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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第141号

メールマガジン

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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第141号(平成30年12月号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE(ナイセ)━━━
■目次
【お知らせ】
・平成30年度国立特別支援教育総合研究所セミナーの開催について
・2019年度国立特別支援教育総合研究所研修計画について
・平成30年度研究所公開の開催(終了報告)
・平成30年度交流及び共同学習推進指導者研究協議会の開催(終了報告)
・インクルーシブ教育システム普及セミナー(奈良)について(終了報告)
【NISEトピックス】
・第4回NISE特別支援教育国際シンポジウムの参加申込について
【連載コーナー】
・共同研究「インクルーシブ教育場面における知的障害児の指導内容・方法
の国際比較~フィンランド、スウェーデンと日本の比較から~(平成28-29
年度)」の研究成果報告書から [第5回]
・地域実践研究員だより [第2回]
【NISEダイアリー】
【研修員だより】
【アンケートのお願い】
【編集後記】
 
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【1】お知らせ
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●平成30年度国立特別支援教育総合研究所セミナーの開催について
 本研究所では、研究活動等の成果普及、特別支援教育に関する理解啓発、
及び、教育関係者や関係機関との情報共有を図るため、毎年、本セミナーを
開催しています。
 今年度は、「インクルーシブ教育システムの推進~多様な学びの場におけ
る研究所のコンテンツ活用~」をテーマに、平成31年2月15日(金)、16日
(土)の二日間、国立オリンピック記念青少年総合センターを会場に実施しま
す。
 1日目は、研修や専門的な指導、教育現場での実践、様々な場面で、研究
所のコンテンツを活用いただけるようなプログラムとしております。2日目
は、研究成果報告、発達障害に関するシンポジウム、インクルDBやICT機器
の展示及びポスター展示を行います。本セミナーが、参加される皆様にとっ
て、特別支援教育の推進のための実り多い機会となることを願っております。
 今年度は、ペーパーレス化及びセミナー終了後の活用を目的に、当日は、
概要のみの印刷物として提供します。代わって、当日使用する資料はホーム
ページにアップして、後日活用できるようにしております。現在、QRコー
ドの活用や電子媒体での提供等を検討しております。当日参加されない方も、
ぜひ、ご活用いただくと同時に、研究所の新しい取組についてもご理解を賜
りますようにお願いします。
 参加申込等の詳細は、研究所Webサイトに掲載しております。多数のご参
加をお待ちしています。
 
◇日時:平成31年2月15日(金)、16日(土)
◇会場:国立オリンピック記念青少年総合センター
   (東京都渋谷区代々木神園町3-1)
◇定員:500名
◇申込期間:平成30年12月4日(火)~平成31年1月18日(金)
 
○国立特別支援教育総合研究所セミナーの詳細はこちらから→
 http://www.nise.go.jp/nc/training_seminar/special_seminar/h30
 
●2019年度国立特別支援教育総合研究所研修計画について
 本研究所の研修事業は、特別支援教育に携る教職員に対して、インクルー
シブ教育システムの充実に向けて、国の重要な特別支援教育政策や教育現場
の喫緊の課題等に対応する指導者の養成を目的として実施しています。
 この2019年度研修事業計画については、すでに各都道府県等教育委員会に
お知らせしているところです。
 各研修とも、関係教職員の積極的なご参加と教育委員会等から多数のご推
薦をお待ちしています。
 受講者の募集については、研修ごとに実施要項を策定した後、各都道府県
教育委員会等へ、以下の時期に照会する予定です。
 
◇特別支援教育専門研修、高等学校における通級による指導に関わる指導者
研究協議会は、平成30年11月下旬開始済み
◇特別支援教育におけるICT活用に関わる指導者研究協議会、交流及び共同
学習推進指導者研究協議会は、平成31年2月上旬
◇発達障害教育実践セミナー、校長会との連携研修は、平成31年3月上旬
 
○2019年度国立特別支援教育総合研究所研修事業計画はこちら→
 http://nc.nise.go.jp/training_seminar/training_project_plan/2019
 
●平成30年度研究所公開の開催(終了報告)
 11月10日(土)、「発見、体験、特総研!~深めよう知識・広げよう理
解~」というテーマで平成30年度研究所公開を開催し、400名以上の方々に
ご参加いただきました。
 今年度は、横浜市立上菅田特別支援学校のご協力による障害者スポーツ・
ボッチャ体験会、毎年ご好評いただいている筑波大学附属視覚特別支援学校
の生徒と教員による「あん摩マッサージ」体験、特別支援教育の視点からの
教材づくり・教具体験など、幅広い内容の催しを行いました。
 さらに、地元横須賀にゆかりのある作家・中村勝雄氏をお招きして、「車
いすの子育て奮闘記!」と題した講演会を行っていただきました。ご自身が
重度の脳性まひでありながら、明るく前向きに子育てに励む中村氏の姿に、
多くの参加者が感銘を受けたようでした。
 また、開催に当たり、横須賀市立横須賀総合高等学校の生徒3名にもボラ
ンティアとしてご参加いただくなど、多くの関係者の方々にご協力いただき、
盛況のうちに終えることができました。
 
