養護学校中学部学習指導要領 肢体不自由教育編(昭和38年度版)

目 次
第1章 総 則
 第1 教育課程の編成
  1 一般方針
  2 授業時間の配当
  3 選択教科の運営
  4 特 例
 第2 指導計画作成および指導の一般方針
 第3 道徳教育
 第4 機能訓練
第2章 各教科
 第1節 各教科の目標.内容ならびに指導計画作成および学習指導の方針
 第2節 国 語
 第3節 社 会
 第4節 数 学
 第5節 理 科
 第6節 音 楽
 第7節 美 術
 第8節 保健体育・機能訓練
  1 保健体育
  2 機能訓練
   (1)目 標
   (2)内 容
   (3)指導計画作成および指導上の留意事項
 第9節 技術・家庭
 第10節 外国語
 第11節 職業に関する教科
第3章 道徳、特別教育活動および学校行事等
 第1節 道 徳
 第2節 特別教育活動
 第3節 学校行事等

第1章 総 則

第1 教育課程の編成

1 一般方針

肢体不自由者を教育する養護学校(以下「養護学校」という。)中学部の教育課程は、必修教科、選択教科、道徳、特別教育活動および学校行事等によって編成するものとし、必修教科は、国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育・機能訓練および技術・家庭、選択教科は、外国語、農業、工業、商業、水産、家庭、薬業、数学、音楽および美術とする。

各養護学校においては、教育基本法、学校教育法、学校教育法施行規則(以下「規則」という。)、養護学校中学部学習指導要領肢体不自由教育編、教育委員会規則等に示すところに従って教育課程を編成するものとする。この場合、各養護学校においては、地域や学枚の実態を考慮し、生徒の発達段階、経験および肢体不自由の状態に即応するように留意しなければならない。

2 授業時数の配当

(1) 養護学校中学部の各学年における必修教科および選択教科(以下「各教科」という。)ならびに特別教育活動のうちの学級活動(以下「学級活動」という。)の年間の授業時数の標準ならびに道徳の年間の最低授業時数は次の表のとおりとする。

区 分 第1学年 第2学年 第3学年
必  修  教  科 国 語 175(5) 140(4) 175(5)
社 会 140(4) 175(5) 140(4)
数 学 140(4) 140(4) 105(3)
理 科 140(4) 140(4) 140(4)
音 楽 70(2) 70(2) 35(1)
美 術 70(2) 35(1) 35(1)
保健体育・機能訓練 175(5) 175(5) 175(5)
技術・家庭 105(3) 105(3) 105(3)
選  択  教  科 外国語 105(3) 105(3) 105(3)
農 業 70(2) 70(2) 70(2)
工 業 70(2) 70(2) 70(2)
商 業 70(2) 70(2) 70(2)
水 産 70(2) 70(2) 70(2)
家 庭 70(2) 70(2) 70(2)
薬 業 70(2) 70(2) 70(2)
数 学     70(2)
音 楽 35(1) 35(1) 35(1)
美 術 35(1) 35(1) 35(1)
道 徳 35(1) 35(1) 35(1)
学級活動 35(1) 35(1) 35(1)

(2) 上掲(1)の表においては、授業時数の1単位時間は50分とし、かっこ内の授業時数は年間授業日数を35週とした場合における週当たりの平均授業時数である。なお、授業の1単位時間には、教室を移動したり、休憩したりするのに要する時間を含まないものとする。

(3) 各教科、道徳、特別教育活動および学校行事等に授業時数を配当するにあたっては、下記の事項に注意することが必要である。

ア 各学年の総授業時数を定めたり、各教科、道徳、特別教育活動および学校行事等のそれぞれの年間の授業時数を定めたり、これを配当したりするにあたっては、生徒の肢体不自由の状態を考慮し、負担過重にならないように留意すること。

イ 保健体育・機能訓練については、生徒の肢体不自由の状態に応じて、それぞれ適切な授業時数を配当しなければならないこと。

ウ 道徳の授業時数については、各学年35単位時間以上でなければならないこと。

エ 特別教育活勤のうちの生徒会活動、クラブ活動などや学校行事等については、それらに充てる授業時数は上掲(1)の表には示していないが、生徒の肢体不自由の状態に応じて、年間、学期、月または週ごとに適切な授業時数を配当することが望ましいこと。

