盲学校小学部・中学部学習指導要領 一般編(昭和32年度版)

目 次
まえがき
第1章 盲学校の目標と教育課程
1 盲学校の目的・目標
(1) 盲学校の目的
(2) 盲学校における教育の目標
2 盲学校における教育課程
(1) 盲学校における教育課程の性格
(2) 教科および教科以外の活動または特別教育活動
第2章 小学部の教育課程とその編成
1 小学部の教育の目標
2 教科と教科以外の活動
(1) 教科
(2) 教科以外の活動
(3) 指導時間数
3 学校における教育課程の編成
第3章 中学部の教育課程とその編成
1 中学部の教育の目標
2 教科と特別教育活動
(1) 教科
(2) 特別教育活動
(3) 指導時間数
3 学校における教育課程の編成

まえがき

 この盲学校小学部・中学部学習指導要領一般編は,盲学校小学部・中学部における教育課程の基準を示すものであって,昭和32年度から実施されるものである。

 この作成にあたって,特に意を用いた点はおよそ次のとおりである。

 1 教育の目標は小学校・中学校における教育の目標に準ずるが,それは盲児童・生徒の視力障害との関運において理解され,その目標の達成にあたっては,盲児童・生徒の特性と発達に応じて必要な方法をとるべきこと。

 2 盲児童・生徒には,視力障害の程度,失明の時期,入学年齢,教育歴等を異にしているものが多いから,教育課程の基準に弾力性をもたせ,各学校の必要に応じうること。

 3 各教科については,目標と留意事項をあげるにとどめ,教科の内容等については,当分の間,小学校および中学校学習指導要領各教科編の基準に準ずること。

 なお,この作成にあたっては,文部省に設けられた教材等調査研究会盲学校小委員会の審議を経た。この間の委員の協力に対し,謝意を表する。

第1章 盲学校の目標と教育課程

1 盲学校の目的・目標

(1) 盲学校の目的

盲者に対する教育の目的は,教育基本法の定めるところによらなければならない。

教育基本法第一条(教育の目的)教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

盲者は視力に障害があり,心身の発達上,種々の遅滞・偏向を招く傾向がある。このことから,広く,学習上に多くの困難をもっている。したがって,その教育については,環境の調整と指導上の配慮が特に必要である。

そこで,以上のような必要を満たすために,都道府県はその区域内にある学齢児童・生徒のうち,盲者を就学させるに必要な盲学校を設置しなければならないこと,および盲学校には小学部・中学部を置かなければならないこと,また盲学校には幼稚部・高等部を置くことができることを学校教育法に規定されている。

盲学校の目的は,学校教育法に次のように定められている。

学校教育法第七十一条 盲学校、聾学校又は養護学校は、夫々盲者、聾者又は精神薄弱、身体不自由その他心身に故障のある者に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施し、併せてその欠陥を補うために、必要な知識技能を援けることを目的とする。

すなわち,盲学校の幼稚部・小学部・中学部および高等部の目的は,幼稚園・小学校・中学校および高等学校のそれぞれの目的に対応し,その教育については,前述のように視力障害およびそれに由来する種々の困難や欠陥に応じて,特別の配慮が加えられなければならないことを示している。

(2) 盲学校における教育の目標

盲学校各部における教育の目標は,第2章以下に示すとおり幼稚園・小学校・中学校および高等学校におけるそれぞれの教育の目標に準ずるが,盲学校教育の場合には,その目標は普通の幼児・児童・生徒の場合と違って,すべて視力障害との関連において理解され,取り扱われなければならない。

そこで,視力の障害とそれに由来するいろいろな困難に伴う,盲者の特性を次の四つの面に分けて,盲学校における教育の目標との関連において考えてみる。

1 身体的発達と調整

視力の障害は盲者の行動をいちじるしく制限し,この行動の制限が身体の発達に大きな影響を及ぼすことになる。すなわち,動作は不活発で姿勢も悪く,身体の抵抗力が弱まって,虚弱・鈍感になりやすく,運動諸器官の調整も困難になる。特に全盲者は歩行に著しい制限を受けている。盲児童・生徒の行動の調整と安全のためには特に留意しなければならない。

2 社会的適応

視力の障害とそれに伴う行動の制限は,かれらの社会的関心や態度に影響を与える。すなわち自然に他人の助力に依存するようになり,盲目ということからくる強い劣等感をもったり,情緒に不安定をきたしたりして,他人に見られるのをきらい,家にこもり,人との交際を避けがちの傾向を生ずる。したがって盲児童・生徒の社会性の育成には特に留意し,かれらの円満な人格の形成をはかり,明朗快活な気風を養わなければならない。

3 知識技能の習得

盲者は,知識の重要な窓である視覚がとざされているから,視覚による経験によって知識・理解を得ることが当然制限される。特に明暗・色彩・距離・大きさなどの視空間概念を,直接はあくし理解することは困難である。したがって盲児童・生徒に対しては視覚以外の諸感覚を通して事象をできるだけ具体的にはあくし,理解させるようにしなければならない。

4 職業的能力の自覚

盲者は社会生活に対して大きな不安をもっている。特に,将来の自活能力に対する不安と職業に対する劣等感をもつことが多い。それは,かれらの社会性の不足,職業に関する専門的能力の習得の困難,またかれらの職業が社会的にいちじるしく制限されている事情などによる。このようなことは,また,かれらの人格の円満な調和的発達を阻害している。

ゆえに盲学校においては職業的陶やを重視することが特に必要であり,それによってかれらに自活能力の自覚を与え,生活に対する不安を一掃し,将来に対する希望をもたせるようにしなければならない。