●平成30年度交流及び共同学習推進指導者研究協議会の開催(終了報告)
 11月21日及び22日の2日間、標記指導者研究協議会を本研究所において開
催しました。
 本指導者研究協議会は、インクルーシブ教育システムの充実をめざし、各
都道府県等において障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒との
交流及び共同学習を推進する立場にある教職員による研究協議等を通じ、各
地域における交流及び共同学習と障害の理解推進に資することを目的として、
毎年開催しているものです。本年度は、全国から特別支援学校、小・中学校
等教員や指導主事等77名が受講しました。
 1日目は、文部科学省による最新の行政説明に続いて、研究所等から「地
域実践研究『交流及び共同学習の推進に関する研究』」の研究報告を行いま
した。研究報告では、齊藤総括研究員から「通常の学級での学習活動に焦点
をあてて」、静岡県立沼津特別支援学校から「居住地校交流の充実をめざした
実践のポイントの提案」、相模原市教育委員会から「相模原市における小学校
内の交流及び共同学習の推進」という内容で発表が行われました。
 2日目は、3分科会4班に分かれ、研究協議が行われました。第一分科会
では「交流及び共同学習を推進する上での学習活動の工夫」、第二分科会で
は「居住地における幼児児童生徒の交流及び共同学習の推進」、第三分科会
では「交流及び共同学習を推進する上での行政的取組」をテーマに各受講者
のレポートに基づく報告や最新の情報について活発に協議がなされました。
各班では、文部科学省の深草、中村、庄司の各特別支援教育調査官及び本研
究所の星上席総括研究員からの指導・助言がなされ、全体会でも、それぞれ
から講評をいただきました。
 
●インクルーシブ教育システム普及セミナー(奈良)について(終了報告)
本普及セミナーは、インクルーシブ教育システム推進センターの活動内容や、
各地のインクルーシブ教育システム構築に向けての取組を、より多くの方に
知っていただくため、全国各地で実施しております。
 今年度は、奈良県立教育研究所において、奈良県教育委員会との共催で、
平成30年10月20日(土)に開催し、各種学校の教員や医療、福祉等の関係
者の約140名の方々にご参加いただきました。
 第1部では、インクルーシブ教育システム推進センターの取組の報告を行
いました。第2部では、奈良県教育委員会から、県内の特別支援教育の現状
や取組の報告を行いました。また、宇陀市教育委員会と宇陀市立榛原小学校、
及び五條市立阪合部小学校から、各校の取組についてご紹介いただきました。
パネルディスカッションでは、インクルーシブ教育システム構築を進めるた
め、関係者の役割について議論を深めました。
 参加者からは、「教育、福祉、行政の横の繋がりが必要と感じた。」や
「特総研の取組を直接聞ける良い機会となった。」等、多くの感想が寄せら
れました。
 本普及セミナーの実施に当たっては、奈良県教育委員会及び奈良県立教育
研究所をはじめ多くの方にご尽力いただきましたことに心より感謝申し上げ
ます。
 
○本セミナーの詳細についてはこちら→
 http://nc.nise.go.jp/about_nise/inclusive_center/2018seminar
 
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【2】NISEトピックス
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●第4回NISE特別支援教育国際シンポジウムの参加申込について
 本研究所では、「障害のある子どもと障害のない子どもの交流をめざして
-日韓の取組から今後のインクルーシブ教育システム推進を展望する-」と
いうテーマで国際シンポジウムを開催します。テーマに関する様々な取組等
についての報告及びパネルディスカッションを行います。
 
◇内容及びシンポジスト・登壇者
  第1部 ・諸外国におけるインクルーシブ教育システムに関する動向
      ・韓国における特殊教育制度の解説
  第2部 シンポジウム
  話題提供者 : オ ヨンソク 氏
         (韓国国立特殊教育院研究士)
          チェ ジョンヒ 氏
         (韓国大田市立ソナン初等学校教諭)
          岡野 陽一 氏
         (相模原市立青少年相談センター指導主事)
  指定討論  : 鄭 仁豪 氏
         (筑波大学教授)
 
