メルマガ連載記事 「インクルーシブ教育システム構築に向けて」
第2回


中央教育審議会初等中等教育分科会報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」の要点 (前編)

国立特別支援教育総合研究所理事 新谷 喜之  

(1)共生社会の形成に向けて

 報告では、共生社会とインクルーシブ教育システム、特別支援教育の関係について、次のように述べています。
「共生社会の形成に向けて、障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムの理念が重要であり、その構築のため、特別支援教育を着実に進めていく必要があると考える。」
 また、同じ場で共に学ぶことと、個々の幼児児童生徒の教育的ニーズに最も的確に応える指導について、次のように述べています。
 「同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある幼児児童生徒に対して、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要」であり、「小・中学校における通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある『多様な学びの場』を用意しておくことが必要である。」
 このことを踏まえ、本研究所においても、ウェブサイトを充実することや研究成果の内容を簡潔に紹介したサマリー集を全市区町村教育委員会へ配布することなどにより、特別支援教育に関する情報が全ての「多様な学びの場」に行き渡るよう、より一層の情報発信に努めているところです。

(2)就学相談・就学先決定の在り方について

 このような教育的ニーズに応じた支援を保障するためには、本人・保護者への十分な情報提供と保護者を含め関係者の共通理解が必要であるとして、報告では、「乳幼児期を含め早期からの教育相談や就学相談を行うことにより、本人・保護者に十分な情報を提供するとともに、幼稚園等において、保護者を含め関係者が教育的ニーズと必要な支援について共通理解を深めることにより、保護者の障害受容につなげ、その後の円滑な支援にもつなげていくことが重要である。」としています。
 また、障害のある幼児児童生徒に教育基本法第4条、障害者基本法第16条及び発達障害者支援法第8条で求められている「十分な教育」を施すためには、就学先決定は非常に重要な事項です。
報告では、「就学基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとすること」、「その際、市町村教育委員会が、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と市町村教育委員会、学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とし、最終的には市町村教育委員会が決定することが適当である。」としています。
 これについては、学校教育法施行令第5条等の改正により、平成25年9月より、新しい就学先決定の仕組みとなっています。
 

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