場合は障害児教育のサービスを提供することを義務づけている。また、0歳から2歳までの障害のある子どもについては、子どもと家族に対して、個別家族サービス計画(individualized family services plan;IFSP)が、作成され、教育的サービスが提供されている。
 連邦政府は州政府に対して、以下のように早期教育にかかわる教育的サービスの提供を要求し、補助金の交付をしている。
 ◇義務教育
 ・障害のない子ども 5歳〜17歳(幼稚園年長〜高校3年)
 ・障害のある子ども 3歳〜5歳 IEPを作成
 ◇早期教育 0歳〜2歳 個別家族サービス計画(IFSP)を提供

早期教育に関わる政府補助金(1997年)
連邦政府補助金(1997〜1998)
0歳〜2歳 (IDEA PartC) 3.42億ドル
3歳〜4歳 (IDEA PartB) 3.72億ドル
3歳〜4歳 (IDEA PartB) 37.18億ドル

 ◇個別家族サービス計画(individualized family services plan; IFSP)について
 これらのサービスは、
 (1)障害のある幼児の発達を促し、発達遅滞の可能性を最小限に抑える。
 (2)障害のある幼児が学齢に達した後の、障害児教育や関連サービスの必要性を最小限に抑えることによって、教育費を減らす。
 (3)施設に入る障害者の数を最小限に抑え、社会で自立して生活ができる可能性を最大限に伸ばす。
 (4)障害のある幼児の特別なニーズを満たせるように、家族の援助能力を高めることなどをそのねらいとして、親を含む専門家判定委員会が作成した個別家族サービス計画(IFSP)に基づき、医療と教育評価、理学療法、言語治療、親のカウンセリングや訓練などのサービスを提供している。

3)通常学校における特別な教育的ニーズのある子どもについて、国レベルではどのような対応が行われていますか。

 障害のある子どもたちの教育は、IDEAによって保証されている。個々の子どもたちには、個別教育計画が作成され、この計画に基づいて教育が行われている。
 また、最も制約の少ない環境の中で教育を行うことが求められている。つまり、障害のある子どもの教育を通常の学級の中で行うための努力が払われている一方、障害のある子どもの教育は多様な教育的サービスを連続体として提供している。
 ◇IDEAによって以下のような教育が提供されている。
 (1)最も制約の少ない教育環境を保証すること(LRE: Least Restrictive Environment)
  限りなく通常の学級の中で教育を行うことを義務づけている。分離教育は極めて限定的にまた厳しく制限されている。
 (2)個別教育計画の作成(IEP: Individualized Education Program)
  障害のある子どもについて、その評価及び教育について、個別教育計画を作成し、必要な支援を行う。
 (3)サービスの連続体を提供すること(Continuumm of Service)
 保護者、本人のニーズに対応して、様々な支援内容が分離型教育から完全統合型まで連続して提供される。
 各学校ではこれらのサービスを提供するために、通常の学級の教師、特殊教育担当教師の他、次のような職員を配置又は巡回させている。学校ソーシャルワーカー、作業療法士(OT)、理学療法士(PT)、言語療法士(ST)、補助教員、心理学者、オージオロジスト。
 1999年、連邦政府は、これらの特殊教育に関わる教育的サービスの経費の約8%の費用を学区に対して交付している。

4)特殊学校における特別な教育的ニーズのある子どもについて、国レベルではどのような対応が行われていますか。

 障害のある子どもの教育が以下の原則に基づいているために、分離教育型の特殊学校の役割が相対的に少なくなりつつある。
・最も制約の少ない教育環境を保証すること (LRE: Least Restrictive Environment)
・個別教育計画の作成 (IEP: Indivldualized Education Prgram)
・サービスの連続体を提供すること (Continuumm of Service)
 しかし、次のような分離型の教育システムが存在し、障害のある子どもへの教育的サービスを提供している。
・州立の特殊学校及び学区で運営される特殊学校 (特殊教育センター)
・州立の盲聾学校
・リジョンの特殊学校
・学区で運営される特殊教育センター (学校併設型、分離型)

(文責 後上鐵夫 中澤惠江 松村勘由)
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