独立行政法人国立特殊教育総合研究所
特殊研D−190 視覚障害者のWindowsパソコン及びインターネット利用・学習状況

第5章 まとめ

  メーリングリストを活用して視覚障害者のWindowsパソコン及びインターネット利用状況を調査した。2000年の調査結果と比べて,基本ソフト,ネットワーク環境,OCRの利用率,MS-DOSの利用率を中心に変化が見られた。ブロードバンド加入者率の増加,及びOCRの利用率上昇は,視覚障害者の情報入手環境の向上に役立っていると言える。一方,使えなくて困っているアプリケーションの製品名,種類,数を見る限り,視覚障害者のパソコン利用環境が2年前から大幅に改善されているとは言い難いのは残念である。
  今回新たに調査したインターネット利用状況からは,インターネットが視覚障害者にとって社会情報の入手手段として活用されている状況が示された。すなわち,晴眼者ならば新聞,広報誌,雑誌などから視覚的に入手する情報を,視覚障害者はインターネットを通じて得ているのである。これより,視覚障害者にとってWebページのアクセシビリティ確保がどれほど重要な問題であるかを容易に導くことができる。Webコンテンツ作成者,とりわけ,社会的責任のある公的機関では,アクセシビリティを十分念頭に置きながらWebページを設計しなければならない。
  以上のように,視覚障害者の情報収集手段として重要な役割を果しているパソコンだが,利用できるようになるには学習が必要である。この点において,地方自治体主催による視覚障害者向けのIT講習は,視覚障害者のパソコン利用を促進する要因として期待された。しかし,本調査の結果を見る限り,IT講習の受講者数は2000年と比べて大きく増えてはいない。これは,本調査の回答者のうちパソコン利用年数が2年以下の人たちが1割未満だったことに起因していると考えられる。IT講習の効果を知るには,初心者を主な対象とした調査が必要である。
  調査計画時に設定した3つの目的のうち,現在のパソコン利用状況を整理して,パソコン初心者等の参考に供すること,及び,現在の利用上の問題点をアクセス・ツール開発者(メーカー・研究者等)に提供することは,第3章のデータで達成できたと思う。しかし,学習支援システムの提案までは至っていない。この点が,今後の課題である。




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