このような盲児童・生徒の特性に基いて,盲学校教育の目標を理解し取り扱うために,特に留意しなければならないことを指摘すれば,次のとおりである。

○自己の視力障害に対して正しく認識し,積極的な障害克服の精神と明るい生活態度を養う。

○視力障害から生ずる劣等感を克服し,豊かな情操と円満な人格の完成を目ざす。

○常に健全な人生観をもつようにし,豊かな社会性を身につけさせる。

○視力の障害を克服し,自主的に進んで物事を学ぼうとする強い意欲と正しい態度を養う。

○点字の習得,その他必要な手段によって経験を広げていくようにする。

○個性に即した進路を選択し,健全な職業生活を営む能力と自信をもたせる。

○交通の安全,危険の防止などについて正しい習慣を養う。

2 盲学校における教育課程

(1) 盲学校における教育課程の性格

盲学校における幼稚部・小学部・中学部および高等部の各部の教育課程は,その目的の実現と目標の達成を目ざして,盲者の特性にもとづき,それぞれの段階に応じて編成し展開しなければならない。

特に次の諸点については,じゅうぶんな配慮をすることが必要である。

○各部の教育課程は,互に関連をもち,また発展的系統をもつようにしなければならない。

○幼児・児童・生徒の個人差はもとよりのこと,視力の程度,失明の時期,入学年齢などの条件を考慮して,個性の必要に応じうるようにしなければならない。

○職業に必要な知識・技能・態度を身につけさせ,将来の進路に応じうるようにしなければならない。

(2) 教科および教科以外の活動または特別教育活動

小学部・中学部・高等部の各部の教育の目標に到達するためには,各方面にわたる学習経験を組織し,計画的,組織的に学習させる必要がある。

このような経験の組織が教科である。各教科は,それぞれの目標に従い,各部の目標に含まれるもろもろの経験の各領域を分担しているが,それらは,互に密接な関係を保って,全体としての教育目標への到達を目ざすものである。

なお,教育の目標のすべてを,教科の学習だけでじゅうぶんに到達することは困難である。それゆえ,学校は教科の学習以外に,教科以外の活動あるいは特別教育活動の時間を設け,児童・生徒に,個人的,社会的なさまざまな経験を豊かにする機会を与える必要がある。

第2章 小学部の教育課程とその編成

1 小学部の教育の目標

小学部においては,盲児童の心身の発達に応じて,初等普通教育を施し,その教育の目標は,小学校における教育の目標に準ずるものとする。

小学校における教育の目標は,学校教育法第十八条において、次のように定められている。

一 学校内外の社会生活の経験に基き、人間相互の関係について正しい理解と協同、自主および自律の精神を養うこと。

二 郷土及び国家の現状と伝統について、正しい理解に導き、進んで国際協調の精神を養うこと。

三 日常生活に必要な衣、食、住、産業等について、基礎的な理解と技能を養うこと。

四 日常生活に必要な国語を、正しく理解し、使用する能力を養うこと。

五 日常生活に必要な数量的な関係を、正しく理解し、処理する能力を養うこと。

六 日常生活における自然現象を科学的に観察し、処理する能力を養うこと。

七 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養い、心身の調和的発達を図ること。

八 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸等について、基礎的な理解と技能を養うこと。

小学部の教育課程は,この目標の達成を目ざし,この時期における盲児童の成長発達に即し前章に示すところに留意して編成され展開されなければならない。

2 教科と教科以外の活動

(1) 教 科

小学部の教科は,国語・社会・算数・理科・音楽・図画工作・家庭および体育を基準とする。

盲学校小学部における各教科の目標は,小学校における各教科の目標に準ずるものであるが,この目標を達成するためには盲児童の特性にかんがみて留意すべき点が多い。以下,小学校の各教科の目標および盲学校小学部における留意事項を示す。

 

国語科

国語科は,日常生活に必要な国語を,正しくかつ効果的に使用する能力と態度を養うための教科である。日常生活におけることばの役割から考えて,国語科の一般目標は次のとおり定められる。小学校においては,児童の発達に応じてこの目標の達成を目ざす。

1 自分に必要な知識を求めたり、情報を得ていくために、他人の話に耳を傾ける習慣と態度を養い、技能と能力をみがく。

2 自分の意志を伝えて他人を動かすために、生き生きとした話をしようとする習慣と態度を養い、技能と能力をみがく。

3 知識を求めたり、情報を得たりするため、経験を広めるため、娯楽と鑑賞のために広く読書しようとする習慣と態度を養い、技能と能力をみがく。

4 自分の考えをまとめたり、他人に訴えたりするために、はっきりと、正しく、わかりやすく、独創的に書こうとする習慣と態度を養い、技能と能力をみがく。

以上のように,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことの習慣と態度を養い,技能と能力をみがくためには,ことばについての知識や理解を高めることはいうまでもなく,また鑑賞の力を養うことが必要である。

この目標を達成するために,盲学校ではさらに次の点に留意しなければならない。

○盲児童は生活経験が豊かでないために語いの数も少なく,また視力の障害のために意味を理解しにくいことばが多い。

この欠陥を補うために,あらゆる機会をとらえてことばの意味がじゅうぶん理解できるように指導し,また語いを豊富にしてやる。

○点字の習得は特に必要であるから,効果的な指導によって点字による表現や理解がじゅぶんできるようにさせる。

○弱視児童については,その視力の程度に応じて,日常特に使用される文字についての墨字の指導を行うことが望ましい。

 

社会科

社会科は,児童に社会生活を正しく理解させ,同時に社会の進展に貢献する態度や能力を身につけさせるための教科である。

小学校における社会科の目標は次のとおりである。

1 自己および他人の人格やそれぞれの個性を重んずべきことを理解させ,自主的自律的な生活態度を養う。

2 家庭・学校・市町村・国その他いろいろな社会集団につき,集団内における人と人との相互関係や,集団と個人,集団と集団との関係について理解させ,集団生活への適応とその改善に役だつ態度や能力,ならびに国際協調の精神などを養う。

