研究ページ

令和元年度より実施する基幹研究の紹介

研究紹介

 本研究所で実施する研究において、より教育現場のニーズに対応することを目的として2019年1月に実施した「2019年度に研究所が実施する研究課題等に係る意見」調査では、多くの方々よりご回答いただきましたことを心から御礼申し上げます。頂戴した貴重なご意見やご要望を踏まえて、新規課題における今後の取組みについて紹介します。

 

1.基幹研究「知的障害特別支援学級担当者サポートキットの開発-授業づくりを中心に-」(令和元年度~令和2年度)

 研究代表者 涌井 恵

 

 本研究に対して、多くの機関から貴重なご意見、ご要望を頂戴し、心より感謝申し上げます。さて、本研究では、特に特別支援教育経験の少ない知的障害特別支援学級担任の専門性向上を支援することを目的に、授業づくりを中心とする専門性向上に資する資料やツールをまとめた「サポートキット」の開発を目指しています。

 皆様からは、本研究成果への期待と併せ、活用しやすい内容・構成・示し方などについて貴重なご意見をいただきました。本研究では、国語と算数・数学の授業づくりを中心に、指導計画の作成や教育課程の編成についても分かりやすく示すとともに、学習場面の写真や教材例など活用しやすい示し方を工夫したいと考えています。また、知的障害特別支援学級担任以外の皆様も活用できることを念頭に、研究を進めていきたいと考えております。

なお、今回の研究対象ではありませんが、自閉症・情緒障害特別支援学級に関するご意見もいただきました。本研究所全体の今後の研究計画の参考とさせていただきます。

 

2.基幹研究「小・中学校における肢体不自由のある児童生徒への指導及び支援のための地域資源を活用した授業改善に関する研究」(令和元年度~令和2年度)

研究代表者 吉川知夫

 

本研究に対して、多くの機関からご意見、ご要望をいただきました。ありがとうございました。さて、本研究では、小・中学校等に在籍する肢体不自由のある児童生徒に対して、特別支援学校のセンター的機能をはじめとした地域資源を活用した授業改善の在り方を検討します。これまでの肢体不自由班の研究から、小・中学校で肢体不自由のある児童生徒を担当する教員は、通常の学級では教科学習時の姿勢保持や教材教具の工夫、体育の授業への参加の仕方や学習評価、特別支援学級では自立活動の指導や個別の指導計画の作成・活用等に課題を抱えている教員が多いことが示されています。

今回の調査で多くみられた意見や要望として、運動・動作や視覚認知等の肢体不自由児の特性を踏まえた指導、自立活動の指導と教科学習との関連、教材・教具の工夫、個別の指導計画の活用、医療や福祉機関との連携、交流及び共同学習の効果的な進め方に関すること等が挙げられました。

これらの意見を踏まえて、特別支援学校のセンター的機能の他、地域の医療・福祉機関や大学、高専等も含め、教育活動を支援する「地域資源」を活用した授業改善の在り方について研究を進めます。通常の学級及び特別支援学級における取組から、肢体不自由児の特性に応じた指導の在り方を具体的な実践事例を含めてモデルを提示し、肢体不自由のある児童生徒の指導を行う学校現場に有益な研究となるようにしたいと考えています。

 

3.基幹研究「社会とのつながりを意識した発達障害等への専門性のある支援に関する研究 ―発達障害等の特性及び発達段階を踏まえての通級による指導の在り方に焦点を当てて-」(令和元年度~令和2年度)

研究代表者 海津亜希子

 

 この度は貴重なご意見を多数お寄せくださりありがとうございました。研究班のメンバー間で一つ一つしっかりと拝読させて頂きました。本来であれば、頂きました一つ一つのご意見に対し、お返事すべきですが、こちらに回答をまとめさせて頂きましたのでご一読頂けましたら幸いです。

