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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第95号(平成27年2月号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE(ナイセ)━━━
■目次
【お知らせ】
・平成26年度第三期特別支援教育専門研修開講
・平成26年度「辻村賞」授賞式・記念講演会の開催(終了報告)
【NISEトピックス】
・平成26年度海外出張報告及び諸外国の教育政策動向に関する学習会の報告
【海外情報の紹介】
・米国における障害のある子どもの保護者支援に関する実地調査報告
【研究紹介】
・専門研究B「自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍する自閉症のある児童
生徒の算数科・数学科における学習上の特徴の把握と指導に関する研究」
(平成24~25年度)
【NISEダイアリー】
【研修員だより】
【アンケートのお願い】
【編集後記】

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【1】お知らせ
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●平成26年度第三期特別支援教育専門研修開講
 1月8日(木)、平成26年度第三期特別支援教育専門研修(知的障害・肢体
不自由・病弱教育コース)が開講しました。
 特別支援教育専門研修は、今後、各都道府県等において指導的立場に立つ
ことが期待される教職員が、約2ヶ月間にわたり本研究所の研修員宿泊棟に
宿泊し、特別支援教育全般と各障害種別に関わる専門的な講義や演習、研究
協議、実地研修等を通して研修します。
 特別支援教育専門研修は年に三期開講し、今期(1月8日~3月13日)は全
国から集まった102名の教職員が研修に励んでいます。
 この研修では、知識、技術の習得のみならず全国から集まった教職員同士
のネットワークづくりも魅力となっています。

○特別支援教育専門研修の内容等はこちら→
 http://www.nise.go.jp/cms/9,8801,21,116.html

●平成26年度「辻村賞」授賞式・記念講演会の開催(終了報告)
 「辻村賞」は、本研究所の初代所長であるとともに、我が国の特別支援教
育の第一人者として、その振興・発展のために尽力された故辻村泰男先生の
ご遺徳を永く記念するため、特別支援教育の領域において、特に顕著な功績
のあった方や、特に優秀な研究を行った方に対し、授与するものです。
 平成26年度「辻村賞」は、11月に開催された選考委員会において、長澤泰
子様(植草学園大学非常勤講師)の受賞が決定され、12月17日(水)に本研
究所にて、授賞式及び記念講演会を開催しました。
 記念講演会では、「言語障害教育を語る」と題したご講演をいただき、所
員にとって大変貴重な機会となりました。

※辻村泰男先生の「辻」の字は二点しんにょうです。

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【2】NISEトピックス
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●平成26年度海外出張報告及び諸外国の教育政策動向に関する学習会の報告
          新平 鎮博(教育情報部/企画部 上席総括研究員)

 平成26年12月19日(金)、本研究所において、上記の会を開催しました。
 この会は毎年度実施しているものですが、今年度から二つの方針を立てま
した。一つは、現在準備中のインクルーシブ教育システムに関する国際シン
ポジウムに体系的に位置付けたことです。国際シンポジウムは、平成27年6
~7月に予定しており、本メルマガ等でもご案内します。もう一つは、都道
府県教育委員会に公開のご案内を差し上げたことです。
 当日の内容を簡単に紹介しましょう。教育政策動向として、昨年から制度
が変わったイギリスの特別支援教育に関する報告があり、筑波大学の宮内久
絵先生よりコメントを頂きました。SEN(Special Educational Needs)から
SEND(Special Educational Needs and Disability)に変わるという内容で
すが、障害のある子どもにとって本当に必要な教育とは何か、そして、教育
と保健福祉の連携はどうあるのか、成果をどう評価するのかについて学びま
した。イギリスの特別支援教育が注目を浴びているだけに最新情報は非常に
有用でした。
 出張報告の一つ目は、フランスの国立特別支援教育高等研究所(INS-HEA)
訪問の報告です。この特別支援教育に関するナショナルセンターは、日本と
韓国に先立って設置されたものであり、また、その組織や取り組むべき課題
に本研究所と共通するものが多くありました。
 続いて、昨年度の日本LD学会での特別講演でも紹介されたオランダの特別
支援教育についての実際や課題、日本との比較についての報告がなされまし
た。
 諸外国の特別支援教育の動向を調査していくと、各国の歴史、文化、理念
等が反映されていることが推察され、比較検討の必要性を感じ、興味深いで
す。また、根底にある子どもたちへの教育の大切を感じ取れます。インクル
ーシブ教育システムの構築をめざしている日本では、今後の特別支援教育は
どうあるべきなのか、先人の培った経験に加えて、隣人の知恵を参考にする
ことが望まれます。また、その際に、国の機関としては、公平な情報収集の
必要性を感じているところです。
 企画部調査・国際担当では、特総研ジャーナルに毎年度「諸外国における
障害のある子どもの教育」を報告しています。本年度は、3月に刊行予定で
す。

