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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第65号(平成24年8月号)
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■目次
【1】お知らせ
【2】NISEトピックス
【3】研究紹介
【4】研修員だより
【5】アンケートのお願い
【6】編集後記
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【1】お知らせ
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★NEWS★
●教育相談情報提供システムをリニューアルしました
 本研究所ではこれまで「教育相談データベース」として運用してきた教育
相談に関する全般的な知識や関連情報に関するデータベースを「教育相談情
報提供システム」としてリニューアルしました。
 本システムの主な変更点は以下の3点です。
 1.本研究所のウェブサイトとの調和を図るために青色を基調とした色調に
統一し、より使いやすいウェブデザインに変更しました。
 2.表示文字サイズや文字色と背景色の変更を行うことができるようになり
ました。
  3.本システムの利用者を、1)一般の方(小・中学校等の先生方を含む)、
2)特別支援学校の先生方、3)全国特別支援教育センター協議会加盟機関の3
つに分類し、それぞれに閲覧できるコンテンツとしました。
 本システムは、1)教育相談の基礎、2)教育相談Q&A、3)関係する文献リス
ト、4)全国相談機関データベース、5)教育相談事例、6)教育相談研修資料の
6つのコンテンツで構成されています。このうち、1)から4)までは、どなた
でも閲覧することができます。また、特別支援学校の先生方は、ログインI
Dとパスワードを取得することにより、5)までを閲覧することができます。
全国特別支援教育センター協議会に加盟している58機関の特別支援教育セン
ター等の方は、全てのコンテンツを利用することができます。
 なお、リニューアルした本システムの公開は7月30日です。本システムは
国立特別支援教育総合研究所のウェブサイトから閲覧することができるよう
になっています。

 ○国立特別支援教育総合研究所「教育相談情報提供システム」はこちら→
  http://forum.nise.go.jp/soudan-db/

●平成24年度特別支援学校寄宿舎指導実践指導者研究協議会を開催
 7月25日~26日、本研究所において、特別支援学校寄宿舎指導実践指導者
研究協議会を開催しました。これは、各都道府県等において、指導的立場に
ある寄宿舎指導員等の専門性の向上並びに、寄宿舎における指導等の充実を
図ることを目的として毎年開催しているもので、本年は全国から寄宿舎指導
員等75名が参加しました。第一日目は、文部科学省特別支援教育課による行
政説明、本研究所職員による講義があり、二日目は、寄宿舎における指導実
践についての実践発表に続きレポート提出に基づく障害種別毎の部会別協
議が活発に行われました。
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【2】NISEトピックス
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★トピックス★ 
第12回韓日特別支援教育セミナー参加報告
             齊藤 由美子(企画部 主任研究員)
             熊田 華恵(教育研修・事業部 主任研究員)

 2012年7月2日~5日、標記セミナーの招聘を受け、韓国のKNISE(韓国特殊
教育院)を訪問しました。本セミナーは、「重度・重複障害のある子どもの
ための教育課程運営の現状及び実際」のテーマのもと、韓国と日本それぞれ
の重度・重複障害児教育における教育課程の編成及び教育の実際について発
表がなされ、韓国の特別支援学校の教員等、約300名が参加しました。
 重度・重複障害児教育における教育課程について、韓国では通常の教育課
程における教科教育を基本としていること、日本では自立活動を主とする教
育課程の運用等柔軟に編成することができること等、それぞれの国の教育課
程の特徴と今後の課題について情報交換ができました。
 なお、今回の訪韓では、国立の肢体不自由児の特殊学校を訪問しました。
ICT機器等先進的な設備を取り入れ、校内・教室内ともに整然とした学習環
境が整備されていました。授業・施設の見学を通して、韓国の教育制度や統
合教育の現状、重度・重複障害児教育の取組等について、多くの情報を得る
ことができました。
 韓日(日韓)セミナーは今回をもって終了しますが、得られた知見を本研
究所における研究等に反映させていくとともに、今後ともKNISEと研究者レ
ベルでの交流を行っていく予定です。

●平成24年度教育支援部の活動紹介
              大内 進(教育支援部長/上席総括研究員)

