聾学校小学部・中学部学習指導要領

○文部省告示第78号

 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第73条の10の規定に基づき,聾学校学習指導要領小学部編(昭和39年文部省告示第71号)及び聾学校学習指導要領中学部編(昭和40年文部省告示第103号)の全部を次のように改正し,昭和46年4月1日から施行する。ただし,中学部については,昭和47年3月31日まで,なお従前の例による。
 
 昭和46年3月13日
 
 文部大臣 坂田 道太

聾学校小学部・中学部学習指導要領

目次
第1章 総則
第2章 各教科
 第1節 小学部
 第2節 中学部
第3章 道徳
第4章 特別活動
第5章 養護・訓練

第1章 総則

第1 教育目標
小学部および中学部における教育については,学校教育法第71条に定める目的を実現するために,児童および生徒の心身の障害の状態および能力・適性等をじゅうぶん配慮して,次に掲げる目標の達成に努めなければならない。
1 小学部においては,学校教育法第18条各号に掲げる教育目標。
2 中学部においては,学校教育法第36条各号に掲げる教育目標。
3 小学部および中学部を通じ,聴覚障害に基づく種々の困難を克服するために必要な知識,技能,態度および習慣を養うこと。

第2 教育課程一般
1 学校においては,法令およびこの章以下に示すところに従い,児童または生徒の人間として調和のとれた育成を目ざし,その聴覚障害の状態および心身の発達段階と特性ならびに地域や学校の実態をじゅうぶん考慮して,適切な教育課程を編成するものとする。
 2 小学部については,第2章以下に示す小学部の国語,社会,算数,理科,音楽,図画工作,家庭および体育の各教科,道徳,特別活動ならびに養護・訓練の内容に関する事項は,特に示す場合を除き,いずれの学校においても取り扱わなければならない。
 3 中学部については,第2章以下に示す中学部の国語,社会,数学,理科,音楽,美術,保健体育,技術・家庭および外国語の各教科,道徳,特別活動ならびに養護・訓練の内容に関する事項は,特に示す場合を除き,いずれの学校においても取り扱わなければならない。
 4 学校において特に必要がある場合には,心身の障害の状態により学習が困難な児童または生徒について,小学部または中学部の各教科の各学年の目標および内容に関する事項の一部を欠き,またはその全部もしくは一部を各教科(中学部にあっては,中学部の各教科に相当する小学部の各教科を含む。)の当該学年の前各学年の目標および内容に関する事項の全部もしくは一部によって代えることができる。
 5 聴覚障害以外に他の心身の障害をあわせ有する児童または生徒(以下「重複障害者」という。)については,次に示すところによることができる。
(1) 各教科の目標および内容に関する事項の一部を,あわせ有する障害の種類に対応する盲学校小学部・中学部学習指導要領,養護学校(精神薄弱教育)小学部・中学部学習指導要領,養護学校(肢体不自由教育)小学部・中学部学習指導要領または養護学校(病弱教育)小学部・中学部学習指導要領に示す各教科の目標および内容に関する事項の一部によって代えること。
(2) 重複障害者のうち,学習が著しく困難な児童または生徒については,各教科,道徳および特別活動の目標および内容に関する事項の一部を欠き,養護・訓練を主として指導を行なうこと。
6 学校においては,小学部または中学部の各教科(中学部においては,学校教育法施行規則第73条の8に定めるその他特に必要な教科を含む。以下この章において同じ。),道徳,特別活動および養護・訓練について,相互の関連を図り,全体として調和のとれた具体的な指導計画を作成し,発展的,系統的な指導を行なうものとする。
 なお,指導計画の作成に当たっては,この章ならびに第2章以下に示す小学部または中学部の各教科,道徳,特別活動および養護・訓練の指導計画の作成に関する事項にじゅうぶん留意するものとする。
 7 第2章以下に示す各教科,道徳,特別活動および養護・訓練の内容に関する事項の指導に当たっては,特に示す場合のほか,それぞれの目標および内容の趣旨を逸脱しない範囲内で,児童または生徒の実態を考慮して,重点のおき方に適切なくふうを加え,指導の効果を高めるように努めるものとする。
 8 授業時数については,次に示すところによるものとする。
(1) 小学部または中学部の各学年における総授業時数は,小学校または中学校の各学年における総授業時数に準ずるものとすること。この場合,各教科・道徳,特別活動および養護・訓練の目標および内容を考慮し,それぞれの年間の授業時数を適切に定めること。
(2) 小学部または中学部の各学年の養護・訓練に充てる授業時数は,年間105を標準とするが,児童または生徒の心身の障害の状態に応じて適切に定めること。
(3) 重複障害者および療養中の児童または生徒について,特に必要がある場合には,実情に応じた授業時数を定めることができること。
(4) 小学部または中学部の各教科,道徳,特別活動および養護・訓練の授業は,年間35週(小学部第1学年においては,34週)以上にわたって行なうように計画すること。この場合,児童または生徒の聴覚障害の状態をじゅうぶん考慮し,週当たりの授業時数が負担過重とならないようにすること。
(5) 小学部または中学部の各教科,道徳,特別活動および養護・訓練のそれぞれの授業時数の1単位時間は,小学部にあっては45分,中学部にあっては50分を標準とし,学校や児童または生徒の実態に即して適切に定めること。
9 以上のほか,次の事項について配慮するものとする。
(1) 個々の児童または生徒の聴覚障害の状態および能力・適性等の的確な把握に努め,個人差に即応した指導を行なうとともに,中学部においては,あわせて適切な進路の指導を行なうようにすること。
(2) 児童または生徒の経験および興味や関心を重んじ,自主的,自発的な学習をするように指導すること。
(3) 教師と児童生徒および児童生徒相互の好ましい人間関係を育て,日常生活の指導の充実を図ること。
(4) 学校生活全体における言語環境を整え,児童または生徒の言語活動が適正に行なわれるように努めること。
(5) 教科書その他の教材・教具を有効に活用し,学校図書館を計画的に利用するよう指導すること。
なお,児童または生徒の聴覚障害の状態および能力・適性等に即した教材・教具を創意くふうし,それらを活用して指導の効果を高めるようにすること。
(6) 指導の効率を高めるため,教師の特性を生かすとともに,教師の協力的な指導がなされるようにくふうすること。
(7) 個々の児童または生徒について,指導の成果を絶えず評価し,指導の改善に努めること。
(8) 学校医等との連絡を密にし,児童または生徒の心身の障害の状態に応じた保健および安全にじゅうぶん留意すること。
(9) 家庭等との連絡を密にし,指導の効果をあげるように努めること。