オ 各教科、道徳および学級活動についての各学年の授業は、年間35週以上にわたって行なうように計画すること。

カ 各教科、道徳および学級活動の授業の1単位時間は、50分とすることが望ましいが、生徒の肢体不自由の状態、季節およびその他の事情により50分未満とすることができる。

キ 各教科、道徳および学級活動についての1週間の時間割を作成するにあたっては、上掲(1)の表のうち、かっこ内に示した週当たりの平均授業時数を参考として、調和的、能率的な指導ができるように配慮すること。

ク 各学年における各教科、道徳および学級活動の授業時数の計は1,190単位時間を標準とすること。

3 選択教科の運営

選択教科は、土地の状況ならびに生徒の肢体不自由の状態、進路および特性を考慮して設けるものとし、その際、下記によるものとする。

(1) 選択教科の授業時数については、次によるものとする。

ア 養護学校は、毎学年1以上の選択教科について105単位時間を標準として生徒に履修させなければならない。このうち、少なくともいずれか1の教科の授業時数は、70単位時間(外国語にあっては105単位時間)を標準とすること。

イ 上記アによって70単位時間を標準とする選択教科のほかに、農業、工業、商業、水産、家庭または薬業(以下「職業に関する教科」という。)のうち1以上の教科を履修させる場合における当該職業に関する教科についての授業時数は、上掲2の(1)の表に示されている授業時数にかかわらず、それぞれ35単位時間を標準とすることができること。

(2) 養護学校は、個々の生徒について、その進路、特性等をじゅうぶん考慮し、それぞれの生徒に適した選択教科を選択させて履修させるように指導しなければならない。

(3) 選択教科のうち外国語については、英語、ドイツ語、フランス語その他の現代の外国語のうちいずれか1か国語を履修させることを原則とし、第1学年から履修させることが望ましい。

なお、進路、特性等により外国語を深く学習しようとする生徒に対しては、第3学年において、これを175単位時間を標準として履修させることが望ましい。

(4) 進路、特性等により数学をさらに深く学習しようとする生徒に対しては、第3学年において、選択教科の数学を履修させることが望ましい。

(5) 第3学年において、進路、特性等により職業に関する教科を学習しようとする生徒に対しては、生徒の必要や肢体不自由の状態、地域や学校の実態等に応じ、職業に関する教科について、140単位時間を標準として履修させることが望ましい。

(6) 選択教科の音楽または美術については、生徒の進路、特性等に応じて履修できるようにすることが望ましい。

4 特 例

(1) 私立の養護学校においては、各教科、道徳、特別教育活動および学校行事等のほか、宗教を加えて教育課程を編成することができ、この場合は、宗教をもって道徳に代えることができる。

また、宗教の時間と道徳の時間とをあわせて設けている養護学校にあっては、宗教の授業時数をもって道徳の授業時数の一部に代えることがてきる。

(2) 複式学級において、特に必要がある場合は、各教科の目標の達成に支障のない範囲において、各教科についての学年別の順序によらないことができる。

(3) 肢体不自由の程度の重い生徒または肢体不自由児施設等に入院治療中の生徒については、実情に応じた教育課程を編成し実施することができる。

(4) 肢体不じゆう以外に他の心身の故障をあわせ有する生徒に係る教育課程については、特に必要がある場合は、特別の教育課程によることができることとなっている(規則第73条の11第1項)

(5) 非常変災、伝染病等により、臨時に授業を行なわない場合で、その年間にあらかじめ定められた授業時数を補うことができないような、やむを得ない事情があるときは、その定められた授業時数を下ることができる。

第2 指導計画作成および指導の一般方針

1 養護学校においては、下記の事項に留意して、各教科、道徳、特別教育活動および学校行事等について、相互の関連を図り、全体として調和のとれた指導計画を作成するとともに、発展的、系統的な指導を行なうことができるようにしなければならない。