 教育支援部は、組織再編により平成24年度から学校教育支援と教育相談の
大きく2部門の業務を担当することになりました。
 学校教育支援に関しては、特別支援学校担当、小中学校等担当、教育セン
ター等担当の3セクションの体制で、障害のある子ども一人一人の教育的ニ
ーズに対応した教育の実現に向けた支援・連携を推進するための活動に取り
組んでいます。
 特別支援学校担当は、全国特別支援学校長会(以下「全特長」)との連携
に努めています。本研究所と全特長との組織的な連携が円滑に進むように、
本研究所の研究活動に関する調整を行うとともに、全特長事務局等の各組織
との連絡・調整を担っています。全特長が行う調査研究についても連携・協
力が進んでおり、平成25年度からの基本情報の共有を目指しています。
 小中学校等担当は、特に、全国特別支援学級設置学校長協会(以下「全特
教」)との連携を積極的に進めています。全国の特別支援学級の実態調査に
関して、精度の高い調査結果が得られる等、連携の成果が認められるように
なってきています。また、特別支援教育のさらなる充実を図っていくために
は、幼稚園・小学校・中学校・高等学校等における対応も不可欠です。こう
した観点から、関連する校長会や関係組織との連携協力を進め、理解啓発に
努めています。
 教育センター等担当は、特別支援教育に関連する研修や相談等において重
要な役割を果たしている全国の都道府県、政令指定都市、中核市等の教育セ
ンター及び特別支援教育センターとの連携を深めることを任としています。
このため、特に特別支援教育センターとの情報交換ならびに連携・協力を進
め、教育センターの機能を充実させるための具体的な取組の在り方について
検討しています。
 教育相談に関しては、相談企画・日本人学校担当、相談連携・支援担当の
2セクション体制で、外部からのニーズに応えています。
 相談企画・日本人学校担当は、発生頻度の低い障害等の対応が困難な事例
や国外に在住する日本人学校等の保護者や教員を対象とした教育相談を実施
しています。
 相談連携・支援担当は、教育相談実施機関における資質の向上を支援する
ために、障害のある子どもの教育に関するコンサルテーションを実施すると
ともに、教育相談を実施する上で必要な情報を蓄積した「教育相談情報提供
システム」の運用等に取り組んでいます。

★海外情報の紹介★
●ニュージーランドにおける障害のある子どもへの教育
               徳永 亜希雄(教育支援部 主任研究員)

 2012年3月19~23日、諸外国におけるインクルーシブ教育システムの実情
を調査するため、ニュージーランドを訪問しました。今回の訪問は、本研究
所が実施してきたアジア・太平洋特別支援教育国際セミナーの参加者であっ
た、同国の教育省職員のアレンジによって実現しました。教育省関係者の案
内のもと、日本の文部科学省職員とともに、教育省や地方事務所、複数の学
校を訪問し、視察や意見交換を行いました。
 障害者の権利条約を批准した同国では、2010年から4年間、「Success f
or all  every school every child(すべてにとっての成功 すべての学校
 すべての子ども(仮訳))」という政策のもと、全ての学校でのインクル
ーシブ教育の取組が推進されています。面積が日本の約7割、人口が約5%
という同国では教育委員会を廃止したため、一部の私立を除くと、国が全て
の学校を直接設置しています。
 特別な教育的ニーズ(SEN)のある子どもは、大きく分けると特別学校か
通常の学校に就学し、後者の場合は、通常の学級か、特別ユニット(※日本
の特別支援学級に近い概念)に入ることになっています。それらは全て保護
者の希望によって決まりますが、特別学校の場合、定員を超えてしまうので
受け入れることができないという場合もあるそうです。SENがある子どもが
学校にいる場合、教育省によって査定されるニーズの高さによって、支援に
必要となる資金が在籍する学校にそれぞれ配分されることになっており、そ
の額の上限が定められています。特別ユニットの設置や資金の使い方を含め
た学校の対応方針は、各学校の学校運営委員会で決定されます。
 また、国から示されたカリキュラムは全ての子どもを対象として、八つの
レベルから構成されていますが、非常に弾力的な対応が可能で、同一学年で
あっても異なるレベルや同じレベルでも異なる幅の内容をそれぞれ学ぶこと
ができるようになっています。今回、訪問した通常の学校の一つでも、同じ
授業の中で三つのレベルの学習が並行して行われていました。SENのある子
どもへの支援にあたっては、特別学校では、学校内の資源が活用され、通常
の学校では、SENの高さ等に応じて、教育省地方事務所に所属する専門家か
らの支援を活用したり、校内のリソース教員を活用したりしていました。
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【3】研究紹介
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●特別支援学校における新学習指導要領に基づいた教育課程編成の在り方に
 関する実際的研究 <重点推進研究>(平成22~23年度)
       研究代表者 柘植 雅義(教育情報部長/上席総括研究員)

 本研究は、特別支援学校における新学習指導要領の下での幼児児童生徒個
々のニーズに対応した教育課程編成の在り方について検討することを目的と
しました。
 そして、一人一人の障害の状態を踏まえた望ましい教育課程の編成、個別
の指導計画の作成、自立活動、交流及び共同学習、重複障害学級における教
育課程編成、外国語活動、教育課程の評価等の実態を把握するため、全国の
特別支援学校(公立、国立、私立)、約1,000校を対象として質問紙調査を
行いました。
 その結果、移行措置の時期であった平成22年度における教育課程編成の状
況が明らかになりました。
 また、研究協力校8校の実践と研究協力者を交えた研究協議会も踏まえ、
教育課程編成の望ましい在り方について考究しました。
 この中で、次期学習指導要領の改訂に向けて検討が必要と思われる事項と
して、高等部における教育課程の類型化、多様な実態を踏まえた教育課程編
成の在り方、知的障害教育等における自立活動の内容と教科の内容との違い
の明確化等が挙げられました。
 なお、本研究の結果は、中央教育審議会の特別支援教育の在り方に関する
特別委員会のWGで活用されました。

