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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第116号(平成28年11月号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE(ナイセ)━━━
■目次
【お知らせ】
・研究所公開のご案内
・NISE特別支援教育国際シンポジウムの開催について
・平成28年度国立特別支援教育総合研究所セミナーの開催について
【NISEトピックス】
・世界自閉症啓発デー2016 in 横須賀のご案内
【研究紹介】
・インクルーシブ教育システム構築における慢性疾患のある児童生徒の教育
的ニーズと合理的配慮及び基礎的環境整備に関する研究(平成26~27年度)
・特別支援学級に在籍する自閉症のある児童生徒の自立活動の指導に関する
研究(平成26~27年度)
【連載コーナー】
・「地域実践研究」って何?
 第6回 「来年度の地域実践研究」
【NISEダイアリー】
【研修員だより】
【アンケートのお願い】
【編集後記】

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【1】お知らせ
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●研究所公開のご案内
 先月号でもご案内しましたが、11月5日(土)、本研究所の一般公開を開
催いたします。
 学校や地域で障害のある子どもと障害のない子どもが共に生活し、学んで
いく際に参考となる様々な配慮や工夫等をわかりやすく紹介しています。ま
た、新企画として特別支援学校生徒によるあん摩マッサージ体験(有料)や
NISEスタンプラリーGO等を用意しております。是非、お誘い合わせの上、お
気軽にお越しください。

◇日時: 平成28年11月5日(土) 9時30分~15時(14時受付終了)
◇主な内容
・映画「レインツリーの国」上映会
・障害者スポーツ体験「ゴールボール」
・特別支援学校生徒によるあん摩マッサージ体験(有料)
・NISEスタンプラリーGO
・ミニ講義「発達障害の特性に関する疑似体験」
・障害のある子どものための教育支援機器の展示・実演
・障害のある子どもがくつろげる心地よい環境づくりの体験
・障害のある子どもに対する生活環境面での身近な配慮や工夫の紹介
・本研究所の最新の研究成果等の紹介
・作業所によるイベント出店(パンや「よこすか海軍カレー」などを販売)
◇参加費: 無料
◇事前申込不要
◇駐車場有(80台分)

○研究所公開の詳しい内容はこちら→
 [Webサイト] http://www.nise.go.jp/sc/koukai/
 [Facebook]  https://www.facebook.com/nisekoho/
 [Twitter]  https://twitter.com/nisekoho

●NISE特別支援教育国際シンポジウムの開催について
 本研究所では、昨年度に引き続き、「発達障害教育について学ぶ」という
テーマで国際シンポジウムを開催します。 
 国際シンポジウムの中では、最近話題となっている発達障害に関わる診断
基準の改訂の動向をわかりやすく解説し、アメリカ、イギリス、日本のシン
ポジストから各国の発達障害のある児童生徒への教育の考え方や指導の実践
を紹介します。さらに、講師やフロアとともに、日本の教育現場(小・中学
校等)ではどのように応用、実践できるかについて理解を深めます。
 また、国際シンポジウムに先立ち、プレイベントとして発達障害等のある
子どもへの教育に関心のある先生方を対象に理解啓発ワークショップを同じ
会場で開催します。

 申込は11月21日(月)に開始いたします。具体的な内容や参加申込等の 
詳細は研究所Webページにてご確認ください。

◇日時:平成29年1月14日(土)
・プレイベント:発達障害教育理解啓発ワークショップ 10:30 ~ 13:30 
・国際シンポジウム 13:45 ~ 16:15
◇会場:一橋大学一橋講堂・中会議場(学術総合センター内)
    (東京都千代田区一ツ橋2-1-2)
◇定員:400名
◇申込期間:平成28年11月21日(月)~ 平成29年1月10日(火)

