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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第52号(平成23年 7月号)
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東日本大震災で被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。
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■目次
【1】NISEトピックス
【2】研究紹介
【3】連載コーナー
【4】特別支援教育関連情報
【5】研修員だより
【6】アンケートのお願い
【7】編集後記
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【1】NISEトピックス
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★トピックス★ 
●平成23年6月18日の世界自閉症啓発デー2011シンポジウムの報告

 今年の世界自閉症啓発デー2011は、東日本大震災の影響で4月2日の開催が
延期され、テーマも「災害と自閉症~共に支え合い、共に生きる~」へと変
更して6月18日に灘尾ホールで開催されました。
 当日は雨天にもかかわらず、約400名の参加がありました。東日本大震災
における各地の自閉症児者及びその家族の様子についての報告や、実際に支
援を行った医療、福祉、NPO、親の会等からの報告があり、ディスカッショ
ンが行われて災害時の対応についての提案もなされました。午後一番には、
仙台市から駆けつけた自閉症のある人たちを含む「おお宙(ぞら)ストリン
グス」によるすばらしい演奏も行われました。演奏の合間には自閉症のある
人たち等から震災時のエピソードが述べられ、強く参加者の心を打ちました。
自閉症について多くの国民に知ってもらい理解を深めていくこのような活動
を通し、自閉症のある人とない人が、互いに認め合い尊重し合って生きてい
ける共生社会の実現に近づくと信じております。
 また、当日の様子の動画は、準備が整い次第公式Webサイトで公開を予定
しています。ぜひご覧ください。

 ○世界自閉症啓発デー日本実行委員会公式Webサイトはこちら→
  http://www.worldautismawarenessday.jp/

※このシンポジウムを開催する「世界自閉症啓発デー日本実行委員会」には、
本研究所も共催団体として参画しており、複数名の職員が委員として開催に
あたって協力を行いました。

★海外情報の紹介★
●第18回韓国特殊教育院(KNISE)・韓国特殊教育学会(KSSE)国際セミナ
ー参加報告
                 菊地一文(教育情報部 主任研究員)

 5月25日~29日、標記セミナーの招聘を受け、韓国を訪問しました。
 本セミナーは、「発達段階に応じた障害のある人への支援戦略(The Sup
port Strategies for People with Disabilities across Development Stag
es)」のテーマのもと、1)韓国大邱大学の金炳廈(キム・ビュンハ)教授に
よる生涯教育についての基調講演、2)アメリカワシントン大学のIlene S.
Schwartz教授による応用行動分析学ベースの早期介入についての報告、3)日
本のキャリア教育の取組についての報告、4)総括協議という構成でした。本
セミナーには、障害のある子どもの教育にかかわる関係者など、約300名が
参加しました。
 この中で私は日本におけるキャリア教育推進の経緯や本研究所による研究
知見、そして具体的な実践事例について報告しましたが、その中でも地域と
のコラボレーションによる実践事例や本研究所が開発した「キャリアプラン
ニング・マトリックス(試案)」に関心を示していただいたようです。韓国
は授業におけるICT活用や、特殊学校と企業のコラボレーションによる学校
企業等、先進的といえる職業教育を展開していますが、改めて地域の中での
諸活動をとおして児童生徒が「人の役に立つこと」を感じ、成長していくこ
とや、地域そのものが変わっていくことの重要性について共感していただけ
たのではないかと思います。また、キャリアプランニング・マトリックス(
試案)については、教育の成果や移行に当たっての評価指標としての可能性
を感じられたようです。
 その他、総括協議において日本の特別支援学校のセンター的機能や地域関
係諸機関との連携・協働による就労支援組織について質問がありました。韓
国は特殊学校の設置数が日本に比べて少ないため、日本の特別支援教育の特
徴的な取組として関心をもたれたようです。
 なお、今回の訪韓では、KNISEや同行した釜山大学の朴在國(パク・ザイ
コック)教授にコーディネートしていただき、統合保育の幼稚園や乳児部(
1歳未満児)を設置している特殊学校、最先端の職業教育を行っている特殊
学校や「職業移行教育支援センター(特殊学校内に設置された就労支援セン
ター)」等を訪問しました。各訪問先での授業等の見学や意見交換をとおし
て、韓国の教育制度やインクルーシブ教育の現状、職業教育の取組等につい
て、たくさんの情報を得ることができました。また、KNISEからは、2009年
に作成した知的障害等のある生徒を対象とした「職業1~3」「農業」「陶
工」の教科書をいただきました。これらの職業関係の教科書は改訂が加えら
れ今後7冊になるそうで、現在「余暇」の教科書も検討されているそうです。