3 生産・消費・交通・通信・生命財産の保全・厚生慰安・教育・文化・政治などの社会機能の働きや,その相互の関係について基本的なことがらを理解させ,社会的な協同活動に積極的に参加する態度や能力を養う。

4 人間生活が自然環境と密接な関係をもって営まれていることを理解させ,自然環境に適応し,それを利用する態度や能力を養う。

5 社会的な制度・施設・慣習などのありさまと,その発達について理解させ,これに適応し,これを改善していく態度や能力を養う。

この目標を達成するために,盲学校では,さらに次の点に留意しなければならない。

○盲児童は視力の障害のために社会性の発達に遅滞や偏向を招く。この欠陥を補い,円満な人間関係を結び,集団生活への適応についての態度と能力が養われるよう,適切な活動を用意する。

○盲児童は視力の障害のため経験範囲が狭いから,これらの欠陥を補い,社会機能の働きやその発達,自然環境との関係などについて理解させるためにじゅうぶんな経験を与えるよう,特別な配慮をする。

 

算数科

算数科は,児童が数量的思考を用いて,自分の生活の向上をはかっていく教科である。

小学校における算数科の目標は次のとおりである。

(1) 算数を,学校内外の社会生活において,有効に用いるのに役だつ豊かな経験をもたせるとともに,物事を,数量関係から見て,考察処理する能力を伸ばし,算数を用いて,めいめいの思考や行為を改善し続けてやまない傾向を伸ばす。

(2) 数学的な内容についての理解を伸ばし,これを用いて数量関係を考察または処理する能力を伸ばすとともに,さらに,数量関係をいっそう手ぎわよく処理しようとして,くふうする傾向を伸ばす。

この目標を達成するために,盲学校ではさらに次の点に留意しなければならない。

○図形や計量に関する指導については,視力の障害を補うための特別の教具をくふうすることなどにより,その経験の範囲を広げるように配慮する。

○計算の方法としては珠算と暗算によることが多いから,これについて特に力を注ぐ。

 

理 科

理科は,科学的な思考や技能によって,生活を高めていくことを目ざす教科である。

小学校における理科は次のことを児童の身につけさせることを目標とする。

(1) 自然の環境についての興味を拡げる。

(2) 科学的合理的なしかたで,日常生活の責任や仕事を処理することができる。

(3) 生命を尊重し,健康で安全な生活を行う。

(4) 自然科学の近代生活に対する貢献や使命を理解する。

(5) 自然の美しさ,調和や恩恵を知る。

(6) 科学的な方法を会得して,それを自然の環境に起る問題を解決するのに役だたせる。

(7) 基礎になる科学の理法を見いだし,これをわきまえて,新しく当面したことを理解したり,新しいものを作り出したりすることができる。

この目標を達成するために,盲学校ではさらに次の点に留意しなければならない。

○観察実験などの学習活動をなるべく多く用意し,その際には視覚以外の感覚の働きによって具体的な知識・理解の習得と科学的な見かた考えかたを養うよう,特別のくふうと配慮とを要する。

○盲児童は,空間概念,光に関する現象の理解が特に困難である。これらに関する教材の選択,配列やその扱いには特別の配慮とくふうを要する。

○機械・器具・電気・薬品等の取扱については特別なくふうによって危険予防の能力と習慣を養うことに特に意を用いる。

 

音楽科

音楽科は音楽経験を通じて,深い美的情操と豊かな人間性とを養い,円満な人格の発達をはかり,好ましい社会人としての教養を高める為の教科である。音楽科の一般目標は次のとおりである。小学校においては児童の発達に応じて,この目標の達成を目ざす。

1 いろいろな音楽経験を積むことによって,いっそう音楽を愛するように育てる。

2 よい音楽を鑑賞し,音楽の鑑賞力を高める。

3 音楽の表現技能を養い,音楽経験を通しての創造的な自己表現を奨励する。

4 学習経験を豊かにするために必要な,音楽に関する知識を得させる。

5 音楽を理解したり感じとる力を,各個人の能力に応じて高める。

6 音楽経験の喜びや楽しさを,家庭や地域社会の生活にまで広げる。

7 音楽という世界共通語を通して,他の国々に対するいっそうよい理解を深める。

この目標を達成するために,盲学校ではさらに次の点に留意しなければならない。

○聴覚は盲児童のあらゆる行動のよりどころになるものであるから,あらゆる機会をとらえて聴覚訓練をすることが必要であるが,特に音楽を通じて聴覚を鋭敏にするように指導する。

○盲児童はうるおいのある情緒に欠けやすい。音楽によって盲児童の美的情操と創造力を伸ばすための経験を豊富に与えるようにする。

○点字楽譜の読解,表現に対する基礎的な技能の習熟に努める。

図画工作科

図画工作科は,造形的な表現活動や鑑賞活動を通して,日常生活に必要な衣・食・住・産業についての基礎的な理解と技能とを与え,生活を明るく豊かに営む能力・態度・習慣などを養うことを目ざす。