○NISE特別支援教育国際シンポジウムのWebページはこちら→
 http://www.nise.go.jp/cms/9,12121,22,295.html

●平成28年度国立特別支援教育総合研究所セミナーの開催について
 国立特別支援教育総合研究所(NISE)では、研究活動等の成果普及や教育関
係者や関係機関との情報共有を図るため、毎年、本セミナーを開催していま
す。
 今年度は、「インクルーシブ教育システム構築に向けた特別支援教育の推
進~21世紀を生きる子どもたちの可能性を最大限に伸ばすためには~」をテ
ーマに、平成29年2月17日(金)、18日(土)の二日間、国立オリンピック記念
青少年総合センターを会場に実施します。
 多くの方々にご参加頂けるよう、初めて土曜日にもプログラムを設けまし
た。一日目は、開会式、第30回辻村賞授賞式、研究成果報告、特別講話、二
日目は、講演及び対談、合理的配慮ミニ講座、研究所の新しい取組、ポスタ
ー発表・ICT機器や支援機器展示のほか、シンポジウムを行います。
 「インクルーシブ教育システム構築」をテーマにして四年目になる今年度
は、「21世紀を生きる子どもたちの可能性を最大限に伸ばすためには」をサ
ブテーマとして掲げ、学習指導要領改訂の動向に関する最新情報も交えなが
ら、障害の有無に関わらず、21世紀を生きる子どもたちの可能性を最大限に
伸ばすために今後期待されることや、インクルーシブ教育システム構築につ
いて議論を深めていきます。
 本セミナーが、参加された皆様にとって、特別支援教育の推進のための実
り多い機会となることを願っております。
 参加申込等の詳細は、11月初旬に研究所Webサイトに掲載いたします。多
数のご参加をお待ちしています。

◇日時:平成29年2月17日(金)、18日(土)
◇会場:国立オリンピック記念青少年総合センター
   (東京都渋谷区代々木神園町3-1)
◇定員:700名
◇申込期間:平成28年12月5日(月)~平成29年1月20日(金)
◇これまでの国立特別支援教育総合研究所セミナーはこちら→ 
 http://www.nise.go.jp/cms/9,11809,22,119.html

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【2】NISEトピックス
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●世界自閉症啓発デー2016 in 横須賀のご案内
 国立特別支援教育総合研究所では、12月の横須賀市障害者週間キャンペー
ンの一環として、筑波大学附属久里浜特別支援学校とともに「世界自閉症啓
発デー2016 in 横須賀」のイベントを開催します。今年度のテーマは、「知
ろう つながろう」です。自閉症の方とその家族への支援、地域のつながり
について考えます。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

◇日時:平成28年12月3日(土)12:30~16:30
◇会場:横須賀市総合福祉会館 5階ホール
   (京浜急行汐入駅下車徒歩6分、JR横須賀駅下車徒歩8分)
◇主催:国立特別支援教育総合研究所
    筑波大学附属久里浜特別支援学校
◇共催:横須賀地区自閉症児・者親の会「たんぽぽの会」
    筑波大学附属久里浜特別支援学校PTA
◇後援:横須賀市、横須賀市教育委員会

◇主なプログラム
・映画「くちびるに歌を」の上映 (字幕あり)
・自閉症についてのミニ講義
・シンポジウム(当事者家族からのメッセージを含む)
・作品展(久里浜特別支援学校、横須賀市立浦賀小学校、横須賀市立長井小
学校)
・発達障害のある子どもの困難さの疑似体験

◇申し込み方法
・FAX、Webサイトからお申し込みください。
FAX→ 046-839-6938(氏名、職種、連絡先、情報保障の必要性等を明記)
Webサイト→ http://www.nise.go.jp/waad/
・申込期間は11月1日(火)から11月30日(水)までです。

◇その他
・参加費は無料です。どなたでも参加できます。
・「親子スペース」を設けます。オムツ替え、授乳、その他必要に応じてご
利用できます。 
・定員は400名です。定員になり次第、受付を終了させていただきます。
・当日は駐車場が使えませんので、公共の交通機関をご利用ください。

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【3】研究紹介
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●インクルーシブ教育システム構築における慢性疾患のある児童生徒の教育
的ニーズと合理的配慮及び基礎的環境整備に関する研究(平成26~27年度)
                                
                   森山 貴史(研修事業部研究員)

 本研究では、インクル―シブ教育システム構築を視野に入れて、特別支援
学校(病弱)の教員を対象とした調査を実施し、慢性疾患のある児童生徒の
教育的ニーズ及びそれに応じた支援・配慮について改めて分類・整理しまし
た。その結果、慢性疾患のある児童生徒の教育的ニーズは、「学習」、「自
己管理」、「対人」、「心理」、「連携」の5つのカテゴリーとそれらを構
成する14のサブカテゴリー(学習指導、前籍校、経験、進路、自己理解・病
気の理解、自己管理、ストレス、人間関係、コミュニケーション、自己肯定
感、自己効力感、心理的な安定、不安、医療等との連携、保護者との連携・
支援)に分類・整理されました。これらは、個別性がより強いとされる慢性
疾患のある児童生徒の教育的ニーズを捉える上で、教員が押さえておくべき
ミニマムな観点として、合理的配慮の決定・提供に至るプロセスにおいて、
児童生徒の実態把握を行う際の資料になり得ると考えられます。
 また、小・中学校等の通常の学級、特別支援学級の担任及び養護教諭を対
象とした調査では、教育的ニーズの捉え方が特別支援学校(病弱)の教員と
異なるという結果を得られており、このことにより、特別支援学校がセンタ
ー的機能を発揮する際に押さえておくべきポイントを明らかにしました。本
研究では、地域の病弱教育における基礎的環境整備を推進する上で、特別支
援学校(病弱)のセンター的機能の発揮が重要であると考え、研究協力機関
の特別支援学校(病弱)4校からインクルーシブ教育システムの構築に向け
た特徴的な実践について報告してもらい、これから求められるセンター的機
能の在り方について検討しました。
 以上の調査等を踏まえて、教職員向けガイドブック「病気の子どもの支援
ガイド(試案)」を作成しました。特別支援学校(病弱)のみならず、小・
中学校、高等学校等の教職員が病気の子どもの教育的ニーズについての理解
を深め、ニーズに応じた支援・配慮を行えるよう、必要な情報を具体的に分
かりやすく提供することを目的として、本ガイドブックを作成しました。今
日的な課題であるインクルーシブ教育システム構築に向けて、病気の子ども
への合理的配慮を検討・提供する際にも、一参考資料として活用していただ
くことを目指しています。