 これらの知見について、本研究所における研究課題等に反映させていくと
ともに、今後KNISEとの共同研究等について検討できればと考えています。

 ○詳細な報告はこちら→
  https://www.nise.go.jp/cms/1,4451,13.html

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【2】研究紹介
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●専門研究A 特別支援学校の特性を踏まえた学校評価の在り方に関する実
際的研究(平成21~22年度、研究代表者 大内 進)
                小澤 至賢(教育支援部 主任研究員)

 本研究は、特別支援学校における学校評価の推進に寄与することを目的と
して、平成20年度に実施した全国調査の結果を踏まえ、平成21~22年度の2
カ年計画で実施されました。本研究では、平成20年度の調査を基に、学校改
善に寄与するために学校評価を活用するという観点から、特別支援学校の特
性を踏まえた評価内容の策定、組織的な取組、評価の公表、活用等の状況に
ついて精査しました。そこから現状の課題点や問題点を整理するとともに、
特別支援学校の特性にかかわる内容が自己評価シートに明確に反映されてい
る77校を対象として、評価項目を分類整理し、特別支援学校の学校評価にお
いて「自己評価シート」の項目として取り上げることが望ましい内容を明ら
かにしました。
 さらに、特別支援学校の運営の改善と発展に寄与する学校評価を行ってい
る先進的な実践事例についても調査報告しました。併せて、日本における学
校評価の構造を明らかにするとともに、海外の学校評価の取り組みから参考
となる事項についても取りまとめました。
 本研究を通して、学校評価では、より重点化した項目設定とその評価結果
を学校のマネジメントに生かして行くことの重要性が確認できました。この
ことにより、特別支援学校における学校評価においても、説明責任を果たす
ことを中心とした取り組みから、その事に加えて、重点化した評価を進めそ
の結果を学校の活性化に活用していくことが重要であり、その方向への転換
が課題であることが明らかになりました。さらに、特別支援学校の特性から、
関係機関の範囲が広いという点や教育成果を数値化する際に工夫を要する点、
児童生徒の意見を評価に反映する上での配慮点などの課題も明確になりまし
た。
 本研究は、並行して文部科学省において行われた「学校の第三者評価の評
価手法等に関する調査研究 高等学校・特別支援学校の特性を踏まえた学校
評価の推進に係る調査研究」にも協力、寄与しました。
 
 成果報告書は後日Webサイトからも閲覧できる予定です。

 平成20年度に実施した関連研究の成果報告書はこちら→
 https://www.nise.go.jp/cms/resources/content/408/b-234.pdf

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【3】連載コーナー
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●知れば得する???脳科学-自閉症-
         渥美 義賢(国立特別支援教育総合研究所客員研究員)

 第3回 自閉症の人が得意なことは?

 この連載(全5回)では、自閉症に関する知って得する情報を脳科学の知
見からお届けします。
 自閉症の子どもには、すばらしい才能を持っている場合が少なからずあり
ます。また、ある面では自閉症の弱みとされる認知機能の特徴が、別の面で
は強みになる場合があります。自閉症の子どもの強みを見いだして活かして
いけることが大事だと思われます。

 ・・・・・・ 続きはこちら→
 https://www.nise.go.jp/cms/6,4577,13,257.html
 ・・・・・・ 全5回の連載内容(予定)はこちら→
 https://www.nise.go.jp/cms/6,3764,13,257.html

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【4】特別支援教育関連情報
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●平成23年度「心の輪を広げる体験作文」「障害者週間のポスター」の募集
について
              〔内閣府政策統括官(共生社会政策担当)〕

 障害の有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共
生社会」を目指し、障害のある人に対する理解の促進を図るため、「心の輪
を広げる体験作文」と、「障害者週間のポスター」を募集します。

1.心の輪を広げる体験作文
 (1)募集テーマ
 出会い、ふれあい、心の輪 ~障害のある人とない人との心のふれあい体
験を広げよう~
 (2)応募資格
 小学生以上(特別支援学校の小学部、中学部及び高等部の児童生徒を含む。
)
 (3)募集方法
  ①募集は、小学生部門、中学生部門及び高校生・一般部門の3部門で行い
ます。
 ②内容は、障害のある人とない人との心のふれあいの体験をつづったもの
とします。作文の題は自由とし、応募作品は、未発表のもの1編に限ります。