小学校における図画工作科の目標は次のとおりである。

(1) 個人完成への助けとして。

a 絵や図をかいたり,意匠を創案したり,物を作ったりするような造形的創造活動を通して,生活経験を豊富にし,自己の興味・適性・能力などをできるだけ発達させる。

b 実用品や美術品の価値を判断する初歩的な能力を発達させる。

c 造形品を有効に使用することに対する関心を高め,初歩的な技能を発達させる。

(2) 社会人および公民としての完成への助けとして。

a 造形的な創造活動,造形品の正しい選択能力,造形品の使用能力などを,家庭生活のために役だてることの興味を高め,技能を発達させる。

b 造形的な創造活動,造形品の選択能力,造形品の使用能力などを,学校生活のために役だてることの興味を高め,技能を発達させる。

c 造形的な創造活動,造形品の選択能力,造形品の使用能力などを,社会生活の改善,美化に役だてるための関心を高め,いくらかの技能を養う。

d 人間の造形活動の文化的価値と経済的価値についての,初歩的な理解を得させる。

e 美的情操を深め,社会生活に必要な好ましい態度や習慣を養う。

この目標を達成するために,盲学佼ではさらに次の点に留意しなければならない。

○図画工作科における活動は工作に関するものを主とし,視力障害の程度に応じて,簡易な絵画の鑑賞や図案などを加えることが望ましい。

○事物を常に全体的な関係において理解させるように留意し,立体的な物も正しくはあくしうる能力を養う。

○教具を豊富に用意して触覚の鋭敏化をはかる。

 

家庭科

家庭科は,家庭生活に役だつ仕事を中心として,家庭生活に必要な知識・理解・技能などを養い,家庭生活を充実発展させようとするための教科である。

小学校における家庭科は次のことを児童の身につけさせることを目標とする。

1.家庭の構造と機能の大要を知り,家庭生活が個人および社会に対してもつ意義を理解して,家庭を構成する一員としての責任を自覚し,進んでそれを果そうとする。

2.家庭における人間関係に適応するために必要な態度や行動を習得し,人間尊重の立場から,互に敬愛し力を合わせて,明るく,あたたかい家庭生活を営もうとする。

3.被服・食物・住居などについて,その役割を理解し,日常必要な初歩の知識・技能・態度を身につけて,家庭生活をよりよくしようとする。

4.労力・時間・物資・金銭をたいせつにし,計画的に使用して,家庭生活をいっそう合理化しようとする。

5.家庭における休養や娯楽の意義を理解し,その方法を反省くふうして,いっそう豊かな楽しい家庭生活にしようとする。

この目標を達成するために,盲学佼ではさらに次の点に留意しなければならない。

○視力の障害を克服し,積極的に家族の一員として,家庭生活に適応するための正しい心構えや態度を身につけさせる。

○起居動作,その他生活技術の基礎について,視覚以外の感覚を通して習得し,生活を安全に能率的に営みうる能力と習慣を身につけさせる。

 

体育科

体育科は,健康の保持増進に努め,病気や危険から自己や他人を安全に守り,精神的にも明朗健全であって,かつ好ましい社会態度やレクリエーション活動の基礎を身につけさせることを目ざす教科である。

体育科の一般目標は次のとおりである。小学校においては,児童の発達に応じて,この目標の達成を目ざす。

(1) 身体の正常な発達を助け,活動力を高める。

(2) 身体活動を通して民主的生活態度を育てる。

(3) 各種の身体活動をレクリエーションとして正しく活用することができる。

この目標を達成するために,盲学校ではさらに次の点に留意しなければならない。

○視力障害による運動の障害を補正し,視覚以外の感覚や,運動機能の発達を助け,活発な身体活動の基礎的な能力の向上に努める。

○視力障害からくる不必要な緊張を取り除き,正しい姿勢や歩行ができるようにする。

○歩行の安全,杖の使用,各種の傷害防止,危険物に対処する態度や能力を養う。

○集団活動を通して,人間関係における協力と責任を自覚させ,健康で明るい積極的な精神を養う。

○盲児童の生活には適切なレクリエーションが乏しいので,スポーツによる健全な余暇利用の態度や技能が養われるよう留意する。

(2)教科以外の活動

教科以外の活動は,教科としては組織されないが,小学部における教育の目標の達成に寄与する有効な学習活動で,教育課程の一部として,教科の指導以外に設けて指導を行うものである。

教科以外の活動においては,一般的に次の諸目標に重点がおかれる。

1 民主的な生活について望ましい態度と習慣を養い,公民的資質を向上させる。

2 健康についてよい習慣を育て,個人的および社会的健康に留意させるとともに,不慮の危険を防止し,これに対処する能力と習慣を養う。

3 個性に即して健全な趣味を育て,余暇の活用などに対する望ましい態度や技能を養う。

その活動の領域は,広範囲にわたるが,年間を通じて計画的継続的に指導すべき活動としては,学級会活動,児童会活動およびクラブ活動がある。

これらの活動についてはいずれも児童の生活の実態とその必要や能力に応じ,また学年の発達段階と学級の性質その他児童相互の集団構成などにもじゅうぶんな考慮をはらい,児童の自発的な活動が健全に行われるように計画し指導しなければならない。

教科以外の活動の指導にさいしては,教科との関連をもじゅうぶん考慮し,日常生活の実践に役だつ指導資料などを豊富に与え,自発的な活動の場を構成して社会的な経験領域を拡充させることに努めなければならない。

(3) 指導時間数

小学部各学年における教科と教科以外の活動の指導時間数および総指導時間数は次の表のとおりに定める。

 