第3 道徳教育
学校における道徳教育は,学校の教育活動全体を通じて行なうことを基本とする。したがって,道徳の時間はもちろん,各教科,特別活動および養護・訓練においても,それぞれの特質に応ずる適切な指導を行なわなければならない。
 道徳教育の目標は,教育基本法および学校教育法に定められた教育の根本精神に基づく。すなわち,道徳教育は,人間尊重の精神を家庭,学校,その他社会における具体的な生活の中に生かし,個性豊かな文化の創造と民主的な社会および国家の発展に努め,進んで平和的な国際社会に貢献できる日本人を育成するため,その基盤としての道徳性を養うことを目標とする。

第4 養護・訓練
心身の障害に基づく種々の困難を克服させ,社会によりよく適応していく資質を養うため,養護・訓練に関する指導は,養護・訓練の時間はもちろん,学校の教育活動全体を通じて適切に行なうものとする。
 特に,養護・訓練の時間における指導は,各教科,道徳および特別活動と密接な関連を保ち,個々の児童または生徒の心身の障害の状態や発達段階に即して行なうよう配慮しなければならない。

第5 体育
健康で安全な生活を営むのに必要な習慣や態度を養い,心身の調和的発達を図るため,体育に関する指導ついては,児童または生徒の心身の障害の状態や発達段階に即して,学校の教育活動全体を通じて適切に行なうものとする。
 特に,体力の向上については,小学部の体育科および中学部の保健体育科の時間はもちろん,特別活動および養護・訓練においても,じゅうぶん指導するよう配慮しなければならない。