(1) 各教科、道徳、特別教育活動および学校行事等については、第2章以下に示すところに基づき、養護学校の実態や地域の状況などを考慮し、生徒の肢体不自由の状態や経験に即応して、具体的な指導の目標を明確にし、中学校学習指導要領第2章に示された内容に準じて、実際に指導する事項を選定し、配列し、効果的な指導を行なうようにすること。

(2) 中学校学習指導要領第2章に示された各教科(職業に関する教科は除く)の内容に関する事項は、特に示す場合を除き、いずれの学校においても原則として取り扱うことを必要とするものである。各養護学校においては特に必要と認められる場合には、生徒の肢体不自由の状態に応じて指導する事項を軽減したり、または第2章に示されていない事項を加えたりして指導することができること。ただしこの場合、学年別の目標や内容の趣旨を逸脱し、または生徒の負担過重とならないよう慎重に配慮すること。

(3) 職業に関する教科については、下記の事項に留意して指導計画を作成し、職業生活または家庭生活に関する基礎的な知識と技能を習得させるようにするものとすること。

ア 1の教科を履修させる場合においては、中学校学習指導要領第2章に示された当該教科の内容を標準とすること。

イ 生徒の肢体不自由の状態、土地の状況や学校の事情などに即応し、中学校学習指導要領第2章に示されていない内容についても指導することができること。

ウ 生徒の肢体不自由の状態、授業時数や土地の状況、学校の事情などに即応して、中学校学習指導要領第2章に示された当該教科の内容のいずれかに重点をおいて指導することもできること。

エ 2以上の教科を履修させる場合においては、その指導する事項について相互に密接な関連を図るようにすること。

(4) 中学校学習指導要領第2章に示された各教科の学年別の内容に掲げる事項の順序は、特に示す場合を除き、そのまま指導の順序を示すものではない。各養護学校においては、生徒の経験や肢体不自由の状態に即応して、各事項のまとめ方や順序をくふうして指導するようにすること。

(5) 指導にあたっては、各教科、道徳、特別教育活動および学校行事等の教育活動の全体を通し、適切な機会を利用して、個々の生徒の機能障害の改善に資するように配慮しなければならないこと。

(6) 政治および宗教に関する事項の取り扱いについては、それぞれ教育基本法第8条および第9条の規定に基づき、適切に行なうように配慮しなければならないこと。

(7) 生徒が心身の状況によって履修することが困難な各教科は、その生徒の心身の状況に適合するように課さなければならないこととなっている(規則第73条の12第2項で準用する第26条)。各養護学校においては指導の実際にあたって、個々の生徒について特別な配慮をしなければならないこと。

(8) 中学校学習指導要領第2章第2節社会「第3 指導計画作成および学習指導の方針」の7に示された特例については、これを実施しようとする場合は、公立の養護学校にあっては教育委員会に、私立の養護学校にあっては都道府県知事に、国立の養護学校にあっては文部大臣にあらかじめ屈け出るものとすること。

2 各教科、道徳、特別教育活動および学校行事等の指導を能率的、効果的にするためには、下記の事項について留意する必要がある。

(1) 生徒の発達段階や経験をよく理解すること。

(2) 肢体不自由者の心身の状態をよく理解すること。

(3) 学習の目標を生徒にじゅうぶんはあくさせること。

(4) 生徒の興味や関心を重んじ、自主的、自発的な学習をするように導くこと。

(5) 生徒の個人差に留意して、個別指導を重んじ、それぞれの生徒の個性や能力をできるだけ伸ばすようにすること。

(6) 学校における好ましい人間関係を育て、身のまわりの美化や整とんに努めるなど、学習環境を整えるようにすること。

(7) 教科書その他の教材、教具などについて常に研究し、その活用に努めること。特に教具については生徒の使用を容易にするよう改善を図るようにすること。また、生徒の経験の不足を補うためにも、学校図書館の資料や視聴覚教材等をじゅうぶん活用すること。

