メルマガ連載記事 「サバン —自閉症の不思議で大きな可能性—」
第3回


サバンと自閉症(2) ーカレンダー計算ー

国立特別支援教育総合研究所客員研究員 渥美 義賢  

  1.カレンダー・サバンは多い

 「あなたの誕生日は何年・何月・何日ですか?」「それは何曜日ですか?」。前者の問いにはほとんどの人が答えられるでしょうが、後者の問いに答えられる人は非常に少ないと思われます。この後者の問いに瞬時に答えられる能力がカレンダー計算のサバン、もしくはカレンダー・サバンです。
 サバンに見られる特別な能力にどのようなものがあり、どの能力が多くみられるか、について前回説明しました。そこで紹介した研究のSalovitaら(2000)とHawlinら(2009)の報告で、最も多いとされているのは「カレンダー計算」で、サバンの半数以上にみられています。このような調査に基づいたものではありませんが、Treffert(2010)や Hermelin(2001)は自分の臨床経験から最もよく出会ったサバンであると述べています。著者の経験からも、カレンダー・サバンは多いと思われます。
 Hawlin(2009)の報告によると自閉症のある人の4人に1人はサバンです。そのうちの半数以上がカレンダー・サバンなので、概ね自閉症のある人の8人に1人がカレンダー・サバンであると考えられます。1つの自閉症・情緒障害特別支援学級に約4人の児童・生徒が在籍していますので、2学級に1人程度のカレンダー・サバンが在籍している可能性があります。意外に身近な存在なので、ちょっと注意して観察してみる価値があるかもしれません。カレンダー・サバンの発現年齢は、8歳未満のこともありますが、概ね8~15歳が多いとされています。大部分は義務教育段階で発現しています。
 何百年か先の年月日の曜日が分かったからといって、それが何の役にたつの?と思っていませんか。そのような姿勢があると、サバンの人は自己評価が下がり、能力を広げて自分を発展させる可能性を縮めてしまうかもしれません。まず、サバンかもしれない人の能力に気づき、可能性を見いだすことが大切です。身の周りを再確認してみましょう。
 

  2.カレンダー・サバンは比較的よく研究されている

 このようにカレンダー計算のサバンは出現頻度が高く、それだけにサバンの中では研究も多く行われています。また、カレンダー計算に必要と考えられる規則性や知識が比較的簡潔であることから、サバンがカレンダー計算を行っている方法についての研究も行われています。これがサバン全体の不思議な能力を知ることにつながることが期待されていますが、現時点では、まだ明確にはなっていません。それでも、いくつかの仮説が提唱され、サバンの理解につながりそうな所見もあります。それらは、読者の身近にいるかもしれないサバンのよりよい理解につながるかもしれません。今回は、このカレンダー計算のサバンについて述べていきます。
 

  3.カレンダー・サバンに併存する才能や障害

 カレンダー・サバンには他のサバン能力が併存することも少なくありません。抜群の記憶能力の併存が最も多いと考えられていますが、卓越した数学能力もよく併存しています。さらには、音楽的才能を中心とする他のサバン能力と併存することも少なくありません(Judd, 1988)。
 カレンダー・サバンの背景にある障害は、その他のサバンと同様に自閉症が多く、知的障害を伴うことが多いとされていますが、いわゆる高機能自閉症の場合もあります。自閉症以外の脳機能障害、脳炎後遺症や染色体異常、遺伝病、外傷、脳性麻痺を伴うこともあります。これらの脳機能障害がある場合には、それらの症状である肢体不自由等の障害が併存します。脳障害と関係なく併存する障害としては、盲を含む視覚障害が報告されています。盲が併存するカレンダー・サバンについての研究は、どのようにカレンダー計算の情報処理が行われているのかについて、重要な示唆を与えています。
 

 4.解決できるカレンダー課題は様々

 一口にカレンダー・サバンといっても、その能力は様々です。ある年月日の曜日を瞬時に答えられるのが基本的な特徴です。その曜日を答えられる年が、質問した時点の前後数年間に限られる場合もありますし、過去の40,000年と未来の40,000年にわたって答えられる場合もあります。逆課題といわれる、曜日から、すなわち「あなたの何年目の誕生日が火曜日ですか?」のような質問に答えられるカレンダー・サバンはより少なく、きちんとした統計はありませんが半数以下のようです。さらに、サバンにとって難しいのは復活祭の日で、これは復活祭がカレンダーの日にちで決まるものではなく、「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」であり、年によって日付が変わる移動祝日であるからです。このような課題は「構造化されていない課題」とも呼ばれ、この問題はカレンダー・サバンが苦手とする課題です。それでも、この復活祭の計算をできるカレンダー・サバンもいます。
 