 ○「特別支援学校における新学習指導要領に基づいた教育課程編成の在り
方に関する実際的研究」の詳細はこちら→
  https://www.nise.go.jp/cms/8,110,52,273.html

●デジタル教科書・教材及びICTの活用に関する基礎調査 【中期特定研究(
特別支援教育におけるICTの活用に関する研究】<重点推進研究>(平成23
年度)
          研究代表者 金森 克浩(教育情報部 総括研究員)

 本研究は中期特定研究「特別支援教育におけるICTの活用」のスタートア
ップの研究として行いました。障害のある子どもが教育活動にアクセスする
ためのツールとしてのICTの活用に向け、特にその中核となると思われるデ
ジタル教科書のガイドライン(試案)を作成しました。併せて、ICTを活用
した教育の改善について基礎的な情報収集を行い、今後5年間の研究の課題
を明らかにするための研究を行いました。デジタル教科書のガイドライン(
試案)の作成にかかる研究においては、3つのデジタル教科書の形態を定義
するとともに、海外におけるデジタル教科書の作成状況を把握しました。ま
た、関係者との協議等から、日本では、デジタル教科書の作成にあたって、
著作権及びデジタルデータの活用が課題であることが改めて確認されました。
特別支援教育におけるICT活用の課題についての研究では、各障害種での検
討すべき研究課題を提示することができました。(本研究においては、デジ
タル教科書に「教材」の内容も含まれていることから「デジタル教科書」と
表現しています。)

 ○「デジタル教科書・教材及びICTの活用に関する基礎調査」の詳細はこ
ちら→
  https://www.nise.go.jp/cms/8,4175,52,273.html
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【4】研修員だより
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 今号は、平成23年度第三期特別支援教育専門研修修了の長谷川恵先生から
お寄せいただきました。

出会いに感謝
                    長谷川 恵(川崎市立聾学校)

 「久里浜の研修が懐かしい。」「研究所前の青い海が見たい。」このよう
な言葉が、私が参加した研修の時の仲間達と今でも交わされています。全国
に同じ時間を共有した仲間ができたことや研究所の個性豊かな心温かい先生
方と出会えたことが、研修での一番の成果です。
 研究協議では、聴覚を中心に、子どもの発達段階を様々な面から整理する
ことに取り組みました。この経験により、担当している子ども達の実態をい
ろいろな視点からより詳しくみることができ、新たな発見をすることができ
ました。専門分野について、とことん勉強することができた研修は、私にと
ってとても貴重な時間となりました。「私は恵まれているな」と心から思い
ました。
 学校現場に戻ると、毎日バタバタと忙しく過ぎ、気持ちも張り詰めてしま
うこともありますが、そんな時は、研修時のたくさんの写真を見返していま
す。あの時の気持ちや仲間と交わした言葉が蘇り、思わず笑顔になります。
 これからも、出会った仲間との繋がりを大切に、また会える日を楽しみに
しながら、子ども達との日々を過ごしていきたいと思います。
 人と人との繋がりや出会いというのは、本当に大切なものです。出会いに
感謝。

 ○川崎市立聾学校のWebサイトはこちら→
  http://www.keins.city.kawasaki.jp/4/ke400101/
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【5】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。

 ○アンケートはこちら→
  https://www.nise.go.jp/enquete/fm/haisin/maga65
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【6】編集後記
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「ラジオ体操のカード」

 夏休みになると、遠くに通っていた特別支援学校の子ども達は自分の住む
地域の中で生活を送るようになります。居住地での交流を積み上げてきたこ
とで、近所の友だちから「○○ちゃん、おはよう」と、声がかかるようにな
ってきたという話を、よく聞くようになりました。私は、とてもうれしい気
持ちになります。そのような中で、先日、「特別支援学校の子どもにも、ラ
ジオ体操のカードが欲しい」という話を聞きました。まだカードをもらって
いない子どもたちの手にも、ラジオ体操のカードが、早く届くといいなと思
っています。朝一番に、ラジオ体操のカードを首にかけて、家を飛び出して
いくたくさんの姿を見たいものです。

                    (第65号編集主幹 藤本裕人)
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連載「特別支援教育に役立つアシスティブテクノロジー」は、今号はお休み
とさせていただきます。

次号も是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第65号(平成24年8月号)
発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
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