第2章 各教科

第1節 小学部
第1 各教科の目標ならびに各学年の目標および内容
各教科の目標ならびに各学年の目標および内容については,小学校学習指導要領第2章に示すものに準ずるものとする。
第2 各教科に関する指導計画の作成と各学年にわたる内容の取り扱い
各教科に関する指導計画の作成と各学年にわたる内容の取り扱いについては,小学校学習指導要領第2章に示すものに準ずるほか,次に示すところによるものとする。
1 国語

(1) 指導計画の作成に当たっては,国語の学習に関する基本的な事項と,養護・訓練に示す各事項との密接な関連を図り,児童の経験や言語の能力に応じて,適切な言語活動を組織するように配慮することが必要である。特に,低学年の内容については,その素地となる言語活動を養護・訓練に示す各事項と密接に関連させて取り扱い,指導の効果を高めるようにすることが必要である。

(2) 「聞くこと,話すこと」については,日常の会話のなかで,できるかぎり多くの機会をとらえて指導するようにするとともに,各学年を通じて,養護・訓練における聴覚の利用,読話および発音の指導と密接な関連を保ち,継続的に指導を行なうことが必要である。

(3) 読むことの指導に当たっては,読書活動を活発にし,読書の習慣を養うとともに,言語の能力を高め,心情を豊かにするようにじゅうぶん留意することが必要である。

(4) 作文を主とした指導に当たっては,正しい国語の表現に習熟させるとともに,思考力,創造力を育てるように配慮することが必要である。

(5) ことばに関する事項については,聞き,話し,読み,書く活動のなかに含めて指導することを原則とし,くり返し学習させることが必要と認められるものについては,養護・訓練における指導を基礎として,その成果を取り入れるようにすることが必要である。

(6) 内容の指導に当たっては,児童の聴覚障害の状態に応じた適切な音声,言語教材を用いるとともに,教育機器等の活用を図って,指導の効果を高めるようにすることがたいせつである。

(7) 話題や題材の選定に当たっては,児童の経験や関心の深いことがらを取り上げ,言語活動に対する児童の意欲を高めるようにすることが必要である。

2 社会

(1) 低学年の指導計画の作成に当たっては,児童の生活経験の範囲を考慮し,必要に応じ,関連する内容を総合的に取り扱い,指導の効果を高めることが必要である。

(2) 中学年および高学年における市(町,村),県,国,世界に関する指導に当たっては,学習の進度を考慮して児童の関心や能力に応じ,適切な内容を精選,集約して取り扱うことが必要である。

(3) 内容の指導に当たっては,児童の経験や言語の能力の不足を補うために,見学や観察の機会を多くするとともに,各種の視聴覚教材や資料を有効に活用することが必要である。

3 算数

(1) 内容の指導に当たっては,児童の経験や言語の能力を考慮し,必要に応じて,できるかぎり多くの具体的事実を取り上げて,それぞれの内容に関する事項の意味や,それらが用いられる場合について理解させることが必要である。特に,低学年において,言語の能力がじゅうぶんでない児童については,日常生活における経験を素材として,数量や図形に関心をもたせることがたいせつである。

(2) 高学年において,学習が遅れている児童の指導計画の作成に当たっては,学習の進度を考慮して,素材を精選し,基礎的な知識の習得と基礎的な技能の習熟に重点をおくことが必要である。

(3) 用語や記号については,その意味や使い方の理解が徹底するようにくり返して指導するとともに,算数で多く使われることばについても特に留意して取り扱うことが必要である。

4 理科

(1) 低学年の指導計画の作成に当たっては,児童の経験や言語の能力をじゅうぶん考慮し,身近な経験の中で,自然の事物,現象に関心をもたせることに重点をおくように留意することがたいせつである。

(2) 高学年において,学習の遅れている児童の指導計画の作成に当たっては,学習の進度を考慮して素材を精選し,指導の効果を高めるようにすることが必要である。この場合,他教科の内容との関連に留意することが必要である。

(3) 「物質とエネルギー」のうち,音に関する事項の指導に当たっては,児童の聴覚障害の状態に応じて適切な配慮を加えることが必要である。

(4) 内容の指導に当たっては,観察,実験などをできるだけ多く行ない,具体的事例を通して理解させることがたいせつである。また,観察,実験については,特に聴覚障害に起因する事故の防止について,じゅうぶん留意することが必要である。