教科と教科以外の活動の指導時間数および総指導時間数

\学年 1 2 3 4 5 6
教科 国語 228〜304 228〜304 228〜304 228〜304 228〜304 228〜304
(6〜8) (6〜8) (6〜8) (6〜8) (6〜8) (6〜8)
社会 114〜152 114〜190 152〜190 152〜190 152〜228 152〜228
(3〜4) (3〜5) (4〜5) (4〜5) (4〜6) (4〜6)
算数 114〜152 152〜190 152〜190 152〜228 152〜228 152〜228
(3〜4) (4〜5) (4〜5) (4〜6) (4〜6) (4〜6)
理科 76〜114 76〜114 114〜152 114〜152 114〜152 114〜152
(2〜3) (2〜3) (3〜4) (3〜4) (3〜4) (3〜4)
音楽 76〜114 76〜114 76〜114 76〜114 76〜114 76〜114
(2〜3) (2〜3) (2〜3) (2〜3) (2〜3) (2〜3)
図画 76〜114 76〜114 76〜114 76〜114 76〜114 76〜114
工作 (2〜3) (2〜3) (2〜3) (2〜3) (2〜3) (2〜3)
家庭 ――― ――― ――― ――― 76〜114 76〜114
        (2〜3) (2〜3)
体育 114〜152 114〜152 114〜152 114〜152 114〜152 114〜152
(3〜4) (3〜4) (3〜4) (3〜4) (3〜4) (3〜4)
教科以外の活動 38〜76 38〜76 38〜76 76〜114 76〜114 76〜114
(1〜2) (1〜2) (1〜2) (2〜3) (2〜3) (2〜3)
総指導時間数 836〜912 874〜950 950〜1064 988〜1102 1064〜1216 1064〜1216
(22〜24) (23〜25) (25〜28) (26〜29) (28〜32) (28〜32)

備考

(1) この表は,教科および教科以外の活動に必要な年間の最低および最高の指導時間数ならびに総指導時間数を示す。また,あわせて1年38週の指導を行ったとき,1週当りの平均指導時間数を()の中に示す。

(2) この表に示された時間数は,すべて50分をもって1単位時間とする。

ただし,これは指導を50分ごとにくぎるべきであるという意味ではない。

(3) 各教科および教科以外の活動の指導時間の間に適当な休憩および昼食の時間を設ける必要があるが,これらの時間は,この表に示す時間数には含まれていない。

(4) 実際の指導にあたっては,教科の統合をはかるなど,実情に即して指導する場合においても,この表に示された時間数をもととしなければならない。

(5) 私立学校においては,この表に示された教科および教科以外の活動のほか,その必要によって宗教に関する教科を設けることができる。

この場合,総指導時間数は,この表に示された時間数の範囲をこえてはならない。

3 学校における教育課経の編成

学校における教育課程は,上に示したところに従がい,次に述べる事項に留意して,具体的に編成されなければならない。

(1) 同じ学年あるいは,学級に在籍する児童の間にも,個性と発達の差はもとより,視力の程度,失明の時期に相違があり,またその中には年齢や教育歴を異にするものもある。学校においては,個々の児童の特性についての適確な資料に基き,できうる限り個々の児童の必要に応ずることのできる教育課程を編成しなければならない。

特に,はなはだしい遅滞を示すものや、心身に他の障害をあわせて持つものについては,その指導上特別な考慮を払うように努めなければならない。

(2) 児童の望ましい経験を発展させるために,教科間の連関をじゅうぶん考慮し,内容の重複や間げきを避け,身体的,知的,社会的,情緒的な経験が,全体としてつりあいがとれて学習が行われるよう配慮しなければならない。

(3) 1週間あるいは1日の指導計画においては,いろいろな活動を組み合わせ,学習に変化と調和を保って指導ができるよう,教科ならびに教科以外の活動の配列と配当時間数を考慮し,児童の充実した学習が積極的に行われるように配慮する一方,児童の負担が過重に陥らぬように注意しなければならない。

(4) 低学年の児童の学習は,心身の発達に即して,教科の区別にあまり強くとらわれることなく,いくつかの教科を統合して指導するほうが効果的である場合などがある。その場合も,統合された各教科の目標はじゅうぶんに達成されるよう,周到な計画のもとに指導を行わなければならない。

(5) 道徳教育・健康教育については,教育課程の全体計画において重視しなければならない。その指導は各教科および教科以外の活動において,互に関連をもって,あらゆる機会をとらえ,あらゆる活動を通じて行われることが望ましい。

(6) 教育課程は,それぞれの学年の児童の発達段階に即し,小学部全体として発展的系統的な組織をもって編成されなければならない。小・中学部の教育課程は,一貫性をもって編成されることが必要である。幼稚部との関係も同様である。

(7) 学校における職員組織,学級編成および校舎・運動場・学校図書館・寄宿舎等の施設ならびに実験実習,給食その他の設備をじゅうぶんに整備することは,すぐれた教育課程の編成に欠くことのできないものである。しかし,教育課程の編成にあたっては,これら学校における環境の条件を吟味し,それに即して有効な学習が行われるように留意しなければならない。

特に,視力の障害による学習上の困難を補うような教材教具の活用によって,学習の効果をじゅうぶんにあげるよう配慮することが望ましい。

(8) 地域の自然的,社会的環境に即して教育課程は編成されなければならないが,一方地域の人々の盲教育に対する理解を深め,その協力を得ることがたいせつである。とかく校内にひきこもりがちな児童の経験を広げ,社会性を伸ばすための効果的な学習が行われるためにも,地域との関係は重視しなければならない。

(9) 生活指導の機会は,教科および教科以外の活動においても多く見いだされるが,その指導の徹底をはかるよう教育課程の編成においても留意しなければならない。

家庭との関係はもとより,寄宿舎生活をする児童については寄宿舎における指導,また通学児童については通学途上の安全指導などの関係は,教育課程のうえでも留意する。

(10) 教育課程は,学校における実践によって絶えず評価され,所期の教育目標がどの程度達成されたかを確かめなければならない。これに基いて教育課程の改善について適切な措置がとられることがたいせつである。

第3章 中学部の教育課程とその編成

1 中学部の教育の目標

中学部においては,小学部における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて,中等普通教育を施し,その教育の目標は中学校における教育の目標に準ずるものとする。中学校における教育の目標は,学校教育法第三十六条において,次のように定められている。

一 小学校における教育の目標をなお充分に達成して、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。

二 社会に必要な職業についての基礎的な知識と技能、動労を重んずる態度および個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。