○特総研ジャーナルに関する情報はこちら→
 http://www.nise.go.jp/cms/resources/content/9146/20140331-190048.pdf

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【3】海外情報の紹介
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●米国における障害のある子どもの保護者支援に関する実地調査報告
                     神山 努(企画部 研究員)

 10月15日から22日にかけて、科研費若手研究(B)「発達障害児の保護者に
対する物理的環境調整を主としたペアレント・トレーニングの開発」の一環
として、米国のオレゴン大学を訪問し、「ポジティブな行動支援
(positive behavior support;以下、PBS)」の研究や実践に関する情報収
集をしてきました。
 PBSとは、障害のある方々の望ましい行動や適切な行動を増やすことに着
目し、その結果として障害のある方々の問題行動が減り、なおかつ生活の質
が向上することを目指す点、行動的なアセスメントから個に応じた包括的な
支援方法を立案する点などが特徴の支援プログラムです。近年、学校全体へ
の支援システムや、保護者と連携した家庭への支援などにも応用されていま
す。
 今回の訪問では、PBSを学校全体に導入している小学校と中学校の訪問、
PBS実践者のカンファレンスへの参加、オレゴン大学の研究スタッフとの意
見交換を行いました。PBSを校内全体に導入した学校では、各児童生徒の望
ましい行動や適切な行動の実施状況をデータ化し、そのデータに基づき校内
で組織されたチームで児童生徒に対する行動的支援の検討などが行われ、さ
らにデータの家族との共有などが行われていました。

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【4】研究紹介
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●専門研究B「自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍する自閉症のある児童
生徒の算数科・数学科における学習上の特徴の把握と指導に関する研究」
(平成24~25年度)
          研究代表者 岡本 邦広(教育情報部 主任研究員)

 本研究においては、自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍する当該学年の
算数科・数学科の内容を学習する自閉症のある児童生徒の算数科・数学科に
おける学習上の特徴の把握と必要な指導を検討しました。自閉症のある児童
生徒の算数科・数学科に関する先行研究のレビューと研究協力機関からの情
報収集、アンケート調査、研究協力機関での実践を行いました。
 アンケート調査では、自閉症のある児童生徒は基本的な計算を習得してい
ましたが、学習した内容を日常生活に利用したり数学的な表現で説明したり
することに難しさが認められました。また、文章題の読み取りのできない児
童生徒が比較的多く存在しました。これらのアンケート調査結果は、先行研
究や研究協力機関の事例にも認められました。研究協力機関の実践では、実
態把握から評価までの指導過程に基づき、その都度、自閉症のある児童生徒
の実態を見直し、彼らにとって必要な指導内容や指導方法を検討しました。
 これらの結果から、自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍する自閉症のあ
る児童生徒の算数科・数学科での必要な指導についての考察を行いました。
この成果を研究成果報告書にまとめ、Webサイトに公表しています。

〇本研究の研究成果報告書はこちら→
 http://www.nise.go.jp/cms/7,9718,32,142.html

〇本研究のサマリーはこちら→
 http://www.nise.go.jp/cms/resources/content/9718/summary_H25-B-01.pdf

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【5】NISEダイアリー
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      「厳しいことは言わないようにしましょう」

 これは、ある時、授業研(※編集者注)が始まる前に担当者が発言した言
葉である。当時の私にとっては、寝耳に水。始めは、何のことか理解できな
かった。落ち着いて振り返る中で、その言葉の意図や昨今の授業研に臨む先
生方の姿勢を考えることができるようになった。
 何より驚いたことは、自分が学校現場で鍛えられていた頃と時代が変わっ
てきているということか。それは、授業に取り組む姿勢や価値観そのものの
変化も映し出しているのかもしれない。
 私がまだ若かった頃は、歯に衣着せぬ意見や指摘が飛び交う世界で授業の
在り方を教わった。それがあって初めて子どもの見方や考え方、それに応じ
た授業の進め方、教材・教具の意味などを考える機会となった。率直に指摘
し、後は自分でそれを血や肉にしなさいという雰囲気だった。
 悪いところは指摘しないなどという考え方は存在しなかった。勿論、いい
ところも指摘していたが、絶対的に少なかったのは確かである。