○研究内容についての説明

本研究では、二次的な障害の予防の観点から、発達障害のある児童生徒の適応上のさまざまな困難の実態とそのリスク要因を、他分野の関連機関からの情報収集・協働を通して、環境面も含めて整理していきます。それと共に、彼ら自身の「資質・能力」を支えるためにどのような支援が必要となるか、また、学校等において実践をどう進めることがよいのかを、特に発達障害のある子どもにとっての有効な指導の場の一つである「通級による指導」、さらには、その通級による指導において特別な教育課程を編成する場合に「参考にする」とされる「自立活動」にも焦点を当てながら検討を行う予定です。

○具体的な質問に対する回答

 具体的なご質問の中でも特にお尋ねの多かった内容について述べさせていただきます。

①本研究のテーマにも掲げた「社会とのつながり」

今回、なぜ、「社会とのつながり」をテーマに掲げたかというと、例えば、教育(学校)においては適応できていたとしても、社会に出た後、不適応を起こすケースが少なからずあることが予備的な研究で明らかになりました。そこで、子どもの自立や自己実現を考えていく上では、教育の中での適応のみならず、社会とのつながりを意識した対応を考えることが重要であると考えました。その意味で、「社会とのつながり」という用語を用いています(具体的な連携方法を模索する研究ではありません。ただし、研究の中で、必然的に、医療・福祉・労働等、社会資源とのつながりの重要性については着目していくことになると考えます)。

②「家庭との連携の必要性」

保護者への支援や介入については、二次的な障害のある児童生徒の支援においては不可欠であり、非常に重要だと認識しております。しかしながら、直接的に、保護者支援や介入方法について焦点を当てるのではなく、問題の背景要因や、対応の軸としての重要な要素として整理できればと考えています。

③「自立活動の内容を参考にした指導内容の検討」

こちらは、本研究の中核と考えております。通級による指導等、発達障害のある子どもへの教育が更に充実するよう、発達段階や発達障害の特性を考慮した指導内容を検討していく予定です。特に、キャリア教育等の観点は自己理解とも繋がるものであり、参考にする予定です。

④「リーフレット」

研究成果はリーフレットにまとめる予定です。リーフレットの作成においては、一般の方々にも研究内容がわかりやすく伝えられるよう表現を工夫し、研究知見の理解・啓発に最大限つながるよう発信していく予定です。Webサイトにも掲載し、広く提供することを考えています。

頂いたご意見を参考にしながら研究に取り組み、教育現場に少しでも有益な知見を還元できるよう努めてまいります。

 

4.研究班活動による調査「重複障害教育の現状と課題に関する調査」(令和元年度)

研究代表者 小澤至賢

 

 関係各所からの貴重なご意見ありがとうございます。重複障害教育研究班の研究に対して、多くのご要望をいただきましたことを感謝いたします。いただきました意見を拝見し、重複障害教育において、多くの課題があることをあらためて理解することができました。

○ご質問及びご要望とそれへの対応について

・都道府県教育委員会等からは、新学習指導要領に示されているカリキュラム・マネジメント等の実践事例等への要望等をいただきました。

・市区町村教育委員会等からは、特別支援学級において、重複障害のある児童生徒が増加していることから、教育的対応の充実に向けた取組が必要であり、本研究所の研究に対する期待が寄せられました。

・特別支援学校等の学校現場からは、児童生徒が重度化、多様化している実態から教育的対応の充実に向けた取組が必要であり、本研究所の研究に対する期待が寄せられました。

・加えて、医療的ケア、関係機関との連携などは共通して、要望をいただきました。

 重複障害教育研究班では、基幹研究でこれらの要望に応える予定でしたが、平成30年度の予備的研究での研究成果を踏まえ、まずは、重複障害教育の現状と課題を明らかにすることが必要であると考え、重複障害教育の現状と課題に関する調査を行うこととしました。令和2年度以降、令和元年度に実施する調査、関係各所からの本研究所への期待を踏まえ、教育現場等へ還元する研究に取り組む予定です。

 今年度に実施予定の調査への御協力をはじめ、各機関の皆様には、種々お世話になりますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。