2.障害者週間のポスター
 (1)募集テーマ
 障害の有無にかかわらず誰もが能力を発揮して安全に安心して生活できる
社会の実現(高齢者や子育て中の人なども含め、皆が互いの違いを認め、支
え合う社会について描くことも可。)
 (2)応募資格
 小学生及び中学生(特別支援学校の小学部及び中学部の児童生徒を含む。)

 (3)募集方法
 ①募集は、小学生部門及び中学生部門の2部門で行います。
 ②内容は、障害のある人に対する理解の促進に資し、障害のある人とない
人との間の相互理解を促進するものとします。応募作品は、未発表のもの1
点に限ります。
 ③最優秀作品1点を、内閣府が作成する「障害者週間のポスター」の原画
として使用します。

3.応募期間
平成23年7月1日(金)から各都道府県又は指定都市が定める日まで(必着)

4.応募先
 居住地の都道府県又は指定都市の障害福祉担当課。ただし、児童生徒につ
いて、居住地と学校所在地の都道府県又は指定都市が異なる場合は、学校所
在地の都道府県又は指定都市の障害福祉担当課でも差し支えありません。

5.主催等
 主催:内閣府、都道府県・指定都市、後援:文部科学省、厚生労働省等

6.問い合わせ先
 各都道府県・指定都市の障害福祉担当課又は平成23年度「心の輪を広げる
障害者理解促進事業」事務局(東京都中央区銀座6-14-5 ギンザTS・サンケ
イビル7階(株)プロセスユニーク内 電話03-5148-0136)

 ○過去の入賞作品及び今年度の募集要項はこちら→
  http://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/index-kk.html#sakubun

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【5】研修員だより
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 今号は、平成22年度第三期特別支援教育専門研修修了の光武亜貴先生から
お寄せいただきました。

「新しいスタート」
          光武 亜貴(長崎県立鶴南特別支援学校五島分教室)

 4月11日、長崎県五島市立福江小学校内に、特別支援学校の分教室が開設
されました。分教室のある五島市立福江小学校は、海と山に囲まれた、自然
豊かな福江島の中心部に位置しています。
 さて、平成22年度第三期特別支援教育専門研修では、本研究所の先生方を
はじめ、様々な講師の方の講義や演習を受けました。そのときに学んだ内容
や、いただいた資料などを参考にしながら、授業づくりを行っています。今
回の研修で学んだことの一つ一つが、分教室での実践に、大いに役立ってい
ます。加えて、研修員のみなさんと、たくさんの意見や情報を交換できたこ
とも、大きな財産となりました。
 私は、特別支援学校に勤務して、今年度でちょうど10年目を迎えました。
節目の年に、ここ五島分教室でスタートできることに、喜びを感じています。
児童生徒11名、職員11名と小規模ではありますが、全員で協力し合って、実
践を積み重ねていきたいと思っています。

 ○長崎県立鶴南特別支援学校のWebサイトはこちら→
  http://www.news.ed.jp/kakunan-ss/
 ○五島市立福江小学校のWebサイトはこちら→
  http://www.k-int.jp/~fukue/index.html

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【6】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。

○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/enquete/fm/haisin/maga52

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【7】編集後記
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 本研究所がある横須賀では梅雨空が続いておりますが、皆様のところはい
かがでしょうか。今年の梅雨は、噴火があった新燃岳周辺や東日本大震災被
災地など、例年以上に雨の状況が気になります。本号は6月中に編集をしま
したが、20年前の6月には長崎県雲仙普賢岳の火砕流があり、大きな被害が
ありました。その影響で気管支喘息の症状が悪化した多くの子どもたちが、
私が当時勤めていた長崎の病弱養護学校に転入してきたことが思い出されま
す。今さらながら自然災害の恐ろしさと普段の何気ない暮らしのありがたさ
を感じるこの頃です。
 本研究所として「今、できること」を真摯に積み重ねていく予定です。そ
の一端をメールマガジンやWebサイト、刊行物、セミナー等を通して発信し
ていきます。今後ともよろしくお願いいたします。

                  (第52号編集主幹 徳永 亜希雄)

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■次号のメールマガジンは・・・

●トピック 企画部の活動紹介
●研究紹介
 専門研究A 障害のある子どもの今後の教育についての基礎研究 -日本
社会に即したインクルーシブ教育の実践にむけて-(平成21~22年度)
 専門研究A 障害のある子どもへの一貫した支援システムに関する研究 
-早期から社会参加に至る発達障害支援の確立と検証-(平成22年度)

以上の記事を予定しております。是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第52号(平成23年7月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
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