 既に参加申込の受付を開始しております。参加をご希望される場合には、
本研究所Webページよりお早めにお申込みください。多くの皆様のご参加を
お待ちしております。
 
◇日時:平成31年2月2日(土) 13時~17時30分(12時受付開始)
◇会場:一橋大学一橋講堂(学術総合センター内)
    (東京都千代田区一ツ橋2-1-2)
◇定員:400名(日韓同時通訳有り)
 
○NISE特別支援教育国際シンポジウム参加申込のWebページはこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/training_seminar/special_symposium/h30
 
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【3】連載コーナー
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●共同研究「インクルーシブ教育場面における知的障害児の指導内容・方法
の国際比較~フィンランド、スウェーデンと日本の比較から~(平成28-29
年度)」の研究成果報告書から 
第5回「事例4 小学校3年生の理科の交流及び共同学習の実践」
                    知的障害教育研究班 涌井 恵
       (インクルーシブ教育システム推進センター 主任研究員)
 
 今回は、知的障害のある小学校3年生のAさんが、理科の交流及び共同学
習を行った実践事例を紹介します。
 本実践では、障害の有無にかかわらず、児童たちの学び方の多様性に配慮
したユニバーサルデザインな授業づくりとともに、対象児である知的障害特
別支援学級に在籍する児童に個別の教育的ニーズに応じた手立てを用意し、
学力面と対人面双方に効果を及ぼすことを目指しました。
 実践の中では、ユニバーサルデザインな授業づくりの基本的な方針とし
て、Aさんをはじめ多様な児童の認知特性や学び方に応ずるために、ノート
やプリントでは、絵を書くなど視覚的な手立てを活用したり、他児と学び
合ったり、体を使ったり、物を操作する活動を取り入れたりするなどして、
できるだけ視覚、聴覚、触覚といった多感覚やGardner(1999)の提唱する言
語的知能、対人的知能、空間的知能、論理・数学的知能、音楽的知能、運動
感覚的知能、内省的知能、博物的知能といった8つのマルチ知能をできるだ
け多く活用できるような、書字以外の活動も多く取り入れた学習活動を設定
するようにしました。
 当該授業の事前に知的障害特別支援学級において理科に関する用語や授業
に関連する日常語彙を学習したり、全児童へ例示する見本教材をAさんと特
別支援学級教員とで事前に作成したり、交流学級での授業においてAさんが
教師の模範提示を手伝ったりするなどの工夫を行いました。また、Aさんを
含む全児童に対して、単元前にレディネステストによる実態把握を行ったこ
とにより、Aさんや交流学級児童の理解が未だ不十分、あるいは困難と思わ
れる内容を把握した上で指導の手立てを工夫することができました。
 
 本事例が詳しく掲載されている研究成果報告書は、以下のURLからダウン
ロードすることができます。
 
○本共同研究の研究成果報告書はこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/study/intro_res/joint
 
 次回は小学校高学年児の外国語活動の交流及び共同学習の実践事例を紹介
する予定です。どうぞお楽しみに。
 
●「地域実践研究員」だより[第2回]
 
「多様な教育的ニーズに対応できる学校づくりに関する研究」
               地域実践研究員(長期派遣型) 沖出 淳
                    (静岡県立東部特別支援学校)
 
 5月を迎えるまでに1年くらいたったのではないかと錯覚するほど、時間
の流れが遅く感じたことを今では懐かしく思います。不慣れな環境で不安が
募る中、研究所の先生方は顔を合わせるたびに優しく声を掛けてくださいま
した。何よりも、地域実践研究員の仲間が共にいてくれたおかげで、五月晴
れを見事に映し出した野比の海のように自分の中にあった霞(かすみ)もな
くなっていました。
 季節は移ろい、気付けばもう秋。波音は静まり、青みが一層増した蒼海を
眼前に、今日も地域実践研究に励んでおります。「多様なニーズに対応でき
る学校づくりに関する研究」では、高等学校における特別支援教育の現状と
特別支援学校との連携について取り組んでいます。高等学校の校内体制や外
部機関との連携、特別支援学校のセンター的機能などに関する調査を行い、
高等学校における特別支援教育の現状と課題を整理し、特別支援学校との連
携の在り方を探っていきたいと考えています。
 研究を進めていくに当たり、静岡県教育委員会をはじめ、県内の高等学校
や特別支援学校の先生方からのご協力をいただいております。この場をお借
りして感謝申し上げます。それから家族のみんなにも…。
 この研究に参画させていただいて以来、有り難いことに自分にはもったい
ないくらい素敵な方々との出会いが続いております。これらの出会いを大切
にしながら、充実した成果を静岡に持ち帰ることができるように研究に取り
組んで行きます。
 