(8) 学校医との連絡を密にし、教育活勤全体を通じて医学的配慮を加えること。

(9) 指導の成果を絶えず評価し、指導の改善に努めること。

第3 道徳教育

学校における道徳教育は、本来、学校の教育活動全体を通じて行なうことを基本とする。したがって、道徳の時間はもちろん、各教科、特別教育活動および学校行事等の学校教育のあらゆる機会に、道徳性を高める指導が行なわれなければならない。

道徳教育の目標は、教育基本法および学校教育法に定められた教育の根本精神に基づく。すなわち、人間尊重の精伸を一貫して失わず、この精神を、家庭、学校その他各自がその一員であるそれぞれの社会の具体的な生活の中に生かし、個性豊かな文化の創造、民主的な国家および社会の発展に努め、進んで平和的な国際社会に貢献できる日本人を育成することを目標とする。

道徳の時間においては、各教科、特別教育活動および学校行事等における道徳教育と密接な関連を保ちながら、これを補充し、深化し、統合し、またはこれとの交流を図り、生徒の望ましい道徳的習慣、心情、判断力を養い、社会における個人のあり方についての自覚を主体的に深め、道徳的実践力の向上を図るように指導するものとする。

道徳の時間における指導は、学級担任の教師が担当することを原則とする。

第4 機能訓練

肢体不自由者は訓練することによって、その機能をある程度回復し、障害を軽減することができる。養護学校においては、生徒の機能障害の状況を正しくはあくし、その障害を改善するために養護学校の教育活動全体を通じて適切な訓練を行なうことが必要である。

機能訓練の目標は、個々の児童のもっている機能の障害を改善させるとともに、みずから進んで障害を克服しようとする態度を養い、健康な生活ができるようにすることにある。

機能訓練の時間においては、特別な技能を有する教職員が、学校医の処方に基づき、生徒のもっている残存能力、代償能力および回復能力を利用し、各種の機械器具をも活用して、生徒の積極的な参加のもとに、個々の生徒の障害の改善を図るように指導するものとする。

第2章 各 教 科

第1節 各教科の目標、内容ならびに指導計画作成および学習指導の方針

1 目標および内容

(1) 養護学校中学部の各教科の目標および内容については、特に示すものを除くほか、中学校学習指導要領に示された各教科の目標および内容に準ずるものとする。

(2) 養護学校中学部の各教科の目標および内容の取り扱いにあたっては、生徒の発達、経験、障害の種類と程度、能力差等を考慮しなければならない。

2 指導計画作成および学習指導の方針

各教科に関する指導計画作成および学習指導の方針については、中学校学習指導要領に示された各教科の指導計画作成および学習指導の方針に準ずるほか、下記の事項および本章第2節から第11節までに掲げるところによるものとする。

(1) 指導計画の作成にあっては、中学校学習指導要領第2章に示された内容のうち、学習の著しく困難もしくは不可能なものについては、これを除くこともやむを得ないが、その場合、目標を逸脱しないように配慮しなければならない。

(2) 指導計画の作成および学習指導にあっては、特に生徒の経験領域を広めるように配慮しなければならない。

(3) 学習指導にあたっては、生徒の特別な能力や技能の発見に努め、それらを助長し練摩するように配慮しなければならない。

第2節 国 語

1 指導計画の作成および指導にあたっては、聞く、話す、読む、書くことの全領域にわたることが必要であるが、生徒の障害の状態や能力に応じて、最も効果的な学習が行なえるようその配分や指導の方法について、じゅうぶん検討を加えなければならない。

2 指導計画の作成および指導にあたっては、進度の遅れや生徒の学力差を考えて、内容の選定や配列にじゅうぶん配慮するとともに、効果的な指導法をくふうすることがたいせつである。

3 言語障害を有する生徒の指導にあたっては、話すことについて生徒のもっている不安を除くように配慮し、簡潔に要点を表現する能力を高めるように努め、指導の能率化を図るために、教材教具等の補助手段についてもくふうすることがたいせつである。