 5.カレンダー計算の観察と評価

 この記事の読者の身近にカレンダー・サバンの人がいると仮定します。その人のカレンダー計算の特徴を観察し、以下の視点から評価してみましょう。カレンダーの持つ規則性(参考資料1を参照)の理解と関係します。
 

1) 幼少時からカレンダーに接する機会はありましたか?
  たいていの家庭にカレンダーがあり、接する機会はあると思われます
  特に「万年カレンダー」に接していることが長期にわたる年月日に解答できるサバンには多いようです
2) 曜日を答えられる年月日の範囲は過去と未来についてどのくらいの期間ですか?
  数年、約1世紀、4桁の年(2000年等)、5桁以上(数万年以上)
3) 上記の期間の年数に対応した桁数の計算はできますか?(例えば、100年なら3桁)
  基本としては、加算と減算。7や28による除算もチェック
現在からみた答えられる期間の範囲が、計算力に制約されている場合があります
4) 解答するまでの時間は、問題の年月日の現在からの遠さに関係しますか?
 (例えば、2113年より2313年の方が時間がかかる)
  カレンダー計算にカレンダーの規則性を利用している場合には関係がある可能性が高くなります。
  特に未来への方向で
5) 出題時と問題の年月日の間に閏年があっても正しく答えられますか?
  正答できれば、閏年を含めた規則性を理解していると思われます
  閏年の規則性は理解されている可能性が高いです(28年の周期の理解)
6) 世紀年(100の倍数年)における閏年の存否を計算に入れていますか?
  現在のグレゴリウス暦では(参考資料2を参照)、400の倍数年以外の世紀年には閏年がありません。問題の年月日が出題時点から1世紀をまたいでいると、この規則性を知らない場合には規則的な誤りが生じます。ここで誤る場合は少なくありません。万年カレンダーを見る機会の多かったサバンでも誤ることがあります(2000年には閏年があったので、1900年以前か2100年以降で質問する必要があります)
7) 上記の解答について、誤答することもあるので、複数回の質問で確かめる
  これまでの研究で、サバンの正答率は概ね90%以上ですが、これより少ないこともあるので、複数回の質問により、どの程度理解をしているのかを確認すると、対象者のことをよりよく理解できます
 

 6.どのように計算している?

 カレンダー・サバンが年月日から曜日を知る等のカレンダー計算(calendar calculation)の方法について、サバン本人が自分の行っている精神作業の過程を述べることはほとんどありません。ただ、様々な研究成果から推測がなされています。また、研究に協力して訓練を重ね、カレンダー・サバンの境地に至った定型発達者がいます。彼も、サバンのレベルに達してその境地に至ると、カレンダー計算は無意識に自動的に行われるようになり、その脳内の作業過程を説明できませんでした(参考資料3)。もっとも、ごく一部のサバンは自分の行っていることの一部を話したり、作業過程の中の一部を筆記することがあり、作業過程を推測に役立っています(Ho, 1991; Cowan, 2006)。現在でも仮説の段階ですが、ある程度の根拠が得られつつあります。仮説として、1) 視覚的画像そのままを記憶、2) 集約された関連する情報を記憶して活用、3) 公表されているカレンダー計算の公式の利用、4) 知られている公式ではなく、サバンごとに独自に発見された規則性の活用、5)強迫的な集中力及びそれと関係した練習、等が考えられています。