「インクルーシブ教育システムの理解啓発に関する研究」
              地域実践研究員(長期派遣型) 島津 裕子
                  (青森県立青森第一高等養護学校)
 
 「高校の先生方は日々の授業や指導の中でどのような生徒が気になり、ど
のような配慮をしているのだろう。」そんな素朴な疑問から研究をスタート
させ、派遣いただいた青森県教育委員会の協力を得ながら研究に取り組んで
います。
 4月に青森県教育委員会から「高等学校における特別支援教育の推進」と
いう大きなテーマをいただき、これまで、特別支援学校での指導経験しかな
い私が、高等学校における特別支援教育の現状を把握し、推進について考え
るなんて…、と戸惑いはありました。そのため、当初は素朴な疑問をどのよ
うに研究に結びつければよいのかと悩む毎日でした。
 夏に質問紙調査を実施し、高等学校の先生方から多くの回答を得ることが
できました。今後は、高等学校の先生方の取組を整理・検討しながら、高等
学校のニーズに沿った方策を模索していきます。
 研究を進めていく中で、欠かせないのはやはり仲間の存在です。今年度の
地域実践研究員6名、取り組んでいる研究はそれぞれ異なりますが、一つの
疑問に対し、これまでの経験やそれぞれの立場、時には各県の状況などを交
えながら自然と交わされる議論。そこから、自分の考えが整理され、目的を
再確認できることが多いと感じる日々です。「己を知るにはまず相手から」。
高等学校における特別支援教育の推進を考えることを通じて、自らの特別支
援教育への考え方について再考を迫られているように感じます。
 これまでの自らの実践を振り返りつつ、研究成果を青森県に還元できるよ
う、限りある貴重な時間を大切に取り組んでいきたいと思います。
 
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【4】NISEダイアリー
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       「第二期特別支援教育専門研修の閉講式」
           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)
 
 11月9日に第二期専門研修(知的障害教育コース)が終了した。9月5日
からの二ヶ月間の研修を終え、88名の研修員が感無量の面持ちで閉講式に臨
まれた。
 閉講式は、開講式で問い掛けた宿題に対する私の回答を述べる場でもある。
 「知的障害教育で、『各教科等を合わせた指導』を必要としたのは、なぜ
か?」それが私の問いであり、私自身も二ヶ月掛けて、時間を見付けては図
書室に通い、答えを探した。知らないことを知るというのは、大変だけど面
白い。若い頃の好奇心旺盛な時代に戻ったような気がした。
 特殊教育百年史を繙(ひもと)けば、知的障害教育は、戦後、特殊学級で
行われていた。そこには、「水増し教育」という言葉も出てきた。学年を下
げたり、時間を多く掛けたりして、教育内容を薄めて指導をしたという意味
であろう。その後、知的障害の子どもの実態に即した指導が学校現場で追求
されるようになった。当時の文部省には、知的障害教育の学習指導要領を作
成する委員会等が設けられ、昭和34年に「六領域案」としてまとめられた。
ところが、翌年にまとめられた暫定案では、教科案に変わった。その頃、知
的障害教育の分野では、子どもに教える内容を教科で分類するか、領域で分
類するか、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論が繰り広げられたようだ。
 その過程で、二つの条件が確認されたそうだ。要約すると、学習指導要領
の内容を各教科等の分類形式で示すとしても、(1)知的障害教育にふさわ
しい教育内容を盛り込むこと、(2)授業は教科別に進める必要はなく、合
わせて行うことができること、である。
 こうして、昭和37年には、学校教育法施行規則が改正され、「合わせて授
業を行うことができる」とされた。昭和38年3月には、知的障害教育に係る
最初の小学部・中学部学習指導要領が次官通達の形で示された。総則の一般
方針において、「知的障害者の学習指導上の特性」に即することとして、
「必要に応じ全部または一部の各教科をあわせたり、各教科、特別教育活動
および学校行事等の内容を統合したりするなどのくふうをして、適切な教育
課程を編成するものとする。」と示されている。
 こうしたことから、私の問いに対する答えは、知的障害教育の学校現場が、
子どもの特性に即した教育を進める必要性から、合わせた指導が設けられた
とまとめられる。しかし、私には、次の疑問が生じた。平成26年1月に我が
国も障害者権利条約を批准した。その関係で、就学の仕組みも変わり、手続
きを踏めば、小学校等で知的障害の子どもが教育を受けられることが、制度
としても位置付けられた。こうした時に、「合わせた指導」の成り立ちや意
義を的確に、例えば小学校等の先生方に説明できるように、関係者の中で50
年間引き継がれているかということだ。私の経験でも、「合わせた指導は分
けない指導だ。」、「それは、知的障害教育をやったものでなければ分から
ない。」などの説明を聞いたことがある。「知的障害教育は、こうすべきだ!」
という教条的な説明から早く脱皮し、一般の方に分かるような説明が、これ
から求められると思う。そして、その回答を見付けるのは、学校現場の先生
方であると、研修員に新たな宿題をお願いした。「知的障害の子どもの『こ
れこれしかじか』の特性に応じて、例えば、教科で示された内容を『このよ
うに合わせて指導をすれば』、『こんな成果が見られますよ』と、一人一人
が実践を通して追求していって欲しいと、切に思う。