○本研究の研究成果サマリーはこちら→
 http://www.nise.go.jp/cms/resources/content/11935/20160620-105816.pdf

●特別支援学級に在籍する自閉症のある児童生徒の自立活動の指導に関する
研究(平成26~27年度)
                           柳澤 亜希子
        (インクルーシブ教育システム推進センター主任研究員)

 本研究では、特別支援学級(自閉症・情緒障害特別支援学級、知的障害特
別支援学級)での自閉症のある子どもの自立活動の指導の充実に向けて、そ
の現状と課題を明らかにしました。また、研究協力機関での情報収集や実践
を通じて、特別支援学級の先生方が、自立活動の指導を行う際に直面してい
る課題をPDCAサイクルに沿って整理し、それに基づき自立活動の授業を
組み立てる上で参考となる「授業づくりの要点」をまとめました。さらに、
本研究では、特別支援学級において自立活動の時間を位置づけて指導するこ
との意義を考察しました。
 特別支援学級の先生方を対象に実施したアンケート調査から、1.先生方
への自立活動についての理解の促進の必要性、2.自立活動の指導計画と指
導目標の設定の重要性、3.自閉症のある子どもが自己を肯定的に捉えるこ
とができる指導の重要性、4.教師による指導の振り返りの必要性と自閉症
のある子どもによる自己評価の重要性が明らかになりました。また、特別支
援学級では、担当の先生方の経験年数の短さや専門性の課題、指導体制上の
理由等により、指導目標よりも活動が優先あるいは重視されやすい傾向にあ
ること、集団での指導が中心になり、個々の子どもの課題やねらいよりも集
団全体でのねらいが主となること、それらにより指導目標が具体化され難い
ことが分かりました。加えて、その結果、指導の評価が難しくなるといった
一連の関係性が示されました。
 上述した課題を踏まえて、本研究では主に特別支援学級の経験年数が短い、
あるいは初任の先生方に自立活動の授業を組み立てる際にまずは留意して欲
しいことを3つの側面(「個々の児童生徒に付けたい力(目標)の絞り込み
」、「自閉症のある児童生徒の障害特性や認知特性に留意した指導」、「指
導の振り返りの重要性」)から9つの要点にまとめました。この9つの要点
については、研究協力機関の実践例に基づき具体的に解説しました。詳しく
は、研究成果報告書をご覧ください。
 研究協力機関において自立活動を時間に位置づけて指導した結果、担当者
から1.PDCAサイクルを意識することができる、2.子どもの指導目標
を明確に捉えることができる、3.指導の段階性を意識でき見通しをもつこ
とができる、といったことが成果として挙げられました。
 なお、本研究で提案した「自閉症のある子どもの自立活動の授業を組み立
てる上での要点」は、学校現場の先生方に活用していただけるようにリーフ
レットにまとめました。本研究所 Webサイトからダウンロードできますので、
ぜひご活用ください。 

○本研究の研究成果サマリーはこちら→ 
http://www.nise.go.jp/cms/resources/content/11935/20160620-105859.pdf
○リーフレット「自閉症のある子どもの自立活動の授業を組み立てる上での
要点」はこちら→ 
http://www.nise.go.jp/cms/resources/content/385/20160826-113548.pdf
○アンケート調査報告書はこちら→
「自閉症・情緒障害特別支援学級及び知的障害特別支援学級に 在籍する自
閉症のある児童生徒の自立活動の指導に関する調査」
http://www.nise.go.jp/cms/resources/content/7412/20151020-175959.pdf