1) 自閉症のある子どもや成人には目にした視覚映像をそのまま記憶できる人がいます。目にしたカレンダーの映像をそのまま何枚も記憶し、それを頭の中でめくって曜日を探すのではないか、との仮説です。しかし、何百年、何万年ものカレンダーのページは普通にはないし、万年カレンダーであっても、それだけのページを見ることには莫大な時間を要して現実的ではないこと、また盲のカレンダー・サバンが存在することから、現在では概ね否定されています。
2) 卓越した機械的記憶力によりカレンダーを映像としてそのまま覚えて活用するという仮説はほぼ否定されています。しかし、現在の1年分もしくは数年分のカレンダーは、それを活用して計算に役立てることができるので記憶している可能性があると考えられています。さらに、カレンダー計算に役立つように、上記の最近のカレンダーや法則性に関連する情報を上手に集約して記憶している可能性が考えられています(Heaveyら, 2012)。
3) 公表されているカレンダーの公式の利用については否定的な意見が多いようです。知的な能力に限界の大きいサバンの人たちが、あまり一般的にも知られていないカレンダー計算の公式を知る機会はないであろうと考えられています。カレンダー計算の公式には、19世紀にルイス・キャロルによって発表された公式(Carroll, 1887)(参考資料4を参照)や著名な数学者であるConway教授(参考資料5を参照)の公式があります。Cowanは、4名の自閉症のあるカレンダー・サバンとConway教授に同じカレンダーに関する課題を与えて比較した研究をしています(Cowan, 2006)。この中で、1912–1919, 1940–1947, 1968–1976, 1992–1997の4つの期間に分けて、それぞれの期間における年月日の曜日を質問した課題で、1人の自閉症サバンは4期間全てでConway教授よりも速く答え、1968–1976の期間では4人ともConway教授よりも速く答えました。このことは、カレンダー・サバンは一般にしられた公式よりさらに効率的な方法で解決していることを示唆しています。
4) カレンダーを記憶するだけで広範囲な年月日への解答が得られるとは考えにくく、カレンダー・サバンは何らかの規則性を知っていて、それを活用して計算を行っている可能性が高いと考えられています。しかし、それは一般に公表されている公式ではなく、各サバンに独特な方法であろうと推測されています。ルイス・キャロルの開発した方法は7による割り算は必要ですが、複雑な計算は必要がないため知的障害のある人にも応用可能性はあると思われますが、Spitzは、それでも複雑に過ぎ、使われていないであろうと報告しています(Spitz, 1994)。すなわち、それぞれのカレンダー・サバンがそれぞれに独自の計算方法を開発し、それを利用している可能性が考えられています(Cowan,2006;Thioux,2006)。
5) カレンダー・サバンには自閉症の人が多く、自閉症のある人によくみられる興味・関心が狭い範囲の特定のことに限定されることが、卓越したカレンダー計算能力の獲得に関係している可能性が考えられています。親から万年カレンダーを与えられて(それ以前にもカレンダーを夢中で見ていたことが多い)カレンダーに強い興味を持ち、それをおもちゃにして遊んでいたカレンダー・サバンが多く報告されています。カレンダー・サバンはカレンダーを長時間集中して観察し、そこに何らかの規則性を見つけ、それを活用する楽しさを覚えたことがサバン能力に関係していることが示唆されています。このことは、Rubinの報告した後水晶体線維形成で視覚障害と知的障害及び軽度の肢体不自由のある双生児姉妹において示されています。幼児期~小児期早期に双生児の2人ともにカレンダーに興味を示した時がありました。しかし、弱視であった妹は他の様々なことに関心が広がってカレンダーから離れていきましたが、カレンダー・サバンになった姉は全盲で関心を広げる機会が少なかったためカレンダーに興味を持ち続けて、サバンになったとされています。この姉のように、自閉症の人は関心が広がりにくく、このことがカレンダーへの高い集中につながり、そしてサバンとしての能力を獲得する可能性があります。
 