4 書くことに障害を有する生徒の指導にあたっては、障害に応じた用具を選択くふうするなどして、的確に表現する能力や態度を身につけさせることがたいせつである。

5 文学作品の鑑賞や創作活動の指導にあたっては、生徒の情緒の安定を図り、積極的な生活態度を養うことがたいせつである。

第3節 社 会

1 指導計画の作成および指導にあたっては、生徒の心理的、身体的条件を考慮し、特にその興味と必要に応ずるようにすることがたいせつである。

2 指導にあたっては、生徒の社会的経験の不足を補うために、実地観察や見学等を行なうほか、つとめて視聴覚教材を利用することが必要である。

3 わが国や世界の現状をじゅうぶん理解させて、生徒の視野を広げ、正しく自己をみつめさせるとともに、特に社会への適応性を高めるように留意することがたいせつである。

4 歴史等における人物の取り扱いにあたっては、身体障害者で文化の向上や社会の発展のために貢献した人々の業績にも注意して指導し、生徒の自覚に資することが望ましい。

第4節 数 学

1 指導計画の作成および指導にあたっては、進度の遅れや生徒の学力差を考えて、基礎的な内容の配列にじゅうぶん配慮し、学習が系統的に身につくよう、効果的な指導法をくふうすることがたいせつである。

2 生徒は数量生活に関する経験が比較的乏しいので、指導にあたっては、つとめてその生活経験と関連させ、数学を積極的に生活に活用する態度を養うことが必要である。

3 指導にあたっては、効果的な教材、教具を活用して理解を深めるとともに、つとめて観察や実測を重んずることがたいせつである。

4 筆記、計量等に困難を伴う生徒に対しては、障害に応じた用具や方法を選択くふうするなど指導上の配慮をすることが望ましい。

第5節 理 科

1 指導にあたっては、生徒の障害や特性に応じて、その内容をじゅうぶん検討し、基礎的事項に重点をおいて取り扱うようにすることが必要である。

2 指導にあたっては、進んで実験、観察する態度を養い、事実に基づいて論理的に考えたり、処理したりする能力を深めるようにすることがたいせつである。

3 実験、観察に必要な機械、器具については、生徒の障害や危険防止の見地からよく研究くふうし、その選択と取り扱いに特に留意しなければならない。

4 自然と人間生活との結びつきについての認識を深め、生活の中から問題をとらえて、科学的、合理的に処理する態度と能力を養うことがたいせつである。

第6節 音 楽

1 美的感覚や情操を高め、うるおいある生活態度や習慣を身につけさせるために、学校生活のあらゆる機会と場を利用して.鑑賞や創作活動など豊かな音楽経験をさせるようにすることがたいせつである。

2 表現活動の指導にあっては、常に合唱、合奏など全体活動の中で、個人差に応じて各自の能力を発揚できるように配慮しなければならない。

3 歌唱指導にあたっては、言語障害のある者や音域の狭い者には、歌いやすい音域に移して、指導することが必要である。

4 器楽指導にあたっては、障害に応じた楽器を選択し、各自の技能をじゅうぶん発揮できるようにするとともに、全体としてまとまったものになるように編曲して指導することが必要である。

第7節 美 術

1 肢体不自由者は表現意欲に欠けやすいので、美術的な表現意欲を高めるように配慮し、創作の喜びを味わわせ、創造性を伸ばし、自信をつけさせるように努めることが必要である。

2 各種の材料、用具などの使用に慣れさせ、製作にあたっては、その過程を重視するとともに、中途で放棄しないねばり強さを養うことがたいせつである。

3 日常生活の中で、できるだけ自然に親しませ、色や形に関する経験や美術作品の鑑賞の機会を多くもたせて、美的感覚を養うことが必要である。

4 個人製作から発展して、つとめて共同製作を重んじ、互いに協力し、助け合う態度を養うことがたいせつである。

5 製作の前後の準備、整とんを正しく行なう習慣をつけ、素材や用具および作品をたいせつに取り扱う態度を養うことが必要である。

第8節 保健体育・機能訓練

1 保健体育

(1) 中学校学習指導要領に示された内容のうちには、そのまま課することが困難なものもあろうが、生徒の障害の状態に応じて設備や方法をくふうし、特定な内容の指導にとどまることなく、必要なものはできるかぎり課するように努めなければならない。

