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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第119号

メールマガジン

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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第119号(平成29年2月号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE(ナイセ)━━━
■目次
【お知らせ】
・研究活動についての意見募集と研究成果の活用度調査への協力のお願い
・平成28年度第三期特別支援教育専門研修開講
・NISE特別支援教育国際シンポジウムの開催(終了報告)
【NISEトピックス】
・平成28年度諸外国の教育政策動向に関する講演会の報告
【研究紹介】
・共同研究「小児がん患者の医療、教育、福祉の総合的な支援に関する研究」
(平成26~27年度)
【NISEダイアリー】
【研修員だより】
【アンケートのお願い】
【編集後記】

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【1】お知らせ
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●研究活動についての意見募集と研究成果の活用度調査への協力のお願い
 研究課題の精選や研究計画・内容の改善を図るため、平成29年度より開始
する、基幹研究(障害種別)の2つの研究課題について、2月中にご意見を
募集します。
 また、本年度より、研究成果が教育現場等に対して効果的に還元され活用
されているか検証を行うため、都道府県・指定都市・中核市の各教育委員会
を対象に「平成27年度に終了した研究課題の活用度に関するアンケート調査」
を2月中に実施します。
 これらの意見募集は、研究所Webサイト等にて実施する予定ですので、ご
協力をお願いいたします。

これら研究に関する意見募集はこちら(2月掲載予定)→

●平成28年度第三期特別支援教育専門研修開講
 1月5日(木)、平成28年度第三特別支援教育専門研修(発達障害・情緒
障害・言語障害教育コース)が開講しました。今期(1月5日~3月9日)
は、全国から集まった79名が受講しています。
 特別支援教育専門研修は、年三期開講し、各都道府県等で指導的立場に立
つ又は今後指導的立場に立つことが期待される教職員が、教育委員会等の推
薦を受けて受講するものです。
 研修プログラムは、特別支援教育全般と各障害種別に関する専門的な講義
や演習、研究協議、実地研修等で構成されています。約二ヶ月間の宿泊型研
修で、神奈川県横須賀市の本研究所にて受講していただきます。
 この研修では、専門的知識及び技術を深めるとともに、全国から集まった
教職員同士の情報交換やネットワークづくりも魅力となっています。
 
特別支援教育専門研修の内容等はこちら→

●NISE特別支援教育国際シンポジウムの開催(終了報告)
 本研究所では、1月14日(土)に東京都千代田区にある一橋講堂にて
「NISE特別支援教育国際シンポジウム」を開催しました。 当日は、広い範
囲で積雪による交通への影響がみられたなか、全国から350名を超える方に
ご参加いただきました。
 本年度は、「発達障害教育について学ぶ」というテーマで開催し、本研究
所の渥美義賢客員研究員による発達障害の最新の診断基準に関するミニ講義
の後、アメリカからConstance McGrath氏(マサチューセッツ州カーライル
小学校)、イギリスからYvonne Griffiths氏(リーズ大学)、そして日本か
ら冢田[つかだ]三枝子氏(横浜市立斎藤分小学校)をお招きし、各国の発達
障害のある児童生徒への教育の考え方や指導の実践を紹介していただきまし
た。
 また、当日の午前中には、プレイベントとして発達障害等のある子どもへ
の教育に関心のある方々を対象とした理解啓発ワークショップを開催しまし
た。

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【2】NISEトピックス
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●平成28年度諸外国の教育政策動向に関する講演会の報告
                           海津 亜希子
       (インクルーシブ教育システム推進センター 主任研究員)
                             李 熙馥
         (インクルーシブ教育システム推進センター 研究員)