 7.カレンダー・サバンの事例

 非常に卓越したカレンダー計算の能力を示した事例については、Treffert(2006)が一卵性双生児の兄弟、GeorgeとCharlesについて述べています。彼らは1964年にHorwitzらによってロスアンジェルスで開かれた米国精神医学会で紹介され、さらに様々な専門家によって討論され、論文にもされました(Horwitzら, 1965)。彼らは精神遅滞を伴うことのある劣性遺伝の障害である網膜脈絡炎と診断されました。また、当時は自閉症の概念が確立されたとはいえない時期であったことが関係しているかもしれませんが、幼児自閉症ではないだろうとされています。しかし、彼らはいつも体を揺らしていたり、頭を打ちつけたり手を噛むという自傷行為があり、破壊的な行動もあって自閉症スペクトラムであることは必ずしも否定できないように思われます。
 Georgeは6歳からカレンダー・サバンの特性を示していました。彼は万年カレンダーを日に何時間も見ており、父親が銀製の万年カレンダーをくれた後では、それで際限もなく遊んでいました。一方、Charlesはこの頃は年月日に興味を示さず、暦を読むこともありませんでした。9歳の時にLetchworth Villageに入所するまでは2人は特に親しくはなかったようですが、その後から2人は離れなくなり、この頃からCharlesもカレンダーに興味を示すようになりました。そして、彼らは数でお互いのコミュニケーションを図るようになり、周囲からみると奇妙な相互のコミュニケーションがみられるようになりました。彼らは以下のような質問に電光石火の早さで正確に答えられました。

  • * 現在から過去40,000年と未来40,000年の前後80,000年にわたって年月日から対応する曜日について
  • * ある200年間で、復活祭が3月23日である年について
  • * 彼らが成人になった後の、いずれかの日における天気の情報について

 また、彼らは20桁の素数を遊び道具にしてお互いに交換していましたし、どのような数でも、可能な数であれば簡単に因数分解をしました。また30桁の数を覚えられました。さらに物の数を瞬時に知ることができました。ある時、テーブルからマッチ箱を落としましたが、彼らは落ちて散らばったマッチをろくに見もせず瞬時に同時に「111」と言い、さらに「37、37、37」と111の素数をいいました。
 彼らは400年に1回は閏年がないグレゴリウス暦(参考資料2を参照)の規則性を知っていましたが、ユリウス暦とグレゴリウス暦の違いは知らなかったようで、ユリウス暦に遡る年月日の計算では、誤差として暦の変換時に差し引かれた10日についての間違いを許容すれば、計80,000年について年月日の曜日を正確に答えられました。彼らにとっても復活祭の日を計算することは困難でありましたが、その後、困難さを抜群の記憶力によって克服しました。
 一方、限定された能力であることとして以下のようなことがありました。

  • * 訪問者がその短い訪問の終わる時には、訪問者の名前を忘れている
  • * 数を30まで数えられない
  • * 単純な1桁の数の加算、減算、乗算、除算ができなかった(例えば、3×6を聞くと8と答えた)

 彼らは、特にGeorgeは彼の能力について誇らしげであり、彼は訪問者に誕生日を聞いて、「どの年の誕生日が木曜日であるか」と質問することを楽しんでいた。訪問者が答えられないでいると、やや恩着せがましく答えを言い、訪問者に「なぜ答えられないの?」と聞きました。むしろ、なぜ彼が答えられるのかを聞かれると「自分はできる。すばらしい」と言っていました。
 Horwitzの報告の18年後の状態をフォローアップし、その時点での素晴らしいカレンダー計算の能力を報告したSacksは、その10年後の彼らの変化した状態について次のように述べています。「1977年に彼らは別々にされました。それは一緒にいると、数でコミュニケーションをするなど奇妙で望ましくない行動がみられることが理由で、彼らがより適切で社会に受容されるようになるため、ということでした。そして彼らは施設から出て中間施設で暮らすようになり、簡単な作業を行って僅かながら給料を得るようになりました。さらに、注意深く指示されればバスを利用できるようになり、身の回りを比較的清潔に保てるようになりました。これらはポジティブな変化ですが、一方で彼らは数による親しい交流をなくし、仕事などに追われてじっくりと黙想する機会がなくなり、彼らの喜びであり生き甲斐でもあった数学的な能力は低下していたというネガティブな変化もみられました。それは、半自立し社会的に受容できるようになったことと、些細なことながら、引き換えられたものです。」
 ここでSacksは「サバンにとって進歩とはどういうことか」という問題を提起しています。「我々は、サバンの人たちを、実際的ではないが狭い領域で優れた点を示す独特で変わっている状態で孤立したままにしておいた方がよいのか?それとも、その他の人たちのように生活を広げるように教えるのがよいのか?引き換え条件なしで、生活が広げられる希望を持ちつつ優れた点も保つのが望ましいのだけれども・・・・」
 