5 音楽

(1) 指導計画の作成に当たっては,児童の聴覚障害の状態に応じて,適切な教材を選定し,いきいきと楽しく学習できるように配慮することが必要である。

(2) 内容の指導に当たっては,児童の聴覚障害の状態を考慮し,各種の補聴器や音響機器を利用し,養護・訓練における指導と関連を密にして,常に児童の聴く能力の伸長を図るようにすることが必要である。

(3) 各領域の内容の指導に当たっては,必要に応じて,身体表現を適切に取り入れることが必要である。

(4) 旋律や和声に関する事項の指導に当たっては,児童の聴覚障害の状態に応じて,無理のないように取り扱うことが必要である。なお,読譜については,固定ド読みで行なってもよい。

(5) 「歌唱」の指導に当たっては,児童の聴覚障害の状態を考慮し,音程や和音にこだわることのないように留意し,また,基本的な呼吸法や発声,発音については,児童の実態に応じて,養護・訓練との関連を密にして,適切に取り扱うことが必要である。

(6) 「歌唱」における歌詞の指導に当たっては,国語科における指導と関連して,ことばの理解を容易にするように配慮することが必要である。

(7) 各学年において示した楽器については,児童の聴覚障害の状態に応じて,必要な場合には他の適切なものに代替するように考慮することが必要である。

(8) 合奏教材は,児童の能力に応じて適切なものを選んだり,編曲したりすることが望ましい。

(9) 「鑑賞」の指導に当たっては,児童の聴覚障害の状態に応じて,適切な鑑賞教材を選定し,鑑賞能力を高めるようにすることがたいせつである。

(10) 「創作」の指導においては,児童の聴覚障害の状態に応じて,特に児童の創造的表現の意欲をつちかうようにすることがたいせつである。

6 図画工作

(1) 指導計画の作成に当たっては,できるだけ見学その他の経験によって,美を味わう機会や自然の観察,自然への感動,生活経験等を豊かにし,表現内容の拡充を図るとともに,美的情操を養うように留意することが必要である。

(2) 「鑑賞」の指導においては,児童の能力に応じて,資料の提示や説明のしかたにくふうを加え,話し合いが活発に行なわれるように留意することが必要である。

(3) 危険をともなう用具,機械の使用に当たっては,特に聴覚障害に起因する事故の防止について,じゅうぶん留意することが必要である。

7 家庭

(1) 指導計画の作成に当たっては,児童の経験や言語の能力を考慮し,必要に応じて素材を精選することが必要である。その際,特定の領域にかたよることのないように配慮することがたいせつである。

(2) 「家庭」の指導においては,家庭や寄宿舎等における児童の生活と密接に関連を保ち,日常生活における自分の役割や責任について,じゅうぶん理解できるように指導することが必要である。

(3) 作業を主とする指導に当たっては,特に危険をともないやすい用具,機械などを取り扱う際,聴覚障害に起因する事故の防止について,じゅうぶん留意することが必要である。

8 体育

(1) 指導計画の作成に当たっては,児童の聴覚障害の状態に応じ,児童の体力や健康状態を考慮して,必要な内容がかたよりなく学習できるようにすることが必要である。

(2) 前後の学年の児童をあわせて指導する場合には,児童の年齢および心身の発達段階を考慮して,内容を選定するように配慮することが必要である。

(3) 「水泳」の指導に当たっては,学校医との連絡を密にし,耳鼻の疾病の予防に留意するとともに,安全の保持にじゅうぶん配慮することが必要である。

(4) 「ボール運動」に関する事項のうち,審判については,笛,太鼓,旗等の活用を図ることが必要である。

(5) 「ダンス」に関する事項のうち,音楽に合わせて踊ることの指導に当たっては,音楽科の指導との関連を図り,児童の聴覚障害の状態に応じて,リズムがわかりやすい音楽を選ぶなどの配慮をすることが望ましい。

(6) 事故の防止,災害のときの行動のしかたなどの事項については,非常の際の合図や信号など,聴覚障害に関連して必要な心構えに関する事項を取り入れて適切に取り扱うことが必要である。