三 学校内外における社会的活動を促進し、その感情を正しく導き、公正な判断を養うこと。

中学部の教育課程は,この目標達成を目ざし,この時期における盲生徒の成長発達に即して編成され展開されなければならない。

2 教科と特別教育活動

(1) 教 科

中学部の教科は,これを必修教科と選択教科に分ける。必修教科は,国語・社会・数学・理科・音楽・図画工作・保健体育および職業・家庭を基準とし,選択教科は,外国語および職業・家庭を基準とする。

盲学校中学部における各教科の目標は,中学校における各教科の目標に準ずるものであるが,この目標を達成するためには盲生徒の特性にかんがみて留意すべき点が多い。以下,中学校の各教科の目標および留意事項を示す。

 

国語科

中学部における国語科では,小学部国語科の基礎の上に立って盲生徒の発達と特性に応じて,国語科の一般目標をさらに高い程度に,またいっそう深く達成するようにしなければならない。

 

社会科

中学部における社会科では,小学部における社会科の基礎の上に立って次の目標の達成に努めなければならない。

中学校における社会科の目標は次のとおりである。

1.国家・地方公共団体,その他さまざまの社会集団における人間の相互関係についての理解を深め,これらの集団の機構や機能について,小学校よりも,より広い見地から,系統だてて理解させる。そして歴史的背景や世界的視野の裏付けのもとに,現代日本において,政治・経済・社会・国際関係などにおいて,どのような問題があるかについて目を開かせ,日常生活を通して民主主義を現代のわが国の政治的,経済的,社会的活動に具体的に生かしていく能力や態度を養う。

2.日本の各時代の概念を明確につかませ,歴史の発展過程を総合的に理解させ,国家の伝統と文化について,正しい理解をもたせる。また,日本の歴史ばかりでなく,世界史的な内容も通して,日本史に関するものを主体としながらも,それとの関連において世界史の流れをとらえ,結果においては,その時代系列のあらましがつかめるようにする。そして現代のわが国における政治的,経済的,社会的な諸問題が,どのような歴史的背景をもっているかを理解し,国家の伝統と課題について,歴史的考察力を養う。さらにまた,歴史は,人間の自然環境に対するはたらきかけや,社会をよくしていこうとする人々のたゆまない努力によって発展するものであること,歴史的発展には地域や民族によって特殊性があること,また各時代・各社会の人々の活動には共通な人間性が見られることなどについても理解させ,それによって,社会生活の発達に対する自己の責任感や,人間相互の関係における協調の精神を養う。

3.政治的,経済的,社会的,国際的観点を小学校よりも強化して,日本や世界の各地域の生活の特色を,他地域との比較・関連において明確につかませ,その地域の生産その他の諸事象が相互に関連性をもつことや各地域が日本や世界の中で占めている地位について理解させる。なお世界の中でも,特にアジア=太平洋地域における諸問題についての関心を深めること,これからのわが国では国民が自然環境に対して積極的に働きかけること,国際的協調に対して努力することなどがたいせつであることについても,理解を深める。そして,地域相互の関係,人間と自然との関係を考察し,人々の生活は土地によって特色があるが,その底には共通な人間性が流れていることを理解して,わが国が当面している問題について地理的に考察する態度や能力を養い,国家や郷土に対する愛情を育てる。

4.小学校よりもさらに広く深い領域を学習させることにより,民主主義の諸原則についての理解をいっそう深め,それがわれわれの幸福にどのような関係をもっているかについて理解させ,これを実際の生活に生かしていく態度を養う。また,それぞれの具体的事象についての学習を通して,国を愛する心情や他国や他国民を敬愛する態度を養う。

この目標を達成するため,盲学校中学部ではなお小学部社会科の留意事項に基き,じゅうぶんな指導ができるように配慮しなければならない。

 

数学科

中学部における数学科は小学部算数科の基礎の上に立って,さらに進んだ段階における指導を行う。

中学校における数学科は,次のことを生徒の身につけさせることを目標とする。

1.数学の有用性と美しさを知って,真理を愛し,これを求めていく態度を養う。

2.明るく正しい生活をするために,数学の果している役割の大きいことを知り,正義に基いて自分の行為を律していく態度を養う。

3.労力や時間などを節約したり活用したりする上に,数学が果している役割の大きいことを知り,これを勤労に生かしていく態度を養う。

4.自主的に考えたり行ったりする上に,数学が果している役割の大きいことを知り,数学を用いて自主的に考えたり行ったりする態度を養う。

5.数学がどのようにして生れてきたかを理解し,その意義を知る。

6.数学についての基礎となる概念や原則を理解する。

7.数量的な処理によって,自分の行為や思考をいっそう正確に,的確に,しかも能率をあげるようにする能力を養う。

8.自分の行為や思考をいっそう正確に,的確に,しかも能率をあげるようにすることが,どんなに重要なものであるかを知り,これを日常生活に生かしていく習慣を養う。

9.社会で有為な人間となるための資質として,数学についてのいろいろな能力が重要なものであることを知り,数学を生かして社会に貢献していく習慣と能力とを養う。

10.職業生活をしていくための資質として,数学についてのいろいろな能力が重要なものであることを知り,いろいろな職業の分野で,数学を生かして用いていく習慣と能力を養う。

この目標を達成するために,盲学校では,さらに次の点に留意しなければならない。

○盲生徒にとって理解に困難な図形については,教材の取扱,教具のくふうなどによりじゅうぶんに理解できるよう適切な考慮をしなければならない。

○暗算や珠算による計算の能力をいっそう高める。

 