 8.サバンを活かす

 西暦1204830年10月21日が何曜日であるかを答えられたからといって、それが直ちに生活に役立つわけではありません。それでもカレンダー・サバンの人にとっては大事なことです。
 第1に、カレンダー・サバンは、その能力に誇りを持っていることが多く、自己評価を高める効果があります。Rubinの報告したサバンの女の子は、10歳の頃にその能力を担任の教師に見いだされ評価されてから、その能力に一層磨きがかかり、自分を「カレンダー娘」と誇らしく呼ぶようになったと言います(Rubin, 1965)。7.の事例であるGeorgeは他の人たちが答えられないカレンダー計算を自分ができることを誇りにしており、施設に訪問者があるとその人にレンダー計算の課題を出し、その人が答えられないと誇らしげに答えを教えたとされています。自分に他の人より得意なことがあると、自己評価が高くなり、様々なことへの意欲が高まります。そして二次障害の予防と改善にもつながります。
 第2に、自閉症の子どもの本来の学習能力を知るきっかけになります。7.の事例でみても、一般的に算数として聞かれると、簡単な計算もできていません。しかし、その抜群のカレンダー計算の能力からして、少なくともカレンダー計算に必要な加算・減算・除算を複数桁でしている可能性があります。自分の興味のあることには、一見する様子よりも高い能力を発揮しています。また、10,000年を越す年月日には答えられなかった自閉症サバンの子どもは、それ以上にも答えられるようになることを目標にすると、5桁以上の計算の学習に取り組み、それによってカレンダー計算ができる年の幅が広がったことが報告されています(Thioux, 2006)。学習への意欲を高める可能性もあります。
 サバンの才能があることに気づき、その能力を活かすことについては、まだ関心も低く、十分に明らかになってはいません。このすばらしい才能と可能性をどのように活かしていくのかは、今後の大きな課題でしょう。それは、自閉症に関わる全ての人が考え、得られた情報を広く共有していくことで達成されると考えられます。もっとサバンを発見していきましょう。
 

関連の文献・資料

  • Carroll, L. (1887). To find the day of the week for any given date. Nature, 31, 517.
  • Cowan, R. and Carney, D.P. (2006). Calendrical savants: exceptionality and practice. Cognition, 100,B1-9.
  • Hawlin, P., Goode, S., Hutton, J. and Rutter, M. (2009). Savant skills in autism : psychometric approaches and parental reports. Phil. Trans. R. Soc. B, 364, 1359–1367.
  • Heabey, L., Hermelin, B., Crane, L. and Pring, L. (2012). The structure of savant calendrical knowledge. Developmental Medecine & Child Neurology, 54, 507-13.
  • Hermelin, B. (2001). Bright Splinters of the Mind. London, Jessica Kingsley Publishers.
  • Miller, L. (1989). Musical Savants: Exceptional Skill in the Mentally Retarded. Hillsdale, NJ: Lawrence Erlbaum Associates.
  • Ho, E.D., Tsang, A.K. and Ho, D.Y. (1991). An investigation of the calendar calculation ability of a Chinese calendar savant. Journal of Autism and Developmental Disorders, 21, 315-27.
  • Horwitz, W.A., Kestenbaum, C., Person, E. et al. (1965). Identical twin – idiot savant – calendar calculatiors. American Journal Psychiatry, 121, 1075-1078.
  • Judd, T. (1988). The variety of musical talent. In The Exceptional Brain (ed. L. K. Obler and D. Fein), pp. 127–155. Guilford Press : New York
  • Rimland, B. (1978). Inside the mind of the autistic savant. Psychology Today, 12, 68-80.
  • Rubin, E.J. and Monagham, S. (1965). Calendar calculation in a multiple-handicapped blind person. American Journal of Mental Deficiency, 70, 478-85.
     
    Saloviita, T., Ruusila, L. and Ruusila, U. (2000). Incidence of savant syndrome in Finland. Perceptual and Motor Skills, 91, 120-122.
  • Spitz, H.H. (1994). Lewis Carroll's formula for calendar calculating. American Journal of Mental Retardation, 98, 601-6.
  • Thioux, M., Stark, D. E., Klaiman, C. and Schultz, R. T. (2006). The Day of the Week When You Were Born in 700 ms: Calendar Computation in an Autistic Savant. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, Vol. 32, No. 5, 1155–1168.
  • Treffert, D.A. (2010). Islands of Genius. London, Jessica Kingsley Publishers.
  • Treffert, D.A. (2006). Extraordinary People ; Understanding Savant Syndrome. Lincoln, iUniverse Inc.
     