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【4】連載コーナー
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●「地域実践研究」って何?
 第6回 「来年度の地域実践研究」
  -長期派遣型と短期派遣型の2種類を募集します-
                            原田 公人
            (インクルーシブ教育システム推進センター長)

 これまでの5回の連載で、今年度開始した地域実践研究についてお知らせ
してきました。各回でご紹介した4つのサブテーマの研究は以下の通りです。

 ・地域におけるインクルーシブ教育システム構築に関する研究(7月号)
 ・インクルーシブ教育システム構築に向けた研修に関する研究(8月号)
 ・交流及び共同学習の推進に関する研究(9月号) 
 ・教材教具の活用と評価に関する研究(10月号)

 現在、これらの研究では、2年間の研究のうち今年度の研究成果のまとめ
として、12月の地域実践研究合同会議や1月の研究成果報告会を予定してい
ます。
また、来年度平成29年度まで継続して行い、2年間の研究成果のまとめと研
究報告の情報普及を行います。
 平成29年度は、この4つのサブテーマの2年目の研究について都道府県・
指定都市の参画を募集します。地域実践研究に参画していただく都道府県・
指定都市からは、地域実践研究員を派遣していただき、研究所の研究チーム
の一員として研究活動を行ないます。今年度(平成28年度)は、地域実践研
究員の方4名に1年間研究所に常駐していただき、一緒に活動してきました。

 平成29年度からは、より多くの方に参画いただけるよう、地域実践研究員
の派遣方法を、「長期派遣型」と「短期派遣型」の2種類の地域実践研究と
して設定いたします。「長期派遣型」は、今年度同様、地域実践研究員を本
研究所に1年間派遣していただくものです。「短期派遣型」は、地域実践研
究員が各地域で研究を実施することを基本とし、年数回、各回数日間、地域
実践研究員を本研究所に派遣していただくものです(研究期間は、どちらも
1年間となります)。
 「長期派遣型」の特徴は、地域実践研究員として研究所に常駐して研究に
取り組むため、日常的に担当研究員と相談・協議しながら、研究を深めるこ
とができます。また、「短期派遣型」の特徴は、都道府県・指定都市の教育
委員会や教育センターの指導主事等を対象としており、派遣期間を限定する
ため(研究所への派遣は年3~4回、各回2~3日程度)、地域実践研究員
を派遣しやすく、代替の職員の必要がありません。
 どちらを選んでいただいても、インクルーシブ教育システム構築に向けて
た地域や学校が直面する課題の解決のために、研究所の研究チームの一員と
して取り組むことができ、研究成果を地域に還元することができます。
 なお、平成29年度の地域実践研究の公募に、平成28年10月31日付けで都道
府県・指定都市に送付しております。都道府県・指定都市教育委員会におか
れましては、ご検討の上、積極的に参画していただきますようお願い申し上
げます。

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【5】NISEダイアリー
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           「自然法」
           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)

 聾教育における言語指導の考え方として、「自然法」という言葉がある。
10月13日に全日本聾教育研究大会という聴覚障害教育関係の催しが筑波大学
附属聴覚特別支援学校で開かれ、50周年記念大会ということで参加する機会
を得た。その際、齋藤佐和先生(筑波大学名誉教授)のご講演の中で、この
自然法という言葉が出てきた。聾学校時代を思い出しながら拝聴した。
 聾教育では、構成法による言語指導が行われていた。音節や単語の構成、
語順や文型、語彙などに着目し、言葉を教え込むというような指導が行き渡
り、子どもの気持ちや場面に応じた言葉の使用が課題視され、アメリカから
自然法が導入された。齋藤先生は、「教師はことばをきちんとした形で教え
る前に、そのことばを自然な場面で使ってみせるべきである。・・・その機
会がなければ、そのような自然な場面を教師の方で創りだしてやるべきであ
る。・・・自然なことばは、ドリルよりも自然な場面でのくり返しによって
獲得されるものである。」(大塚明敏:「言語指導用語解説」)という自然
法の考え方を引用されていた。
 そして、「ことばの表現(社会的約束としての形)と、そこに付与されて
いる意味(子どもが表現したがっていること)を分けて捉え、うまく合致す
るよう創意工夫する。そのためには、・・・子どもの生活に密着した観察力、
情報収集力、洞察力、教師自身の言語力が必要。」と述べられていた。
 こうした自然法の考え方は、聴覚障害教育だけで活用すればよいものであ
ろうか。私は、久里浜特別支援学校に3年間勤める機会があった。そこでの
経験を基に考えると、知的障害を併せた自閉症の子どもに応用できると思う。

