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発達障害のある子どもへの配慮

災害時における障害のある子どもへの配慮

1 発達障害のある子どもについて

 発達障害とは、発達障害者支援法には「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されていますが、ここでは、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)等の発達障害を中心に説明します。自閉症等については、別途、自閉症の項で説明します。
 LDとは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指します。LDは、その原因として、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があることが推定されますが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではありません。ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力又は衝動性・多動性を特徴とする障害で、社会的な活動や学校生活を営む上で、著しい困難を示す状態です。その状態が通常2歳になる前に現れ、継続するものであるとされています。ADHDにおいても中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定されています。
 LDやADHD等の発達障害のある子どもたちは、目に見える身体的な障害等がないため、本人はとても困っているのに、周囲の人からは理解されにくいという面があります。
 LDやADHDのある子どもたちの中には、「先の見通しが持てない状況」や「普段の生活と異なる状況」などに大きな不安を感じ、環境の変化に順応することがとても苦手な子どもたちがいます。また、「静かにしておくべき時にじっとしていられない」、「騒がしい場所では落ち着かない」、「些細なことに興奮してしまう」、「小さな音にも過敏に反応してしまう」といった困難さがある子どももいます。こうした困難さを理解し、その特性に応じたかかわりを工夫することが大切です。

2 LDやADHD等の発達障害のある子どもへの配慮

 LDやADHD等の発達障害のある子どもは、その障害の特性から日常生活でも様々な困難を抱えています。特に、震災後のように家庭や学校、地域の様子が大きく変わってしまう状況では、さらにその困難さが増している可能性があります。それまでの支援・指導である程度落ち着きを見せていた子どもも、落ち着かなくなることも考えられます。例えば以下のような特性に応じたかかわりを工夫することで、子どもたちの不安や緊張は軽減していきます。

(1)コミュニケーション面における配慮

 被災後の状況は、それ以前の生活環境とは大きく変わってしまいます。大切な話も集中して話を聞くことがさらに難しくなる可能性があります。話をする時は、子どもの顔を見て短い言葉や文章でわかりやすく具体的に伝えます。はじめにいくつ話すのか知らせておくと、子どもは聞く見通しが持てます。
 子どもの話を聞くときは、途中で話を遮らず最後まで聞くようにします。焦らせずにじっくりと一つ一つ内容を子どもと確認しながら聞くようにすることも大切です。

(2)行動面における配慮

 感情のコントロールが難しい子どもや過敏さがある子どもは、慣れない場所や騒々しい場所では、さらに落ち着きのなさや不安傾向が強くなります。まず気持ちを落ち着けることができる物や場所、活動を探してみます。興奮している状態の時には、不安な気持ちを受け止め、落ち着くための方法を伝えるようにします。不安が強い時は、大人でも冷静な判断を失いがちです。してはいけないことを大声で叱責するのではなく、どうすればよいかを具体的に指示するようにします。

(3)学習活動等における配慮

 先の見通しがもてないと不安になる子ども、集中を持続することが苦手な子どもは、学習活動等への参加が以前よりも難しくなるかもしれません。できるはずだからとただ叱咤激励するような対応ではなく、以前はできていたことでも、できない子どもに丁寧に指導するようなかかわりも必要な場合があります。例えば、活動内容等を写真や図で示したり、文字で工程を書いたりして見通しを持たせます。活動を短く区切り、何段階かに分け、ひとつずつ最後まで取り組める経験を積ませ、自信や意欲を回復させます。その際、最後までできたことを認めるだけでなく、取り組んでいる過程も認めるようにします。

(4)心理面における配慮

 LDやADHD等の発達障害のある子どもは、慣れた環境で落ち着いているときには、障害のない子どもと同じように活動できる場面が多く見られます。しかし、初めての場面や不慮のできごと、失敗経験などで頭に描いた通りに事が運ばない状況になると、情緒が不安定になり、適応の困難さが顕著に現れることとなります。
 こうした特性を理解し、①不安定な状態にある子どもの気持ちや感情をしっかりと受け止めること、②困ったときの対処の仕方を丁寧に教えること、③できることを増やすことにより認められる経験を増やすなど安心感を得させることにより信頼関係を構築していくことがとても重要になります。

(2024/02/01更新)

研究企画部