<参考資料>

■参考資料1 カレンダーの規則性

 カレンダーには規則性があります。その中には暦の作成と関係した規則性もあります。そのうちで著者にも理解可能であった主な規則性を以下に簡単に説明します。サバンがカレンダー計算をどのように遂行しているかの理解には、カレンダーの規則性が関係するので、頭が痛くなるかもしれませんが、多少の忍耐をお願いします。

1) 当たり前のことですが、1週間は7日です。
2) 月の始まりはこの7つの曜日のどれかから始まるので、曜日のある月のカレンダーには7通りあります。さらに閏年では曜日がずれるので、閏年用の7通りのカレンダーがあります。合計14通りの曜日付きのカレンダーがあれば(14枚の月の曜日付きカレンダー)、これらを組み合わせで各月のカレンダーが永久に使えます。
3) 1年のうち、日にちと曜日の関係が同じ月があります。非閏年では、1月と10月、2月と3月と11月、4月と7月です。閏年では、1月と4月と7月、2月と8月、3月と11月です。
4) 1年の始まりの曜日も、7通りです。そしてこれは閏年の次の年を除けば、年ごとに1つずつずれていきます。例えば2010年の元旦は金曜日でした。2011年では1つ後ろにずれて、元旦は土曜日で、2012年では日曜日でした。2013年は2012年が閏年だったので、2つずれて元旦は火曜日でした。
5) 上記のように曜日が年ごとにずれていきますが、28年ごとに繰り返します。すなわち28年後の各月で各日にちに同じ曜日が対応します。できれば、パソコンのカレンダーで試してください。
6) ここで、パソコンのカレンダーで試すには手間がかかりすぎる規則性があります。世紀年という100年ごとの年(最近では2000年)には閏年を置かないようにしたのが、現在使われているグレゴリウス暦です(参考資料2を参照)。そうすると100年ごとに28年周期がずれることになります。
 パソコンのカレンダーで試した方は、2000年があったのに28年周期であったのに気づかれたと思います。これはグレゴリウス暦から400で割り切れる世紀年には閏年を置くことにしたからです。2000は400で割り切れます。
7) 上記のグレゴリウス暦は、イタリアやスペインのような旧教国では1582年から、新教国はそれより遅く米国を含む英帝国では1752年から用いられるようになりました。この変更以前の曜日はユリウス暦で計算する必要があります。

  • * 1)2)3)から; 現在知られているカレンダー計算のほとんどの方法で、7による割り算が必須です。すなわち、カレンダー・サバンの人は7による割り算ができる可能性が高いと考えられます(カレンダーの記憶のみで曜日を見つけられると考えているひともいますが)。
  • * 4)から; 28年ごとの繰り返しであることから、28での割り算ができると、論理的な計算によって曜日を求められ、年月日と曜日の対応を知っている現在から遠い過去や未来の年月日における曜日が求められます。この場合、現在から遠い年の方が計算に時間がかかる可能性があります。
  • * 5)から; 世紀年(100年で割り切れる年)では,400で割り切れる年にのみ閏年を置き、それ以外の世紀年には閏年を置かないことにした、ユリウス暦にはなかったグレゴリウス暦に特徴的な規則性の知識が必要になります。
     
■参考資料2 ユリウス暦とグレゴリウス歴

 ユリウス暦はローマの著明な執政官のシーザーと後継者のアウグストゥスが定めたとされる暦で、3月から1年が始まり(東洋の暦と似ている)、1ヶ月は30日と31日で構成されるが、2月だけは28日とし4年に1回は閏年を設けてその時には2月が29日となります。
 このユリウス暦が天体の進行から遅れるようになったことを13世紀にロジャー・ベーコンが指摘しました。しかし、実際に改訂されたのは16世紀で、ローマ法王のグレゴリウス13世によって1582年2月24日に発布されました。これがグレゴリウス暦です。これでは、100年ごとの2月の閏年は平年とし、ただし400年ごとには閏年を設けることとしました。また、ユリウス暦で遅れていた10日を飛ばすことにしました。これが現在使われている太陽暦です。
 このグレゴリウス暦は、ローマ法王が発布したため、旧教国(イタリア、スペイン、ポーランド、フランス)では1582年から使われるようになりましたが、新教国ではローマ方式で変えることに抵抗があって遅れました。現在のアメリカ合衆国を含むイギリス王国では1752年から変更になりました。
 