 去る平成28年12月16日、本研究所で「諸外国の教育政策動向に関する講演
会」を開催致しました。この会は、諸外国の教育政策動向を知り、わが国の
インクルーシブ教育システムの方向性について議論を深める機会とすること
を目的としたものです。
 特に今年度からは、外国の教育事情に明るい大学教員を客員研究員として
お迎えしております。本会では、5名の客員研究員の方々から各国のインク
ルーシブ教育システムの動向と課題についてご講演いただきました。
 まず、イタリアに関して、本研究所の大内 進客員研究員より、イタリア
のフルインクルーシブ教育は制度や人事体制が整備されていることや、学校
教育全体にインクルーシブ教育が浸透していること、一般教員への障害のあ
る子どもへの教育に関する意識づけと専門性の向上が目指されていること等
についてお話がありました。次に、韓国に関して、筑波大学の鄭 仁豪教授
より、韓国の教育制度や特別支援教育の概要、インクルーシブ教育の現状等
について話題提供いただきました。課題としては通常学校におけるインクル
ーシブ教育の研修の質的向上や、教師間の協力体制の構築と責任の共有、関
連サービスの提供等があげられました。
 オーストラリアに関しては、埼玉大学の山中冴子准教授より、オーストラ
リアは障害者差別の観点からインクルーシブ教育が支持されており、各学校
が実施している合理的調整や支援、それらの水準を可視化する取組が行われ
ていること、教員の合理的調整等に関する理解と実践の質を高める取組が行
われている等の現状についてご講演いただきました。
 アメリカに関しては、岡山大学の吉利宗久准教授より、アメリカの教育制
度や義務教育の歴史等を概観された後、最も制限の少ない教育環境に関する
制度等を中心に障害のある子どもへの教育に関する動向について情報提供い
ただきました。
 最後に、北欧に関して、高知大学の是永かな子准教授より、スウェーデン
王国、ノルウェー王国、デンマーク王国、フィンランド共和国の各々の教育
制度、各国のインクルーシブ教育の特徴についてご講演いただきました。デ
ンマークは多様な教育を保障していること、ノルウェーは通常学校主体のイ
ンクルーシブ教育を推進していること、スウェーデンは知的障害特別学校を
維持しつつ新しい教育課程の推進を進めていること、フィンランドは通常の
学級と連携した3段階支援を行っていること等をご紹介いただきました。本
講演会でもお話のあった各国の教育政策動向の詳細につきましては、本研究
所ジャーナル等で今後発信していく予定です。

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【3】研究紹介
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●共同研究「小児がん患者の医療、教育、福祉の総合的な支援に関する研究」
(平成26~27年度)                        
        
                新平 鎮博(研究企画部上席総括研究員)

 病弱教育研究班は、国立成育医療研究センターとの共同研究として、「小
児がん患者の医療、教育、福祉の総合的な支援に関する研究」(平成26~27
年度)に取組みました。小児がんは、医療の進歩により生存率が高くなり、
サバイバーとして活躍されている人も増えてきました。文部科学省は「病気
療養児に対する教育の充実について(通知)」(24初特支第20号、平成25年
3月4日)を出しており、小児がんの子どもたちに対する教育の重要性が、ま
すます指摘されております。この通知に役立つ研究として、小児がんの拠点
病院に指定された15の病院にある学校・学級の協力を得て、入院中の子ども
たちの教育を集約することができました。例えば、学籍移動が多い実態、医
療スタッフとの連携の実際例、前籍校との具体的な連携内容、支援や配慮の
例など、拠点病院以外にある学校・学級での教育に参考にしていただけると
思います。また、和歌山大学の武田教授がまとめた諸外国の文献も紹介して
おり、他には、教育機関だけではなく、医療機関にも考慮してほしい内容も
まとめました。様々な分野でも参考になると考えています。研究成果を基に
して、大阪(拠点病院との共催)と広島(教育委員会及び拠点病院の協力)
では、「小児がんの子どもの教育セミナー」を開催しました。通常の学級の
担任や養護教諭、また、関係機関職員の参加もありました。教育と医療の架
け橋となるように、機会があれば、今後も開催、あるいは、依頼があれば協
力したいと考えています。また、この成果は、わかりやすい「小児がんの子
どもの教育支援ガイド」を作成する予定で進めております。
 課題は、短期入院や入退院を繰り返す児童生徒の教育の充実、退院後の日
常的な生活での教育的支援、また、高校生の支援や大学以降の実態、就労に
必要な教育などですが、厚生労働科学研究の分担等、他の研究に参画して鋭
意進めております。多くは調査研究になりますが、調査結果もさることなが
ら、調査の過程で、教育委員会や大学でも意識していただけるかと考えてお
り、今後、小児がんの子どもの教育充実につながると期待しております。
 本研究を通じて、小児がんの子どもに関して、昔のイメージや情報を持っ
ている方へ、新しい情報提供をすることで、少しでも理解啓発を進めること、
また、医療関係者にも正確な教育に関する情報を届けることなど、一人でも
多くの方が十分に理解し、小児がんのある子どもたちの教育の充実につなが
ることを願っています。

本研究の研究成果報告書はこちら→

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【4】NISEダイアリー
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          「土産話を持ち帰って」
           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)

 研究所では、松の内も明けない1月5日から、第三期の特別支援教育専門
研修が始まっている。今回は、発達障害・情緒障害・言語障害教育コースで、
計79名の先生方が参加している。小・中学校の先生方が多いが、幼稚園や高
等学校、そして特別支援学校の先生や教育センターの指導主事の方もおられ
る。多様な職場の方々が、二ヶ月間の宿泊研修を行うという意味で、相互の
情報交換が密に行える貴重な機会と言える。
 専門研修の最初に、「理事長講話」というコマが設けられている。そこで、
割と自由な話をさせていただく。ここのところは、標記の事柄を盛り込むこ
とにしている。
 全国から集まった先生方に、それぞれの専門の講義が始まる前に、久里浜
のこと、そして横須賀市や三浦半島のことについて、実際に散策しながら知
って欲しいという意図と、焦らずに、徐々に専門性を高めていって欲しいと
いうねらいがある。まずは研修生活に慣れ、二ヶ月間を有意義に過ごして欲
しい。そして、研修を通して得たことを、地元に還元して欲しいと思う。そ
んな思いを込めて話すことにしている。
 さて、話を聞く先生方は、「土産話を何にしようか?」と思うことだろう。
でも、それは表面的なこと。本当に大切にして欲しいのは、次のことである。

