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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第58号(平成24年1月号)
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東日本大震災で被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。
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■目次
【1】NISEトピックス
【2】連載コーナー
【3】特別支援教育関連情報
【4】研修員だより
【5】アンケートのお願い
【6】編集後記
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【1】NISEトピックス
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★海外情報の紹介★
●ポルトガルのspecial educationにおけるICF-CY(国際生活機能分類児童
版)の活用
                徳永亜希雄(教育支援部 主任研究員)

 2011年10月2~9日、本研究所の専門研究A「特別支援教育におけるICF-CY
の活用に関する研究-活用のための方法試案の実証と普及を中心に-」の一
環としてポルトガルを訪問しました。2008年、同国では、子どもがspecial
 educationの対象となるかどうかをICF-CY を活用して評価し、対象となる
と判断された子どもに対して個別教育計画を作成するための法令が教育省か
ら出されました。今回の訪問の主な目的は、法令の詳しい内容を把握し、法
令のもとでの実践の実施状況やその評価に関する研究の進捗状況について協
議をすることを通して、本研究の推進に資する資料を収集することでした。
 今回の訪問は、これまで研究交流を続けてきた同国のポルト教育大学内の
special educationにおけるICF活用についての研究をしている研究チームの
アレンジによって実現しました。訪問期間中は、彼らとの協議の他に教育省
や学校の訪問も行いました。教育省では、special educationの制度や同法
令の詳細について担当官から情報収集を行いました。幼稚園・小学校・中学
校を訪問し、在籍している障害のある子どもへの実際の指導の様子を見学す
ると共に、校内体制や個別教育計画について、管理職や担当教員と協議を行
いました。複数の教員から出された、同法令のもとでの取り組みの成果につ
いての意見や積極的な姿勢が印象的でした。
 障害者権利条約を既に批准した同国における、ICF-CYを活用したこれらの
取り組みは、同国が目指すインクルーシブ教育を支える取り組みとして位置
づけられています。また、実践を支えるための現職研修の在り方や実施後の
効果等に関する研究が組織的・系統的に取り組まれており、とても興味深い
ものでした。今回得られた知見を参考にしながら本研究を進めると共に、今
後も関係者との研究交流を続けていく予定です。
 なお、今回の訪問の詳細は、特総研ジャーナル(2012年3月発行予定)及
び同研究成果報告書(2012年7月発行予定)で報告する予定です。

 ○本研究の詳細の内容はこちらをご覧ください→
  https://www.nise.go.jp/cms/8,559,18,105.html
●イタリアにおける特別支援教育
            大内 進(教育支援部 上席総括研究員/部長)

 イタリアでは、1970年代半ばから、障害の有無にかかわらずすべての幼児
児童生徒が原則として通常の学校で学ぶ取組がはじまっています。1992年の
法律第104号「障害者の支援・社会統合・諸権利」の制定によって、幼稚園か
ら大学まで全ての学校教育段階で、インクルーシブ教育を行う仕組みが整え
られました。
 特別な学校や学級は設置されていませんが、障害が認定されると、学校と
医療・福祉関連機関等が連携して、機能診断、機能動態プロフィール作成が
行われ、それらに基づいて個別教育計画が練られ、通常の学級での活動への
参加や集団生活をも平等に保障するとともに、ニーズのある子ども一人一人
に応じた生活や学習の向上をめざした教育を保障する努力がなされることに
なっています。また、障害がある子どもや障害がある子どもが在籍する学級
をサポートする支援教師(insegnate di sostegno)や子どもの日常の生活
を支援する支援員(educatore)が配置されます。支援教師の資格は、通常の
教員養成の課程に加えて障害児教育に関する一定の単位を取得することによ
り、取得することができます。
 障害がある子どもへの教育に関しては、大学や民間団体などにより様々な
研修が行われています。筆者は、一昨年と今年の2回「学校における統合の
質」と題された国際会議に参加する機会を得ました。今年度の概要を以下に
報告します。   
 本会議は、11月にイタリア中部のリミニで、3日間にわたって開催されま
した。午前中に全体講義、午後にはワークショップが催され、トータルで2
4の講義と84のワークショップがありました。講演の内容は、イタリアの教
育システムの課題や今後の展望、当事者や保護者の立場からのインクルージ
ョンの課題と要望、ICTの活用の可能性、発達障害に関する最新の知見や指
導法、障害理解と社会的統合の課題など幅広い分野にわたっていました。ワ
ークショップのテーマも、障害教育の方法、発達障害、ACTなどを中心に多
岐にわたっていました。
 約3000人の参加者がありましたが、参加者の大半はイタリア国内の教員、
保護者、研究者、関係機関職員、学生であり、国際的な交流というよりも実
質的には特別なニーズのある子どもへの教育の質の向上を目的としたイタリ
ア国内向けの研究大会という性格が強いものでした。本会議に参加して、障
害がある子どもに関わっている関係者の関心は強く、発達障害への関心も高
まっていて、インクルージョン体制でのさまざまな課題を認識しながらも前
向きに考えていこうとする大きな流れがあることを改めて実感しました。

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【2】連載コーナー
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●発達障害のある子どもも共に学び育つ通常の学級での授業・集団づくり
 ~協同学習(学び合い)の実践から~
                 涌井 恵(教育情報部 主任研究員)
 第6回 連載のまとめ

 この連載(全6回)では、子どもたちの学力、社会性、仲間関係の改善や
向上に効果があると指摘されている「協同学習(cooperative learning)」
による授業づくりや集団づくりの解説や実践例について紹介しています。
 本連載もいよいよ最終回となりました。今回はこれまでの連載のまとめと
して、Q&A形式で読者のみなさんの知りたいことや疑問に答えました。
 協同学習では話し合い活動が多くなるが、発達障害のある子どもたちには
どのような指導の工夫をしたらよいのか?、特別支援学校で協同学習はでき
るのか?、「学び方を学ぶ」授業は、思考を深める学習にも応用できるのか
?、等々の質問に答えました。

  ・・・・・・詳しくはこちら
  https://www.nise.go.jp/cms/6,5692,13,257.html
  ・・・・・・全6回の連載内容はこちらのリンクへ♪
  https://www.nise.go.jp/cms/6,3601,13,257.html

●「発達障害教育情報センター」Webサイトをご存じですか???
                大城 政之(教育情報部 総括研究員)

 第5回 発達障害に関する研究が知りたい!