 

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【5】研修員だより
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 今号は、平成25年度第三期特別支援教育専門研修を修了された関本清子先
生からお寄せいただきました。
 

「研修を振り返って」
                 関本清子(山口県立宇部総合支援学校)
 
 私は平成26年1月~3月、校種や経験、立場が異なる約70名の先生方と
発達障害、自閉症・情緒障害、言語障害の3コースに分かれて研修しました。
 研修中、私にとって魅力的だった場所は、久里浜の波の音が聞こえる図書
室。図書や学術雑誌をはじめ、数多くの研究・実践報告書等の資料が閲覧で
き、知りたい情報がいつでも手に取れる情報の宝庫でした。
 心に残っているのは、横浜市と川崎市にある2つの小学校で通級指導教室
を見学した実地研修。少人数グループでの指導を参観後、システム等のお話
を聞かせていただき、新しい知見を得ることができました。また、著名な講
師の先生方から直にお話を聞いて学んだ講義の時間は、貴重で贅沢な時間で
した。
現在、私は、本校に設置している宇部特別支援教育センターの一員として、
地域の学校支援や就学相談、研修会の企画運営等に携わっていますが、今年
4月に「多層指導モデルMIM理解セミナーin山口」を海津先生と一緒に開催
できたことは、本当に嬉しい出来事でした。県内外から多数の参加があり、
久里浜で研修した仲間やつながりがある方もかけつけてくださいました。こ
れからも、研修で学んだことを地域の先生方や子どもたちに少しでも届けた
いと思っています。
 
○山口県立宇部総合支援学校のWebサイトはこちら→
 http://www.ube-s.ysn21.jp/
 
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【6】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。
 
○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=56517&lang=ja
 
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【7】編集後記
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 メールマガジン第141号をお読みいただきありがとうございました。
 本号を編集するに当たり、編集主幹として理事長室へ原稿依頼にうかがっ
た際に、理事長から、「坂井さんらしい編集をお願いしますよ」と笑顔で指
示を受けました。
 「私らしい」とはどういうことなのだろうと、本号の編集に当たっていた
この1ヶ月間ずっと考えてきました。そのような時と重なって、本研究所で
は、第二期専門研修が行われ、全国から88名の先生方が本研究所を訪れまし
た。その専門研修でのエピソードを一つご紹介します。
 講義や研究協議以外の時間に、とある先生と「日本一有名なネコ型ロボッ
トと合理的配慮の関係」について、おもしろおかしく議論をしたことがあり
ました。初めは他愛のない話で始まったものが、議論をする中で深まってい
きました。
 この後、担当する演習の休憩時間中に、この議論の内容が自動で流れるス
ライドショーを作成し、他の先生方にも紹介しました。真面目なことを楽し
いものと関連付けて話すことで、より議論が深まったと感じた瞬間でした。
併せて、「休憩時間中に参加者が楽しめるスライドショー」という、新しい
物を作成することができました。
 さて、このエピソードと冒頭の「私らしさ」との関係ですが、「楽しいこ
とを求めるスタイル」が、私の「私らしさ」の一つなのだと、改めて研修員
の先生方と話す中で分かりました。
 私は、授業をつくるときに「先生が楽しい」という要素は絶対に外せない
と考えています。この、「先生が楽しい」が子どもたちに伝わって初めて、
子どもたちが授業を楽しいと感じられるのではないでしょうか。
 日常のありふれた生活の中にある「楽しさ」を発見し、心の中に書き留め
て、いつでも引き出せるようにしておくことを忘れずにいたいと思います。
 ところで、本編集後記に「私らしさ」は現れていたでしょうか。みなさん
の「私らしさ」とは何ですか?
                  (第141号編集主幹 坂井 直樹)
 
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次号も是非ご覧ください。
「メールマガジン」へのご意見・ご感想はこちら
 
国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第141号(平成30年12月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
           E-mail a-koho[アットマーク]nise.go.jp
          ([アットマーク]を@にして送信してください。)
 
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