 散策をして気付いたこと、土地の名物は何か、講義で知り得たことをどの
ようにまとめようか、先生方と懇談して知った他の地域の教育情報など、土
産話になることは沢山ある。でも、それを、相手を考えずに説明しては、元
も子もない。話をするためには、相手の立場や状況に即することが基本とな
る。受け持っている子どもに話すことと校長先生や同僚に話すことは、当然、
異なってくるだろう。しかも、ただ話せばいいというものではない。つまり、
どんなふうに話して正確に伝えようかという工夫が必要になる。子どもには、
具体物、つまり土地のお菓子や写真、パンフレットなどを用いて伝えよう。
先生方には、講義の資料やそれを要約したものを使って話そう。教育委員会
には、第三期の専門研修全体のスケジュールやその中での一番の関心事を中
心に説明しよう。保護者には、他の地域の学校の様子を教えてあげようなど
と、内容も説明の仕方も、相手に応じて工夫しなければいけない。
 そしてそれらがどのように伝わったか、理解されたかの自己評価も必要だ。

 こんなふうに考えると、土産話を伝えるというのは、単なる世間話ではな
く、PDCAサイクルの「授業を行うこと」と同じだと思う。当然、actionとし
ての伝え方の改善も必要になる。
 私が一番伝えたいことは、「“授業”を考える基はあちこちにありますよ。
だから、それを一つ一つ大切な機会として生かしてください。」ということ。

 そして、最後に付け加えたいことは、話したり、説明したり、伝えたりす
ることの大本として、「(この人に、このことを、是非)伝えたい!」とい
う強い“思い”(passion)が必要だということ。
研修員の先生方には、三月まで有意義な時間を過ごして欲しい。

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【5】研修員だより
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 今号は、平成26年度第三期特別支援教育専門研修を修了された田中志穂先
生からお寄せいただきました。

「笑顔の種」
                田中 志穂(徳島県立阿南支援学校)

 2年前の1月8日、四国徳島から羽田行きの飛行機に乗り込み、いざ久里
浜へ。不安と緊張の中、向かった先は特総研。今思い返すとあっという間の
64日間でした。研究所の先生方や全国各地から集まってきた先生方から多く
のことを学び、自分自身の特別支援教育に対する思いを改めて考える大変貴
重な時間となりました。
 私は巡回相談を担当しています。研修前は相談を休まなければいけないこ
と、年度末の大切な時期に地域の子どもたちへの支援が十分できないことが
頭をよぎり、研修に参加していいのだろうか?と悩んだ時期もありました。
しかし、子どもたちのためになるものを何か持ち帰ろうと気持ちを切り替え
ました。そして、研修を通して大切な宝物ができました。特総研の先生方や
102名の仲間たちと出会えたことと研究協議班で作成したプレゼンテーショ
ン資料です。現在、地域の先生方と一緒にインクルーシブ教育や合理的配慮
について考える資料として活用しています。私は、どの学校のどの教室のど
の席にも、子どもの笑顔の花が咲いている姿を思い描き続け、これからも地
域の子どもたちに笑顔の種をまいていこうと思います。

○徳島県立阿南支援学校のWebサイトはこちら→
 https://anan-ss.tokushima-ec.ed.jp/

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【6】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。

○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=15154&lang=ja

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【7】編集後記
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 今月より暦の上では春になりますが、この冬は一段と寒さが厳しい日が続
いております。また、今年度もあと二ヶ月となり、読者の皆様におかれまし
ては、今年度の振り返りやまとめ、次年度の準備や諸計画の作成等でご多用
のことと思います。体調を崩すことなく年度末を迎えられるよう、ご自愛く
ださい。
 本号では、1月に開催された、NISE特別支援教育国際シンポジウムの終了
報告を掲載いたしました。2月は研究所セミナーを開催し、多くの方々と今
後の特別支援教育についてともに考える場となるよう準備しております。本
メルマガも、今後さらに充実した内容でお届けしてまいります。引き続きご
愛読いただけますよう、どうぞよろしくお願い致します。
                   (第119号編集主幹 神山 努)

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次号も是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第119号(平成29年2月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
           E-mail a-koho[アットマーク]nise.go.jp
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