 本連載(全7回)では、「発達障害教育情報センター」Webサイトについ
てご紹介しています。
 今回は、「発達障害に関する研究が知りたい!」についてです。
 発達障害のある子どもたちへの教育的支援を行うとき、子どもの特性を理
解することや、特性を踏まえた理論的・実践的な研究情報が必要になると思
います。
 そこで、当センターWebサイトでは、「研究紹介」のページを設け、発達
障害のある子どもの特性に応じた、教育的支援に関する研究や、文献など、
発達障害に関するより詳しい情報を以下のコンテンツで発信しています。

(1)研究所の発達障害関連の研究紹介
 平成15年度以降に公表された国立特別支援教育総合研究所の報告書の中か
ら、発達障害に関する教育を考える際、参考になる情報を中心に提供してい
ます。

(2)研究所の発達障害関連刊行物
 国立特別支援教育総合研究所で刊行された、発達障害に関する教育を考え
る上で、参考になる刊行物を紹介しています。

(3)国内の発達障害関連の研究紹介
 文部科学省科学研究成果データベースおよび厚生労働省科学研究成果デー
タベースにリンクしています。

  ・・・・・・続きはこちら→
  https://www.nise.go.jp/cms/6,5700,13,257.html
  ・・・・・・全7回の連載内容(予定)はこちらのリンクへ→
  https://www.nise.go.jp/cms/6,5080,13,257.html

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【3】特別支援教育関連情報
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●第25回(平成23年度)辻村賞の決定について
                     (財団法人障害児教育財団)

 当財団では、我が国の特別支援教育の第一人者として、その振興発展のた
めに尽力された故辻村泰男先生のご遺徳を永く記念するため、特別支援教育
の領域において特に顕著な功績のあった方や特に優秀な研究を行った方に対
して、「辻村賞」を授与しております。
 第25回(平成23年度)の辻村賞は、12月15日に開催された選考委員会にお
いて、大南英明氏(前放送大学客員教授)の受賞が決定されました。なお、
授賞式は、東京にて平成24年1月18日に開催されます。

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【4】研修員だより
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 今号は、平成13年度第二期短期研修言語障害教育コース修了の副島英子先
生からお寄せいただきました。

「節目の年 ~短期研修から十年を経て~」
          副島英子(佐賀市立勧興小学校 言語通級指導教室)

 2001. 9.11アメリカ同時多発テロ。世界が震えたあの日、私は、久里浜の
特総研で言語障害教育コースの短期研修の最中でした。折しも、特殊教育か
ら特別支援教育へと転換が打ち出された節目の年でした。
 当時、ことばの教室担当者3年目だった私は、研修が終わる頃には言語障
害教育のプロになるのだと、ずいぶん鼻息荒く研修に臨んでおりました。地
元ではお会いできない著名な講師の先生方の講義を連日拝聴し、一言一句を
ノートに書き留めました。講義後に講師を囲み、記念撮影をさせていただい
たこともよき思い出となりました。そして、全国から集まった仲間たちとこ
れから始まる特別支援教育について夜遅くまで熱く語り合い、そんな私たち
を当時の聴覚・言語障害教育研究部の先生方は温かく受けとめてくださいま
した。研修で学んだもの、それは数々の知識や技術もさることながら、特別
支援教育に携わるものとしての心構えでした。
 あれから十年。ことばの教室担当者として、子どもや保護者との関係を大
切にしながら、これからも歩んで参りたいと思います。研修後も続いている
縁に感謝しながら。

 ○佐賀市立勧興小学校のWebサイトはこちら→
  http://www2.saga-ed.jp/school/edq10101/

※「短期研修」は、平成19年度以降、「特別支援教育専門研修」と名称及び
内容を変えて実施しています。

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【5】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。

 ○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/enquete/fm/haisin/maga58

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【6】編集後記
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 2012年が始まりました。皆様いかが新年をお迎えでしょうか?
 学校では日々の実践の充実はもちろんですが、これから学年末に向けて、
成果のまとめにも取り組まれる時期かと思います。本研究所でも研究成果報
告書の執筆・編集や、セミナーの開催等で慌ただしい時期を迎えます。今月
11日からは特別支援教育専門研修の視覚障害・聴覚障害教育コースも始まり
ます。
 今号に研修員だよりをお寄せくださった副島先生が、研修後も続いている
縁に感謝の意を述べておられますが、私たち研究所職員も多くの皆様との縁
に支えられていることを実感しています。今後も皆様に特別支援教育に関す
る最新の情報、ご活用いただける情報を提供できるよう、更なる内容の充実
を図って参りたいと思いますので、ご意見、ご感想などお聞かせいただけれ
ば幸いです。
 本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。
                   (第58号編集主幹 牧野 泰美)

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次号も是非ご覧ください。
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発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
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