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本文 III 主要国における特別な教育的ニーズを有する子どもの指導について
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4.マンハッタン地区(Lighthouse International)
 Lighthouse International(以下LH)は、ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタンにある視覚障害をもつ乳児から老人までの全ての人々を対象としたサービス機関である。設立は1904年で、当時はニューヨークライトハウスとしてNY市近郊に在住する視覚障害者を対象としていた。その後1995年に、Lighthouse Internationalとして世界中の視覚障害の人々のための機関として活動していくことをミッションにかかげている。運営は、州からの補助、寄付金、および利用者の負担(日本の措置費に類似するものが個人保険、メディケアが負担をしている)によって行われている。主な事業内容は以下のものである。事業内容を分かりやすくするために一部、業務のタイトルが英文の直訳でないものがある。

1)low vision clinic/眼科医およぴオプトメトリスとによる診断・補助具などの処方・使用訓練

2)乳幼児早岳ntervention/0才から就学まえの乳幼児へのサポート

3)preschool/小学校入学まえ3年間の視覚障害および軽度の重複障害(知的・肢体不自由など)の障害幼児と健常児の統合教育を行っている。障害児と健常児のわりあいは50%程度づつ。スタッフは、特殊教育のトレーニングを受けた有資格者・PT・OT・ST・看護婦がいる。

4)リハビリテーション/(ADL、歩行、点字、コンピュータなどのトレーニングを行う。それぞれ専門のスタッフが各利用者のニーズに応じて対応している。

6)音楽教室/子供から成人までの視覚障害を対象とした音楽教室。ピアノ・弦楽器・管楽器などそれぞれ専門のインストラクターによってレッスンが行われる。

7)ダンス教室/視覚障害者がみやすいミラーが設置された練習施設がよういされている。

8)研究施設/視覚障害に関する視覚基礎研究・心理学・社会学研究が行われている。また、施設全体の事業を評価する研究をおこなっている。

9)図書館/点字・音声・拡大文字の図書の閲覧・貸し出し(郵送可)をおこなっている。

10)対面朗読施設/利用者のニーズに応じた朗読サービス。本および専門書の他に個人宛にきた手紙なども朗読する。朗読は、ボランティアによって行われている。

11)セミナー・教育部門/視覚障害に関係した職業(眼科医・オプトメトリスト・歩行訓練士・ソーシャルワーカーなど)に従事するひとを対象としたセミナーを随時開講(有料)している。また、海外との交流を積極的に行い支援をしている。


 上記のなかで、日本の類似施設(日本ライトハウス・大阪など)と大きく違っている点は以下の点である。第一に、日本の類似施設が成人のリハビリテーション施設の位置付けとなっているが、LHは乳幼児から老人までを利用対象とし幅広い年齢層に対応している点である。特に、乳児への早岳ntervention、Preschool、音楽教室、などは乳幼児から学齢期までの子供達をカバーしているものである。また、学齢期の視覚障害児を対象にサマースクールを開催している日本では、この年齢層は学校教育が対応する年齢となっており一般に学校外の施設では主要な事業の1つとなっていない。第2に、医師およびオプトメトリストによる専門の医療施設を持っていることである。日本では一般にリハビリテーション施設や相談機関では医療施設をもっていないことから医療情報および医療との連携が困難になっている。LHでは、全ての利用者がlowvision clinicにおいて視機能の評価をうけ、客観的な評価に基づいた補助具の処方と訓練が同一の場所で行われている。第3に、セミナーをひらき専門家の養成をおこなっていることである。セミナーは有料であるが、その内容にともなった質の高いものを提供している。講師はLHの職員(P.H.D、または修士号所有者、専門家)と外部の提携大学教授などによって行われている。第4に、研究施設をもっていることである。研究部門は、20数名のスタッフをそろえ視覚障害に関係した研究をおこなっている。それらの研究結果は、LHのサービスヘ反映されることになっている。このことはサービスの開発と提供が同一の施設でおこなわれていることになり、より先進的なサービスの提供を目指す機関としての姿勢がみられる。
 これら、4点のうち第一にあげた対象年齢に乳幼児および学齢期までがふくまれていることは、統合教育を学校教育のそとから支援する社会資源の1つとなっていると考えられる。日本では、現在、LHのもっているほとんどの機能(歩行訓練、ADL、余暇活動など)は学齢期の児童については特殊教育諸学校がになっている。今後、統合教育が推進された場合にはこれらの学校が持っているいくつかの機能をこうした社会資源によって補完する可能性も検討し視野にいれてくことも考えられるだろう。

(文責 新井千賀子 肥後祥治 千田耕基 高為重)
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