(2) 指導計画の作成にあたっては、学校医との連絡を密にし、生徒の健康状態、肢体不自由の種類と程度、運動能力、運動に対する興味や経験、地域の特殊性などを考慮することが必要である。

(3) 内容の配列にあたっては、生徒の発達段階、機能訓練、特別教育活動・学校行事等の指導内容および季節などとの関連を考慮することがたいせつである。

(4) 生徒の肢体不自由の種類と程度および運動能力によって必要のある場合には、グループに分けることも考慮し、各種の運動が適切に指導できるようにくふうすることがたいせつである。

(5) 球技、陸上競技、水泳などの実技の指導にあたっては、正式なルールにとらわれることなく、生徒の障害の状況に応じて、方法をくふうして課することが必要である。

(6) 生徒の障害に合うようにくふうした運動や競技を通じて、明朗快活にして公正な態度を養うことがたいせつである。

(7) 保健の指導にあたっては、特に自己のからだの状態を理解して障害を克服しようとする意欲を養い、さらに、自己および他人を病気や傷害から守ろうとする態度を養うことが必要である。

 2 機能訓練

(1) 目 標

ア 機能の障害を改善するために必要な訓練を行ない、日常の起居動作の不自由を克服して生活能力の向上を図る。

イ 機能訓練の意義を理解させ、積極的にこれに参加するとともに、日常生活においてもみずから訓練を行なおうとする態度を養う。

ウ 障害の状態を自覚し、それに即した機能訓練の方法を身につけさせるようにする。

(2) 内 容

ア 機能の訓練

 (ア) 基本動作訓練

 他動運動、介助運動、自動運動、抵抗運動などを通して、各肢節の基本動作を習得する訓練を行なう。

 (イ) 起立歩行訓練

 起立歩行用の各種の器具を利用して、体幹および下肢の応用動作の訓練を行なう。

 (ウ) 水治訓練

 水の物理的特性を利用して、上記の諸訓練を行なう。

イ 職能の訓練

 (ア) 応用動作訓練

 種々の作業を通して肢体の総合訓練を行なう。

 (イ) 日常生活動作訓練

 種々の日常生活動作を習得する訓練を行なう。

ウ 言語の訓練

 発語、発音等に必要な基礎能力を高めるために呼吸調節や構音機能の訓練を行なう。

上記の内容を実施するにあたっては、次の事項を指導するものとする。

・ 自己の障害を正しく理解させる。

・ 自己の障害を改善するのに必要な機能訓練の意味と方法を理解させる。

・ みずから進んで機能訓練を行なう習慣と態度を養う。

(3) 指導計画作成および指導上の留意事項

ア 指導計画の作成にあたっては、専門医の処方に基づき、必要がある場合にはその指導を求め、上記内容のうち個々の生徒に最も適したものを選定することが必要である。

イ 生徒の肢体不自由の種類、程度によっては、補助手段としてマッサージ等を課することができる。

ウ カリエスの生徒など、機能訓練を課することによって、弊害を生ずるおそれのあるものの取り扱いについては専門医の指導を求め、特に慎重を期さなければならない。

第9節 技術・家庭

1 身体の障害を克服して、生活に必要な基礎的技術を習得させ、創造し生産する喜びを味わわせ、自信と意欲を高めて、強く生活に処する態度を養うことが必要である。

2 生徒の障害の種類と程度によっては、学習させることの困難な内容もあろうが、施設設備や方法をくふうして、できるだけ全領域にわたって指導し、広く経験を得させることがたいせつである。