理 科

中学部における理科では,小学部における理科の基礎の上に立って,次の目標の達成に努めなければならない。

中学校における理科は,次のことを生徒の身につけさせることを目標とする。

1.われわれの生活を改善するのに役立つような,科学的な事実や原理に関する知識を得る。

2.人と自然界との関係を理解し,さらに他の人々,いろいろな生物,自然力の恩恵を受けていることを理解する。

3.人体や,個人および公衆衛生についての基礎的な知識や理解を得,健康的な習慣を形成しようとする気持を起し,さらにその実現に努める。

4.自然の事物や現象を観察し,実際のものごとから直接に知識を得る能力を養う。

5.自然の偉大さ,美しさおよび調和を感得する。

6.自然科学の業績について,社会に貢献するものと有害なものとを明らかに区別し,さらにすべての人類に最大の福祉をもたらすように科学を用いなければならないという責任感をもつ。

7.科学の原理や法則を日常生活に応用する能力を高める。

8.一定の目的のために原料や自然力を効果的に,また安全に使う能力を高める。

9.科学的な態度とはどのようなものであるかを理解する。たとえば,いろいろな事実に基いて一応の結論が得られても,偏見を捨ててさらに多くの事実を探究し,じゅうぶんな証拠が得られるまでは判定をさしひかえる。さらに,こうして得られた結論でも別な事実にあてはめてみて深く吟味する。

10.問題を解決するために,科学的な方法を用いる能力を高める。

11.現代の産業および商業生活において,科学に関する知識や科学的な習慣が重要であることを認識し,またそれらを習得して職業の選択に役だたせる。

12.正確に観察し,測定し,記録する習慣を形成する。

13.道具をたくみに使いこなしたり,機械その他,科学的に作られたものを正しく取り扱ったりする技能や習慣を養う。

14.人類の福祉に対する科学者の貢献と,科学がどのようにして現在の文明を築くのに役だったかを理解する。

15.科学のいろいろな分野における専門家を尊敬する態度を養う。

16.他の人と協力して科学上の問題を解決しようとする心がまえをもつ。

この目標を達成するためには,盲学校中学部ではさらに小学部理科の指導上の留意事項に基き,じゅうぶんな指導をしなければならない。

 

音楽科

中学部における音楽科は,小学部音楽科の基礎の上に立って,音楽科の一般目標を盲生徒の発達と特性に応じて,さらに高い程度に,またいっそう深く達成するようにしなければならない。

 

図画工作科

中学部における図画工作科は,小学部における図画工作科の基礎の上に立って,さらに程度を進めて指導する。

中学校における図画工作科の目標は次のとおりである。

1 生徒を個人としてできるだけ完成する助けとして,

1) 絵や図をかいたり,意匠を創案したり,物を作ったりする創造活動を通して生徒の興味・適正・能力をできるだけ発展させる。

2) 日常生活を営むに必要な,造形品の実用価値や美的価値を判断し,有効なものを選択する能力を発展させること。

3) 造形品を有効に使用する技能を発展させる。

4) 美術品および自然のよさを鑑賞する能力を発展させる。

5) 前の各項と関連して,余暇を有効に過ごすための多くの興味や技能を発展させる。

2 生徒を社会人および公民としての完成の助けとして,

1) 創造的な表現力を,社会生活に活用する技能を発展する。

2) 人間の造形活動の意味を理解し,その価値を理解する能力を発展する。

3) 造形の用具材料および造形品の使用を通して公民として必要な態度を発達させる。

4) 生徒の職業的な興味・適性・技能と,経済的生活の能力を発展させるために必要な理解と技能を養う。

この目標を達成するためには,盲学校中学部ではさらに小学部図画工作科の留意事項に基き,じゅうぶんな指導をしなければならない。

 

保健体育科

保健体育科は,体育学習と保健学習とじゅうぶんな関連をもって指導する。

体育学習は,小学部における体育科の基礎の上に立って,さらに程度を進めて指導する。

中学校における体育学習の目標は次のとおりである。

1.身体的発達を助長し,よい姿勢・習慣を確立する。

2.身体活動に対する経験を広げ,基礎的技能を発達させる。

3.情緒の安定を高める。

4.社会的態度を発達させる。

5.余暇活動の基礎を養う。

また,保健学習は小学部教育の基礎の上に立って,さらに程度を進めて指導する

中学校における保健学習の目標は次のとおりである。

1.個人の健康成立の基礎的な諸条件ならびに健康についての科学的な考え方について理解し,これに基いて身近な生活における保健問題を解決する態度・能力を養う。

2.自己の健康について理解し,これに基いて適切な保健活動を行う習慣・態度・能力を養う。

3.病気やけがとその予防について理解し,病気やけがの予防や救急処置に必要な保健活動を行う態度・能力・技能を養う。

4.健康と学習や仕事との関係について理解し,これに基いて学習や仕事を健康的に行う能力・態度を養う。

5.健康な精神について理解し,これに基いて生活を楽しく進める習慣・態度を養う。

6.集団の健康について理解し,進んでその健康を高めることに協力する態度を養う。

この目標を達成するために盲学校ではさらに次の点に留意しなければならない。

○体育学習は,小学部における体育科の留意事項に基き,さらに進んだ程度においてじゅうぶんな指導ができるように配慮する。

○盲生徒の生活の特性に応じて,特に清潔に留意し,また性に対する正しい理解をもたせ,性の純潔に関する道徳に留意する。

 

職業・家庭科

中学校における職業・家庭科は,われわれの生活に必要な知識・技能・態度を身につけ,家庭および社会の一員として,その家庭や社会の発展のために力を合せることの意義を自覚し,みずからの能力に応じた分野を受け持って,その力をじゅうぶんに発揮し,職業生活の改善向上を図るようにさせることを目ざす教科である。

