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本文 III 主要国における特別な教育的ニーズを有する子どもの指導について
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3.ボローニヤ県教育委員会における聞き取り
 ボローニヤ県教育委員会では、教育委員長Giorgio TEMPERILLI氏、同副委員長Paolo MARCHESELLI氏、同監督官Giuliano FERLINI氏、高等学校校長Cosimo ROMANO氏と面会し、聞き取り調査をした。

1)支援教師の問題
 法的に支援教師の人数は、全体の児童数138名に対して1名の割合と規定されている。これはインクルーシブな教育の考え方を浸透させるための考え方である。支援教師は1名で4名までの障害児を担当できることになっているが、実際には4名を担当することはない。担当する児童数は児童生徒の障害の程度や財政的状況にも影響される。
 3月から4月にかけて、各学校から支援教師の配置の申し込みがあり、9月の新学期に合わせて県教育委員会が支援教師の予算を確保する。
 支援教師の養成については、現在は大学で養成が行われている。すべての大学にコースが設定されているわけではない。それとは公教育省の指導で別に県レベルで2年間の研修を行っている。支援教師は絶対的に不足している。

2)児童生徒の卒業資格の問題
 卒業資格の取得とは、児童生徒にどれだけ学力がついたかという評価の問題である。評価は5段階で最も低い評価の場合には卒業が認められないことになっているが、小学校段階では99%に小学校卒業資格が与えられている。留年は1〜2年であるが、現在は実際にはない。中等教育の修了資格は全ての生徒が獲得できるものではなく落第がある。障害のある生徒には特別に配慮した試験を用意して対応している。

3)後期中等教育の問題
 1987年から高等教育でも障害のある生徒の受け入れが始まった。1992年の社会的インテグレーションに関する法律は学校だけではなく幼児から大人までが対象となっている。これにより各県にインテグレーションに対応する部署が置かれ、学校には評議会がおかれた。家族、医療、福祉が連携し、全体の計画が作られるようになった。この計画では、学校での活動、個別の指導計画、人生(人間形成)全体の計画、それに基づいて、卒業資格が取れるかの判断もされる。卒業資格が取得できない場合は在籍期間と在籍中の活動内容が証明される。インクルーシブな教育が高等教育まで進んだことで、学習の達成度の面などで課題点も増えてきている。

4)連携の問題
 ボローニヤ県では、特別なニーズを必要とする児童生徒の教育について、教育機関とUSLを中心とする保健医療機関との連携が実現している。とくにUSLがコーディネータとしての機能をしっかり果たしている。しかし、イタリア全土についてみると、教師、医師、行政担当者などの協力関係がどこでも同一であるというわけではない様である。県や国レベルで教員をどれだけ配置するかによって変わってくる。また、学校、保健機関、役所それぞれが権限持っているが、その対応は県や市によって異なっている。一般的な傾向として、南部より北部の方がきめ細かく対処しているといわれている。

5)障害の認定とインテグレーションの範囲
 イタリアでは、6歳から14歳のうち、約2%が障害児として認定されている(表2)。境界線レベルの認定は難しいが、配慮の必要性について援助の根拠が示される。中学へ行くとその率が増加することが問題である。
 社会適応の難しい子どもや医療的ケアの必要な子どもについても、どんな困難があっても通常の学校に就学することをめざす。これを実現化していくことにはコストと労力がかかる。そのため、障害児の在籍する学級では、個に応じた指導をするために児童定数を20名までとしている。


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