■参考資料3 定型発達者のカレンダー・サバン

 定型発達の人がカレンダー計算に熟達した場合に、カレンダー・サバンと呼ぶのが適切でしょうか?まず、定型発達のほとんどの人は実際の世の中あまり役立たないカレンダー計算に熟達しようとは思わないでしょう。しかし、カレンダー計算に熟達しようと試み、それを達成した人がいます。著名な自閉症の研究者であるRimlandが報告している大学院生のBenj Langdonです(Rimland, 1978)。サバンの研究に協力することになったLangdonは、カレンダー計算に関する表を記憶する等の複雑な計算に熟達するために日夜訓練を重ねました。しかし、当初はいくら努力してもサバンに匹敵するような速さで答えを出せませんでした。それでもあきらめず訓練を重ねたところがLangdonの非凡なところで、神様もその努力を認めてくれたのでしょうか、突然、サバン並みの速さで答えが出せるようになったのです。これはLangdon自身にとっても驚きで、彼の脳が何らかの方法で、複雑な計算を自動的に遂行するようになったと思われました。そして、サバン同様のカレンダー計算の能力を獲得したLangdonは、もはや何の意識的な努力をすることなく、答えが得られるようになったのです。定型発達者も訓練によってサバンと同様の能力を獲得できる可能性が示されましたし、その獲得は無意識下で進み、ある時に突然獲得され、その後の課題遂行の過程では、それが意識されず自動的に努力を要せずになされるものである可能性が示されました。
 

■参考資料4 ルイス・キャロルのカレンダー計算法

 まず、年月日の情報を次の4つとして得る。すなわち、1) 世紀—例えば2013年の20、2) 世紀のうちの年—例えば2013年の13、3) 月、4) 月のうちの日、です。これらを以下の4段階で順に計算します。各段階での計算結果の数値が7以上である場合、必ず7で割り、その余りを次の計算に用います。なお、ルイス・キャロルの3) 月の計算は分かりにくいので、Spitz, H.H.(1994)を参考に一部修正してあります。

1) 世紀について;旧式表記(1752年9月2日まで)では18を引く。新式表記(1752年9月14日から開始された)では4で割り、余りを3から引き、それに2を掛ける。それが7未満であれば、そのまま値Aで、7以上であれば7で割った余りが値A。
2) 年について;12で割りその商と余りを加算する。その値に先に余りを4で割った商を加算する。それを7で割った余りを求める。その結果を値Aに加算する。それを7で割り、余りを求める。値B。
3) 月について;月によって決められた定数がある。1月では0、2月では3である。その他の月で、対象とする月もしくはその前の月の名前(英語の;例えば4月はAprilであり母音で始まる)が母音で始まるか母音で終わるものでない場合、単にその月の数字を(4月なら4)を値Bに加える(すなわち、3月は3、10月は10、12月は12)。しかし、対象とする月の名前(英語)が母音で始まるか終わる場合(すなわち、April(4月)、June(6月)、August(8月)、October(10月))には、その月の数を10から引く。
4) 日にちを値Cに加算し、その値をDとする。当該の年が4で割り切れる場合は閏年であり、その補正をする。すなわち閏年の月が1月か2月であるならば、1を引く(値Dが0ならば、あらかじめ7を加算する)。この以上であれば7で割り余りを求める。この値Dが7未満であれば値Dをそのまま値Eとする。値Dが7以上であれば7で割り余りを求めてそれを値Eとする。
値Eが0であれば日曜日で、1であれば月曜日で、以下同様に順に当てはめれば曜日が求められる。
 

■参考資料5 Conway教授

 Consay, J.H. は米国在住の英国人で、米数学の教授として国のPrinston大学等を歴任した著名な数学者。カレンダー計算について、2月の最後の日の曜日をdoomsday(「終末の日」という意味ですが、それをConwayがカレンダー計算の用語として用いました)とし、それを基にしてある年月日の曜日を求める公式を1999年に発表し、カレンダー計算のエキスパートとしても知られています。



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