 勤めて間もない頃、小学部一年生の子に廊下で「おはよう」と挨拶をした。
ところが何の素振りも返事もない。自閉症の子どもはこうしたものだと考え
てしまえば楽かもしれないが、聾教育の経験しかない私は、何とかして、こ
の子と関われるようになりたいと思った。翌日から、朝の挨拶の繰り返しが
始まった。単に「おはよう。」と言うだけでは気に入ってもらえないと思い、
「おはよう。」の後に、「床屋に行ったの?」、「今日のリュックは格好い
いね。」、「朝ご飯、食べた。」などと付け加えた。「おはよう。」という
言葉が出て来るだろう自然な場面、子どもの様子、興味・関心、相手に対す
る思い、そんなものを漠然とだが想像しながら、言葉掛けを続けた。
 お母さんから促されて、片言の返事をする場合もあったが、なかなか本人
自身からの言葉はなかった。
 一年半ぐらい経った頃だろうか、いつものように「おはよう。」と声掛け
していた時、か細い声で、「お・は・ょ。」という返事が聞こえた。
 その後は、徐々に声も大きくなり、表情も豊かになった。私の関わりが直
接的な要因とは思わないが、嬉しい瞬間であった。特別支援教育の充実が求
められている今日、これまでの実践で蓄積された障害種別のノウハウがあち
らこちらにあるはずである。今は、それを目の前の子どもに活用できるかど
うかの先生方の柔らかな発想力が大切だと思う。

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【6】研修員だより
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 今号は、平成26年度第三期特別支援教育専門研修を修了された宮原浩寿先
生からお寄せいただきました。

「会うべき人に出会えること」
               宮原 浩寿(静岡県立清水特別支援学校)

 自分の力のなさから「自己否定感」に苛まれる日々が続いていた頃に薦め
られた話が、専門研修への参加のきっかけでした。現場を離れる寂しさ、専
門性の高い講義についていけるか、熱く高い志や豊富な経験、専門的知識を
有する全国の仲間の中で過ごすことへの不安等、「帰りたい」から始まった
64泊でした。
 しかし、出会った多くの研究員、研修員、講師陣など世の中にはこんなに
すごい人たち、熱い人たち、面白い人たち、好きなことを追い続ける人たち
がいるのか・・・と出会う人全てから刺激を受ける毎日でした。出会いが「
今までの」「今の」「これからの」自分と向き合い、前向きに考えることが
できるようになりました。研究員の武富先生から頂いた言葉に「会うべき人
に出会えることを人は『しあわせ』とよびます」という言葉の引用とともに、
久里浜の出会いは「会うべくして会えた」と話されました。特別支援教育と
言うたった一つの共通点で出会えた人たちに、今でも感謝の気持ちでいっぱ
いです。
 これからも人と出会い、学び、自分を高めながら、子どもたちと向き合っ
ていきたいと思います。

○静岡県立清水特別支援学校のWebサイトはこちら→
 http://www.edu.pref.shizuoka.jp/shimizu-sh/home.nsf

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【7】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。

○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=38589&lang=ja

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【8】編集後記
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 10月に開催された国際福祉機器展に行ってきました。527社・団体の最新
福祉機器が約2万点展示されており、日常生活支援用品、ベッド用品、トイ
レ用品、住宅設備、 入浴用品、車いす、移動機器、福祉車両、リハビリ機
器、コミュニケーション機器、情報共有システムなど、いろいろなものが展
示されていました。
 情報支援機器を担当していることもあり、コミュニケーションツールやア
プリなどの説明や紹介をする機会があります。普段紹介するツールやアプリ
の背景について、開発者や販売会社の話を直接聞くことができ、とても興味
深かったです。
 あるコミュニケーションを支援するアプリは、音声認識技術を使うことに
より、リアルタイムで文字起こしをすることができます。デモンストレーシ
ョンをみましたが、AIの進歩が進んできているそうで、あまりの正確さに
驚きました。また、会話を文字起こしするのに加えて、多言語の翻訳および
音声認識ができるとのことで、障害者バリアフリーだけではなく言語バリア
フリーにも活用できるそうです。
 デモをしてくださった方は手話通訳をされている方で、仕事がなくなって
しまうと冗談まじりにお話しされていました。句読点などを少し意識して読
むことは必要なようですが、学校や職場など、私たちの身近なところで十分
活用できそうだと感じました。技術の進歩によって、様々なバリアがなくな
っていくことを期待するとともに、その流れにおいて行かれないようにした
いとも感じました。
                  (第116号編集主幹 松井 優子)

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次号も是非ご覧ください。
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          ([アットマーク]を@にして送信してください。)

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