(7) 各種の運動の指導に当たっては,聴覚および平衡機能の障害に起因する事故の防止に留意することが必要である。

第2節 中学部
第1 各教科の目標ならびに各学年または各分野の目標および内容

1 各教科の目標ならびに各学年または各分野の目標および内容については,中学校学習指導要領第2章第1節から第9節までに示すものに準ずるものとする。

2 地域や学校の実態および生徒の進路,特性等により,特に必要がある場合には,この節第2に掲げる各教科のほかに,その他特に必要な教科を設けることができる。この場合において,中学校学習指導要領第2章第10節から第14節までに掲げる教科に相当する教科を設けるときは,当該教科の名称,目標,内容等について,その学校の設置者が中学校学習指導要領第2章第10節から第14節までに示すものに準じて定めるものとし,その他の教科を設けるときは,当該教科の名称,目標,内容等について,その学校の設置者が適切に定めるものとする。

第2 各教科に関する指導計画の作成と各学年または各分野にわたる内容の取り扱い
各教科に関する指導計画の作成と各学年または各分野にわたる内容の取り扱いについては,中学校学習指導要領第2章に示すものに準ずるほか,次に示すところによるものとする。
1 国語

(1) 学習の遅れている生徒の指導計画の作成に当たっては,生徒の実態に応じ,特に必要がある場合,小学部高学年の内容に関する事項を加えるように配慮するものとする。その際,内容の各領域の相互の関連を図るとともに,生徒の実態に応じて,いずれかの領域に重点をおくことも考慮することが必要である。

(2) 「聞くこと,話すこと」の指導においては,生徒の実態に応じ,養護・訓練における指導との関連を図るとともに,適切な活動を選定して,聞き,話す意欲をつちかうように配慮することがたいせつである。

(3) 「読むこと」,「書くこと」の指導に当たっては,読書活動が活発に行なわれるようにするとともに,文章を書く機会をできるだけ多くするように配慮することが必要である。

(4) 「ことばに関する事項」のうち,語句,文や音声に関するものは,生徒の言語の能力を考慮し,必要に応じて,その素地的なものを,養護・訓練において指導した後,取り扱うことが必要である。

(5) 各学年の内容の各領域に充てる授業時数の国語の授業時数に対する割合については,生徒の実態に応じて適切に調整して扱うことが望ましい。

(6) 「読むこと」の指導における古典に関する教材については,生徒の実態を考慮して選定し,適切に取り扱うことが必要である。

2 社会

(1) 学習が遅れている生徒の指導計画の作成に当たっては,生徒の実態に応じ,特に必要がある場合,小学部高学年の内容に関する事項を加えるように配慮するものとする。その際,各分野の内容との関連を図るように素材を精選して,指導の効果を高めるようにすることが必要である。

(2) 内容の指導に当たっては,生徒の実態を考慮して,各種の視聴覚教材や資料を活用したり,見学,調査を行なったりして,学習の効果を高めるようにすることがたいせつである。

(3) 「地理的分野」の内容の指導に当たっては,縮尺,方位,地図記号の理解や分布図の読み方などの基礎的能力を得させ,それらを活用して指導の効率を高めるように配慮することが必要である。

(4) 「歴史的分野」の内容の指導に当たっては,学習の進度を考慮し,必要に応じて基本的な指導事項に重点をおいて素材を精選し,学習の効率を高めるようにすることが必要である。

(5) 「公民的分野」の内容の指導に当たっては,生徒の経験や時事問題などを通して,できるだけ平易に取り扱い,基礎的教養をつちかうようにすることが必要である。

3 数学

(1) 学習が遅れている生徒の指導計画の作成に当たっては,生徒の実態に応じ,特に必要がある場合,小学部算数科の内容に関する事項を加えるように配慮するものとする。その際,進度を考慮して,基礎的な概念や原理・法則の理解に重点をおくようにすることが必要である。

(2) 原理・法則や処理のしかたの指導に当たっては,具体的な素材を多く用いて,数学的な考え方を育てるようにし,公式などの単なる記憶や機械的な計算操作にかたよらないように留意することがたいせつである。

(3) 用語や記号についても,その意味や使い方をよく理解させるように,くり返し指導することが必要である。また,数学科の内容に関連して多く使われることばについては,特に留意して指導するとともに,論理的な思考にともなう簡潔,明確な文章に慣れさせるようにすることがたいせつである。