 時が経ち、前述のような指摘がまかり通るような時代になったということ
は、事実のようだ。
 それでは、授業研などをどう考えればいいのだろうかということが、折々
に、自分の頭に浮かんでは消え、また浮かんだりしている。
 単純に昔に返れとは言えない。昔のやり方を取り入れたとしても、今の先
生方には受け入れてもらえないだろう。それでは元も子もない。授業改善や
授業づくりが話題となっている今日、いかにして先生方の指導力を高めるか
が焦眉の急の課題だから。
 悪いところよりもいいところを指摘しようという考え方にも一理ある。欠
点ばかりを指摘されたら、誰でも意欲を削がれてしまうことは自明の理。そ
れでは、いいところだけを指摘すれば、改善すべきところにも気が付き、自
分で修正できるのだろうか。否、そうもいかないと思う。言われて初めて気
が付くということもあるはずだから。
 そして、こんなことも考える必要がある。改善して欲しいことを指摘する
のは、何のためかということ。決して、その先生個人を責めている訳ではな
いと思う。確かに、昔は厳しい言葉でぐうの音も出ないほど言われたことが
ある。「いじめじゃないか?」と思うほど。「そこから、自分で這い上がっ
てくるのが若者だ」みたいな根性論があったのも事実だ。しかし、今の時代
は通用しない。そんな経験を学生の頃から体験している訳ではないので。
 先輩が厳しい言葉で意見したのはなぜか、と思い返してみると、それは、
子どもに対する指導力を高めるためという意図もあったような気がする。改
善して欲しいことを直言するのは、その先生だけを見ているのではなく、そ
の先生が指導している子どもをも見ていたような気がする。子どものためで
あれば、言われた先生も発憤できたのではないだろうか。

 今、必要なことは、この「子どものために」という視点や自覚ではないか
と思う。授業研では、いい点を褒めてあげることは勿論のこと、改善して欲
しい点を率直に指摘し、言われた先生がよりよい授業を目指して努力して、
子どものもっている可能性を最大限に伸ばすという視点をもてば、「先輩な
どの厳しい言葉」を生かすこともできるのではないか。
 されど、いつも率直に厳しい言葉を投げ掛ければいいという訳ではない。
相手の心情に配慮することも必要であろうし、状況にもよる。そんなふうに
考えてくると、先の「厳しいことは言わないようにしましょう」という表現
は言葉足らずで、「厳しい言い方をするのは控えましょう」が適切な表現で
はないかと思う。伝えるべきことは伝えたい。表現を工夫しながら。

           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)

※編集者注 授業研:授業研究のこと。一般に研究授業の参観と事後の研究
会を通じて、具体的な授業内容や指導方法等を教師が学び合う研修の形式。
なお、授業づくりに関する日々の研究を総じて指す場合もある。

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【6】研修員だより
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 今号は、平成26年度第二期特別支援教育専門研修を修了された申賀謙一郎
先生からお寄せいただきました。

「2ヶ月の研修をふり返って」
           申賀 謙一郎(青森県むつ市立第一田名部小学校)

 「環境の変化が苦手な発達障害の子どもの気持ちは、こんな感じなのだろ
うか…」何もかもが初めての状況に、期待と不安を抱えながら京急久里浜駅
で見上げた青空を、昨日のことのように思い出します。私が、2ヶ月の研修
を通して、心に刻んだ大事なキーワードが二つあります。それは、「チーム
ワーク」と「安心感」です。今回の研究協議では、様々な校種の先生方と話
し合いを進めました。テーマを一つに絞るのも一苦労、お互いの意見を尊重
し、意見交換し、まとめていく…簡単なようで本当に難しい作業でした。そ
の中で、79人の研修員で力を合わせて作り上げた発表会では、「チームワー
ク」の大切さを改めて実感することができました。もう一つは「安心感」で
す。閉講式の時2ヶ月の研修を一人一人ふり返る場面がありました。その中
で、「最初はとても不安だった」と多くの先生方が口にしました。その不安
を安心に変えたもの、それは、同じ志を持った仲間や丁寧に指導してくださ
った研究所の先生方の存在です。この「安心感」は、充実した研修の土台と
なりました。
 この2カ月の研修で学んだ「チームワーク」と「安心感」を子ども達や同
僚の先生方に還元していきたいと思います。

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【7】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。

○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=83536&lang=ja

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【8】編集後記
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 2月号のメールマガジンを最後までお読み頂きありがとうございました。
申賀先生の研修員だよりは真冬の青森県から頂きました。その言葉に心が暖
まりました。北半球の2月は1年の中で最も寒気が厳しく、一般に冬の季節
に区分されます。一方、天文学は天空を観察し、昇交点(いわゆる春分の日)
の存在から、この月が春の始点であることを見抜きました。海外の話題と辻
村賞の授賞についても紹介しました。障害者権利条約を批准した世界の国々
はインクルーシブ教育システムの構築に向けた大きな潮流の中にありますが、
歴史を辿れば、日本における「分点」は辻村答申(昭和44年)にあるかもし
れません。天文学が季節の本質を捉えたように、この潮流を見定めていきた
いと感じました。
 編集の最後に、本メールマガジンの引き続きのご愛読を御願い申し上げま
す。
                   (第95号編集主幹 棟方 哲弥)

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次号も是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第95号(平成27年2月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
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