●知的障害養護学校 中学部 [総合的な学習の時間]
生活地図を広げよう
デジタルカメラを活用した地図作り
[生活地図を広げよう(1)〜学校のまわりには何があるかな?〜]
- ■学習活動
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もくじ
概要/キーワード/学部・学年・対象児/単元の目標/新学習指導要領との対応/授業展開の基本的な考え方/メディア活用の意義/メディア利用環境/学習展開/学習活動の実際、および学習者の反応/学習評価の方法とその結果/授業の成果/今後の課題
概要
図:作成した地図
知的障害のある生徒のなかには、家と学校の往復以外の活動範囲が限られ、生活に幅の少ない生徒も多い。まず身の回りから情報を集め、そのなかから楽しみを見つけて自らやってみる経験を重ねることから生活地図の拡大と将来の余暇の充実をめざし、より豊かな生活につなげたいと考えた。
そこで、実体験と視覚情報が優位である点を考慮して、実際に歩いたり乗り物に乗ったりしてまわった地域の主な店舗、施設等をデジタルカメラやビデオに収め、それをもとに地図作りを行なった。また、その地図のなかから生徒自身が行きたい場所を選び、計画、実施することにした。
<指導形態:集団指導>
<実施期間:平成13年10月12日〜12月14日 42時間>
学部・学年・対象児
- 中学部1年8名
- 8名の障害の程度は日常生活面で全般にわたって支援を必要とする生徒から、ほぼ自立している生徒まで幅広い。また、学習面でも能力差があり、少人数でのグループ学習を行っている。そのため、学年全体で取り組む学習活動では、一人ひとりの能力や課題を考慮した活動を用意する必要がある。
単元の目標
- デジタルカメラ等を利用して情報を集め、学校周辺から外に向かって地図を作っていく。
- 地図のなかから「行きたい場所」「したいこと」を選び、いろいろな場所での経験を増やす。
授業展開の基本的な考え方
生徒一人ひとりの発達段階に応じてそれぞれ目標は違うが、具体的な視覚情報を重視することで単元に対する興味・関心を引き出し、各々のレベルでより主体的に取り組もうとする意欲を高めたい。また、情報収集→地図作り→校外学習の計画→実施、という活動の流れを繰り返すことで見通しをもった活動にしていく。
メディア活用の意義
デジタルカメラ、ビデオ等の操作は比較的簡単であること、その場で撮したものを確認できることから、生徒の興味・関心が非常に高く、情報収集に意欲的に取り組める。また、生徒自身がデジタルカメラで撮影した写真は必要に応じたサイズ調整をして利用ができるので、様々な形の視覚情報として活用できる。
学習展開
| 時間 | 学習展開 | 学習活動 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 3 | 学校の周りを探検しよう |
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| 3 | 地図を作ろう |
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| 3 | 校外学習を計画しよう |
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できるだけ生徒からの意見をいかせるようにする。指導者からの指示は、すべての生徒が活動可能であるかどうかなど友だちへの配慮に気付かせたり、時間的な制約を示すなどの最小限にとどめる。 |
| 5 | 校外学習に行こう |
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移動しながら地図上での道順、現在地などを随時確認し、地図の活用を意識付ける。また、現在もっている地図の範囲から、さらに地図を拡大したい、という意欲を高める。 |
※この展開を3回繰り返す
学習活動の実際、および学習者の反応
図:デジタルカメラによる撮影の様子
図:デジタルビデオによる撮影の様子
(1)学校の周りを探検しよう
係活動は探検に出かける時間ごとに担当者を決定することにしたが、毎回誰にするか困るほど立候補が多かった。デジタルカメラの操作では、まったく補助を必要としない生徒から、カメラに手を添えて安定させたり対象をフレームの中に入れる支援が必要な生徒まで様々だったが、次回もまたやりたい、という意欲が強く感じられた。また、普段は歩行中も注意が散漫で他の生徒から遅れがちな生徒が、カメラのモニターをのぞくことで集中して歩くことができ、歩調を合わせられるという思わぬ発見もあった。また、探検をしながら「あれは何?」「次を発見!」「これも写真撮って」などの発言も多くなっていった。
(2)地図を作ろう
学校からの道順をたどりながら、見てきたものを写真と対照させることで思い出し、探検しながら記入した縮小地図を参考に写真をはり付けて拡大地図を作っていった。道のどちら側にあったかなどあいまいな点もあったが、おおむね完成させることができた。その拡大地図と照らし合わせながら縮小地図を作成する時には、拡大地図にはった写真と同じものを小さなシールに作り直してはり付けるようにした。生徒それぞれが興味をもって取り組めた課題であったが、なかでも日頃の教科学習の様子からは想像できない力を発揮する生徒もいて、改めて視覚情報の重要性を感じさせられた。
図:作成した地図
(3)校外学習を計画しよう
地図のなかから昼食を食べる場所、遊びたい場所などを選んだが、そのときにも視覚情報が優先しており、店名、場所名では選択の難しい生徒も写真を手がかりにしていくつかの候補のなかから選んだり、その場所を拡大地図上で確認したりする活動により主体的に参加できた。計画ができると、すぐにでも校外学習の日がやってくるかのように勘違いし(来週の計画を今週の同じ曜日と間違って)財布を自分から準備して学校に持ってくるなどの失敗もあったが、それも活動に対する積極性、自主性の現れであると指導者一同で喜んだ。
(4)校外学習に行こう
表紙に目的地などの写真を入れたしおりを作成し、それを繰り返し見ることで校外学習への期待感を高めたり、拡大地図やしおりに綴じ込んだ縮小地図を利用して何度も道順などを確認してから実施した。当日には昼食場所やその他の活動場所で生き生きとした表情を見せ、楽しみにしてきたことが実現できた満足感が伝わってきた。
授業の成果
デジタルカメラ等を利用して情報を集めて地図を作っていく活動に対しては、予想以上の反応があった。情報収集の方法として自分の力で扱える道具を使う、ということが学習に取り組む意欲や、より主体的な活動につながったと考えられる。
また、地図のなかから「行きたい場所」「したいこと」を選ぶ際に視覚情報を手がかりにすることで、自己決定力の育成を図ることもできた。校外学習で実際に体験したことを、今度は家族と一緒にしようと考えたり、「次はここに行きたい」という楽しみをもつことができる生徒もいた。
繰り返しの活動は、活動の流れから次の活動を予測して次時の予定を先に確認するなど自主的に取り組んだり、校外学習を楽しみにするなど見通しをもった活動にもつながっている。
今後の課題
今回は学校を中心とした生活地図の拡大をめざしたが、余暇の充実を考えると本来中心となるべきは自宅であり、自宅を中心とした生活地図の拡大が次の課題となる。そのためには家族の協力も大切なので、学校での活動の目的を十分に理解してもらうことが重要だと考えている。
また、今回活用したデジタルカメラやビデオは操作も簡単で利用しやすいものではあるが、実生活で生徒が利用する機会は極めて少ない。また、学校で経験できるWebページの検索による情報収集も同様である。余暇のひとつとしてコンピュータが広く一般的になってきているものの知的障害のある生徒にとってはまだまだハードルが高いので、タウン紙など雑誌からの情報や電話での問い合わせなど、現状で利用可能な情報収集の方法も考慮に入れた活動を考えていきたい。