4 理科

(1) 学習の遅れている生徒の指導計画の作成に当たっては,生徒の実態に応じ,特に必要がある場合,小学部高学年の理科の内容に関する事項を中学部の理科の各分野に取り入れて取り扱うように配慮するものとする。その際,進度を考慮し,必要に応じて素材を精選し,科学的な見方,考え方と基本的な概念を習得させることに重点をおくようにすることが必要である。

(2) 原子と分子,または電流など,直接に目で見ることができないことがらを多く含む事項の指導に当たっては,視聴覚教材等の活用を図って,理解を容易にすることが必要である。

その際,それらのことがらについての推論や理由づけについて,じゅうぶん留意して指導することがたいせつである。

(3) 観察,実験,野外調査の指導に当たっては,特に聴覚の障害に起因する事故の防止について,じゅうぶん留意することが必要である。

5 音楽

(1) 指導計画の作成に当たっては,生徒の聴覚障害の状態に応じて,適切な教材を選定し,生徒が意欲をもって学習できるように配慮することが必要である。

(2) 内容の指導に当たっては,生徒の聴覚障害の状態を考慮し,養護・訓練における指導と密接に関連させ,各種の補聴器や音響機器を利用して,常に生徒の聴く能力を活用するようにすることが必要である。

(3) 各領域の内容の指導に当たっては,生徒の聴覚障害の状態を考慮し,必要に応じて,身体表現を適切に取り入れることが必要である。

(4) 旋律や和声に関する事項の指導に当たっては,生徒の聴覚障害の状態に応じて,無理のないように取り扱うことが必要である。なお,読譜については,固定ド読みで行なってもよい。

(5) 「器楽」の指導における楽器については,小学部の基礎の上に立って発展させ,生徒の実態を考慮して適切な楽器を加えることが望ましい。

(6) 「創作」の指導に当たっては,生徒の実態に応ずるように留意し,特に生徒の創造的表現の意欲をつちかうことがたいせつである。

6 美術

(1) 内容の指導に当たっては,生徒の実態を考慮し,個性的,創造的表現力を伸ばすように配慮することが必要である。

(2) 「鑑賞」の指導に当たっては,すぐれた美術品に接する機会を多くし,作品にはいろいろな美しさやよさがあることを感じ取らせるようにすることが必要である。また,美術文化への関心を高める指導については,生徒の実態に応じ,言語を通しての理解に適切な配慮を加えることがたいせつである。

(3) 危険をともなう用具,塗料,火気などの使用に当たっては,特に聴覚障害に起因する事故の防止について,じゅうぶん留意することが必要である。

7 保健体育

(1) 指導計画の作成に当たっては,生徒の聴覚障害の実態に応じ,各運動の特性,生徒の体力や健康状態,運動経験,男女の特性を考慮して必要な内容がかたよりなく学習できるようにすることがたいせつである。

(2) 前後の学年の生徒を合わせて指導する場合には,生徒の年齢および心身の発達段階を考慮して内容を選定するように配慮することが必要である。

(3) 「球技」に関する事項のうち,審判については,生徒の聴覚障害を考慮して,適切なくふうを加えることが必要である。

(4) 「水泳」の指導に当たっては,学校医との連絡を密にし,耳鼻の疾病の予防に留意するとともに,安全の保持にじゅうぶん配慮することが必要である。

(5) 「ダンス」に関する事項のうち,音楽に合わせて踊ることの指導に当たっては,音楽科における指導との関連を図り,生徒の聴覚障害の状態に応じて,リズムがわかりやすい音楽を選ぶなどの配慮をすることが望ましい。

(6) 「保健」のうち,生活の安全については,特に非常の際の合図や信号など,聴覚障害に関連して必要な心構えに関する事項を取り入れ,適切に取り扱うことが必要である。

(7) 各種の運動の指導に当たっては,聴覚および平衡機能の障害に起因する事故の防止に留意することが必要である。

8 技術・家庭

(1) 指導計画の作成に当たっては,生徒の家庭や寄宿舎等における生活の実態を考慮して教材を選択し,学習の成果が生活における実践に生かされるようにすることが望ましい。

