サバン —自閉症の不思議で大きな可能性—

国立特別支援教育総合研究所客員研究員 渥美 義賢
 

 サバンとは、脳に障害があり、それと関連して特定の領域で常人を越える卓越した能力を示すこと、及び、それを示す人のことです。サバンが起きる脳の障害は自閉症に限られてはいませんが、自閉症のある子どもではサバンを示す割合が高いことが知られており、自閉症の脳機能とサバンの脳機能には何らかの関連性があることが推察されています。
 サバンの不思議さの一つは、その特異な能力、例えば驚異的な記憶力や計算能力、芸術的能力が、教えられていないにも関わらず開花することです。ヒトの能力の開花には教育は必要がない?勉強なんてしなくたって何でもできるかも?いや、そんなことは一般的にはないと思われますが、教えられていないことを常人には不可能なレベルで成し遂げることができるサバンの存在は不思議です。そして、サバンの人たちは、なぜそんなすばらしいことができるのか、その理由を説明することはできません。脳科学も、現時点ではほとんど解明ができていません。
 このような現状では、限られた説明しかできませんが、サバンについて多少とも関連する情報を提供したいと思います。自閉症のある子どもたちの一人ひとりから、持っている才能と可能性を引き出し、その望ましい発達に多少とも寄与できることを期待しています。また、サバンの能力は我々全てのヒトに備わっている可能性も推測されています。その可能性にも触れていきたいと思います。著者は「もしかすると勉強を全くしなくても算数で満点がとれるようになるかもしれない」という夢想が捨てられません。
 これまでの連載内容は下記のとおりです。