この趣旨に基いて具体的に考えてみると,次のような目標をあげることができる。

1.基礎的な技術を習得させ,基本的な生活活動を経験させる。

2.産業ならびに職業生活・家庭生活についての社会的,経済的な知識・理解を得させる。

3.科学的,能率的に実践する態度・習慣およびくふう創造の能力を養う。

4.勤労と責任を重んじる態度を養う。

5.将来の進路を選択する態力を養う。

この目標を達成するために,盲学校ではさらに次の点に留意しなければならない。

○盲生徒は視力障害のため実生活の経験範囲が狭いから,なるべく多方面にわたって経験させ,実際生活上の基本的な態度習慣を養う。

○視力の障害を克服して,自主的,能率的,合理的に実践する態度・習慣を養う。

○盲者の仕事についての理解を与え,個性と能力に応じて進路を選択しようとする積極的な態度と能力を養い,将来の職業生活に対する自覚を与える。

○選択教科として課する場合には,生徒の個性や進路に応じて特定の職業に必要な技能についての基礎的な指導を行うことができる。

 

外国語科

中学校における外国語科は,外国語の聞き方,話し方,読み方および書き方の知識および技能をのばし,それを通して,その外国語を常用語としている人々の生活や文化について理解を深め,望ましい態度を養うことを目標とする。

この目標を達成するために,盲学校ではさらに次の点に留意しなければならない。

○発音の指導において,たとえば口形,舌の動かし方等の指導が,視覚を通して盲生徒に指導するのは困難であるから,これについては特に具体的な指導を考えなければならない。

○外国語を点字で書く場合は,正しく書くとともに,特に略字の指導をすることが望ましい。

(2) 特別教育活動

特別教育活動は,教科としては組織されないが,中学部における教育の目標の達成に寄与する有効な学習活動で,教育課程の一部として,教科の指導以外に時間を設け,すべての生徒に対して指導を行うものである。

特別教育活動における目標については,小学部における教科以外の活動の発展として,なおいっそう生徒の自主性,協同性を重視する。なお,将来の進路を選択決定するのに必要な能力を養い,個性の伸長をはかることは,この時期の生徒の重要な目標となる。

その活動の領域は,広範囲にわたるが,年間を通じて計画的継続的に指導すべき活動としてはホームルーム活動,生徒会活動およびクラブ活動がある。これらの活動については,学校は,生徒の自発的な活動が健全に行われるように,周到な計画のもとに,指導をしなければならない。

特にこの時期の生徒には,将来の進路の選択や,その他いろいろな問題や困難が多いので,個々の場合に即した,適確な指導のための資料を準備し,特別教育活動を通じて,生徒の健全な成長がはかられるよう常に適切な指導と助言を行うように努めなくてはならない。

(3) 指導時間数

中学部各学年における教科と特別教育活動の指導時間数,および総指導時間数は次の表のとおり定める。

 

教科と特別教育活動の指導時間数および総指導時間数

\学年 1 2 3
教科 国語 190〜266 190〜266 190〜266
(5〜7) (5〜7) (5〜7)
社会 152〜228 152〜228 152〜228
(4〜6) (4〜6) (4〜6)
算数 114〜190 114〜190 114〜190
(3〜5) (3〜5) (3〜5)
理科 114〜190 114〜190 114〜190
(3〜5) (3〜5) (3〜5)
音楽 76〜114 76〜114 76〜114
(2〜3) (2〜3) (2〜3)
図画 76〜114 76〜114 76〜114
工作 (2〜3) (2〜3) (2〜3)
保健 114〜190 114〜190 114〜190
体育 (3〜5) (3〜5) (3〜5)
職業・家庭 114〜152 114〜152 114〜152
(3〜4) (3〜4) (3〜4)
教科以外の活動 76〜114 76〜114 76〜114
(2〜3) (2〜3) (2〜3)
小計 1026〜1216 1026〜1216 1026〜1216
(27〜32) (27〜32) (27〜32)
選択科目 外国語 114〜152 114〜152 114〜152
(3〜4) (3〜4) (3〜4)
職業・家庭 114〜226 114〜226 114〜226
(3〜7) (3〜7) (3〜7)
総指導時間数 1140〜1330 1140〜1330 1140〜1330
(30〜35) (30〜35) (30〜35)

備考

(1) この表は教科および特別教育活動に必要な年間の最低および最高の指導時間数ならびに総指導時間数を示す。また,あわせて1年間38週の指導を行ったとき,1週当りの平均指導時間数を()の中に示す。

(2) この表に示された時間数はすべて50分をもって1単位時間とする。ただし,これは指導を50分ごとにくぎるべきであるという意味ではない。

(3) 各教科および特別教育活動の指導時間の間に適当な休憩および昼食の時間を設ける必要があるが,これらの時間は,この表に示す時間数に含まれていない。

(4) 実際の指導にあたっては,教科の統合をはかるなど,実情に即して指導する場合においても,この表に示された時間数をもととしなければならない。

(5) 保健体育科の保健学習については,3年間のうちに合計76時間の指導を行うものとする。

これはいずれかの学年にまとめて実施してもよく,2年間又は3年間にわけて実施してもよい。

(6) 私立学校においては,この表に示された教科および特別教育活動のほか,その必要によって宗教に関する教科を設けることができる。

この場合,総指導時間数は,この表に示された時間数の範囲をこえてはならない。

3 学校における教育課程の編成

学校における教育課程は,上に示したところに従い,第2章で示した留意事項にあわせて,次の点に留意して,具体的に編成されなければならない。

(1) 選択教科は生徒の個性と進路に応じその個人的必要を満たすために設けられたものであるから,事情の許すかぎりその目的を果たすように教育課程を編成しなければならない。

(2) 総指導時間数を週当り32時間以内で計画する場合にも,必修教科にあわせて選択教科を履修させることが望ましい。

(3) 学校は,個々の生徒の適性,環境,進路の希望等に関する適確な資料に基き,生徒に個性の自覚と社会への認識を深めさせ,選択教科の履修の決定その他進路について適切な指導を行わなければならない。