(2) 男子向きの「電気」および女子向きの「家庭電気」の指導においては,補聴器も取り上げることが望ましい。

(3) 電気機器,ガス,機械などを取り扱う場合には,特に聴覚障害に起因する事故の防止について,じゅうぶん留意することが必要である。

9 外国語

(1) 指導計画の作成に当たっては,生徒の実態を考慮し,必要に応じて内容の程度を無理のない範囲にとどめることができる。

(2) 指導計画の作成に当たっては,聞くこと,話すこと,読むことおよび書くことの指導のうち,生徒の実態を考慮し,必要に応じて,読むこと,書くことの指導に重点をおくように配慮するものとする。また,言語材料を選定するに当たっては,生徒の国語の能力を考慮して適切に取り扱うことが必要である。

(3) 内容の指導に当たっては,生徒の国語の能力を考慮するとともに,視聴覚教材等の活用を図って,学習の興味や関心を深め,指導の効果を高めるようにすることが必要である。

(4) 発音の指導に当たっては,補聴器を活用するとともに構音図等も利用することが必要である。なお,発音の正確さについては過度の要求をしないように配慮することがたいせつである。

第3章 道徳

小学部または中学部の道徳の目標,内容および指導計画の作成と内容の取り扱いについては,小学校学習指導要領第3章または中学校学習指導要領第3章に示すものにそれぞれ準ずるほか,次に示すところによるものとする。
1 児童または生徒の聴覚の障害に基づく種々の困難を克服して,強く生きようとする意欲を高め,明るい生活態度を養うとともに,健全な人生観の育成を図ることが必要である。
2 各教科,特別活動および養護・訓練との関連を密にし,経験の拡充を図り,広い視野に立って,道徳的判断や行動ができるように指導することが必要である。

第4章 特別活動

小学部または中学部の特別活動の目標,内容および指導計画の作成と内容全体にわたる取り扱いについては,小学校学習指導要領第4章または中学校学習指導要領第4章に示すものにそれぞれ準ずるほか,次に示すところによるものとする。
1 小学部における児童活動および中学部における生徒活動においては,適宜他の学級や学年と合併するなどして,少人数からくる種々の制約を解消し,活発な集団活動が行なわれるようにすることが必要である。
2 児童または生徒の経験を広め,社会性を養い,好ましい人間関係を育てるため,小学校の児童または中学校の生徒と活動をともにする機会を積極的に設けるようにすることが望ましい。

第5章 養護・訓練

第1 目標
児童または生徒の心身の障害の状態を改善し,または克服するために必要な知識,技能,態度および習慣を養い,もって心身の調和的発達の基盤をつちかう。

第2 内容
A 心身の適応
1 健康状態の回復および改善に関すること。
2 心身の障害や環境に基づく心理的不適応の改善に関すること。
3 障害を克服する意欲の向上に関すること。
B 感覚機能の向上
1 感覚機能の改善および向上に関すること。
2 感覚の補助的手段の活用に関すること。
3 認知能力の向上に関すること。
C 運動機能の向上
1 肢体の基本動作の習得および改善に関すること。
2 生活の基本動作の習得および改善に関すること。
3 作業の基本動作の習得および改善に関すること。
D 意思の伝達
1 言語の受容技能の習得および改善に関すること。
2 言語の形成能力の向上に関すること。
3 言語の表出技能の習得および改善に関すること。

