肢体不自由養護学校 小学部 [生活単元学習]
私は写真屋さん。
みんなの写真を撮ってやろう [あさひ祭(文化祭)を成功させよう。]
- ■支援機器
その他- ■学習活動
コミュニケーションする
もくじ
概要/キーワード/学部・学年・対象児/単元の目標/新学習指導要領との対応/授業展開の基本的な考え方/メディア活用の意義/メディア利用環境/学習展開/学習活動の実際、および学習者の反応/学習評価の方法とその結果/授業の成果/今後の課題
概要
授業の様子
上肢に運動障害のある子どもにとって、自分で写真を撮ることは、困難なことが多く、経験させることができなかった。デジタルカメラには、通常の銀塩カメラと比べ、コンピュータなどのデジタル機器との連携・モニター画面を見ながらの撮影・その場で出力できるなどの利点がある。これらのデジタルカメラの利点を生かすことで、上肢に運動障害のある子どもが、写真撮影を経験することが可能であった。今回の実践で、写真の撮影は、単に記録するという意味だけではなく、そこから多くの人とのコミュニケーションが生まれる可能性も秘めていることが確認された。
<指導形態:一斉指導>
<実施期間:平成13年11月19日〜12月5日 計10時間の指導>
学部・学年・対象児
- 小学部A児 4年 女 中枢性運動障害
- 不随意運動を伴いながらも腕や手を曲げたり、伸ばしたりすることはできるが、指先の細かな作業は難しい。自作した棒スイッチを操作することができる。著者の自作したコンピュータのソフトで○△□の弁別や色の異同弁別は可能である。現在、線図形の異同弁別を学習している。
- 小学部B児 2年 男 先天性筋疾患・ステージ7
- 指先を尺取り虫様運動で動かすことはできるが、筋力の低下のため腕を上げることは困難である。自作した棒スイッチやマウスを操作することができる。コンピュータを使っての学習は好きである。
単元の目標
自作した棒スイッチを倒すことで、デジタルカメラのシャッターが切れることを理解し、積極的に写真を撮ることができる。また、取った写真を教師と一緒にみんなに届けることができる。
メディア活用の意義
自分で写真を撮るという経験は、上肢に障害のある子どもにとって、経験することができなかったことである。デジタルカメラは直接ファインダーをのぞかなくても、液晶画面にファインダーで覗いたときと同じ画像が映るので、撮りたい画面を確認しながら撮影することができる。また、デジタルカメラに接続したWing-QV(群馬県教育センター特別支援教育G主任指導主事 松本 廣氏の開発)を使い、非常に小さくて押すのに指の高度な巧緻性が要求されるカメラ本体のシャッターボタンの代わりに、自分の使いやすいスイッチでシャッターを切ることができる。すなわち、デジタルカメラを棒スイッチなどの外部スイッチでの操作を可能とするWing-QVを使用することにより、通常の銀塩カメラでは困難であった、「構図を決めて、シャッターを押す。」という自分で写真を撮ったという実感の待てる操作が対象児にもおこなうことができるようになった。また、その場でプリンターを使って印刷することにより、知的障害を伴う子どもでも、記憶が即時再生され、「自分の撮った写真が出来上がった。」という達成感を持ちやすい指導が実施できた。
メディア利用環境
- コンピュータ 自作機1台
- デジタルカメラ CASIO QV-2900UX
- プリンター EPSON PM-900C
- モニター用テレビ 2台用
- 補助入力装置 Wing-QV 棒スイッチ
図:主要メディア
図:Wing-QVの外観(開発者:群馬県教育センター特別支援教育G主任指導主事 松本 廣氏)
学習展開
| 時間 | 学習段階 | 学習活動 | 指導上の留意点 |
|---|---|---|---|
| 4 | 機器に慣れ、写真を自分で撮ることができることに気づく。 | デジタルカメラとスイッチの操作に慣れ、写真を撮ることを意識させる。 |
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| 2 | 楽しみながら、写真を撮る。 | 本番同様のセッティングで操作することに慣れ、楽しく写真を撮らせる。 |
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| 2 | いろいろな人とふれあいながら、楽しく写真を撮る。 | あさひ祭(グループ企画:カラオケ・コスプレ・写真館)に来たお客さんの写真を撮ってあげたり、一緒に写真をとったりする。出来上がった写真を配る。 |
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| 2 | 自分たちが写真をとることができるようになった、記念として、写真を撮る。 | カラオケ・コスプレ・写真館を一緒におこなったメンバーで、記念に写真を取りあう。 |
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学習活動の実際、および学習者の反応
写真1・2は、実際に写真を撮っている場面である。
写真1:デジタルカメラのファインダーを見ながら棒スイッチを倒そうとしているところ。
写真2:撮る人用テレビの画面を見ながら棒スイッチを倒そうとしているところ
このように手や体を動かして写真を撮っていた。映っていないが、向かって右側手前では、写真をプリンターで印刷している。自分たちが撮った写真がすぐに出来上がり、手元に来てから、お客さんのところに配りに行った。他の写真を撮る係の子どもも、写真を撮ることに興味のある子が多く、写真を撮りたくて次に自分の番が来るのを心待ちにしていた。写真が撮れると、担任だけでなく、写真を撮ってもらった人からも賞賛してもらっていた。
撮られる側の人々にも、テレビを用意し、液晶画面を映すようにしたので、子どもの視線がカメラの方向に向きやすく、よい写真が多く撮れ、好評だった。
学習評価の方法とその結果
あさひ祭で、普段味わうことができない、いろいろな楽しい思いを経験することができた。その中でも、本児たちの担当していた、写真館では「写真を撮る」という初めての経験をすることができた。対象とした2名の子どもは、棒スイッチを倒せば、フラッシュが光り、写真が撮れることはよく理解していた。2名とも積極的に写真を撮っていた。
子どもたち自身が自らシャッターを切り、撮影することで、来校した人も興味を持ち、そのことがきっかけとなり、多くの人々とふれあうきっかけができ、普段経験していない不特定の人々とコミュニケーションを図ることができた。
授業の成果
この学習を行って以来、デジタルカメラを教師が使っていると、自信を持って「自分が撮る」と、教師に伝えるようになった。自分の力で写真を撮ることができたという達成感が、本単元を終えてからも本児たちによい影響を与えている。他の学習場面でも積極性が出てきており、自分の力でやり遂げようとする気持ちが強くなった。写真を撮ることを趣味にするかどうかは、本児たち自身の今後の問題ではあるが、自分の力でできることや、興味関心から趣味につながる選択肢が増えたことは、たとえそれが補助的な機器に頼る必要があったとしても、生活の質の向上につながるものと思われる。
今後の課題
A児に関しては、棒スイッチボードでコンピュータを使った弁別学習をおこなっていることもあり、スイッチ操作には慣れていたが、それでも不随意運動でスイッチを倒してしまうこともあった。不随意運動でスイッチを倒してしまうことがもっと少なくなるように、棒スイッチボードを改良するか、他のスイッチを考える必要がある。
B児に関しては、筋力が弱いので、棒スイッチよりも、もっと軽いスイッチとしたほうがよいと思われる場面もあった。操作のしやすさを考え、軽いスイッチの製作等スイッチを改良させる必要がある。
学校内の行事や学習の中で写真を撮る機会はこれからも多々ある。これを1つのきっかけとして、行事の折りに本児たちを写真係として明確な役割を担わせようと考えている。写真を撮らせることで、障害が重い子どもたちでも、今まで受け身であった行事への参加から、1つの役割を持った参加へと行事の参加の仕方について変化を持たせたい。