3 指導にあたっては、障害に応じた機械、器具、材料を選択くふうし、学習の効果があがるようにするとともに、危険防止については万全の注意を払わなければならない。

4 家庭機械や家庭工作の機械器具などの使用法、修理などについて、基礎的な知識、技能を習得させ、合理的な生活態度を養うように努めることがたいせつである。

5 共同作業を通して、障害の種類と程度および能力に応じた仕事を分担させ、他人と協力し、自己の役割を果たす態度を養うことがたいせつである。

6 製作の指導にあたっては、作品の巧拙よりも製作過程を重視し、中途で放棄することなく最後までやりとおすねばり強さを養うことが必要である。

7 視聴覚教材を利用して、経験の不足を補うとともに、作業の手順や方法などを正しく理解させることが望ましい。

第10節 外国語

1 指導計画の作成にあたっては、教科の特性や生徒の能力差を考えて、内容の選択や配列にじゅうぶん配慮することが必要である。

2 指導にあたっては、英語学習のふんい気を作り出すことに努め、視聴覚教材をじゅうぶん活用するなどして、学習効果をあげるように努めることがたいせつである。

3 言語障害を有する生徒に対しては、発音、抑揚などにあまりとらわれることなく、基本的事項の反復練習や集団による音読などによって学習できるように配慮する必要がある。

4 上肢に障害を有する生徒に対しては、使用する文字や辞書などについて配慮し、学習意欲を失わせることのないようにすることがたいせつである。

第11節 職業に関する教科

1 職業に関する教科の学習を通して、自己の才能と特技を自覚させ、それを伸長させて、職業人として自立し、社会に貢献できる基礎をつちかわなければならない。

2 指導計画の作成にあたっては、個々の生徒の障害の種類と程度に応じて適切な教材を選び、進路指導との関連をじゅうぶん図るようにすることがたいせつである。

3 実習を多くし、実践的な活動を通して学習させるように努めるとともに、片寄った技術の指導におちいらないように留意することがたいせつである。

4 共同作業を通して、障害の種類と程度および能力に応じた仕事を分担させ、他人と協力し、自己の役割を果たす態度を養うことがたいせつである。

5 製作の指導にあたっては、作品の巧拙よりも製作過程を重視し、中途で放棄することなく最後までやりとおすねばり強さを養うことが必要である。

6 視聴覚教材を利用して、経験の不足を補うとともに、作業の手順や方法などを正しく理解させることが望ましい。

7 機械器具や薬品などの使用にあたっては、特に危険防止に万全の注意を払わなければならない。

第3章 道徳、特別教育活動および学校行事等

第1節 道  徳

 道徳の目標、内容ならびに指導計画作成および指導上の留意事頂については、中学校学習指導要領に示されたものに準ずるほか、下記の事項によるものとする。

1 肢体の機能障害を克服する意欲を高め、積極的に自己の生活を開拓する生活態度を養うように指導することが必要である。

2 肢体不自由に起因する性格のかたよりと偏見をきよう正し、周囲の人々と協調して明朗な生活ができるように指導することがたいせつである。

3 各教科、特に社会科との関連を密にし、経験の拡大を図り、社会的経験の狭さからくる弊害をできるだけ少なくするように指導することがたいせつである。

第2節 特別教育活動

 特別教育活勤の目標、内容ならびに指導計画作成および指導上の留意事項については、中学校学習指導要領に示されたものに準ずるほか、下記の事項によるものとする。

1 生徒がみずから障害を認識し、実践活動を通して積極的に障害を克服しようとする生活態度を養うように指導することが必要である。

2 学級活動は、毎学年35単位時間を標準として実施するものとし、このうち進路指導については、毎学年計画的に実施し、卒業までの実施時数は40単位時間を標準とする。

3 学級活動における進路指導においては、障害を克服して自立した先人の事例などを取り入れて、生徒の社会的目立への意欲を高めるように指導することが必要である。

4 クラブ活動の指導にあたっては、障害の種類別、程度別など、肢体不自由の実態に即したクラブ編成を行ない、指導の効果を高めるように配慮することがたいせつである。

5 クラブ活動を通して、各教科の学習で達成されない個々の問題を解決したり、また、生徒の将来の方向について考えさせたりするように指導することが必要である。

第3節 学校行事等

 学校行事等の目標、内容ならびに指導計画作成および指導上の留意事項については、中学校学習指導要領に示されたものに準ずるほか、下記の事項によるものとする。

1 指導計画の作成にあたっては、生徒の障害の回復に資するような内容をできるだけ多く取り上げ、その実施の時期、時間、回数、方法などを決めることが必要てある。

2 指導計画の作成および指導にあたっては、生徒の生活を楽しくし、かつその充実発展を図るようにすることがたいせつである。