第3 指導計画の作成と内容の取り扱い
1 指導計画の作成に当たっては,次の事項について配慮するものとする。
(1) 個々の児童または生徒の心身の障害の状態,発達段階および経験の程度に応じて,それぞれに必要とする第2の内容の具体的な事項を選定し,個別にその指導の方法を適切に定めるようにすること。
(2) 各教科,道徳および特別活動における指導と密接な関連を保つようにし,組織的,計画的に指導できるようにすること。
(3) 児童または生徒の心身の障害の状態により,特に必要がある場合には,専門の医師およびその他の専門家と密接な連絡をとり,適切な指導ができるようにすること。
2 第2に示す内容については,おおむね次に示す事項により指導計画を作成するものとする。
(1) 内容のBおよびDについては,
ア 言語発達の基礎となる認知能力の育成。
(ア) 対人関係をもち,意思の疎通の態度ができること。
(イ) 身のまわりの事物やことがらについて関心をもつこと。
(ウ) 事物を比較したり,見分けたり,分類したり,順序づけたりすること。
(エ) 事物やことがらを記憶すること。
(オ) 身のまわりの事物やことがらについて,その性質,目的,因果関係などに気づくこと。
(カ) 注意を継続的に集中すること。
イ 聴覚を利用する能力および態度の養成。
(ア) 音,音声に注意すること。
(イ) いろいろな音,音声を知り,聴き分けること。
(ウ) 補聴器を有効に使うこと。
ウ 読話する能力や態度の養成。
(ア) 話し手の表情や口形に注意すること。
(イ) 読話できる基礎的なことばをふやすこと。
(ウ) 話の場面や話の前後関係などを手がかりとして読話すること。
エ 正しく発音する能力および態度の養成。
(ア) 息を効果的に使用すること。
(イ) 自然で安定した声を出すこと。
(ウ) 国語の音をひととおり正しく発音すること。
(エ) 語句や文を話すこと。
オ 言語の形成
(ア) ことばの意味や使い方に関心をもつこと。
(イ) 身近な経験や日常生活に必要な事物やことがらに関することばを理解すること。
(ウ) 国語の基本となる語法の基礎を知ること。
(2) 内容のAについては,
ア 聴覚の障害およびこれに基づく意思疎通の困難などによる心理的不適応,情緒的不安定等を防ぎまたは改善すること。
イ 自己の障害を認識し,障害を克服しようとする積極的な意欲をつちかうこと。
(3) 内容のCについては,
平衡機能の障害などに基づく平衡運動の不全または聴覚障害による身体諸機能の協応動作の遅滞などを改善すること。
3 上記2に示す(1)のイの事項の指導に当たっては,聴力の変動に常に注意をはらうとともに,現に耳科疾患を有し,または聴力が低下するおそれのある児童または生徒の補聴器の使用のしかたについては,専門の医師の指示によることが必要である。
 4 上記2の(1)に示すア,イ,ウ,エおよびオの各事項については,それぞれ適切な学習活動を組織し,相互の調和を図りながら指導するとともに,国語科の指導と密接に関連させて取り扱うようにすることが必要である。なお,必要に応じて,ア,イ,ウ,エおよびオの各事項を総合的に取り扱ったり,それぞれを別個に取り扱ったりして,指導の効果を高めるようにすることがたいせつである。
 5 内容の指導に当たっては,児童または生徒の心身の発達の状態に留意して学習に対する自発性や意欲を育てるように留意することが必要である。
 6 内容の指導に当たっては,個々の児童または生徒の心身の障害の状態および能力・適性等に応じた具体的な目標を明確にし,児童または生徒の意欲的な活動を促すようにすることが必要である。
 7 養護・訓練の時間の指導は,専門的な知識,技能を有する教師が中心となって担当し,全教師の協力のもとに,効果的な指導を行なうようにすることが必要である。

○文部省告示第149号

 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第73条の10の規定に基づき,盲学校小学部・中学部学習指導要領(昭和46年文部省告示第77号),聾学校小学部・中学部学習指導要領(昭和46年文部省告示第78号)並びに養護学校(精神薄弱教育)小学部・中学部学習指導要領,養護学校(肢体不自由教育)小学部・中学部学習指導要領及び養護学校(病弱教育)小学部・中学部学習指導要領(昭和46年文部省告示第79号)の一部を次のように改正する。
 
 昭和47年10月27日
 
 文部大臣 稻葉 修
 
 盲学校小学部・中学部学習指導要領,聾学校小学部・中学部学習指導要領,養護学校(精神薄弱教育)小学部・中学部学習指導要領,養護学校(肢体不自由教育)小学部・中学部学習指導要領および養護学校(病弱教育)小学部・中学部学習指導要領の一部をそれぞれ次のように改正する。
 第1章第2の1中「児童または生徒の」の次に「人間として調和のとれた育成を目ざし,その」を加え,同章第2中8を9とし,7を8とし,6の次に次のように加える。

7 第2章以下に示す各教科,道徳,特別活動および養護・訓練の内容に関する事項の指導に当たっては,特に示す場合のほか,それぞれの目標および内容の趣旨を逸脱しない範囲内で,児童または生徒の実態を考慮して,重点のおき方に適切なくふうを加え,指導の効果を高めるように努めるものとする。